イナリワン(競走馬)

登録日:2022/08/23 Tue 03:07:36
更新日:2025/01/17 Fri 02:50:11
所要時間:約 5 分で読めます





ミルリーフの血。



イナリワン(Inari One)とは、日本の元競走馬
地方の大井から中央へ移籍してG1を複数勝利する活躍を上げ、「平成三強」の一角に数えられた。


【データ】

生誕:1984年5月7日
死没:2016年2月7日
享年:32歳
父:ミルジョージ
母:テイトヤシマ
母父:ラークスパー
調教師:福永二三雄(大井)→鈴木清(美浦北)
馬主:保手浜弘規
生産者:山本実儀
産地:門別町
セリ取引価格: -
獲得賞金:4億430万円
通算成績:25戦12勝
主な勝鞍:88'東京大賞典、89'天皇賞(春)・宝塚記念・有馬記念
タイトル:89'JRA賞年度代表馬・最優秀5歳以上牡馬・東京競馬記者クラブ賞、16'NRAグランプリ特別表彰馬

【概要】

1984年5月7日生まれの鹿毛の牡馬。父は凱旋門賞馬ミルリーフの息子ミルジョージ、母はテイトヤシマ。
生涯戦績は25戦12勝で、内訳としては大井の地方時代が14戦9勝、中央競馬移籍後は11戦3勝。
表面上の数字だけだと中央での戦績がパッとしないかもしれないが、
勝利レースは全てG1であり、11戦の内入着を逃したのも2戦だけと、十二分すぎるスターホースである。
調教師は地方時代は福永二三雄氏で、中央移籍後は鈴木清氏。
主戦騎手は地方時代は宮浦正行、中央移籍後は柴田政人で、他に小島太や武豊も騎乗経験がある。
尚、武豊は本馬について「軽くてコンパクトなボディに超ハイパワーのエンジンを積んだ、凄まじい推進力を持った馬」と高く評価していた。

【戦歴】

デビュー戦では見事1着を飾るも、続く第2戦ではゲート内で暴れて出走断念になるなど、非常に気性の荒い馬としても有名だった。

仕切り直しとなった5月の3戦目以降は負けなしの連戦連勝。
トゥインクルエイジカップや東京王冠賞、船橋開催の東京湾カップなどでも勝利し、圧倒的な実力を見せつけていく。

翌年以降は金盃の3着から始まり、笠松競馬場での全日本サラブレッドカップの2着等今までの快進撃は鳴りを潜めるものの、
地方レース場のダートが降雨によって重馬場になると勝率が落ちていたというところから、
逆に「芝レースの適性があるのではないか?」と考えられるようになる。
その結果、年末大一番の東京大賞典での久方ぶりの勝利をキッカケに、中央競馬への移籍が決定された。
中央移籍後はOPレースのすばるステークスで4着、初の重賞となるG2レースの阪神大賞典での5着入賞などを経た先で、
続く初のG1である天皇賞(春)において、ミスターシクレノンやランニングフリーといったライバルたちを見事差し切り勝利。
芝適性があるという見込みが間違っていなかったことを証明すると同時に、
中央移籍後の初勝利がG1レースというこれ以上ないくらいの結果を残すことができた。
因みにイナリワンの天皇賞勝利は、地方参戦組としては史上6頭目、21年ぶりの快挙でもあった。

更に続くG1レースとなった宝塚記念。日本ダービー優勝馬のサクラチヨノオー、皐月賞優勝馬のヤエノムテキ
安田記念優勝馬のバンブーメモリー、フレッシュボイスといった並みいる強豪たちがひしめき合う中、
スタート開始直後から先行し、ギリギリの所まで迫られるも、フレッシュボイスにクビ差で勝利。
中央競馬においてG1レースに連勝という更なる偉業を成し遂げることになる。

そして騎手が武豊から主戦騎手となる柴田政人へと変わるも
続く毎日王冠や天皇賞(秋)では、同じ三強時代を築いたオグリキャップスーパークリークといったライバルたちに
一歩届かない敗北を重ねていくことになる。
その後のジャパンカップでは生涯レースにおいて最も低い11着になってしまうなど、なかなか勝てないレースが続いていく。

が、1989年年末の有馬記念ではファン投票による選出馬となる。
尚、これまでの連敗中、東京競馬場の馬房で落ち着きのない姿を見せていた姿から、一時期中山競馬場に入厩させるといった対策を取った結果、
今までの不調が嘘のように回復を果たし、万全の状態で臨むことができたとのこと。

そして運命の一戦。オグリキャップやスーパークリークが先行する中、イナリワンは後方から虎視眈々と好機をうかがい、
最終コーナーで2頭の背後を捉えた上で、最終直線において一気に追い上げを開始。
前を行くスーパークリークに末脚を利かせて食らいつきほぼ同時にゴールイン。
写真判定の末にハナ差での勝利が認められ、年末の大舞台、有馬記念を制しG1レース3勝を達成した。

同時にこれがイナリワンの生涯成績における最後の勝利となり、
連覇を狙った二度目の天皇賞(春)では、スーパークリークに敗れ惜しくも2着。
続く宝塚記念の4着(優勝はミルジョージ産駒オサイチジョージ)を最後に、右前脚球節の異常が回復しきらなかった結果、競走馬を引退。
オグリキャップのラストランとして有名な1990年有馬記念と同日に引退式を行い、種牡馬入りとなった。

地方(ダート)から中央(芝)へと戦歴がくっきり分かれているためかやや語られづらいが、
大井では連勝のち頂点に立ち、移籍以降だけで見ても最短は1800mの毎日王冠2着、最長は3200mの春天1,2着と、馬場・距離両面での万能性を滅多に見ないレベルで兼ね備えた馬でもあった。

【引退後】

引退後は種牡馬入り。
種牡馬としては中央重賞馬は輩出出来なかったものの、代表産駒として親子での東京王冠賞制覇となったツキフクオー、日経賞やステイヤーズステークスといった複数の重賞で2着入りしたシグナスヒーローなどがいる。

2004年に種牡馬も引退。以降は門別町ポニーファームや茨城のオールドウェスト乗馬クラブ、
北海道のあるぷすペンションなどを転々とし、のんびりと余生を過ごしていたが、
オグリ・クリークの死から6年後の2016年2月7日、老衰により32年の馬生に終止符を打つことになった。

【創作作品での登場】

大井の出という点から人情家の江戸っ子ウマ娘。小柄だがボインボインな体型でデカさはてめえの心意気次第と豪快に語る姉御肌。勝負服も(原案ではなぜかギャル制服風だったが)法被。
ウマ娘 シンデレラグレイ』ではオグリの戦歴を一から描く都合上、1話の見開きページで顔見せしてから本格登場までかなりの時間を要し、アプリでも育成実装はそこそこ遅かったがそれといい勝負くらいであった。
イナリワン台頭以前のオグリのライバルだったタマモクロスも交えた4人組として扱われがちで、タマモとは江戸っ子と関西人というキャラの噛み合わせもあって絡みが多い。

【余談】

ちなみに武豊は「平成三強」と呼ばれたオグリキャップ・スーパークリーク・イナリワン全てに騎乗経験がある。
武は平成三強の各馬について、オグリは「何を考えているのかわからない」*1、クリークは「おとなしくてとても乗りやすい」と答えたのだが、イナリワンだけはただ一言、「怖い」と述べたといい、イナリワンの気性の荒さを象徴するエピソードの一つとなっている。




追記・修正は、大舞台に強い方がお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • イナリワン
  • 競走馬
  • サラブレッド
  • 牡馬
  • 87年クラシック世代
  • G1馬
  • 平成三強
  • 種牡馬
  • 天皇賞馬
  • 大井
  • 鹿毛
  • グランプリホース
  • 年度代表馬
  • 宮浦正行
  • 武豊
  • 柴田政人
  • 福永二三雄
  • 鈴木清
  • 故馬
  • 気性難
  • 軽自動車に大型トレーラーのエンジン
  • 長寿
  • Inari One
  • 最優秀5歳以上牡馬
  • ウマ娘ネタ元項目
  • ナスルーラ系
最終更新:2025年01月17日 02:50

*1 一方で後年一番乗りやすかった競走馬を聞かれた際には「オグリキャップは距離関係なく同じ競馬ができる、あんな賢い馬はいませんでした」とべた褒めしている、逆に一番難しかった競走馬はディープインパクトを挙げている