ホワイト企業

登録日:2014/05/17 (土) 00:01:17
更新日:2025/04/19 Sat 23:08:21
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ホワイト企業とは、「法律を守らず社員をこき使う企業」ブラック企業の対義語として生み出された概念である。
だが、ただ単に労働関係の法律をしっかり守って運営しているというだけでは、ブラック企業と言われないだけでホワイト企業と言われることはあまりない。

法律を守るにとどまらず、企業風土も居心地がよく、社員に対しても福利厚生が厚く、仕事は厳しいこともあるが決して生活を無視した無理難題を言わない。

そういった条件が整ってこそホワイト企業と言われるのだ。

まさしく理想の職場である。

そんな理想の職場なんて、東大卒の超エリートとか特殊な資格持ちでないと就職できない超優良企業ばっかなんじゃねーの?
と思うかもしれないが、必ずしもそうとは言い難い。
また、ホワイトな企業運営はただ単に企業の負担を増やすだけでなく、企業のメリットになるという面も確かにあるのだ。



参考例



とある実在の飲食会社Z社の例を参考にして頂こう。どこの会社かは検索すればすぐわかるが、ここではあえて出さないことにしておく。
というか、こんなのを検索してる手間も惜しむようでは、ブラック企業に簡単に引っかかるぞ?
この会社で、離職率は現在10%を切っている。
一般に大卒でも3割(短大・高卒だと4~5割、中卒だと6~7割にのぼる)が離職してしまうと言われており、さらに飲食業界と言えば、離職率も高くてブラック企業の巣窟…というのが常識である。

ところが、Z社は、特段高級志向を売りにしている訳でもないのにホワイト企業と言うことで取り上げられたことがあった。


  • 採用試験は流石に本社かオフィスに来るのが原則であるが、事情次第で面接官が志願者の所まで面接にやって来てくれる

  • 家族がいると単身赴任が日常茶飯事・・・と思いきや、ここでは家族連れ転勤もできるし、引っ越し費用を負担してくれて住居探しも会社でやってくれる。

  • 年間の休日はそこまで多いとは言えないが、完全週休2日で季節によって特別休暇もあり、休みの量が少ないと上から取った方がいいんじゃない?とアドバイスが来る。


くどいようだが、Z社は実在の企業である。
もちろん、いくら経営が苦しかろうと、法律を守るという意識を持たなければならないのは言うまでもない。
だが、法律上の水準をはるかに通り越した労働者保護が行われているのはどういうことなんだろうか?


実はZ社も、かつてはここまでホワイトではなかった。

こうなったのは、ブラック企業の持つ「違法であるという以外の問題点」を、かつてZ社はモロに実感することになったためだ。

Z社も、以前はどんどん店舗を増やし、利益を出そうとしてきたという。
だが、それに人を育てることが追いつかず、
既存の社員達に休日出勤や長時間労働をさせるというブラック企業にありがちな方法で乗り切ろうとしてしまった。




そして、ついにZ社にしっぺ返しがやってきた。と言っても、それは労働基準監督署でも過労死裁判でもない。


社員たちが過酷な労働や転勤ラッシュに耐えられなくなって辞めていくことが多発したのだ。
離職率は4割を超えてしまい、せっかく増やした店舗も社員不足で閉店に追い込まれる例が続出した。



企業にとって、せっかく自分の会社に入って一人前に育てた社員が辞めてしまうのは、彼らを育てるための投資、
つまり、いてもあまり役に立つことができない新人に払う給料や、その新人教育のためにかけた手間が無駄になるということである。
代わりの人員を新しく雇っても、改めて手間暇をかけて、役に立てない新人達の給料をきちんと払って育てなければ使えない。

こうして大混乱に陥ってしまったZ社は、

「雇った社員には長くいてもらい、自分達で教えたことをきちんと会社の中で生かしてもらう」

という考え方の重要さを痛感するようになった。

そして、採用に当たって「社員は家族」というような甘い言葉で釣ったりせず、内実を理解してもらって勤務してもらうことにした。
ブラック企業でなくとも、
「せっかく希望の業界に入ったのに、こんなはずじゃなかったなぁ…」
と言う人たちに辞めていかれては同じだし、下手をすればそこからブラック企業の風評もたちかねない。


福利厚生が厚くなっていったのも、別にホワイト企業として名前を売りたかったわけでも、慈善事業をやろうとしていたわけでもない。
せっかく自分たちが投資して育てた社員に辞めてほしくないという思いが基本だったのである。


なお、Z社は勤務自体が楽だという訳では決してないと公言しているので注意するように。
育てた社員に辞めてほしくないということは、社員教育に時間とコストがべらぼうにかかる、それだけ難しい仕事を要求されるということでもある。



Z社の例だけではない。


ブラック企業と言う風評が立てば、優秀な人材は志願してこない。
他の仕事にあぶれる人や、ろくに情報収集もせず就職活動するような、自分で物を考えることのできない人ばかりが集まる。
社員たちもギスギスして連携がうまくいかなくなったり、健康状態を悪くしたりしてミスや辞職がどんどん増え、サービスは落ちていく。

ブラック企業は当のブラック企業自身をも蝕んでいくのだ。
もっとも、これは裏を返せば、そのような質の悪い社員でも、
教育に大した手間もかからず、頭数さえそろえばいい業種であればブラックでも業務は回せてしまうということでもあるのだが。

…そして耳の痛い話だが、ホワイト企業の選考には偏差値や所有資格、単位、留年理由、職歴や所有技能などで足切りがあり、
その上で「ホワイトな待遇を与えるに足る人材か?」という優秀な人事担当者からの厳しい選考が行われるのである。
ホワイト企業は調べ尽くしたのにそもそもスタートラインにすら立てない、なんて事は割とよくあることである。
それでも、新卒ならば資格や技能より「将来性」を目につけられ、偏差値も多少は目を瞑られるため、即戦力を求められる中途採用よりもホワイト企業には断然入りやすい。
せっかくの大学新卒枠を企業研究を疎かにしてブラック企業に消費したなんてことは絶対に避けよう
最も、若い社員ほど体力がありなにかと扱いやすいため、強引にあることないこと主張して底辺企業・ブラック企業に入社させようとする悪い大人もたくさんいるのだが…

また、社会人アニヲタは職歴は大切にしよう
ブラック企業にも長く居続けろという意味ではなく、職場で何かしらの特殊な経験を身につけろという意味でである。
これはあくまでも極端な人間の例だが、営業に開発に設計に営業にと仕事を変え、いたずらに転職(キャリアチェンジ)を繰り返した結果、プロフェッショナルと呼べる分野が何ひとつ存在しなくなってしまった
彼は、学生時代に学んだことをすっかり忘れ、ニュースなど見なくなってから大学卒業後の社会一般常識も危うくなり、
組織の上でも誰かの上に立ち指導した経験もなければ、自分以外の他人のスケジュールを建てた経験もなく、
外国語の勉強も怠たり、外国人と関わりもしなかったためにTOEICの点数は平均以下にまで低下、
中身が新入社員とほぼ変わらないまま中年になってしまったのだ。
その男性はせっかくホワイト企業に入社内定はもらえたものの、
能力があるものが高く評価されてより良い給料を貰うというホワイト企業のしたきりに従い、仮採用が終わって役職を与えられず平社員からスタートという目にあってしまった。

そして、日本の企業では自分は受け入れられないからと安易に外国に逃げようなどと考えるのは辞めよう
近年、旅行代理店やYouTuberの無責任な喧伝により、ビザを取得して外国に出稼ぎに向かう若者が急増。
特に外国人に対して懐の広いカナダとオーストラリアが人気である。
ただ、外国人にも懐が深いということは、国や家族からの支援も見込めないガチで生活のやばい人がたくさん募集に応募してくるということであり、その人たちとの採用競争に勝たなければならない。
オーストラリアではアルバイトですら競争倍率は100倍を超え、正社員の募集している旅行代理店に至っては500倍というレベルである。
そんな中で、まともに英語も話せず社会人経験すらない、ただただ目前の辛い出来事から逃げるためだけに日本から海外に渡った若者がそんな競争に勝てるはずもなく、日本人の若者が炊き出しに並んだというニュースが報道される有様であった。


ブラック企業を批判するのは確かに必要なことである。
他方で、こうしたホワイト企業の良さが経営者側にも広まっていくことや、社会全体でホワイト企業に温かい目を向けていくこともまた、
ブラック企業問題を解決するために重要なことなのである。


ホワイトなのにブラック!?

ホワイト企業の中にもブラック企業は存在する。
何を言っているのかさっぱり分からないという人もいるかも知れないが、以下の例で挙げられている会社は、「世間一般ではホワイト企業」なのである。
ホワイト企業で働いている人からしたら「何を今更?」「これって常識じゃない?」と首を傾げるかもしれない

社員には成長する環境は与えるが、成長しない社員にはとてつもなく厳しい

新人教育に社員教育制度、そして資格試験の勉強をする時間まで与えてくれるのだが、
一度教えたことを二度も三度も繰り返し聞いてくる社員や、同じ過ちを繰り返す社員には、「やる気がない」として切り捨ててしまうのである。
後述のサブカルで触れられている「冗談でホワイト企業と呼ばれている悪の組織」が、戦闘員を次々と使い潰しているのと同じ理屈である。
年功序列が行き届いている昔ながらの企業だったら、上司の説教など俯きながら適当に相槌を打つだけで最悪やり過ごせるかもしれないしそんな社員でも出世出来るかもしれないが、この手の会社はそんなことを許してくれない。

仕事の出来不出来は社員の性格や向き不向き問題である場合も多いため、時間にもお金にも猶予がある大きな会社であれば「どこか別の部署・別の業務」で再挑戦させてくれることもあるが、
小さな会社であれば窓際や追い出し部署に配属、試用期間中であればそのままクビなんてことも珍しくないのである。


要領よく動くことを強要される

システムの自動化やら効率化やら5Sやらを推し進められ、効率悪く作業することを徹底的に糾弾される。
加工機械が稼働している間、ちょっとの間に手の空いた時間、ぼーっとしているなんてことは許されない。
「給料が上がらないからやる気が出ない」という泣き言も許されない。
定時内で働かせて残業を許さない以上、労働時間の中で最大限のパフォーマンスを強要されるのだ。
社員研修の時点で「その日の予定を組め」「マネジメントしろ」「なぜ予定通り動けなかったか説明してみせろ」などと非常にハードルの高いことを要求されるのである。
大学の研究やサークルで入社前から既にコスパ、ダイパの意識を経験している大学生も多く、「周りの人は出来るのに自分は出来ない」という形で病んでしまい、教育期間中に退職してしまった人もいるくらいである。

ドイツでは徹底的に管理職の指導・矯正を行い、日本とGDPを逆転することに成功しているが、一方で要領よく作業しない作業員・作業させない管理職には、とてつもなく厳しい
そんな管理職の気苦労も梅雨知らず、「ドイツが羨ましい」だの呟いている人は一度管理職についてみたらいい。全然動かない指示に従わない部下の責任を上司の責任にされるのだから。
だからみんな年齢を重ねても管理職になりたがらないって?それはそう

無論、何もせずに効率よく動かせ続けたら倒れてしまうため、
社員のモチベーション向上のために福利厚生をしっかりさせたり、コーヒーメーカーを設置するなど職場環境を良くしたりする企業もたくさんある。

「当たり前」のハードルが高すぎる

些細な計算で電卓を持ち出したり、専門用語を聞かれて検索をかけたり、英語文書に翻訳アプリを使うことなど、
上述した「効率よく動く」ため、そのようなものに頼る人間をとことん嫌うのである。
酷いものになると「この工場で働いている以上は、例え工学部卒でも電気電子の知識を持っているのは当然」と、専門外のことを要求されてしまう場合もある。
故に、「学歴のある人間の方が偉い」と勘違いし、学歴でマウントを取ってしまう歪な人間も生まれてしまうわけだが…

また、人手不足や急な欠員などに対応できるよう「作業の分業化」が推し進められているところも多く、
「工場に技術者として入社したのに、来客対応や備品の購入手続きをさせられる」「カメラスタジオにメイク担当やカメラマンとして入社したのに、来客対応や金銭取引をさせられる」ということも起こり得る。
他の会社であれば社長や一部の社員が専属でやっていることが「全員出来て当たり前」と容赦なく振られてしまうのだ。

業務内容がコロコロ変わる

常に流行に乗っかって新しい仕事をさせられるため、長年自分が温めたノウハウを他人に引き継がせろ、並行して新しい仕事を覚えろ、なんてことを要求されるのである。

分業化にも言えることだが、「同じ作業しかしたくない、出来ない」という人は出世させてくれない。昇給させてくれない。

なお、「常に安定して顧客を抱え、盤石の企業基盤を持った、昔ながらの企業」というのも、この日本には無数に確かに存在する。
「もう新しい作業は覚えられない、やりたくない」という人は、その中からホワイト企業を探してみると良いだろう。
ただし、古めかしい企業風土や社員の相手をすることは覚悟するべきである。


「貧乏くじ」に押し付ける

「他の人が効率よく動くため」に、他人の仕事をたくさん押し付けられた人が「自分の仕事」が出来ず、結果として自分の評価が下がりながらも残業や休日出勤をする羽目になったり、
作業分業化の弊害で、「この人もこの作業が出来るから」と1人にあらゆる作業を押し付けたりと、
「効率」を上げるために誰がの労力や社内評価を犠牲にすることがまかり通ってしまう。
ターゲットは無論、コミュ症で普段扱いにくい奴。

当然、貧乏くじを引いた社員は、全く評価されない中で残業やら休日出勤やらする羽目になり、「どこがホワイト企業だ」「もう辞めたい…」と不満を漏らすことになる。

…とはいえ、上記のことはホワイト企業も問題視しており、外部から講師を呼んでアドバイスを求めたり、中途採用でその手の問題解決に経験のある人事部を雇ったりして解決を試みているところも多数存在する。
決して何もしていないわけではないことをここに記しておく。



サブカルにおけるホワイト企業

さて、堅苦しい話はここまでにして、当Wikiらしくアニメや特撮の話に移ろう。
以前から「悪の組織には案外ホワイト企業が多い」という俗説があるが、これは先のZ社の例から説明がつく。
悪の組織は、官憲やそれよりはるかに強大なヒーローと戦わなければならず、また組織の目的が世界征服だったりすると、全世界を敵に回さなければならなくなる。
このような難事業を成功させるためには優秀な構成員が必要であり、彼らに裏切られないために、福利厚生を充実させなければならないのである。
ショッカーのように構成員を洗脳すればいいのではないか」と思われるかもしれないが、
幹部や科学者、技術者等、職務上洗脳不能な構成員がいる以上、彼らが辞めないよう、保護しなければならない。

フリーザ軍を例にとってみよう。


  • 弱い部下もフリーザはしっかり顔を把握
  • 全兵士にアーマーを配備
  • 弱い部下には武器まで配備
  • 回復ポッド完備
  • ミスをした部下にも挽回の機会が与えられる
  • フリーザ本人も部下のことを「さん」付けし、敬語で接する
  • 変な提案も一蹴せず、やんわりとオブラートに包んで断る
  • フリーザ自ら現場に出て確認する
  • 容姿や種族で差別せず実力できっちり上下を決める
  • 約束の日までノルマを達成できなくても叱るどころか「あと三日ぐらい延ばしても良いですのに」と寛容に接する。

などなど、ホワイト企業&理想の上司として語られることが多い。
まあ、たとえ部下でも殺すときは容赦なくぶっ殺すけど


同組織の業務内容は「星の地上げ」という、対象となる惑星の全てを敵に回して行うものであり、
それに従事する構成員は、様々な惑星から集められた超優秀な戦士達である。
世界征服を日常業務としてやっているようなものであるから、当然ながらハードな仕事であるうえ、
超優秀な戦士は各惑星の軍隊の外人部隊、フリーザ軍の軍隊、民間軍事会社、新入りの教官、果ては警備会社(それもボディーガード等の上級職)等、引く手あまたである。
もしもフリーザが彼ら戦士達に不当な扱いをすれば、彼らは反乱やそういった他所の組織に逃げて行ってしまうし、
その結果組織全体の戦闘力が低下、地上げ事業に支障をきたしてしまう。場合によっては他所に逃げた戦士が自分達の前に立ちふさがるといった事態もありうる。
そのため、フリーザ軍はホワイト企業になる必要があったというわけである。

このほかにも、
等、半ば冗談で「ホワイト企業」と呼ばれる悪の組織が存在する。


近年、元ブラック企業戦士の主人公が国王、領主、社長になるという系統の作品がテレビや漫画、小説などで増加。
「俺はこんな酷い思いをしたから、他人にはそんな思いさせたくない」という主人公の優しさによって成り立っている物が多い。
そんな主人公の優しさに触れて、優秀な人材たちが集まっていく…というのがお約束である。


逆に特撮界のブラック企業と言えば、
ショッカーをM&Aして「ゲル・ショッカー」とし、ショッカー側幹部を全員首切り(物理)したゲルダム団であろう。
気になる人は「ゲルショッカーの掟」でググってみよう。
というか、ショッカー自体(特に戦闘員は)福利厚生のふの字もない程ブラックである。)



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最終更新:2025年04月19日 23:08