センターフォワード(CF)
名前通り中央のFW1~2人。
実情はともかく、少なくともフォーメーション上は絶対に居るポジションの一つ。
ここまで概ね後ろのポジションから順に紹介してきたが、このポジションはFWの中でも最前列にして基本といえる前衛ポジションであるため、最初に紹介するものとする。
漫画とかで特記なく「ポジションはFW」等と言われていれば、基本的にCFがイメージされているだろう。
積み重ねられたイメージからこのポジション自体が「ストライカー」と言い換えられることも多いが、時代が進むにつれてCF=点取り屋、ストライカーという論理はあまり適切なものとは言えなくなっている。
背番号の伝統からこのポジション自体を「9番」と表現することもある。
ちなみに、野球のセンターも「Center Fielder」でCFなので、ネット上で「守備の上手いCF」みたいな文章を見た時にはたまに文脈の見極めが必要になる。
最もゴールに近く、最もシュートチャンスを得やすいポジションにつくだけに、シュートに関する能力は言うまでもなく重要なのだが、CFならではの重要な能力と言えるのが空中戦の強さ。
「サイドからのクロスボールに合わせる」という役割は、最前列の中央であるCFには自動的に求められる。
また、時に苦し紛れに、時にカウンターを狙って放たれる後方から前線へのロングパスも、やはりCFが受けるのが妥当である。
相手DFを背負ってボールを受け、攻め上がってきた味方に向けて折り返す等する「ポストプレー」は、一気にボールを前進させることができる強力なアクションである。
この局面を得意とするFW(特化した選手はターゲットFW、ターゲットマン等と呼ばれる)がいるチームは、困ったら前進もフィニッシュもCF狙ってロングボールをパナしときゃいいという切り札を常備できるし、逆にCFの空中戦能力が低いとこうした戦術を初めから捨てざるを得ない。
そのため、最低限「CBと競り合えるフィジカルと一定以上の身長(大体180cm程度)」が無いと不安視されやすい。
また、現代では全ポジション中最前であるCFですら、守備の意識を問われるのがアタリマエである。
自陣奥まで撤退するような積極守備まで求めるかはともかく、ハイプレスの「ファーストディフェンダー」として相手の守備陣に上手く突っかけて展開を制限し、後方の味方と連動して追い詰め、早い段階で奪い取ってビッグチャンスを創出できる「ショートカウンター」はもはや基本戦術であり、FW陣の守備貢献なしにショートカウンターの成立は難しい。
そのため、守備に「走れない」、もしくは「走らない」CFを擁するチームはそれだけで明確な不利を伴うこととなり、並大抵のプレーではそのツケは払えない。
それを通り越し、CFとしての通常求められる能力は妥協しても運動量のあるアタッカー(トップ下・ウイング含む)に献身を求めてCFに配するということも考えられなくはない。
日本代表における、岡崎慎司や前田大然・浅野拓磨がそれに近い。
ぶっちゃけ優秀なCFが居ない場合の妥協案の域は出ないが、それなりの効果を発揮できるのは10年代以降の日本代表の戦いぶりを見てもわかるだろう。
『DAYS』の柄本つくしはセンスのない素人というキャラ付けのため、主人公ながらこれに近いキャラである(柄本の配置は厳密にはWGで、聖蹟高校には正統派CFの水樹寿人が居るが)。
また、フォーメーション上CFにあたる選手が頻繁に攻撃的MF相当のポジションに下がる「偽9番(0トップ)」という戦術もある。「実情はともかく」という前置きは主にこの概念のせい。
空いたCFの担当エリアには適宜、偽9番本人やウイングなど周囲のポジションの選手が入り込んでいって決定機を狙う。
本来CFをマークするはずのCBの選手が「マークしに行って定位置を大きく離れ、ゴール前という危険なエリアを手薄にする」か「マークを諦める」かの選択を迫られるなど、相手を撹乱する効果がある。
偽9番を担当する選手はCF的な能力ではなく主に攻撃的MF的な能力を求められるため、CFとして十分な選手がいないチーム事情の苦肉の策という面もあるが、選手としての総合力はむしろより高く要求されるし特殊なチーム戦術となるので、単なる妥協だけで採用されることは少ない。
このように、昔から求められていたポストプレーによるアシスト、後述するような他のポジションのストライカー化や守備献身……といった要素が合わさり、
花形どころか黒子役という印象を与えることも多くなっている。
一方で、個人としてのゴール数が少なければ(アシスト数はさておき)どれだけチームの一員として欠かせない活躍をしていてもとやかく言われたり、「
ストライカーなら、たとえパスした方が有利な状況でも自分でシュートを打つべき」といった「信仰」も決してフィクションではなく、未だに根強く唱えられているものである。
ポストプレーや決定力に全振りした正統派・古典的な点取り屋CFはどうしても「不器用」なタイプになりがちで、現代サッカーではある程度のレベルまでなら一芸でもスタメンで活躍できるが、頂点を目指すとなるとスピードやテクニックなどの二物が天から与えられた選手でないと苦しく、同じくらいの総合力でも一芸に劣るが器用なタイプの方が活躍の場を得やすい。
……しかし、そうした潮流が育成組織にも反映されていった結果、現代では「古典的CFになれそうなタイプの子供が割を食ったり、古典的CFになるための教育が施されない」という形で他のポジションに比べてトップレベルの正統派CFがなかなか出てこないという嘆きが様々な国で聞かれる。
日本は慢性的にFW(CF)が足りないという長年の苦悩がおなじみであるが、ここは世界に追いついたというか世界が追いついたというか。
セカンドトップ(ST)
2トップのFWのうち0~1人、あるいは3-4-2-1の2など、CFに次ぐ中央のFW。
和製英語表現で、英語圏では「セカンドストライカー」が一般的。
また、日英どっちでも使われるものとして「シャドーストライカー(シャドー)」もあるが、奇しくもどっちも「SS」なので略した時に不都合がない。
余談だが、サッカーゲーム『FIFA(現:EA SPORTS FC)』シリーズの日本語版と英語版ではセンターフォワードを「ストライカー(ST)」と、セカンドトップ役を「センターフォワード(CF)」と表記していたためメチャクチャ紛らわしかった(最新作『FC25』ではセカンドトップがCAM(=OMF)に吸収される形で消滅した)。
もっぱらパワーよりスピードや機敏さに長けた小柄な選手が務める。
その名の通りCFに次ぐ位置を基本ポジションとしてCFの周囲でプレーし、競り合いで確保したボールを受け取って突撃したり、CFが相手を釣り出して空いたスペースを利用したり、逆にSTがかき回してCFのスペースを作ったりと、主にCFと連携して攻撃するポジションである。
こういった動きを、CFを惑星に見立て「衛星」と表現することもある。
MMO等のRPG的なロールで喩えれば同じ前衛でもCFがタンクでSTがダメージディーラー、みたいな関係性。
配置の通りCFと攻撃的MFの中間的なポジションであるため、当然ながら攻撃的MFタイプの就職先の一つでもあり、逆に言えば攻撃的MFのプレーもできると嬉しいところ。
……ただ、定義からもわかるようにこのポジションは戦術上必須ではない、本項で紹介している中ではニッチな部類のポジションである。OMF扱いされるのもさもありなん
攻守の組み立ての大事な部分に関わるのではなく、隙間を縫い、悪く言えば決定機という美味しいところをかっさらうというポジション。
「セカンドトップが適正な選手」と呼ばれるのは往々にして、センターフォワードとしてはフィジカルが足りない、ウイングとしては突破力が足りない、インサイドハーフとしては守備力が足りない……という消去法的・批評的な側面が含まれがちで、チームのフォーメーションで活かしてもらえないと居場所に苦しみがち。
ウイング(WG)
3トップのFWの外側の2人。ただし前述した通り、現代ではサイドハーフ=分類上はMFとなり、後ろにSB/WBがいるサイドの選手も事実上ウイングとして扱われる。
(ゲームではフォーメーションの差別化の関係もあってWGとSHは区別されやすいが、サッカーシミュの『Football Manager』だとポジションがGK含めた縦6列で分類されている中で「CF・STだけが1列目」「WGは攻撃的MF扱いの2列目」という分類をされている)
ウイングの選手を、「-er」をつけて「ウインガー(Winger)」と呼ぶことも多いが、英語圏ではポジション自体もWingerと呼ぶ。
古くはサイドバック同様軽んじられていたところがあり、役割と言えばサイドを駆け上がってクロスボール。
足の速いヤツが
ライン際のドリブルでもしてればいいようなポジションで、80年代あたりでは2トップが主流化したことで一時は存在自体が廃れ気味に。
「刹那で忘れちゃった まぁいいかこんなポジション」
2000年代くらいで息を吹き返すことになるが、同時にウイングはただサイドを走るだけではなく、MF的な守備や中央と関わるアクションも求められるようになっていく。
例によって多様化であるが、ここまでのポジションとは趣が異なるところがあり、現代でも主にドリブラーとして、圧倒的な「個人技」を求められる傾向が強い珍しいポジションである。
世界最高峰のクラブにはおおよそスターと言えるウイングがおり、誰もが派手なプレーで観客を沸かせる。
現代サッカーにおいて花形ポジションの座に最も近いのはウイングであると言っても過言ではないだろう。
横幅70m程度あるサッカーのフィールドで、サイドまで手広く守るのは簡単ではない。
とはいえゴールは中央にしかないので、サイドは最低限の人数にして中央に人数をかけて守り、守備組織のレベルが十分であれば、それだけでゴールを奪うのは相当難しくなる。
だが、仮にウイングが「1対1のドリブル勝負なら誰が相手でも抜き去れる」選手だったらどうだろうか。
相手チームはウイングにボールが渡った時に2対1で対応できるように、主な担当たるSBに加えてカバーに回れる2人目が必須となり、実際に渡ったら2人が1人に対して釘付けになってどこかを手薄にせざるを得ず、SBすら居ないという状況は避けねばならないためSBも下手に攻撃参加できなくなる。
挙げ句、それだけ厳重に対策をしたうえでぶち抜かれてしまえば、その時点で決定機の創出は避け得ない。
逆にウイングが取るに足らない選手であれば、中央に人数をかけるのが簡単になってしまう。
戦術が高度になったからこそ、その高度な守備を破るために個人技が求められるのがウイングである。
サイドでボールを持つポジションであるため、利き足の影響が特に大きく、歴史的にもそれが注目されてきたポジションである。
サイドからクロスを上げる場合、仮に左サイドだとして進行方向から右にあるゴール前に向かってボールを蹴り込みやすいのは左足。
右足で蹴ろうと思ったら右を向いて正面に捉えるか、難度の高いアウトサイドキックで上げる必要がある。
また、ドリブル時に左足でボールを扱う場合、よりライン際に近い、相手から遠い位置でボールを扱えるのでリスクが低い。
そのため、かつては(他のポジションも基本そうであるように)左ウイングは左利き、右ウイングは右利きが鉄板であった。
しかし、カットインを考慮することで話は大きく変わる。
右に向かってカットインした場合、ゴールの方向は左斜め前であり、左右の関係が逆転するのである。
その結果、むしろ左ウイングは右利き、右ウイングは左利きの方が多いくらいになった。
そうすると本来の役割である
大外(ライン際)からの攻撃をあまり行わず、カットインを重視したり、
そもそもポジショニング自体をやや内寄りに取るという選手が多くなる(そうした場合、大外にはSBがサポートに入ることになりがちなので、伝統的SBと相性が良い)。
こうした選手はCF以上に得点に絡みチームのトップスコアラーとなることも多く、
ウイングストライカー等と呼ばれる。その役割は時にST的であり、ポジションの境目が曖昧になった典型的な例。
2010年代のスーパースターである
クリスティアーノ・ロナウドと
リオネル・メッシも分類するならこの手合。
例によって攻撃的MF的な選手の就職先であり、パワーは劣っても俊敏でドリブルのできるタイプであれば、プレッシャーから解放されやすいサイドで創造力を発揮しつつWGの役割もこなせる。