アンドレイ・カリーニン

登録日:2013/10/31(木) 09:14:23
更新日:2025/05/25 Sun 02:18:26
所要時間:約 11 分で読めます 「諸君には知る必要がない」




アンドレイ・カリーニンはライトノベルフルメタル・パニック!』の登場人物。
CV:大塚明夫




【人物】
フルネームはアンドレイ・セルゲイヴィッチ・カリーニン。
極秘の傭兵部隊〈ミスリル〉西太平洋戦隊の陸戦隊司令官で階級は少佐、コールサインはパース1。宗介たちの上官であり、実戦では上空のヘリコプターから指示を出すことが多い。

元々はソ連軍の特殊部隊に所属していたが後に脱走、傭兵として各地を転戦した末にミスリルに入る。
宗介とは長い付き合いで、親のいない宗介にとっては父親のような存在であり、カリーニンも時として宗介を息子のように扱うことがある。
宗介が陣代高校に転入(潜入)したときには、書類上の養父となっている。
宗介の転入には戦争漬けな彼を少しずつ普通の日常に慣れさせてやりたいという思いもあった様子。


性格は冷静沈着で、確実に手堅く勝利する戦術を得意とする。
場合によっては部下を見捨てる事も躊躇しないが、冷血人間というわけではなくあくまでも合理的判断によるもので、可能な限り部下の命は救おうともしている。
具体例を挙げると、長編第1巻では、撃破されたと思しき味方ユニットを発見したという報告に対し出した命令が「(パイロットの生死や脱出済みかは問答無用で機密保持のため)残弾をそのユニットに撃て」、他の味方に出したのが「捜索厳禁で即撤収せよ」である。
これだけ見ると非情に思えるが、機体が敵の手に渡れば情報が丸裸にされるし、敵がどんどん来るので時間的猶予も皆無という状況での命令なので、合理性は明確に存在する。
そして撤収直後に上官のテッサに訊きに行こうとしたことが「(このパイロット以外も含めて)生存者の捜索・救出のためにどれだけの時間を割けるか」なので、ちゃんと救おうとしている。
実際、宗介をはじめとする部下からは厚い信頼を受けている。

元特殊部隊だけあって、指揮能力に限らず自らの戦闘能力も高く、重傷の状態でも敵兵士を容易く射殺したり素手で背骨をへし折るなどしている。


【短編】
長編がメインの人物なのだが、短編登場時のインパクトがある一件のせいで強すぎるのでまずはこちらから。

テッサが陣代高校に留学した際は、宗介がテッサに手を出すのではないかと危惧して圧を掛けるマデューカスに対して「宗介にそんな度胸あるわけがない」と思いながらも表立った反論などはせず、騒動に巻き込まれる宗介を見捨てる形に。
組織のトップ(テッサ)ナンバー2(マデューカス)にプレッシャーを掛けられている中で宗介が頼れるのがカリーニン(ナンバー3)だけという状況でこれなので、絶望した宗介はカリーニンのこの態度を「自らの保身」と評している。


そして特大のインパクトを残したのが『わりとヒマな戦隊長の一日』(原作では短編集第5巻収録)。
このエピソードでは、休日の趣味が今は亡き妻イリーナのボルシチを再現する事だと明かされた。
それもただのボルシチではなく、カリーニンが語るところによるとかつてソ連時代に軍務から帰ってくる度に作ってくれたものであり、さらには「なんらかの調味料」が入っているとも。
カリーニンにとってはおいしいごちそうだったのだが、その中身を聞く前に妻は亡くなってしまった。
そのため独力で再現を試みており、長年研究を続けた結果遂にこの日完成に至ったのだ。

その正体とは――ココアパウダーとミソペースト。

ココアパウダーとミソペーストである。

うん、ボルシチに入れるもんじゃないね。
その味はテッサ曰く「あたたかいドクターペッパー」、クソ不味いアメリカ軍のレーションを「なかなかの味」と言う宗介ですら食事の誘いをなんとか拒否する代物。
現実においてもわざわざ再現する奇特な者たちがおり、「口に入れた瞬間はイケるかと思ったが後味が最悪」「食い物じゃなくて拷問器具に使える」と評価は上々。

そもそもこんなものをおいしいという味覚のカリーニンが出したこの答えが本当に合っているのかという疑問はあるのだが、正解だとして妻は何故こんなものを出したのだろうか。
カリーニンは任務明けで家に帰ったときに作ってもらったものだと述べているのだが、彼は普通の軍人ではなく特殊部隊員で、さらには潜水艦勤務の経験もあるような人なので、行き先も帰る日もわからない長期の不在が日常だった。
それだけではなく、イリーナはバイオリン奏者であり西側諸国での公演もあったのだが、カリーニンが夫として同行するときには大抵所属先からの密命が彼に与えられていた。
なので帰宅や渡航のたびに文句を言われており、件のボルシチもそういう背景の下でお出しされたものである。

当人が亡くなっているため答え合わせはできないが、テッサは嫌がらせだと推測し、そしてこれをおいしいというほどの任務と食生活を送ってきたカリーニンに深い同情を示した。


【過去】
  • ソウスケくんとアンおじさん
本編からさかのぼる事十三年ほど前、北極海でソ連軍潜水艦にスぺツナズ下士官として乗り込んでいた際に、近くで旅客機が墜落に近い不時着をし、結果的にただ一人助けられたのが4~5歳ほどの男の子だった。
彼の身元に関係するような情報は、衣服に書かれていた「さがらそうすけ」の文字だけだった。
一連の経緯は闇に葬られ、旅客機の乗員乗客は全員死亡という扱いになっており、後にカリーニンが調べた限りではこの名前に該当する乗客はいなかった。

帰港してすぐに彼はKGBに引き取られたが、止める事などできるはずもなく、その先はカリーニンには知るすべはなかった。
また、この時助けられなかった彼の母親が言った「イキナサイ」という言葉は、「行きなさい」とも「生きなさい」とも取れる奥深い言葉としてカリーニンの心に強く残ることとなった。。

  • カシムとカリーニン大尉
その4年後、アフガニスタンにいたカリーニンはある情報を耳にした。
「KGBに幼い外国人の子供を集めて暗殺者として育てるセクションがあり、4年前、海軍に関係の深い将校が、今なら8歳くらいの日本人の子供を連れてきており、その子供はごく優秀な成績を収めていた」と…。
これだけであの子供が暗殺者として育てられたとカリーニンが察するには十分であり、実際にその通りであった。

「さがらそうすけ」はアフガンゲリラの指導者の暗殺に投入されたが失敗し捕らえられ、「カシム」としてゲリラに加わっていた。
当時最新鋭でソ連軍も運用していた兵器「アーム・スレイブ」を鹵獲し、そのパイロットとしてソ連軍に手痛い損害を与えていた。
とはいえそこまでの事情はカリーニンは知っておらず*1、単に「ゲリラのAS」を排除する作戦が立てられ、その指揮官として現地に向かった。
このとき既に優れたAS操縦兵であったカシムであったが、歴戦のカリーニンの指揮の前に屈し、乗機は行動不能に。
包囲された中機体を捨ててなお拳銃の弾切れまで粘ったが、カリーニンは最終的に自ら部下と共に肉薄し操縦兵の確保に成功。これが、宗介とカリーニンの2度目の出会いであった。

かつて命懸けで助けた幼子は暗殺者に仕立て上げられ、母国ではこの頃身ごもっていた妻イリーナが、劣悪な環境による医療事故で母子ともに死亡。
更に追い打ちをかけるように、停戦交渉の場では停戦への機運を完全に破壊するような自作自演の事件。
カリーニンの祖国への不信は頂点に達していた。

この任務と戦争を終えて帰ったとしても、出迎えてくれる家族さえいない。そんな彼は、ついに母国を棄てた。
陰謀に巻き込まれ殺害寸前だったゲリラの指導者と収容所の独房にいた宗介を連れ、ゲリラ側へ身を向けた。

後にゲリラは壊滅するが、ソウスケと共に命からがら逃げ延び傭兵となる。
ソウスケには生き延びる術として戦い方や言語を教え、名前に「相良宗介」という漢字をあてがうなどした後、宗介とはカンボジアで離ればなれになった。


  • 相良宗介とカリーニン少佐
宗介が15~6歳くらいの頃、経緯は不明だがカリーニンは〈ミスリル〉の少佐として活動していた。
そんなある日、訓練中に事故が発生し、精鋭揃いのSRTに欠員が2名生じることに。
これにより、当時ウルズ6であったメリッサ・マオは、ウルズ2となるとともに欠員補充のためにミスリルの訓練キャンプへ赴いた。
そこでなんやかんやあった結果彼女が連れて来たのが、凄腕の狙撃手クルツ・ウェーバーと凄腕のAS乗りソウスキー・セガール…すなわち相良宗介であり、これが3度目の出会いとなった。
今度は上官と部下という立場で日々を過ごすこととなり、本作の長編はこのような状況からスタートする。


【長編での活躍】
ハイジャック事件ではクルツM9が撃破された状況から敵がラムダ・ドライバを保有していると推察し、テッサにARX-7 アーバレストの使用を提案した。
また、宗介に対してこの世界の異様さを語り、アーム・スレイブが闊歩し、ラムダ・ドライバのようなトンデモシステムが存在する世界を「こんなものは本来ならあるはずがない」と告げている。
「終わるデイ・バイ・デイ」では宗介の成長を称えている。

クリスマスの事件では部隊とは別行動を取り、敵組織〈アマルガム〉の内通者の捕縛に向かっていた。
その後はとある人物と会っているが、その人物とはテッサの兄でありアマルガムの幹部、レナード・テスタロッサであった――。

『つづくオン・マイ・オウン』でのアマルガムによる総攻撃時には、命令自体は普段通りだが珍しく冷静さを欠いているような様子を見せた。
メリダ島陥落時はテッサ達の脱出の時間を稼ぐべくしんがりに残り、島からの唯一の脱出手段である潜水艦〈トゥアハー・デ・ダナン〉に乗ることもできなかった。

このとき遠く東京にいた宗介は島にいたはずの部隊や人員がどうなったか知る由もなく、連絡も途絶していたが、宗介とカリーニンの二人は独自の連絡手段を用意していた。
しかし、それすらも完全に沈黙。頼れるものなど何もない宗介はアマルガムへつながる手がかりを求めて単身東南アジア某所へ向かった。



追記・修正はボルシチのまっとうな作り方というものを考えてからお願いします。

































ネタバレ注意









彼は生きていた。宗介たちの敵、アマルガムの幹部ミスタ・Kとして―――

クリスマスの際にレナードから「世界改変」の話を聞かされていた彼はその案に賛同。アマルガムへと寝返っていたのだ。

『つどうメイク・マイ・デイ』において、千鳥かなめの居場所を特定し奪還すべくやってきた宗介の前に、完全な寝返りであることを明言したうえで立ちはだかる。
この戦闘の前、〈ミスリル〉残党が用意していた新ASを確保・処分していたが、ダミーであったために宗介の手に新機体〈レーバテイン〉が渡ることとなった。
さらにこのとき、アマルガムの一部からの裏切り…というか機に乗じて支援の建前の下レナードを狙いに来た襲撃まで受ける羽目に。
カリーニン自身はかなめを渡すはずもなく共にヘリで脱出。だがかなめの本心と演技に屈し彼女に宗介との通信を許したことで、宗介の心に火が付いた。

『せまるニック・オブ・タイム』では、先の件の直後上述の裏切りへの報復を実行。その後は宗介たちの敵として部隊の指揮を担当。
このときは最前線には出ていないので、ミスリル側としては「(おそらく)カリーニンの指揮により動いているはず」という認識。
宗介とテッサの脱出を阻むべく的確な指揮を執るが、クルツが命を賭してアマルガム側の狙撃手を排除したのとレーバテイン装備のラムダ・ドライバ無効化装置により脱出を許した。


『ずっと、スタンド・バイ・ミー』でも敵の指揮官として立ちはだかる。
ミスリルによる襲撃への対策に先立ち、レナードの計画の実行に必要な情報を入手すべく、アマルガムの管理人につながる人物を追い、手に入れた。
このときのアマルガム…というかレナードにとって守るべきものの一つは計画の実践地であるメリダ島で、もう一つが彼らが占拠した核ミサイル基地。
この2か所のうち、本命はメリダ島。ミサイル基地はここにミスリルの兵力を集中されたくないので彼らに「目の前の現実的な危機」を突きつけるために占拠したのだ。
なのでカリーニンが現地にいて指揮を執るのは当然メリダ島の防衛部隊であり、完全武装で殴りこんで来た宗介をレナード搭乗の〈ベリアル〉を除いても多い〈コダール〉12機や〈ベヘモス〉3機を率いて迎え撃った。

備えはしていたのだが、レナードが周りと協力する気が無いというのもあったとはいえ、宗介により配下のAS15機は全て撃破され、海からは〈デ・ダナン〉が最重要目標のすぐ近くまで到達。
そしてレナードまでもが宗介とレーバテインのコンビに敗れ、改変も止まり計画は失敗。

ただそれでもかなめさえ渡さなければまだ再起を狙うことも可能な状況であり、彼女を確保し、自爆装置に手を掛けようとしたレナードを射殺し脱出を狙う。
しかし、そうはさせじと追ってきた宗介によりかなめを奪い返され、その後宗介とカリーニンがいたヘリも墜落。カリーニンの計画は完全に失敗した。

残骸から這い出し、二人は対峙する。カリーニンにとってはもはや目の前の「敵」ひとりを排除してもどうにもならない状況であったが、それでもナイフを手に取った。
宗介に兵隊としての才能がないことを突き付け圧倒するが、墜落時の傷が致命傷となっており力尽きる。

レナードの計画(あんな女々しい絵空事)に乗った理由を、宗介を平和な日常に帰したかったと、そして自分自身も妻と子供のもとへ帰りたかったと語る。
この二人きりの戦いも、武器を手にする人生は本来宗介には違うものだということを教えるためのものだった。

最期は宗介に親父と呼ばれた事に微笑みながら「イキナサイ」と告げ、息絶えた。











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「どんな項目も…一皮剝けばこんなものだ。気付けば(追記・修正して)ようやく半人前…」

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最終更新:2025年05月25日 02:18

*1 このときガウルンが現地での情報提供者として登場しているのだが、ガウルンは「パイロットを生け捕りにすれば面白いものが見られる(要約)」としか言わなかった。