ガウルン

登録日:2010/08/29(日) 14:36:35
更新日:2025/06/01 Sun 19:31:09
所要時間:約 8 分で読めます





『会えて嬉しいぜぇ、カシム』



ガウルンとは、ライトノベル作品『フルメタル・パニック!』及び関連作品の登場人物。

CV:田中正彦

人物


東洋人男性のテロリスト。東洋人にしては非常に大柄。
過去の負傷から額に傷があり、“固く閉ざした第三の目”のように見える。
本人の自称するところによると日本人。少なくとも日本語は普通に使えるほか、柔術について「祖国の武術」と明言している。

ガウルンとは「九龍」という意味で、九つの国籍を持つ所からきている。
これまでに30人以上の要人を暗殺し、航空機の爆破も最低2回は行っているが、西側の対テロ組織にはほとんど知られていない。
普段こそ気だるげだが、時として断固たる暴力を奮うことから“獅子”に喩えられる。

性格は残忍残虐かつ冷酷非情であり、また非常に狡猾。冷静沈着な思考と直感と危機回避能力に長けており、命を奪う事を楽しむ。
カリーニンですら、最後まで彼に対して完全な勝利を収めることはできなかった。
実は末期の膵臓癌を患っている身であり、その事もあってか生に対する執着が希薄である。そのため死ぬ事をほとんど恐れていない。
しかし病を患う前は「自分の命は地球より重い」と考えており、ムダに死ぬような事は絶対にしなかった。
またヒューマニズムや物質文明に対して一種の嫌悪感を持つ。

戦闘技術についても卓越しており、作中でもトップクラス。
生身の戦闘だけではなくアーム・スレイブの操縦技能にも優れ、さらにはラムダ・ドライバの使用にも長けており、かなめ曰く複数存在するコダールタイプの搭乗兵の中で、最もその性能を引き出していた人物でもある。

過去に傭兵訓練キャンプの教官などをしていたこともあるためか、部下の信任は厚い。
過去には双子のきょうだい(原作小説、アニメ版、コミックス版それぞれで性別も人種も違う)を育てたこともある。
しかし、彼自身は腹心であろうとを前提に送り込むことをなんら躊躇しない。半ば部下を文字通りの意味で「手足」と考えている。


現在はテロ組織〈アマルガム〉に所属しており、『ミスタ・Fe(アイアン)』のコードネームを持つ。
だが、後に組織を裏切って無関係に暴れて不利益をもたらし、さらにサービスと称して宗介にアマルガムの情報を漏らしたりと、組織に対する忠誠心というものは全く持ち合わせていない。
香港の件は単に組織の計画外の行動であるだけではなく、目的が〈ミスリル〉を、もっと言えば宗介ひとりを呼び出すためだけにやっており、このために香港を火の海にしようとしたのである。

アマルガム(水銀合金)のメンバーは、それぞれ水銀と化合する元素名をコードネームに持つのだが、鉄は水銀とは化合しない。
そんなガウルンが最期にやったあれこれのせいで、このコードネームはある種の皮肉となってしまった。
ただ、宗介に組織のことをあれこれ教える際に、それが組織への意趣返しであるとも述べており*1
組織に仕える気が最初から皆無だったとは限らず、何かあった結果そうなった可能性が仄めかされている。

ガウルンがアマルガムの一員となった時期や目的は不明。
他の登場人物、特に後半で出てくる人物の中にはレナードの計画に賛同する者が複数名いたのだが、少なくともこれが目的ではないことは明かされている。


レナードが「狂った世界」や「本来の世界」の話をした時も、疑いはしなかったが関心も示さなかった模様。
それは宗介同様に唯一不変の絶対的ルールである“戦士の不文律”故であった。
宗介は彼を「人間の屑」と断じているが、同時に戦士の不文律だけは守っていた、「命の儚さ」を知る戦士であったと語った。
宗介に言わせれば自分とガウルンの違いはその「命の儚さ」を楽しむか楽しまないかだけだったらしい。
宗介はレナードに対して「関心を持つことが無いから友にも宿敵にもなり得ない」といった風に感じていたが、
その意味では宗介にとっての真の“宿敵”と言えるのではないだろうか。


ゴキブリ並みの生命力


ガウルンを語るうえで欠かせないのが、彼のしぶとさ。
時系列順に語ると、
  • (長編開始前)宗介の狙撃で額を撃たれて生き延びる。
  • 宗介と戦い機体をバラバラに吹き飛ばされ、左足を失うが生存。
(・アニメオリジナルエピソード『故郷に舞う風』でも登場。また機体をバラバラにされたが生き残る。)
  • 自爆して吹き飛ぶ。しかし、ラムダ・ドライバにより、漂流時の負傷も含め四肢を失い機械を使わなければ声も出せない状態になったが、この状況からも生還。

この後、宗介と最後のやりとりをして、今度こそ宗介の銃で死亡。さらに自ら仕込んでおいた爆弾でいろいろと消し飛ばした。

原作では死後もレナードの豹変に関わっていることをほのめかすような描写(レナードの額の傷がガウルンと同じ描写など)がある。
オムニ・スフィア(いわゆる霊界)がある以上、ガウルンの霊的ななにかが影響している可能性は否定できない…といったところだったが、これについては結局明かされていない。


来歴


少年時代にはポル・ポト政権下のカンボジアにおり、当人曰く政権によって虐殺された人間の死体を毎日のように片付けていたらしい。
恐らくは日本人であろう彼がなぜそのような境遇であったかは不明。

その後の経緯や所属等は不明だが、長編開始の6~7年ほど前の時期には、アフガンで「反米の戦士」の訓練キャンプの教官をしていた。
この時期にゲリラをしていた宗介と出会い、またこの訓練キャンプ自体KGBが支援していたことのつながりからカリーニンとの接触もあった。

この後から長編開始までの経緯も(特に原作では)ほとんど不明。アマルガムの一員となった時期についても明かされていない。
はっきりしているのは、ガウルンと宗介・カリーニンが明確に敵対関係になったことぐらい。


作中での行動


時系列的な初登場は、死体の処理をしていた宗介(当時はカシム)との出会い。
当時はアフガニスタンでテロリストの養成キャンプの教官をしていた。カリーニン曰くガウルンたちは訓練と称してゲリラに手を出すことがあったが、この時点での二人は味方でも明確な敵でもなかった。
出会いといっても、傍を通りかかって二三言葉を交わしただけ。だが、この時点で宗介を「人間の弱さを持たない、矛盾のない聖人のような目をしている」と気に入っていた。

その後、ソ連がアフガニスタンに攻め込んでいるとき、敵ASの掃討作戦の指揮を執っていたカリーニンの前に、現地での情報提供者として現れた。
長編で見せる性格や行動原理はこの時点でもそうであり、捕虜三人のうち、気弱そうな一人を残して二人射殺。その一人がペラペラ情報を話すと、全て聞き終えた時点であっさり射殺した。
合理的だが嫌なやり方だ、とカリーニン談。

その後、カリーニンが祖国を見限り、裏切った際には追っ手となる。
この時カリーニンと宗介が暮らしていたキャンプを襲撃し、女子供を含め皆殺しにした。
この報復でカリーニンと宗介がガウルンを狙撃するも、かろうじて生き残る。


数年後、〈アマルガム〉の一員としてウィスパード誘拐を目論み、千鳥かなめを狙うなか、宗介と再会。
コダールを駆ってサベージ搭乗の宗介、M9搭乗のクルツを撃破したが、これがラムダ・ドライバ搭載機の可能性であることを危惧したテッサ達が同じくラムダ・ドライバ搭載機のアーバレストを現地へ送り込み、これに搭乗した宗介と交戦、撃破された。

これにより体の一部を失ったのち、今度はサンゴ礁の島々からなる小国の化学兵器貯蔵施設を占拠し、これを餌に〈ミスリル〉を食いつかせる。
宗介たちの行動より先にまずは米軍の特殊部隊が向かったが、第二世代型AS12機などを擁する彼らを容易く殲滅。
〈ミスリル〉を前にして余力を残し捕虜となることでトゥアハー・デ・ダナンに乗り込み、レナード謹製のプログラムでデ・ダナンのAIダーナをハックしてシージャック。
買収した〈ミスリル〉隊員と共に散々暴れたが、最終的には宗介が乗るアーバレストとの戦闘の末、海上で自爆。

身体の自由を失い、自力では生きられなくなったが、
宗介と最後のやりとりをするため、忠実な弟子であるフェイ兄弟(アニメや漫画は姉妹)を香港で暴れさせ〈ミスリル〉を引っ張りだし、宗介と再会。
任務と感情の板挟みになって悩んでいた宗介の心中を的確に見抜いた。
双子のきょうだいの片方に任せていた千鳥かなめ暗殺は失敗したものの、宗介には殺したと思い込ませ、絶望に追い込む。

東京の〜〜。女〜〜。もう間に合わない〜〜。あ、かわいそ〜〜〜。カナメちゃ〜〜〜ん。いい子だったのにィ〜〜〜
ガウルン……っ!
そぉだ、俺が殺した! さあ憎めっ!!

こうしてガウルンはキレた宗介に射殺され、死後に起爆する爆弾で死体も吹き飛んだ。
宗介は反射的に部屋を飛び出し生き残ったが、それさえもガウルンの思惑通りであり、絶望したまま生き続けるという“呪い”を残した。
……が、その呪いはその場にやってきた千鳥かなめによってあっさり洗い流された。


【評価】

残忍な性格に高い知性と技量を持っており、小物化もしないため、度々「最強の敵キャラといえば」的な話題では名前が上がるほどの実力者。
最近では“実は理由があって悪者やってる敵”が敬遠されがちだが、こいつは(作中で描写されている限りは)心底悪党な辺りも評価されている。
出番は長編の半ばで終了するが、実質的に宗介の最大最強の敵だった。
それは、『フルメタル・パニック!』という作品のテーマそのもの――戦いしか知らない男が平和な日常に回帰する――を否定する存在であったからだろう。



ゲームにおける活躍】

スーパーロボット大戦シリーズ』においても乗機の強さもあって、かなりの強敵。
特に恐ろしいのが、登場するのが序盤ということ。
これはつまり、自軍の戦力が十分に整っていない状態で戦わねばならないということであり、強力な機体や精神コマンド乱発でゴリ押しすることすらままならない。
単純な数値だけでは測れない強さを持っており、体感的な難易度はラスボス以上とさえ言える。

スーパーロボット大戦J
最終的に自爆するため戦域から離脱しないといけない。
ガウルンの憎まれ口は気分のいいものではないのでさっさと戦艦を離脱させよう。

スーパーロボット大戦W
無印は普通に撃破される。その後は前述の通り。
戦闘では最初のターンに熱血、必中、集中、覚醒をかけ、以降毎ターン集中と覚醒を使うという鬼畜っぷり。
さらに使用機体はラムダ・ドライバを搭載しており、攻撃力増加にダメージ軽減を備えた鬼畜性能。
その強さは生みの親(作者)さえ怯ませた。
ちなみに、作者はどんなバリア消滅させるサイレンを持つボルフォッグで乗り切ったらしい。
賀東「ふふふ。ボルフォッグ、可愛いやつ……」

あまりの鬼畜性能っぷりに「ラスボス熱血厨二病や批評家より強い」と評判。
ちなみに前述の集中・覚醒はとある裏技で消すことができるが素でも強すぎるので周回プレイでもなければあまり意味がない。
ある意味一番恐ろしいのはコイツに躊躇いもなく突っ込む某槍と、ガウルンが「自殺願望の塊」とまで評価するカガリの無謀さだろう。
先述の通り宗介との一騎打ちで敗れるが、その最期は……
「楽しかったぜ、カシム…」

第3次スーパーロボット大戦Z 時獄篇
JやWで大活躍した実力を今作でも発揮、キリコスコープドッグを撃墜したりした。

スーパーロボット大戦V
フルメタの再現が『TSR』終了後からであるが、夏姉妹共々死亡していない設定で登場。原作では叶わなかったレーバテインとの対決が実現した。


余談


時折宗介に対して異常な拘りを見せ、「愛してるぜぇ、カシムゥ……」などイカれた発言をすることもある。
どういう意味合いなのかは明言されていないが、このせいかギャグでは若干ホモキャラ化しており、
OVA『わりとヒマな戦隊長の一日』の初回特典ドラマCD『ありえない授業』では宗介とのやりとりで宗介が「どこを触っているんだ、この変態め!!」と叫ぶシーンがあり、
フルメタ外だと、アニメ版の『らき☆すた』ではガウルンと宗介のBLとおぼしき同人誌が登場したことがある。
なおらき☆すたのこの回、脚本は賀東招二、つまり原作者である。




『本音を言ってみろ。俺の項目を編集するのは楽しいか?』

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年06月01日 19:31

*1 ここでガウルンが目的としていた「宗介への『呪い』の植え付け」と漏らした情報とに何か関係があるわけでもない