ルパン三世 ロシアより愛をこめて

登録日:2021/02/03 Wed 01:12:30
更新日:2024/04/13 Sat 01:19:08
所要時間:約 10 分で読めます







コンコココンコン コンコン  コンコココンコン コンコン


ガチャッ


こんばんわっ♪


誰?


ジュディさん? ジュディ・スコットさんでござんっしょ?


あたくし怪しいモンに見えるのでしょうっか?




バタン!




………怪しいモンに見えるか?


十分な…






ルパン三世

ロシアより愛をこめて







『ルパン三世 ロシアより愛をこめて』とは、1992年7月24日に金曜ロードショーにて放送された、ルパン三世テレビスペシャル第4弾のタイトルである。脚本はご存知柏原寛司。

旧ロシア帝国を支配していたロマノフ王朝の500トンもの金塊をめぐって、ルパンファミリーと怪僧ラスプーチンの孫にあたるラスプートンとの金塊争奪戦を描いた物語となっている。
本作は、前作『ナポレオンの辞書を奪え』が不評だったことによるイメージダウンに加え、プロ野球中継の延長によって放送時間が1時間ずれたこともあってか、視聴率がイマイチだった。
それもあってか、TVSPは次作『ルパン暗殺指令』で最後となる予定だったが、そっちの視聴率が好評だったため、続行が決定した。

本作までのTVSPで監督を担当*1した、出崎統氏は本作を持って一旦降板した*2。それもあってか、本作では出崎氏のお得意である止め絵の演出をふんだんに取り入れている。出崎氏は、3年後に放送されたTVSP『ハリマオの財宝を追え』で復帰した。



【あらすじ】


かつて、ロマノフ王朝時代のロシア帝国はアメリカに次ぐ世界第2位の金保有国だった。しかし、ロシア革命の後、その莫大な金のうち500トンが何処かへ流出し、行方不明になっていた。 ルパンはその金塊を狙って関係資料である本を図書館へ借りに行くが、ジュディ・スコットという女が借りていたため、彼女の元まで尋ねる。
同じ頃、五エ門はシベリアの新興宗教団体でやっかいになっていた。教祖ラスプートンは一国の大統領すら虜にしてしまう人物だったが、その正体は莫大な暴利を貪るペテン師だった。そんな彼に斬鉄剣を奪われた五エ門はしぶしぶながら用心棒として雇われてしまう。
一方で、本を見せてもらおうとルパンはジュディに頼み込むが、同じくその本を狙った二人組の男の襲撃を受けて本は奪われてしまう。幸い暗号を見つけ出していたルパンは暗号を解読し、金塊の在り処を突き止める。
しかし、金塊の隠し場所は泥棒界でも有名な銀行の地下金庫。しかも、盗み出すのは500トンの金塊。果たして、ルパンは如何にして盗み出そうというのか?


【登場人物】


◆レギュラーキャラクター


CV:山田康雄
ご存知・天才的アクションに生きる男。
ロマノフ王朝の金塊を手に入れるべく行動する。今回はニューヨークの図書館司書を怒らせてボコボコにされたり、不二子及びジュディに1作品内で何度も何度も裏切られるなどロクな目に合わない。
終盤では恐ろしい特殊能力を持つラスボスに愛銃・ワルサーP38たった1丁で挑むなど、さすが主人公というシーンは抜かりなく用意されている。

「オレ、仕事と恋にはよ?マメマメマ~メなの」

CV:小林清志
ご存知・ルパンの相棒。
そこまで大きな出番はなかったが、人質にとったブラウンや、拘束していた敵キャラが爆撃で死なないように解放するという心優しい一面も見られる。
ゲストキャラであるラッキー・マクドナルドに対しては敵であるものの彼のスピリットに感心したようで、渋滞中に襲ってきた際には「いい根性だ!」とどこか嬉しそうにしていた。

「見損なうなよ! それくらいの仁義は心得ているさ!」

CV:井上真樹夫
ご存知・鮮やかな剣の使い手。
本作では修行のため、ラスプートンの傘下についていた。
しかし、その間にラスプートンに斬鉄剣を奪われただけでなく、彼に手玉に取られまくったり、ジュディに一目惚れして現を抜かすなど全くいいとこなしだった。打てない四番バッターとは言い得て妙である
斬鉄剣が手元にないため調子が出ないのか、普段は北極に着流し姿でいても平然としている五ェ門だが本作ではシベリアの寒さに耐えられず何度もクシャミをしていた。
そんな状態で猛吹雪の中電話を探しに行く姿は言葉にできないほど惨めである。
そして終盤では、とんでもない我儘を言い出すことに…

「いくつになっても…何年修行をしても… 恋は素晴らしい…」

CV:増山江威子
ご存知・謎の女。
本作では事前にジュディと手を組んでおり、中盤辺りでお得意の裏切りを披露するなどいつも通りのキャラだった。また、ルパンだけでなく金塊を運ぶために大勢のトラック運転手を手玉に取るなど、いつも以上に魔性の女っぷりが見られる*3
だが、そんな彼女も終盤で組んでいたはずのジュディに裏切られる。

「気が変わったのよ、セクシーボーイ!」

CV:納谷悟朗
ご存知・ルパン三世にチャレンジする男。
序盤でルパンが怒らせた図書館司書に八つ当たりでシメられたり、乗っているヘリが墜落したり、シベリアにてルパンを逮捕しようとしたつもりが逆に自分が拘束されるなど、五ェ門同様彼も本作では全くいいとこなしだった。ルパンからも「教養の館(図書館)にとっつぁんが居るわけねぇ」としれっとディスられた。
とっつぁんカワイソス… とっつぁんが何をしたって言うんだよ…

「信号があるわけじゃねぇんだ! もっと飛ばしたらどうだ?」


◆ゲストキャラクター


  • ジュディ・スコット
CV:佐々木優子
本作のゲストヒロイン。

ニューヨークにすむ女性会社員だったが、会社との裁判沙汰の末に退職して以降はロマノフ王朝の金塊を手に入れるべく、ルパン達と行動を共にするようになる。
ルパンや次元だけでなく、不二子までも手玉に取るなど中々したたかな女である。
彼女が金塊を手に入れることに固執していることにはある理由があるようだが…

「変な事したらいつでもぶっ放すわ…女一人の部屋に入った男は、いつ殺されても文句は言えないのよ」


  • ラスプートン
CV:大木民夫
かつて、ニコライ2世に取り入って悪行の限りを尽くして射殺された怪僧グレゴリー・ラスプーチンの孫であり、シベリアに総本山を置く新興宗教団体の教祖*4。ロングヘアーにメチャクチャ長い顎髭が特徴で、さながら某宗教団体の教祖を彷彿させるキャラである。
「人に物事を強要する」ことを好むサディストな性格で、他人の口や鼻、耳に手を突っ込む癖のあるかなりアブナイおっちゃん。
宗教団体そのものはインチキのイカサマ坊主だが、なんとテレパシーの能力を持っており他人の心を読むことが出来る。
また、見かけによらず腕っぷしも強く、貫手を用いた格闘術を得意とする。

「ワシはイカサマ坊主だが、テレパシーは本物だ!他人の考えてることなど手に取るように分かるのだ! そのことは忘れてもらっては困る!」


  • ラッキー・マクドナルド
CV:石塚運昇
ラスプートンに雇われた、ショットガンを愛用するフリーランスの殺し屋。三角レンズのサングラスをかけている。
冷静な性格で洞察力がとにかく鋭く、一見ただのチンピラっぽい容姿から想像できない切れ者。どのくらい切れるかというと、あの不二子の計画を先読みできるほど。
ラスプートンに用済みとされ殺されかけるものの、満身創痍ながら何とか生存し、ビッグのカタキを討つべくルパン達と共闘することを決意。彼らに総本山への道案内をする極めて重要な役割も担う。

「ヘヘヘッ…見えてきた…!」


  • ビッグマウス・ジョー
CV:辻親八
ラッキーの相棒で、『ルパンvs複製人間』のフリンチみたいな容姿をした殺し屋。丸レンズのサングラスをかけている。
頭脳派な性格のラッキーとは対照的に、チンピラっぽい見た目通りの「バカ」。見た目によらないのは趣味で、案外可愛らしい。愛車のトラックにピンクのカーテンをつけたり、ちょっと気色の悪い歌声でシャワーを浴びたり、ネイルを塗ったりもしている。
中盤、ラスプートンによるツンドラの帝王の爆撃で崩れたがれきの下敷きになりあっけなく死亡した。
ラッキーが「ガキの頃からのダチンコ」というあたり、付き合いは相当長かった様子。

「俺もしてぇ…」

  • カルシオーネ
CV:今西正男
ニューヨーク・マフィアのゴッドファーザーで、ラスプートンの信者である。
ロマノフ王朝の金塊の持ち主であったが、ラスプートンによる嘘の予言を信じ、金塊を手放そうとしたことで常日頃から不満を募らせていた甥のドンビーノに撃ち殺されてしまう。
かつては威厳ある大物だったようだが信仰でおかしくなった様子で、ドンビーノに殺される直前はベッドで女児向けの人形と戯れるなど狂気じみた行動をしていた。

「いやぁ、ラスプートンという男は大したものだ!」

  • ドンビーノ
CV:大塚明夫
カルシオーネの甥で、ニューヨーク・マフィアの幹部。
ラスプートンの信者になったカルシオーネに不満を持っており、金塊を手放そうとした彼を見限り射殺。
金塊を取り戻すべく下っ端を率いてラスプートンの総本山に乗り込んだが、ラスプートンに騙されて部下を倒され、自身も両目を潰され*5て死亡した。
だが死に際に最後の力を振り絞り、ダイナマイトを一斉爆破させ総本山を破壊した*6

「ゴッドファーザーも老い耄れたらただの変態ジジイだ! カルシオーネ…あんたの時代は終わった!」

  • デューク・ブラウン
CV:納谷六朗
盗品の預かりからマネーロンダリングまで行っている、泥棒御用達の銀行「バンク・オブ・リバティ」の三代目頭取。
裏社会の人間を取引相手にしているため、関係者達に関する情報や知識も豊富で、銀行強盗を装った彼らに押し入られ、カルシオーネが所有者となった金塊を盗もうとした彼らを必死の形相で止めようとしたが、最後には爆死しないようにと耐火金庫に押し込められてしまった。しかし「銀行の裏の顔の事を公にしない」と、ルパンと次元が約束した際には安心した表情で「グッドラック」と言い残して自ら金庫に入った。
その後は一切登場しなくなるが、おそらく生存していると思われる。

演じたのは納谷悟朗氏の弟・六朗氏であるものの、銭形警部とのお遊び的な会話シーンはない。

「お願いだ!地下のことは秘密にしておいてくれぇ!!」

  • 図書館司書
CV:雨蘭咲木子
冒頭に登場した、ニューヨーク市立図書館で働く色っぽ〜い貸し出し係。ちょっと容姿を褒められると喜んでしまうあたり、チョロい。


「ついてないわんアナタ!その本昨日貸し出ししちゃったの〜」



【エンディング】


ラスプートンの人体発火によりツンドラの帝王は炎上、そのまま墜落してしまった。金塊はドロドロに溶けてしまうも、何とか残った。

すると、一同の元にジュディの活躍により斬鉄剣を取り戻した五ェ門が現れた。


ルパン「よう五ェ門!」


次元「無事で何よりだ!」


安堵する一同に対し、五ェ門はとんでもないことを言った。


五ェ門「すまんが…各々方…!           この金塊は全て拙者が貰い受ける!!


何と、金塊を全部よこせと言い出したのだった! 当然ルパン達は納得いくはずもなく、五ェ門に言い返した。


ルパン「何だと!?」


不二子「冗談やめてよ! あんた今回全然働いてないのよ!?」


だが五ェ門は


五ェ門「拙者にくれ!! くれなきゃ斬る!!!」


の一点張り。


すると、そこへジュディが現れた。ルパンは状況を理解し五ェ門に尋ねた。


ルパン「ジュディに頼まれたのか?」


五ェ門「お…お約束しちゃったの……でござる…」


ジュディはルパンに自身の正体を、そして金塊の目的を話し、泣きながらルパンに金塊を譲るよう訴えた。


ジュディ「もし願いをかなえてくれるなら、この命、あなたにあげます!!」


だが、散々ひどい目にあわされた不二子は、渡しちゃダメとルパンに言う。しかし、ルパンはジュディに近づき、

ルパン「ねぇ、お嬢さん…そいつは、もらいすぎだ」


そう言い、ジュディの額にキスをした。そして、


ルパン「これで、十分だよ」


と、ジュディのしたことを許し、彼女の交渉を承諾した。



そのころ、五ェ門は金塊の中からまるでラスプートンの手のような形をした金塊を発見。そして、


五ェ門「それにしても、絶対見逃せん形だ!」


そう言い、斬鉄剣でその金塊の塊を粉々にした。ルパンはその塊の先っぽの方を持ち、実費としてこの分だけくれないかとジュディに尋ねた。ジュディもそれを承諾した。
だが、不二子だけは納得いかず、


不二子「イヤ~~ン!そんなのないない!ダメダメ!イヤイヤイヤイヤイヤイヤ! 全部欲しい!!」


と、一人で駄々をこねていた。

そして、銭形はというと…


ルパンによってツンドラの帝王の残骸に拘束されてしまった。 ヒデェ…


そして、ジュディと銭形に別れを告げるルパン、ちょっとしか手に入らなかったことを嘆く不二子、おそらくラッキーへの餞と思われる敬礼を送った次元の3人はセスナ機に乗って、シベリアを後にしようとする。


銭形「ねぇねぇ!この命あげるから!! ねぇルパァァン!!」


ルパンに助けを求める銭形だったが、ルパンはアッカンベーをして去っていった。







銭形「ルパァァァァァァァァン!!!!」




不二子「イヤァァァァァァァァン!!!!」




2人の絶叫が、シベリアにこだました。
ジュディと五ェ門、そして置き去りにされた銭形の3人はセスナ機を見送った。


その頃、ドロドロになった金塊の中に、ルパンがジュディに別れとして送ったのか、一輪の赤いバラが美しく飾られていた……



Fin





【余談】


本作のお宝であった、ロマノフ王朝の金塊は、今でも行方不明である事から埋蔵金伝説の一つでもあり、バイカル湖に沈んでるという説や一部が日本に流出したという説まである。

本作でジュディを演じた佐々木優子氏は、前々作『ヘミングウェイ・ペーパーの謎』でもゲストヒロインであるマリアを演じていた。
また、ラッキーを演じた石塚運昇氏は次作『ルパン暗殺指令』でキース・ヘイドンを演じた(こちらはラッキーとは違い最後まで敵として登場しており、最後はルパンと次元によって倒された)。




五ェ門「頼む!ルパン!次元! ここはひとつ、追記・修正してくれ!」


ルパン「だからさぁ、どうなってんだよ五ェ門?」



五ェ門「訳は! 後で! 電話する!!」





ルパン&次元「お待ちします…」



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最終更新:2024年04月13日 01:19

*1 前作『ナポレオンの辞書を奪え』では監修

*2 次作『ルパン暗殺指令』では1stで演出を務めたおおすみ正秋氏が、そして次々作『燃えよ斬鉄剣』では次作で演出を務めた奥脇雅晴氏が担当した

*3 だが彼らにはちゃんと約束通り報酬を与えるなど、そこそこ良心的

*4 インチキ宗教だけでなく、コカインの取引にも手を染めていた

*5 間接的に表現されているものの中々エグい

*6 結果として、ルパン一行が金塊を奪いやすい状況をつくることになった