銀河に名立たるハルトマン

登録日:2016/05/27 Fri 00:40:10
更新日:2025/07/16 Wed 19:27:40
所要時間:約 7 分で読めます





「銀河に名立たるハルトマン」とは、ゲーム『星のカービィ ロボボプラネット』のBGMであり、作中歌。
作曲は安藤浩和氏。作詞は後述。


概要


ゲーム側の『星のカービィ』シリーズでは初となる歌詞付きの音楽。
実際にカラオケ「JOYSOUND」でも期間限定の配信が行われ、作中ではキャラクターが歌う場面も存在するが、どちらもキャラクターボイスではなく歌声っぽいメロディーで奏でられている(後述)。
『ロボボプラネット』までの本シリーズにおいて古くは『夢の泉の物語』のオリジナルサウンドトラックで宮田まこが歌うボーカルアレンジver.に溯り、直近では10年以上も前のテレビアニメ版のOP・ED主題歌(+αでエアロビ天国も)…と数は少ない歌詞付き音楽だが、本楽曲はそんな中で久々に作曲された形となる。


本作に登場する架空の組織「ハルトマンワークスカンパニー」のメインテーマソング。
社員の一部であるラボトリィ達は毎朝これを歌い、勤務に励むのだとか。
オープニングムービーに始まり、主に各レベルの通常ボス戦で流れる原曲「VS.悪のカンパニー」(理由は後述)と、原曲をカラオケ向けにスローテンポでアレンジしたバージョンなどが存在する。
ボス戦では相手が改造されたメタナイトだろうとクローン大王だろうと、特別なテーマを流すことなく一律でこれor一部フレーズを使用したテーマが使用される(例外はメタナイトボーグ改、D3砲、裏モードの一部ボス)ため、
彼らが今は「悪の組織の手先」であり、自分はそれと戦っているのだ…という実感が自然に湧く。
それ以外でも様々なBGMに多数使われているが、発売前から公式サイトで聴けるステージ1-1「キカイのせかいのだいぼうけん」でも最初のステージっぽくのどかにアレンジされたバージョンが使われるため、あまりのギャップに「この曲かよ!?」と思ったプレイヤーもいるだろう。


さて肝心の内容は、社歌と言うよりか、社長のプレジデント・ハルトマンの人物像が読み取れる異端の内容となっている。
歌詞を丸々掲載すると著作権侵害にあたるおそれがあるため全部は載せられない。後は各自実際にプレイするか検索するかして頂くとして、1~3番それぞれの内容をざっくり要約するとこんな感じ。


1番:ハルトマン賛歌
2番:ブラック企業丸出し
3番:カネ


どこが社歌なんだ!


1番にはハルトマンそのものを支配者に祀り上げるようなフレーズが多い。
支配欲が極めて強い彼の人柄や、貪欲なまでに星の資源を奪い尽くす底無しの欲望が見えてくる。

2番は捉え方次第ではブラック企業ともとれる物騒なフレーズが見られる。
また「青き翼」「桃色の花」という、メタナイトとカービィの暗喩と思われる変わった部分も。
メタナイトは前述した通り、確かに全身改造済みの「メタナイトボーグ」としても洗脳されてしまっており、「心その身~」と非常にマッチしている。

3番にはカネの暗喩らしきフレーズが。悪の企業のトップらしい思考である。
その一方で歌詞は今までと少し毛色が違い、何か意味深。どういう事なのだろうか。
なお、3番に限りゲーム内では収録されておらず、カラオケやニンドリ(2016年7月号)の記事でしか拝見することができない。


社歌ができるまで


当然、この歌はなにも無から生まれたわけではない。
リードサウンド担当の安藤浩和氏がハル研公式ブログで語るところによれば、まず、ゲームの開発序盤はもちろん真っ白な状態でスタートするため、ディレクターの説明や提示されるキーワードをたよりに作曲を行う。
前々作の『星のカービィWii』、前作の『TDX』がそうであったように、この最初期に作られたフレーズは作品全体を象徴し、統一感を持たせるためのテーマとしてステージ曲など他の多くの場面で用いられている。
今回はゼネラルディレクターの熊崎信也から「悪の企業っぽいテーマ曲を作って」と言われたため、テーマとなるフレーズを安藤氏が考えて最初に完成したのが、本作のボス戦BGMであったという。

ところが開発中盤、このBGMに関して安藤氏を驚かせる出来事が。

今度は突然、「”社歌”を歌うムービーを作る」と言われて、ちょっとビックリ。
「えっ!歌を作るの?」と思っていたら……
私が知らないうちにディレクターの熊崎が、既にボス曲のメロディに歌詞をつけていて、その場で歌ってくれました。
しかも三番まで!(笑)
「作らなくても、もうある!」というわけで、二度ビックリ。
まぁ考えてみれば、この曲はもともと「企業のテーマ曲」として作ったのですから、これが「社歌」として適さない理由もないわけで、これで行くことに異論は無かったのですが……*1

そう、前述の歌詞はなんと熊崎直々に作詞していたのだ。
元々ボスキャラやストーリーと並行して音楽へのこだわりようも有名である熊崎氏だが、まさか歌詞まで自分で作っていたとは誰が予想できたのだろうか。
安藤氏が二度ビックリしたのもうなずける話である。


フレーズが使われている主な曲


  • ファーストコンタクト
オープニングムービー「宇宙からのファーストコンタクト」にて、母艦アクシスアークスから大量のキカイ化装置とインベードアーマーが降下するシーンで流れる。
大規模な侵略シーンをバックに、軍歌のような物々しさが際立つ。

  • キカイのせかいのだいぼうけん/よみがえる大地をゆく
前述通り。
Nintendo Directで本作が最初に公開された時の音楽がこれであったのだが、まさかマジもんの社歌であったとは誰も予想できなかっただろう…
ある条件を満たすことで視聴可能となる「よみがえる大地をゆく」は前者のオーケストラ風アレンジで、機械をテーマにした本作と真逆の生きた音色による社歌は普段とまた違った趣がある。ちなみに、エンディングムービーの名前は「よみがえる大地」だが、特に関係はない。

  • ハルトマンワークスカンパニーのテーマ/つい、口ずさんでしまいましたわ♪
タイトルで「ん?」と思ったかもしれないが、厳密にはボス戦前のスージー登場時に流れるため、事実上彼女のテーマと言った方が正しい。
似ているように見えてイントロ等の部分が結構異なっており、後者はゲーム中に前述した歌声のようなメロディーに合わせて歌詞が台詞で流れる。
公式HPのしんりゃくレポートでは完成版に至るまでの試作曲が3つ公開されており、3つ目以外はかなり雰囲気が異なる。

  • マザーズ・キャプション
本作で初めて登場した、「ポーズ画面専用」のBGM。
一見なんてことは無いのだが、タイトルを見る限り
「今回のコピー能力の説明文って、もしかしてカンパニー最大のマザーコンピューター・星の夢が書いていたのでは?」
…なんて想像も浮かぶ。

恐らく、クリア済みの人は表の解説を見て
てめぇ何しらばっくれてるんだ」と感じていたことであろう。
まあ言いたいことは分かる。後述するが意味が分かるとネタバレ全開の3番まで公式が発売日即カラオケ一般配信しちゃったんだからしょうがない。

ちなみに、社歌の主役であるハルトマンとの戦闘曲「Crazy Rolling in Money」でも曲のフレーズは流れる。
流れるのだが、なぜか曲のイントロとループ手前の部分以外では一切使われておらず、途中からプログレ風の狂った曲調に転換する。
これも一部のファンの間では「機械のせいで狂ったハルトマンを表現しているのでは」と噂されている。
また、星の夢第3形態の「回歴する追憶の数え唄」でもBGMがループする際に、本当にごく僅かだが後ろで同じ社歌のフレーズが流れる。
星の夢に取り込まれ、徐々に記憶が失われつつある彼の心情を表すかのようで何とも切ない。

一番の謎は、「これらの社歌を作中で誰が考えたのか?」ということ。
最も社歌を好んで歌っていたのはスージーだが、裏では社長憎しマザコン憎しの彼女が考えたにしては妙に不自然である。
社員に自分を崇め讃えさせるためにハルトマンが作詞したという線もありうる。
が、3番の歌詞の内容を考えるとこれも無理がある。
誰の作詞によるものなのか、果たして明かされる日は来るのだろうか…?

なお、全てをクリアした際に見れるスージーのリサイタル映像を見る限り、何故か3番を歌わない
ここから察するに本編内の社歌には3番が作詞されていないという事も考えられる。


余談


  • 2017年、『星のカービィ』シリーズの25周年記念としてオーケストラコンサートが開催されたのだが、
    コンサート後半に演奏された『ロボボプラネット』メドレーの後に、カービィの声優で本作では秘書スージーの声も兼任している大本眞基子が前作で声の担当をしたセクトニアとスージーのミニドラマの後、今度は大本眞基子本人が登場。
    何と「銀河に名立たるハルトマン」をご本人が生で歌う……という驚きの一幕もあった。

  • 『ロボボプラネット』以降も歌詞が用意された楽曲は存在するが、実際のゲーム中にボーカル付きBGMが流れるのは『スーパーカービィハンターズ』まで待つこととなる。


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最終更新:2025年07月16日 19:27

*1 2016年5月24日 “社歌”を作りました --- 『星のカービィ ロボボプラネット』より