戦略自衛隊(新世紀エヴァンゲリオン)

登録日:2020/06/20 Sat 22:22:11
更新日:2024/02/24 Sat 12:17:48
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「始めよう。予定通りだ」



戦略自衛隊とは、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズに登場する軍事組織である。
本項では主にテレビシリーズ(俗にいう「旧世紀版」)の設定を中心に解説する。


【概要】

戦略自衛隊は、日本政府、国防省(新劇場版では内務省)が直轄で保有する実力組織である。
英名はJapan Strategy Self Defense Force、JSSDF。略して「戦自」とも。
現実に存在する陸海空自衛隊とは別立の、全く異なる組織であるということに注意したい。作中でも防衛庁が別に存在し、国連軍たる自衛隊を管轄していると思われる。

劇中では先述の陽電子砲を徴発されるくらいの出番しかなかった。後はせいぜい関与の有無を示されるくらいで「ネルフとしては関わると面倒な相手」程度であった。
が、それもそのはず。国連直轄のネルフは世界の多くの国や軍隊の干渉をはねのけることができる国務機関である一方、戦略自衛隊は日本政府直轄の軍隊、そのためネルフに対して勝手な介入ができうる戦力でもあった*1

使徒襲来という国家存亡の危機に対して、意外にも戦自の出番は少なかった。
やがてその牙は『Air』にてネルフに対して突き立てられることとなる。


【設立経緯】

西暦2000年9月13日、南極にて世にいうセカンドインパクトが発生。
海面上昇により世界の沿岸区はことごとく沈み、異常気象が多発。日本には四季がなくなってしまった。
世界情勢は大きく混乱し、2日後にはインド・パキスタン間で難民同士の衝突をきっかけとした紛争が始まる。
ほどなくして同月20日には東京に新型爆弾が投下、50万人もの死者を出し、文字通り壊滅した。

こうした紛争は世界中で続き、2001年2月14日に「バレンタイン休戦臨時条約」がようやく締結され、落ち着くこととなる。
この条約をもって、主要国の軍隊は国連に併合されることとなった。
米軍やロシア軍はもちろん、私たちが知る日本の陸海空自衛隊もその対象であった*2

これで平和になったかといえばそうではなかった。
2003年、南沙諸島にてベトナムと中国の軍事衝突が発生。
この事件をきっかけに、日本固有の戦力として設立されたのが「戦略自衛隊」であった。


【戦力】

陸空の戦力を保持し、兵器は国連軍の色違いを利用している*3
N2兵器も保有し、BC兵器(生物・化学兵器)の保有も示唆されていた。
また、自走陽電子砲といった新兵器開発にも取り組んでいることから、かなりの戦力を持っていることがわかる。
グッズ展開上の設定ではあるが、確認できる部隊として「東部方面隊新富士教導団」と「新習志野の第101空挺団」がある。


■隊員たち
屋内戦闘を想定したCQB(近接戦闘)を考慮した装備になっている。
全体的にダークカラーで、軽量ヘルメットとゴーグルに防弾ベスト、小型ショルダーバッグとかなりシンプル。
メインはH&K G11 という箱型のアサルトライフル*4
そのほか、パンツァーファウスト3といった対戦車兵器や個人用の防弾盾、一部の先行隊員にはフルフェイスのガスマスクなど、まさに施設侵攻に特化した装備を整えてきている。
特に火炎放射器は視聴者にトラウマを植え付けたことだろう。


■陸上戦力
  • M551試作軽戦車
ネルフに対し最初の砲撃を行う。
特科のロケットと共にネルフの「目」であるレーダーサイトを正確な砲撃で潰した。
AirとRebirthでは若干外観・砲塔の旋回音が異なっている。(もしくは別車両?)

  • レオパルト2A7/A10戦車
本部侵攻時、砲塔に稲妻マークの入った車両が3台、道路を疾走していた。
覚醒弐号機に対して砲撃を行うも、悲しく弾かれた。

  • 連装ロケット車両
カチューシャに似た連装のロケット射出車両。
本部地上施設に対してロケット攻撃を行う。
新劇場版:序で「自走式多連装ロケット弾発射機9A52-4」という名称が追加された。

  • 爆雷投射機
水中に爆雷を投射する車両。
よく用意していたなこんなのという車両だが、地底湖に隠された弐号機に対して攻撃に利用された。
(起こしてしまったとも言えなくもないが)

  • MLRS車両
エヴァでは見慣れた、国連軍も使用したロケットランチャー車両。
第一話をはじめとして対使徒戦で活躍していたものの色違いになる。
湖畔に展開し、覚醒した弐号機に攻撃した。

  • 高機動車
本部侵攻時に大量の車両が投入され、戦闘員を本部施設の侵入経路まで輸送したと思われる。

  • トライデント級陸上軽巡洋艦
『鋼鉄のガールフレンド』に登場。ゾイドとメタルギアを足して割った感じの見た目。
巨大な二本足のほか、背部スラスターで滑走も可能。エヴァと違い、操縦方法はかなり劣悪らしい。


■航空戦力
  • VTOL機(重戦闘機)
国連軍やネルフでもおなじみの航空機。
緑目の塗装と「踏マナイ」警告がチャームポイント。
残っていた防衛施設を悠々と潰していったが、弐号機には成す術もなく破壊された。
近付きすぎでは。

  • 大型ミサイル発射機
第壱話でも登場した、おなかに大型ミサイルを抱えた戦略爆撃機らしき大型機の色違い。
弐号機にミサイルを2発もぶち込んだ。

  • 小型VTOL機(軽戦闘機)
メインシャフトらしき立坑に歩兵とともに侵入した航空機。
竪穴に横隊4機で降下できるほどにコンパクトな機体。穴が広いのか機体が小さいのか。
ホバリングもお得意のもので、横穴に隠れていたネルフ側戦闘員を機銃で掃討していった。

  • N2弾道弾
第三新東京市跡に投下された。
残った装甲をすべて薙ぎ払い、ジオフロントに太陽を拝ませた。


【劇中の活躍】

対使徒戦にはほとんど沈黙を守っていた。
出番という出番は陽電子砲を徴発されたつくば技術研究本部くらいで、ほかは人物によって言及がある程度であった。

『Air/まごころを、君に』にて本格的に登場。ゼーレのネルフ本部占拠の尖兵となる。
ゼーレの報告を受けた日本政府は、サードインパクト阻止のために戦略自衛隊をネルフ本部へ突入させる。
投入戦力は約1個師団、一般的な武装施設であったならば十分すぎる戦力であっただろう。

サードインパクトの可能性を僅かでも減らすためか、非戦闘員すら容赦なく撃ち倒していく。
その銃撃に容赦はなく、また事前のスパイ活動等の成果か、バイタルパートを正確に狙い撃ちするところも見られた。
一方で、マギオリジナルの確保を狙ってかBC兵器の使用を控え、発令所の銃撃戦にかなり時間をかけてしまっているところも。

順調にいくように見えたネルフ制圧だが、ネルフという特殊な施設とエヴァ弐号機の覚醒により、最終的には壊滅に陥る。
さらにエヴァ量産機の降臨とサードインパクトによるS2機関の解放により、展開していた主力大隊は完全に消滅することとなる。

そう、彼らがネルフ制圧を成功しようとしまいと、結局のところ人類を滅ぼすサードインパクトは発生することに変わりはなかったのである。
ただただ、彼らはネルフを消耗させるための前座に過ぎなかった。
ゼーレに唆されたとはいえ、非情な大量殺戮に手を出さざるを得なかった彼らだが、その目的は純粋に人を守るために他ならなかったと考えると、やるせない最後かもしれない。

『鋼鉄のガールフレンド』においては、トライデント級陸上軽巡洋艦なる兵器を開発していた。そのトライデントや霧島マナをめぐり、時にシンジたちと対峙することになる。


【余談】

  • 初期設定?
拾参話「使徒、侵入」などの脚本を担当した磯光雄氏によって、戦略自衛隊の初期設定が同氏のTwitterに一部公開されている。
これによれば、戦略自衛隊の創設時期はセカンドインパクト前、邦人救出の国連軍として派遣した自衛隊が核攻撃で大打撃を受けたことにより創設されたという。
その他の時系列も書かれているので、興味があれば見るのも一興。

劇場版エヴァのシナリオ再現は何度か行われているが、世界観の関係上か戦略自衛隊は一度も登場したことがない。
α』においては再編成されたティターンズが代役としてネルフ本部に襲来。
MX』においても連邦軍極東方面軍が代役し、ドラグーン隊メインでネルフ本部に侵攻。指揮を執るのはあの三輪長官であり、ハウドラゴン残党の塞臥も登場すると色々な意味で衝撃的な展開であった。
両作品ともアスカのレベリングの餌にできるため有り難い存在である。
陽電子砲の徴発も両作においては特に行われておらず、そもそも戦略自衛隊が存在していない可能性も高い。
今後、エヴァがスパロボ参戦した際に戦略自衛隊が登場するのかどうかは定かではない。
そもそも立ち位置が特殊すぎるため再現しにくいという側面もあり、戦略自衛隊はある意味ではエヴァ時空の特異性を示す存在と言えるのかもしれない。

  • 世界最強の軍隊
戦略自衛隊は、この世界において世界最強の軍隊と呼ばれることもある。
専守防衛の陸海空自衛隊とは異なり、国連軍の各国軍と渡り合えるほどの戦力を保有していることがその証左であろう。

だが問題は、それほどの軍隊を戦後・セカンドインパクト後の日本が保有しているということである。
まず日本は島国、セカンドインパクトの海面上昇の影響をもろに受けた。
冬月先生の回想では、愛知県は船の町が形成されるほどの水没具合である。
そしてセカンドインパクト直後に首都を吹き飛ばされている。経済混乱も必至だろう。

そんななか、陸海空自衛隊を国連に供出。
国連軍の費用は国連持ちだとしても、その運用は日本の自衛隊がそのまま引き継いている形だろう。
その国連自衛隊を維持しつつ、災害から3年後というスパンで、それまで抱えていた以上の軍隊を組織したということになる。
セカンドインパクトで減った人口、維持し続ける国連自衛隊やネルフという巨大な国連組織に人手を取られてもまだ人材に余裕があったということだろうか。
そして金にしても、防衛予算に回せる資金が国にあったということになる。
たしかに、それができたのなら世界最強の軍にできるのも確かなことかもしれない。

  • 国内治安維持活動
作中での目立った活躍こそ先述の通りないが、一部示唆自体はされていることがある。
第弐拾話でレイが目覚めた時に聞こえるラジオで、第2東京市におけるテロについてのニュースが流れているのだが、その対応として戦略自衛隊が掃討作戦の概要を公開したというもの。
このテロはセクトの集団により1月前に行われたとされるが、ゼルエル襲来ないしは3号機事件よりも前だということがわかる。
仮にも首都、そこでセクトのテロというと物騒だが、どこぞの警備隊を思い出させる。
そしてそれと同じように、日本の情勢は意外にも不安定な状態であると再認識させられる部分でもある。


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最終更新:2024年02月24日 12:17

*1 3号機事件時に冬月が戦自介入前に済ませたかったのも、日本政府にかかわらせたくなかったからだろう

*2 つまり、日本本土での対使徒戦に度々出ている国連軍は、陸海空自衛隊なのである

*3 海上戦力は不明だが、存在するものと思われる。

*4 メタ的にいうならば薬莢作画の減少を狙ったのかもしれない