ドラえもん のび太の地球交響楽

登録日:2024/03/08 Fri 00:00:00
更新日:2025/04/21 Mon 11:02:12
所要時間:約 8 分で読めます








ドレミファソラシ…

響き合う! ぼくらの「音」の大冒険


監督:今井一暁
脚本:内海照子
主題歌:Vaundy『タイムパラドックス』

『ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)』とは、2024年3月1日に公開された映画ドラえもんシリーズ第43作目の作品でありわさドラ映画としては18作目。
藤子・F・不二雄生誕90周年記念作。


【概要】

シリーズ初の「音楽」を題材とした映画で、そこに宇宙人との交流・のび太達の成長を取り入れたドラえもんらしい映画となっている。

「音」そのものが題材なだけあって、音に関連するひみつ道具が登場する他、OPでの音にまつわる歴史映像以外にも作中さまざまな場面に音楽に関連した要素が隠れている。
例えば、スズメが電線から飛び立つシーンひとつ取っても「電線が五線譜になっている」「電線に止まったスズメが音階を表している」など。
他にも町の人々が出すさまざまな音、音楽、歌がそこかしこで流れ、我々の生活がいかに音に囲まれているかが表現されており、
楽器隊のスペシャルサポーターとして葉加瀬太郎氏が参加するなど、とにかく音楽に力が入っている。

映画としても美しいビジュアル、音楽や演奏シーンの細やかな演出など見所も多く、音響の整った映画館での視聴が推奨される作品である。
近年の作品で採用されているドルビーアトモスでの上映がもっとも映える作品でもあり、上映館数こそ少ないが視聴した人からは大好評を得ている。
また、細やかな伏線回収も見どころのひとつで、序盤からそこかしこに散りばめられた伏線が回収されていく過程も好評。


反面、(そこまで強くはないが)芸術性重視である事や中盤のファーレの殿堂を復活させていくシーンが中弛みするとの声もあり、賛否両論
敵キャラも従来のような悪人ではなく宇宙生物の一種のような存在であり、空気砲などを使ったバトルシーンもほとんどない。
このあたりを許容できるかで評価が揺れる作風と言える。


脚本の内海照子氏によるノベライズ版も小学館ジュニア文庫より発売されている。
音とビジュアルを表現しきれない分、本編だとカットされている描写や細かい補完がなされたものとなっている。


※以下ネタバレが含まれますので、未鑑賞の方はご注意ください。

















【ストーリー】

4万年前、ひとりの原始人の少年が白鳥の群れが飛び立つと同時に、空から隕石が降ってくるのを目撃する。
少年が大人たちと共に現場へ駆けつけると、そこには花のような物体の中で眠る一人の赤ん坊の姿があった…。


現代、のび太達の学校では保護者を招いてのリコーダーの演奏会が開かれることになり、のび太達も音楽の授業で練習していた。
しかし、のび太はどうしても上手く吹くことが出来ず、ジャイアン達からも馬鹿にされてしまう。
家に帰ると、ドラえもんがあらかじめ日記で大量のどら焼きを食べていた。
道具の効果を聞いたのび太は、あらかじめ日記を使って翌日の日付で「今日わ音楽がなかった」と書いてしまう。

のび太の目論見通り音楽の授業は中止になるが、中途半端な書き方をしたせいで地球中から音楽がなくなってしまう。
あわててドラえもんがページを破り取ったおかげで無効化されたものの、結局普通にリコーダーを練習することに。
のび太が河原で一人練習をしていると、見知らぬ少女が現れ、のび太はその歌声に聞き惚れる。
翌日、ジャイアン達と一緒に練習をしていると再び現れた少女と即興のセッションをし、一同は音楽の楽しさを知った。

その夜、のび太達の元に届いた手紙で夜の音楽室に呼び出されると、なんと宇宙へ飛び出してしまい、人工衛星「ファーレの殿堂」へと連れていかれてしまう。
そこで例の少女ミッカとそのお世話ロボット・チャペックと出会った一同は、音楽の達人「ヴィルトゥオーゾ」として殿堂を復活させる手伝いをすることになってしまい……。



【登場人物】


【メインキャラクター】


ご存知ネコ型ロボット。
大量のどら焼きのためにあらかじめ日記を出してしまった、ある意味今回の元凶その1。
ムードもりあげ楽団やロボッターを駆使してのび太達とミッカのセッションの指揮をとったためヴィルトゥオーゾと認められる。
担当は指揮者。

音楽の授業をなくすためあらかじめ日記を使ってしまった今回の元凶その2。
リコーダーを吹こうとすると、なぜかピョローといったはずれた音を出してしまうため、のび太の「の」の音と馬鹿にされる。
音楽家ライセンスを使ってもなかなか上達しなかったが、みんなと一緒に演奏したいという気持ちは強くなっていき……。
担当はリコーダー。

他の二人と違ってのび太を励ます相変わらず優しいヒロイン。
ピアノを習っている設定が活かされており、夜の音楽室ではピアノに置かれていた楽譜を一発で弾いてみせた。
担当はボンゴ。演奏する曲によってマリンバなど他の打楽器に変化するため、音楽家ライセンスでは「パーカッション」表記。
ヴァイオリンじゃなくて本当に良かった。

のび太を馬鹿にしつつも何だかんだで練習に付き合ってくれるガキ大将。
音楽が題材ということで何度も歌おうとするが、そのたびにスネ夫に止められる。
スネ夫と共にファーレ工場に入り込んでしまった際に謎の化物と遭遇してしまう。
担当はチューバ。歌じゃなくて良かった。

同じくのび太の練習に付き合う。
歌おうとするジャイアンを毎回たしなめるが、つい本音が出てぶっ飛ばされてしまったりも……。
ファーレ工場ではワークナーの指示で化物をやっつけるが、足並みが揃わないせいで巨大な個体には無力だった。
担当はヴァイオリン。


【ゲストキャラクター】


  • ミッカ CV:平野莉亜菜
今回のゲストヒロイン。のび太達の前に現れた綺麗な歌声を持つ不思議な幼女。
薄緑の髪を三つ編みのツインテールにしており、テールの先には鈴のようなものが付いているため動くたびに音が鳴る。
その正体は4万年前に地球へ逃れてきたムシーカ星人の生き残り。
長い間冷凍睡眠させられていたため、チャペック以外のロボット達とは顔を合わせたことがなかった。
最初に出会ったのび太を「のほほんメガネ」と呼ぶ。スネ夫はその歌声をどこかで聞いたことがあるようだが……?
「ピピっと響いた♪」

  • チャペック CV:菊池こころ
ミッカのお世話をしているロボット。
ミッカとセッションを成功させたドラえもん達を伝説のヴィルトゥオーゾと見込んでファーレの殿堂へ招待する。
作曲家になるのが夢で、地球で聴いた音楽に影響を受けている。

  • マエストロヴェントー CV:吉川晃司
ファーレの殿堂の総支配人でチャペックの師匠。
かつて4万年前に殿堂が地球に辿り着いた際、冷凍睡眠させられたミッカの世話係としてチャペックを眠らせた。
名前の由来はおなじみルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。
なお、「マエストロ」とはイタリア語で「先生」、転じて「指揮者」の意。

  • モーツェル CV:田村睦心

ファーレの殿堂の水門部が復活すると共に目覚めたチャペックの知り合いのロボット。
バッチを「先生」と呼んでいる。なお、どこか女性を思わせるが男性型である。
名前の由来はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。

  • バッチ
モーツェルと一緒に水門部で眠っていたロボット。
旧式なのか他のロボットのように喋ることはできないが、頭部の音叉のようなものを回転させて感情表現をする。
名前の由来はヨハン・ゼバスティアン・バッハ

森林部奥にあるムシーカ人達の墓を守っている墓守のロボット。
ミッカ以外のムシーカ人が絶滅しているため泣き崩れていた。
名前の由来は滝廉太郎。

  • ワークナー CV:石丸幹二
ファーレ工場を取り仕切るロボット。オペラ口調で会話する。
工場の不調を勝手に入り込んできたジャイアンとスネ夫のせいと思い込んで「猫ふんじゃった」で二人を排除しようとするが、化物の襲撃を受け…。
名前の由来はリヒャルト・ワーグナー。
担当声優の石丸氏は東京藝術大学で声楽を学んだ後に劇団四季に在籍していた経歴があり、ワークナーの口調についてもスタッフに提案して作ったとの事。

  • ミーナ CV:芳根京子
スネ夫やジャイアンが熱を上げている歌姫。日本公演のため初来日する。



【用語】

  • ムシーカ星
ミッカの故郷である惑星。音楽による文明を築いていたが、4万年に起きた災厄によって滅びた。
生き残った人々はファーレの殿堂で地球に避難してきたが、冷凍睡眠させたミッカとロボット達を除いて絶滅してしまったらしい。
名前の由来はイタリア語で音楽を意味する「ムジカ(musica)」。

  • ファーレ
ムシーカ星の言葉で音楽のこと。
名前の由来はごく短い華やかな楽曲「ファンファーレ」。

  • ファーレの殿堂
4万年前にムシーカ星の人々が地球へやって来るのに使った移民船。人工衛星のような存在。
複数の楽器が合体したような形状をしている。
ファーレエネルギーによって稼働しており、ファーレを奏でることで施設が復活していく。

  • ファーレクリスタル
ムシーカ星で開発された音楽をエネルギーに変えるクリスタル。

  • 5人のヴィルトゥオーゾ
ミッカが所有する絵本に書かれた伝説の存在。
5人のヴィルトゥオーゾとロボット達が輪になってファーレを演奏し、世界を救うという物語。
「ヴィルトゥオーゾ」はイタリア語で「音楽の達人」の意。


【ひみつ道具】




余談

入場者特典は近年おなじみのスペシャルまんがBOOK。
また、デジタルふろくとしてスマホで遊べるアプリ「スマホでコエカタマリン」のダウンロード用QRコードが記載されている。

ちなみに本作のテーマ曲については「夢をかなえてドラえもん」も候補にあったとのこと。

ミッカ役の平野莉亜菜は東宝シンデレラオーディションのファイナリストで公開当時はなんと12歳。もちろん今作がデビュー作なのだが、見事に同役を演じきっており「ミッカちゃん可愛い」と評判になっている。

上映開始後、好評を受けて作中序盤ののび太達とミッカの出会いを描く約2分間のシーンが無料公開された。

ドラえもんで音……と言えば全ての音が消えた世界をもしもボックスで作り出すエピソード「音のない世界」があるが、残念ながら今回は採用されていない*1
終盤、全ての音が聞こえない宇宙空間でのび太が「ドラえも~~~ん」と口パクだけで叫ぶ場面はある。なおここのセリフはCMで聴けた。

タイトルから『らんま1/2』のOPのひとつ「地球オーケストラ」を思い出した人もいる模様。


エンドロール後の予告映像は、画家の格好をしたドラえもんが白いキャンバスに、中世の魔法使いのようなローブと杖を身に着けた自分の姿を描くと辺りの風景が変化し、そこには巨大な森のような場所と、湖の上に建てられた大きなお城が見えるというもの。







追記・修正は「夢をかなえてドラえもん」を聴きながらお願いします。


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最終更新:2025年04月21日 11:02

*1 作中の展開的にはこちらでは成立しないというのもあると思われるが。