ドラえもん のび太の絵世界物語

登録日:2025/03/14 Fri 05:16:30
更新日:2025/05/25 Sun 01:29:51
所要時間:約 10 分で読めます









みんなの色で、世界はあざやかになる。



監督:寺本幸代
脚本:伊藤公志
主題歌:あいみょん『スケッチ』
挿入歌:『君の夢を聞きながら、僕は笑えるアイデアを!』

『ドラえもん のび太の絵世界物語』とは、2025年3月7日に公開された映画『ドラえもん』シリーズの第44作目の作品で、わさドラ映画としては19作目。
また、映画『ドラえもん』45周年記念作品でもある。


【概要】

前作『のび太の地球交響楽』の「音楽」に続き、「」を題材にした芸術系作品。

作風としては「いつものドラえもん」で、絵を通って辿り着いた13世紀ヨーロッパの失われた国を舞台に、すこし不思議な冒険を繰り広げていき、ドラ映画おなじみの食事シーンやひみつ道具を使って秘密基地を作るといった夢のあるシーンもたっぷり用意されている。
勿論それだけではなく、舞台が13世紀なので当時の絵画事情の描写にも力が入れられており、染料を砕いて卵の黄身と混ぜ合わせて色を作るなど細かい描写もある。
制作にあたりイタリアでロケが行われたとのことで、舞台となるアートリア公国の美しい描写などに活かされている。

また、『のび太の月面探査記』以来、6年ぶりにオープニングが復活した。
おなじみのテーマソング『夢をかなえてドラえもん』の流れる中、ピカソや葛飾北斎といった著名な芸術家の絵の中で遊ぶという映像になっている。
それぞれの絵に合わせた描線や色付けにシーンごとに変わるなど非常に凝っており、ラストは原作漫画風のドラえもんで締めるという粋な演出も話題になった。

監督は『のび太のひみつ道具博物館』以来、12年ぶりの登板となる寺本幸代氏。
同作や『新鉄人兵団』の高評価もあって公開前から期待されていたが、公開翌日にはSNSで大絶賛という記事が出され、公開3日目での観客動員数57万人など期待に違わぬ滑り出しを見せている。


※以下ネタバレが含まれますので、未鑑賞の方はご注意ください。

















【あらすじ】

とあるところに、絵を描く少年と、少年を遊びにさそう少女がいた。
一向に描くのをやめようとしない少年にしびれをきらした少女は「迷いの森」へ向かおうとするが、突然空に開いた穴に吸い込まれてしまう。

現代。のび太達は夏休みの宿題で絵を描くための勉強として、ドラえもんが出した「はいりこみライト」で絵の中に入って遊んでいた。
ところが、どうしても上手く描けないのび太は飽きて描くのをやめてしまい、寝転がりながら消しゴムを投げて遊びはじめる。
「出来上がった絵でも降ってこないかな…」とつぶやくと、突然天井に穴が開き、消しゴムと入れ替わりで絵が落ちてきた!
ドラえもんと一緒にその絵の中に入ったのび太は、絵の中にいた不思議な色の瞳の少女・クレアと出会う。

迷いの森から帰れずにいたというクレアは、最近になって発見された絵画に描かれている場所が自分の故郷だと言う。
のび太達はクレアを故郷に帰すため絵の中を探索すると、入って来たのとは別の出口ができており、それを通り抜けるとなんと現実の13世紀ヨーロッパ「アートリア公国」へとタイムスリップしてしまう。

謎に包まれたアートリア公国と幻の色「アートリアブルー」を巡る大冒険がはじまる……!


【登場人物】

【メインキャラクター】


おなじみネコ型ロボット。
科学文明が発達していない13世紀が舞台のため、ひみつ道具は全て魔法ということにしており、魔法使いを名乗ってそれらしい格好をしている。
クレア達の話から、クレアは時空間の歪みに巻き込まれたタイムトリッパーではないかと推測する。

どうしても絵を上手く描けず、ジャイアン達からも描きかけの絵を馬鹿にされてしまうが、アートリア公国に着いた夜、マイロからアドバイスを貰ってドラえもんの絵を描き上げる。
クレアの偽物が現れた際は、怪しい行動を取るパルの正体を探るため尾行を担当する。

工事現場に迷い込んだクレアを助けたことから仲良くなった。
クレアの偽物が現れた際はクレアと共にジャイアンとスネ夫の救出を担当する。
「無生物さいみんメガホン」で生み出した空飛ぶ箒を見事に乗りこなすのも見どころ。

相変わらずのガキ大将。
スネ夫と一緒にアートリアブルーを探すため同行。
クレアを送り届けた翌日には、ドラえもんたちの留守にその目を盗んで勝手にアートリア公国に行くが、絵画泥棒と間違われて捕らえられてしまう。
転がってきたクレアを受け止めたりぶん投げたりと相変わらずの力持ち。

冒頭では自邸にある様々な絵に入ってみんなと遊んでいた。
アートリア公国が描かれた絵に使われた青色がダイヤモンド以上の価値があると聞き、アートリアブルーを探すも、ジャイアンと共に絵画泥棒と間違われて捕まり処刑されそうになる。
一方、チャイとクレアにチョコレートを振る舞ったほか、ジャイアンとともにのび太に仕掛けたあるイタズラが終盤のピンチを打開するきっかけになる、絵から抜け出た悪魔との戦いではスネ夫の行動がきっかけで敵の弱点が明らかになるなど要所要所で地味ながら貢献している。
なお後述するように、本作では出木杉が登場しないため、序盤の解説役はスネ夫の担当となっている。

ご存じのび太のママ。
絵から出てきたクレアが土足だったため家中を追いかけまわすハメに。

ご存じのび太のパパ。
序盤ではのび太の絵のモデルをしつつ、元画家志望だけあって息子に「良い絵」についてアドバイスするが、残業で疲れて眠ってしまったのだった。
ラストシーンでの一言はけだし名言。

【ゲストキャラクター】


  • クレア CV:和多田美咲
今作のゲストヒロインでアートリア公国の姫君。
一人称は「わらわ」で、のじゃロリのような口調で話す。
作中の発言から年齢は10歳と思われ、年相応にお転婆で表情がころころ変わる。ちなみにかぼちゃパンツ派。
金髪にアートリアブルーのように様々な色に変化する不思議な瞳を持つ。
また、夢見の力と呼ばれる未来予知能力も備えており、過去にも彼女の予知が現実になったことがあるらしい……。

4年前に神隠しに遭い、それ以来ずっと絵の中の迷いの森を彷徨っていたが、なぜか行方不明になった当時と同じ姿をしている。
偶然その絵がのび太のところに落ちてきたため、ドラえもん達の協力で故郷に帰還する。
静香に風呂に誘われた際には風呂は嫌いと拒否するなど、やや我儘な部分も見られるが……。
好物はスネ夫に貰ったチョコレートで、ドラえもんが用意した本格的な流しそうめんよりチョコのスイーツを選んで食べていた。

クレアが彷徨っていた迷いの森の絵に住んでいた、コウモリのような小さな悪魔。しっぽを掴まれるのが嫌い。

悪魔らしく生意気で意地悪だが、ドラえもん達の頼みを聞いてなんだかんだ協力するなど憎めない性格をしている。
クレアと一緒にスネ夫から貰ったチョコレートが好物で、悪魔らしく(?)「地獄のような美味しさ」と評していた。

クレアの幼馴染で画家を目指している少年。
2年前に亡くなった父親が宮廷画家をしていたため、現在も城に住まわせてもらっている。
やはり絵を描くのが大好きで、制作に夢中になると深夜まで作業をしていることもあるらしい。父親だけが在処を知っていたアートリアブルーを探している。
のび太に絵のアドバイスをし、イゼールとの決戦にも一緒に挑む。

ゲスト声優枠その1とその2。
クレアの両親でアートリア公国の国王夫妻。アートリア「公」国なのにアートリア「王」なのはご愛嬌。どうして大公にしなかったのか?
神隠しに遭ったクレアを当然心配しており、捜索を重ねても見つからずにいたためその悲しみようは大変なものだったという。
娘を連れ戻してくれたドラえもん達を歓迎し、宴を開いて感謝の意を示す。

  • パル CV:鈴鹿央士
ゲスト声優枠その3。
アートリア城に出入りする美術商人。マイロの腕を高く買っており、仲が良い。
しかし、クレアのことを13世紀にはまだ存在しない『不思議の国のアリス』のアリスのようだと喩える、ドラえもん一行の様子を物陰から見張るなど、どこか不審な行動を見せるが……?

アートリア王の傍に仕えているピエロのような姿の謎の男。
ドジで王からは「愛嬌のあるいいヤツ」と呼ばれているが……。
ぶっちゃけ名前がネタバレ。

  • 偽クレア
クレアが城に戻った翌日に現れたクレアそっくりの少女。
容姿や声はそっくりだが、振舞いはまったく異なり、冷徹で冷淡。
クレアを追い出し、ジャイアンとスネ夫を絵画泥棒として処刑しようとする。



【用語】

  • アートリア公国
13世紀ヨーロッパの南東地域に存在した芸術の国。アートリア城はアートリア湖の上に建っている。
近くには活火山が存在し、現代までに火山の噴火で亡びてしまう運命にある。
スネ夫が百科事典で調べても載っていなかったことから、その存在は完全に失われている模様。

  • アートリアブルー
火山活動でできたと言われるアートリア湖の湖面に見られる、様々な色に見える青色のこと。
見る角度によって様々な色に変化する偏光カラーになっており、現代で新たに発見されたアートリア公国を描いた絵画にも使用されていた。
このアートリア湖の色と同じ青色を作り出す幻の宝石が存在しており、ダイヤモンド以上の価値があるらしい。
その原料のありかや製造方法は代々の宮廷画家に伝わる秘事だが、マイロの父は息子に伝えられないままこの世を去ってしまい断絶状態にある。

  • 謎の絵
野比家の天井が開いて降って来た、森の中で迷子になっているクレアと、青いコウモリが描かれた謎の絵。
上部がアーチ状になっており、上下半分に分割されていて、上半分は13世紀のアートリア公国郊外に落ちていたため絵を通り抜けて時空移動することになった。
元はクレアが神隠しに遭って悲しむ国王夫妻を慰めるため、マイロの父親が描いたものらしい。

  • のび太の描いた絵
作中、のび太が夏休みの宿題のために描いた絵。
最初は寝そべっているパパの絵を描いたがいつものようにうまくいかなかった。
一方、マイロからのアドバイスを受けて描いたドラえもんの絵は、まだまだ未熟だが、とても楽しそうに、ドラえもんへの親しみの気持ちがたっぷり込められて描かれている。そしてこの絵は後に……。

  • イゼール
アートリア公国の伝説にある暗黒の騎士。
イゼールが復活する時、赤き竜が目覚め、世界は闇に沈む。
その後、青いコウモリと共に福音が訪れるとされている。
アートリア城内のギャラリーに昔の宮廷画家が描いたイゼール達の絵が飾られている。
名前の由来は恐らく絵画道具の「イーゼル」。


【ひみつ道具】




【余談】


  • 45周年記念ということで、パンフレットには本作を含む映画44作品の『ドラえもん』のイラストが描かれたムービーカードが収録されている。また、カードの裏側には各作品のロゴと場面写真が2枚ずつ用意されている。

  • 来場者特典はいろいろ!まんがBOOK。デジタルふろくは「はいりこみフォトフレーム」。更に絵が題材のため、『ドラえもん えかきうた』が収録されている。


  • 主題歌を担当したあいみょん氏は初の『ドラえもん』とのタイアップ。同氏はかねてから『ドラえもん』の大ファンで、またドラえもん役の水田氏とは10年来の交友関係がある。

  • エンドロール後の予告映像は、砂浜に来たドラえもんが、海中で海の生き物たちと交流する……というもの。



次作:???



追記・修正はドラえもんが大好きな人にお願いします。

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最終更新:2025年05月25日 01:29

*1 相方である宮澤たけし氏は序盤とエピローグに絵の評論家役で登場している。