死にゆく者たちへの祈り(ガンダム)

登録日:2023/08/30 Wed 16:00:00
更新日:2024/05/27 Mon 02:42:44
所要時間:約12分で読めます




かつて火を使った戦士は、
もう動くことも、
ふたたび大地を踏むことも
ない。
わすれてはならない。
死にゆくもの達への祈りを


『死にゆくもの達への祈り』とはSFCソフト『機動戦士ガンダム CROSS DIMENSION 0079』に収録されたオリジナルストーリー。
後にPS3ソフト『サイドストーリーズ』でも収録され、『SDガンダム GGENERATION GENESIS』でも採用された。



概要

『CROSS DIMENSION』には初代『機動戦士ガンダム』をモチーフとした第1部があり、それをクリアすると遊べるオリジナルストーリー。
モチーフの一つは『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』であり、同作のような戦争の片隅で起こった小さくどこかやるせない物語を描く。

ガンダム・ピクシーやイフリートの初出なのだが、ゲーム自体がマイナーということもあって知名度は低かった。
本来は4部構成の物語で1~3部で3機のピクシーのそれぞれの奮闘が描かれ、最終章でピクシーが集結する…と考えていたそうなのだが、ゲームでの完全オリジナルストーリーは敷居が高かったことやSFCの容量的な都合もあり、第2部に相当する本作のみに収録になったそうだ。
後にゲームでのオリジナルストーリーは『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』で好評となり、ガンダム外伝シリーズとして定着していくこととなる。

新規モビルスーツのデザインはお馴染み大河原邦男。
オリジナルキャラのデザインは『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』や『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の川元利浩。

『CROSS DIMENSION』では連邦側、『サイドストーリーズ』ではジオン側の視点で物語が進行していく。

あらすじ

ガルマ・ザビが戦死し5日後の宇宙世紀0079年10月5日のゴビ砂漠に一つの連邦軍基地があった。
砂漠の基地とは思えない物々しい警備をしたその基地には連邦軍の新型MS「ガンダム・ピクシー」が輸送されていたのである。
ちょうどその頃、隊長機に「イフリート」をもつジオンの敗走部隊「ウルフ・ガー隊」は補給を求め連邦軍基地を強襲する。
基地の警備を請け負った「アルバトロス隊」はガンキャノンのみの現状で防衛は不可能と判断し、ピクシーを起動させる。

様々な思いが渦巻く中、多くの命が散っていく…。

登場人物

連邦軍「アルバトロス隊」

主に左遷された士官からなる「はぐれ部隊」。
なぜかゴビ砂漠の真ん中にある連邦軍基地に駐屯する。
その目的は新型MS「ガンダム・ピクシー」をホワイトベース隊に届けること。

「こいつ・・・まだやるのか!どうしてだ!どうして、ここまでやるんだ!」
  • ボルク・クライ
声:東地宏樹
連邦軍側の主人公の青年。大尉。
『CROSS DIMENSION』では茶髪だが、近年では金髪。
良くも悪くも現場のたたき上げ軍人気質であり、何度も上官に反抗的な態度を取ったため左遷され砂漠の基地にいる。*1
現在の状況を「まるでアラモだな」と称するなど勉学にも明るいが、ニュータイプの存在もその目で見てないためか懐疑的。
部下思いではあり、部下には比較的慕われている。
基地にあるガンキャノンだけでは白兵戦で不利であり防衛は不可能と考え、命令違反とわかりつつピクシーを起動し敵を撃退していく。
元々はガンキャノンのパイロットなのでピクシーとは相性が悪そうだが、ピクシーのコンピューターのおかげで次第に乗りこなせるようになった。
だが、ノクト少佐の無理な命令や幾度にも渡る襲撃に神経をすり減らしていき、最終的には見殺しにされるも同然の任務を請け負ってしまう。
「ザクを先に落とせ!」とよく言うがザクになんか恨みでもあるのか…*2

  • ダバ・ソイ
声:高橋伸也
ボルクの部下のガンキャノンのパイロット。
黒髪のモブ顔。地味。
元は香港で警官をしていたが、徴兵されてMSパイロットとなった経緯がある。
ボルクの事は慕っているもののどこか頼りない男である。
ヤーマン王家とは無関係。

  • サナ・ニマ
声:山本祥太
ダバとは対照的に金髪の濃い顔。近年では茶髪。
気弱な性格でかつては敵前逃亡をかましたらしいが、人手不足ということで釈放されている。
ボルクがピクシーに搭乗した後にガンキャノンのパイロットとして戦う。
敵が来た時に伝えに来る役目も務めているため一部では「時報」と呼ばれているとか。

  • ノクト・ガディッシュ
声:喜山茂雄
アルバトロス隊隊長。少佐。
元はジャブローにいたエリート士官だったが左遷され*3砂漠の基地に就任している。
エリートコースを外れてなお強いエリート意識の塊で、現場判断を一切聞きいれない、部下をクズと言う、戦力が足りないことを「貴様らがだらしないから」と罵る、ピクシーが必要と判断しても「使わせてほしければクズな私にピクシーを使わせてくださいと言い、私の靴をなめろ」と言うなど典型的なダメ軍人というか人としても最底辺。
ニマには「最低」とつぶやかれてしまっている。
ボルクを謀殺するために一人残そうとするなど、軍人としても無能な印象が強い。
こんな有様なのに『CROSS DIMENSION』では確実に生き残る。しかし、『サイドストーリーズ』では…?
ちなみに彼の親戚はかのエルラン中将で「失態は揉み消してもらえる」と考えているらしく*4、エルランの顛末を考えると生還しても先行きは真っ暗だろう。
中の人は後のランバ・ラル

ジオン軍「ウルフ・ガー隊」

犯罪者で構成された懲罰部隊。
本来は偵察と後方撹乱が主任務だが、中央アジア前線でに敗走したことで、砂漠をさ迷っている「はぐれ部隊」。
そのため、補給目的に基地を襲撃する。

「さいこうに、たのしいぞ、新型!やっとみつけたんだ!こんなところで、おわっちゃあ、もったいない!」
  • ヘンリー・ブーン
声:てらそままさき
ジオン軍側の主人公の壮年。ボルクと同じく大尉。
かつてはキシリア閣下の配下の特殊部隊に所属し、ランバ・ラルに匹敵する軍人と称されていたが、クーデターの発起人の疑惑をかけられ、ウルフ・ガー隊の隊長となった。
冷静沈着で部下思いであり、虐殺任務にも反対するなど良識的な軍人。

  • マーチン・ハガー
声:三宅健太
どことなくサンダース軍曹似の褐色肌の男。
気性が荒く、補給も「飯より弾」と言うなどバトルマニアの気があるが、ピクシーの動きから「パイロットはまだ機体になれてない」ことを見抜くなど洞察力もある。
レイとレスタを気遣ったり、彼らを殺したピクシーを目の敵にするようになる事から部下思いのように見えるが、実際は新兵教育係の際に8人の新兵を死に至らしめた経歴があるなど両極端な人物である。
結果的に彼はその怒りからほぼ狂ったような状態で死んでしまう。
SFCの最終戦では設定ミスで届かない距離からしか攻撃してこないが、それもまた狂気を引き立てている…。

  • サキ・グラハム
声:浅野まゆみ
紫髪の紅一点。
冷静で洞察力が高く、下記二人より肝が据わっている。
元々はランバ・ラル隊に所属することを希望していたらしい。
兄をルウム戦役で失い、復讐のためウルフ・ガー隊に志願する。
そのため、隊員の中で唯一の犯罪歴がない。
最終決戦では爆発するザクからなんとか脱出するが…?

  • レイ・ハミルトン
声:豊永利行
童顔の金髪。自分を同性愛者と揶揄した同僚2名を殺害したという恐ろしい裏設定があるらしい。
軟弱な性格なのか、良く弱音を吐いている。
アルバトロス隊との三回目の戦いで敗れて死亡した。
とある伝説のパイロットと同じ名前を持つが、残念ながら彼のようにはなれなかった。

  • レスタ・キャロット
声:烏丸祐一
アゴが目立つ男。家族を疎開させる為の金目当てに殺人を犯した元銀行強盗。
こちらもビンタされそうな軟弱男。
レイと同様に死亡。

ウルフ・ガー隊とは別の敗走部隊も登場するが名実ともにピクシーの噛ませ犬である。

登場機体

陸戦型ガンダムの派生機。
重力下での白兵戦に特化した機体であり、本来はホワイトベース隊に渡される予定だった。
二本のビームダガーとサブマシンガンを装備。このマシンガンのせいでウルフ・ガー隊に弾薬を補給されてしまったのでは…おのれユニバーサル規格!!
MPUも優れており、初めて搭乗したボルグでも十分戦える上に、戦闘データの蓄積により戦うほど強くなる。
『CROSS DIMENSION』では第1部のガンダムのレベルを引き継ぐ。

ピクシー搭乗前のボルクやサナ、ダバが搭乗。
本来は高火力・重装甲の強力な機体だが支援機なので近接攻撃手段がほぼ無いことから本作では低く見られがちで、元々は基地に6機あったが、激しい戦いで4機は落とされてしまったらしい。ノクト曰くクズなモビルスーツ
『CROSS DIMENSION』では第1部のガンキャノン2機のレベルを引き継ぐ。
そのため、育てていないと詰んでしまう可能性も。
余談だが、カイやハヤト搭乗のガンキャノンより技がないなど弱く設定されている。あの二人もエースであるという演出だろう。

  • ミデア
ノクト逃走時に使用。

ヘンリーの搭乗機。
グフドムの中間に当たる機体で、ヒートソードで武装した白兵戦向けの機体。
一時期はイフリート改の方が有名だった感がある。
ちなみに『CROSS DIMENSION』ではヒートソードを1本しか使わないが、『サイドストーリーズ』以降は他のシリーズに準拠して2刀流で使用している。
『サイドストーリーズ』ではこの機体を操作して戦いに挑むこととなる。

ヘンリー以外のウルフ・ガー隊の機体。
ゲーム的な事情もあるが、『CROSS DIMENSION』では全員結構強い。
また、同作ではパイロットによって使用武器を変えてきている。

ピクシーの噛ませにされた部隊がザクと共に使用。






戦いの結末

ノクトの嫌がらせによりボルクのピクシーは単機で出撃させられるも、イフリート以外のウルフ・ガー隊を撃墜する。
しかし、ヘンリーのイフリートもミデアの護衛をさせられていた2機のガンキャノンを破壊。
さらにノクト少佐はピクシーを置いてミデアでそのまま離脱してしまった。

もはや単機になっても向かってくるイフリートに疑問を持ちながらも戦うボルク。
部下への弔いや戦闘への歓喜に打ち震えながら戦うヘンリー。
ピクシーを駆る連邦の「はぐれ者」とイフリートを駆るジオンの「はぐれ者」の意地を賭けた最後の戦いが始まろうとしていた。

『CROSS DIMENSION』ではマルチエンディングとなっており、ボルクの勝敗によってエンディングが異なる。



『サイドストーリーズ』では最終的に必ずボルクが勝つようになっておりエンディングも『CROSS DIMENSION』と異なる。『GGENERATION GENESIS』もこちらに準拠。


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最終更新:2024年05月27日 02:42

*1 ただし、現場判断を優先してくれと頼み込んでいるだけで、命令違反もピクシー搭乗くらいで基本的には上官に従っている。

*2 ゲーム的には雑魚から先に倒した方が楽というヒント。

*3 判断ミスにより作戦が遅れたことへの責任という裏設定があるらしい

*4 揉み消してもらえなかったから左遷されたと思うのだが……

*5 これは本作が初期案で4部構成の物語だったことの名残。『GGENERATION GENESIS』のトロフィー名などでネタにされている。