進撃の巨人(実写版)

登録日:2015/09/22 Tue 00:22:57
更新日:2025/04/15 Tue 11:20:10
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この世界は、残酷か―――



本作は、『別冊少年マガジン』で連載されており2013年からアニメ化もされた、諌山創原作の大人気漫画『進撃の巨人』の実写映画作品である。
2015年8月1日に前編、9月19日に後編『エンドオブザワールド』が公開された。

●目次


【概要】

監督は、平成『ガメラ』シリーズの特技監督や『日本沈没』、『巨神兵東京に現わる』で知られる、日本の特撮界に精通している樋口真嗣
脚本はマニア御用達の映画雑誌『映画秘宝』のメインライターでもある映画評論家・町山智浩と『ガッチャマン』の渡辺雄介。
音楽は『新世紀エヴァンゲリオン』の鷺巣詩郎。
主題歌は若者の間で人気のグループ、SEKAI NO OWARI

ちなみに、前述のように町山氏は映画評論家脚本業は未経験だった
しかし諫山先生は「学生時代に町山氏の言動に反感を抱いたため批判材料を見つけようとラジオ番組を聞き始めたところ、一転していつの間にか熱烈な町山ファンと化した」という過去から、ぜひ町山氏に本作の脚本を書いてほしいと熱望。
断る町山氏だったが、それでも諫山先生は何度も頼みにくる上に、一緒に来る人物の役職がどんどんグレードアップした末、最終的には講談社の社長まで来たために断ることも難しくなって引き受けたという。
そして実写化にあたり、町山氏が原作4巻あたりまでに沿った脚本を作成したところ、諌山先生が直々にその無難な脚本を却下し、「原作改変しまくった脚本に書き直してくれ」というオーダーを行った結果、大量の原作改変が行われた本作のストーリーが完成する
……という、実写化としてある意味ありえない方法でストーリーが作られているため、原作レイプとは言い難い。
ファンから見たら原作レイプそのものに見えるしその通りと言いたくなるだろうが、それを主導したのは当の原作者で、しかも本人は本作の内容に大満足しているのだから……
一般的な原作レイプの実写化の経過は、基本「原作に忠実な脚本にしてくれ」と原作者が要望したのに脚本家がガン無視して原作改変しまくった脚本を書く、と言う形になる訳だが、本作は完全に正反対なわけである。

そも、実写化にあたっては原作の内容やキャラクターの性格の改変が叩かれるのが常。だが本作に限ってはそれらの殆どが原作者からのオーダーに基づくもので、言うなればファンのために作られた作品ではなく、原作者「だけ」を満足させるための実写映画とも言える。誰が呼んだか原作者による「壮大な芸術作品」。そして、試写会では頭を抱える脚本家の隣で爆笑して満足した原作者の姿があったとか……。
ちなみに町山氏は過去に「実写化の際に(監督や脚本家の個性を殺してまで)原作と全く同じものを作ろうとするのはいかがなものか」という趣旨の発言をしており、前述の通りの諌山先生は町山氏の熱狂的ファンなので……つまり「お前が始めた物語だろ」ということであるが、流石にここまでされる謂れはないだろ

なお、本作制作の際原作者から制作側に「原作後半のプロット」がある程度提示されたらしく、それを踏まえて原作後半と本作を比較すると面白い共通点が見えてくるとかこないとか。
これらの裏話が認知された結果と、かつ原作後半の話との共通点などからスタッフはわりと同情されることが多くなった他、現在では一部で再評価すら進んでいる状態でもある。
おかげで町山氏に町ヴァーさんなるアダ名が付いたり「町山氏は諌山氏の芸術作品にされた」とか「原作レイプどころか原作による逆レ」などと言われたりしている。


【世界観】

原作では中世ヨーロッパをもとにした世界だったが、本作では現代社会のような文明が巨人との戦争で崩壊し、退化した文明の下で復興したという設定。
わずかに旧文明の技術も残っており、銃器やガソリンを使った自動車(劇中ではトラック、装甲車)も使用している。
さらにモンゼン地区には不発弾や墜落したヘリも残っており、軍事色が強い。
ちなみに、原作後半では「壁の外の技術レベル」は銃器が普及しモノクロ写真・飛行船も存在する20世紀初頭に近い水準だと判明している。


【ストーリー】

100年以上前、文明社会に突如出現した、人間を食う「巨人」。
この巨人との戦いの中で人類の半数が犠牲となり、激しい戦いで文明は崩壊した。
残された人間たちは、巨大な壁を三重に渡って築き上げ、内地に文明を作り上げることで平穏を取り戻した。

───しかし。100数年後の現代、その平穏は一瞬で崩れ去った。
突如現れた想定外の超大型巨人により外乃壁は破壊され、内側に入り込んだ巨人たちの猛攻で壁の穴のすぐそばの町モンゼンは壊滅。
そこに住む普通の少年エレンは、想い焦がれていた幼馴染の少女・ミカサを、殺戮の中で失ってしまう……。
農場地帯は巨人に占拠され、人類は二番目の壁・中乃壁へと後退し、文明は衰退した。

それから2年、若者を中心とした、有志の志願者を集めて外乃壁の修復作戦が決行される。
その中には、想い人を亡くし復讐心を抱くエレンの姿もある。
果たして、壁修復作戦は成功するのか。そして、巨人がこの世界に出現した秘密とは……?


【登場人物】

原作ではドイツ系の名前がほとんどだが、舞台設定上日本人ということになっており、原作と同じ名前が付けられているのは一部の主要人物に限られている。

エレン
演:三浦春馬
モンゼン地区に住む普通の少年。
原作の人並み以上の勇敢さのある精神力はなく、殺人の経歴もない。
ミカサには片想いしている。
平穏な、だが停滞した生活にうんざりし喧嘩に明け暮れ、いつの日か壁の外に出る(悪く言えば、逃避する)ことを夢見ている。
しかし超大型巨人の襲撃で故郷モンゼンが壊滅し、ミカサを亡くしたと思い込む。
巨人への復讐心を抱きながら外乃壁修復作戦に加わるが、別人のようになってしまったミカサと再会し絶望する。
その後の戦闘で巨人化し、勝利を収めた直後処刑されそうになった直後、謎の巨人に拉致される。
そして世界の秘密を知り、自分に課せられた使命を知る。

彼のキャラの改変に関しては、諌山氏のオファーによるもの。

●シキシマ
演:長谷川博己
人類最強の隊長。
ポジションとしては原作のリヴァイだが、あくまでポジションだけでキャラとしては全くのオリジナル。名前も異なる。
何故かリンゴを齧ってキメ顔する気障な男で、自分が兵士として育てたミカサを可愛がり、エレンを「飼い馴らされた家畜」と見下すような態度をとる。
その後エレンを拉致した組織の一員として再登場し、先ほどとは一転、エレンを世界の救済の戦力として彼を唆す。
しかし本当の目的は別にあった。
なおその立ち位置から、リヴァイよりむしろ原作後半で登場したエレンの歳の離れた異母兄「ジーク」に見えてくるという意見も存在する。

ミカサ
演:水原希子
原作とは異なり(当初は)ごく普通の少女。
巨人襲撃の際に赤ん坊を助けようと人込みの中に紛れた直後行方不明になり、死亡したかに思われていた。
だが実際はシキシマに拾われ調査兵団の優秀な兵士として成長し、最強の班長として恐れられている。
エレンに対しても当初は冷たい態度を取っているが、本心では想いを諦めきれていない。

アルミン
演:本郷奏多
原作同様、頭が良く心優しい少年。
原作とは違い黒髪。
原作ほどの弱虫さは低減され、積極的に発言することが多い。
機械いじりが趣味で、近代兵器が多数登場する実写版では発明面で役に立っていた。

ジャン
演:三浦貴大
安全な内地区で暮らしていたが、好戦主義な父親に強引に壁修復作戦に参加させられた。
原作以上に毒舌を振り撒いている印象が強く、割と中盤までエレンとは険悪な仲だった。
原作同様、過酷な戦場下で徐々に戦士として覚醒していくが…。

サシャ
演:桜庭ななみ
原作とは異なり、おっとりした真面目な性格。
だが食い意地が張っているのは相変わらず。親戚夫婦からその食欲で疎まれているようだ。
原作と同じく弓矢の達人で、かつてはシロという犬や村の狩人達と共に野鳥を狩っていた。
シロとは壁が破壊された日に離れ離れになってしまった(シロはサシャが置いて逃げた弓矢の回収へ向かった。尚、その弓矢は後にハンジが壁外調査の際に発見してサシャに返却した)
まさかのアルミンとフラグが立った(アニメのEDでもそれっぽい描写がある)。

●サンナギ
演:松尾諭
五兄妹の長男で、両親のいない中の大黒柱。
大柄な体格に気さくな性格の兄貴分で、原作における初期のライナー・ブラウンに近い(後篇の劇場パンフレットによると、町山氏は当初ライナーを出そうと考えていたが、原作でライナーが巨人化能力者であることが判明したため、別キャラクターにしたとのこと)。
戦闘ではその体格を生かして巨人を転ばせたり、で攻撃したりした。

●ヒアナ
演:水崎綾女
映画オリジナルのキャラクター。
赤ん坊を抱えた未亡人で、子供を養うための資金が欲しくて作戦に参加した。
情緒不安定気味で作中では無断行動により部隊を危機を招いてしまう。
ミカサとシキシマの仲に傷心気味のエレンと傷の舐め合いとして彼を誘惑するが、その直後無惨な最期を迎える。

●フクシ
演:渡部秀
●リル
演:武田梨奈
原作のフランツとハンナにあたるキャラクター。
ドラマでは二人が婚約に至るまでが描かれた。
作中ではB級ホラー映画のお約束的に待機中だというのに性行為に及ぼうとした。
フクシの死後、爆弾を積んだトラックが盗まれた際、半狂乱になったリルはさらにそれを強奪し、巨人の群れに向かって特攻。
結果、作戦に使う予定だった爆弾は失われてしまう。

●ハンジ
演:石原さとみ
恐らく、今作で原作に最も忠実なキャラ。
映画では狂気寄りになっている節があり、やけにオーバーアクト。
巨人だけでなく、失われた文明の兵器を見つけてヒャッホイした挙句、大爆発からもギャグ的に生還してしまう。
一方で巨人から自由を勝ち取ろうという思いは強い。
原作とは異なり、彼女が立体機動装置を開発した。
ネット配信では彼女主役のスピンオフドラマが製作されている。

●ソウダ
演:ピエール瀧
原作のハンネスにあたるキャラクター。
外乃壁崩壊後落ちぶれ、年配ながらも壁修復作戦に参加。
実はエレン巨人化の秘密を知っており、両親に代わって彼を育てていた。

●クバル
演:國村準
軍の士官で、外壁修復作戦の総責任者。
一見政府に忠実な人格者のように思えるが、巨人襲撃の際に外壁修復員を置き去りにしたりするなど傲慢な描写が目立つようになる。
そして巨人化したエレンを人類の敵と断じ、周囲の制止も聞かずに処刑しようとするが、直後現れた巨人の攻撃により死亡した。
と思われていたが…。

●ユノヒラ
演:神尾佑
ドラマに登場する訓練兵団の教官。
原作におけるキースの立ち位置でサシャに手を焼いており、彼女に自分の食事を全て食われてしまう等の災難にあう。
また、イズルと共に暴走しがちなハンジのストッパーになっている。

●エレンの両親
演:草彅剛/緒川たまき
エレンが幼い頃に事故で死亡したと聞かされていたが、実は政府により逮捕されていた。
その直前、旧文明の研究をしていた父は息子のエレンを実験台にある薬を投与する。
彼ら曰く、エレンの他に「上の子」がいるらしいが…。

●イズル
演:平岡裕太
dTVオリジナルドラマ『反撃の狼煙』にのみ登場する統制局の予算管理官。
原作におけるモブリットの立ち位置でハンジの巨人研究に協力し、彼女に振り回される苦労人。
立場上ハンジより上だが彼女を尊敬している。また、ハンジが着けているゴーグルは彼が贈った物である。
ハンジが捕らえていたビーンに対して取った行動が立体機動装置開発のヒントになった。


巨人

巨神兵東京に現わる』でも発揮させていた、日本の古き良き特撮・最新鋭のCG技術を結集した本作最大の見どころである。

●超大型巨人
原作の看板ともいえる巨人で、今回の実写映画版では120メートルもの体躯を持つ。
文楽の技術を応用し原作を忠実に再現した、特撮技術の総決算として襲撃シーンは迫力がある。
原作とは異なり、通常巨人と同じ「軍勢」には属していない。
原作の超大型巨人を超える体格、口に爆弾を入れられるという流れから、ロッド・レイスの巨人の要素も含んでいると思われる。

●エレン巨人体
原作同様、巨人に飲み込まれたエレンが腹の中で覚醒した。
原作では初陣以外負け続けている印象があるが、今作ではあの鎧の巨人(にあたる巨人)にも格闘勝ちしている。

●(名称不明)
髪型こそ違うが原作の「鎧の巨人」にあたる。
原作同様、超硬質の皮膚を持ち素早い動きによる抜群の戦闘力を持つ。

●通常巨人
前編序盤の捕食シーンは今作きっての恐怖シーン。
基本的に特殊メイクを施した役者が演じているが、小型の中には原作に登場する一体を忠実に再現した頭部を持つものも。


【余談】

今作の企画は、当初『嫌われ松子の一生』、『告白』等の中島哲也監督の下で映画化される予定で、映画化発表当初はその話題でもちきりだった。
しかし、あまりに膨大になった予算と構想、作品が抱えるビッグネームのプレッシャー等により中島監督は降板し、樋口監督に白羽の矢が当たった。
中島監督の構想だと現代の東京に突然、人を食う巨人が現れるという、よりオーソドックスな怪獣映画に近いものだったらしい。
なお中島監督は降板した後、次に映画化を決めていた『渇き。』で鬱憤を晴らすかの如く個性を爆発させた怪作を撮っている。

ロケ地は長崎県世界遺産にも選ばれた旧炭鉱都市・端島(軍艦島)








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最終更新:2025年04月15日 11:20