鬼太郎国盗り物語

登録日:2025/01/01 Wed 00:00:00
更新日:2025/01/21 Tue 01:43:24
所要時間:約 6 分で読めます




1990年から1993年にかけて講談社コミックボンボン(途中からデラックスボンボンに移籍)で連載された『ゲゲゲの鬼太郎』の一シリーズ。
作者はもちろん水木しげるで、作画協力(要するにペン入れ担当)として村澤昌夫と森野達弥も関わっている。

【作品概要】

埋れ木版『悪魔くん』終了から7ヶ月後の1990年11月号から連載開始。
ジェームズ・チャーチワードの『失われたムー大陸』によって一躍名が知られた幻の大陸・ムー大陸地球空洞説をテーマにした鬼太郎シリーズ最大の長編。
シリーズ最大規模だけあって懐かしのキャラも含め様々な妖怪が登場し、鬼太郎ファミリーについても今回初めて明かされる情報が多い。

最新版ゲゲゲの鬼太郎』の反省を活かしてか水木が本格的に関与しており、水木本人のペンと思われる箇所も散見される。
その甲斐あって軽妙な下ネタなど、存分に水木イズムを感じられる作品に仕上がっておりファンからの評価も高い。*1

ストーリーは基本鬼太郎ファミリーとムー帝国の攻防に終始しているものの、「人面瘡の巻」や「妖怪大相撲の巻」など、所々で往年の鬼太郎短編をイメージした1話完結のエピソードが挟まるのも特色。
また第1話の大騒動や、金霊に狂わされた妖怪や人間達の描写はいかにもバブル期らしい豪快さを感じさせる。
一方でなんの伏線もなく寝太郎の正体が明かされるなど水木先生らしい大らかな筋運びもまた健在。

単行本は連載終了後の1996年にポプラ社文庫「鬼太郎のおばけ学校」(全5巻)、5期アニメ放送中の2007年に角川文庫(全3巻)と講談社ボンボンKC(全5巻)、そして水木先生没後の2017年に講談社「水木しげる漫画大全集」(全2巻)で計4回発行。この内ポプラ社版はなぜか初出時と各話サブタイトルが異なる。
また本作は掲載時にカラー口絵が作られなかったため、表紙にポプラ社版はデジタル彩色の扉絵、角川文庫版と大全集版は描き下ろしの扉絵の着彩原稿、ボンボンKC版は立体オブジェを使用している。

当時、放送開始予定の新作TVアニメの原作となる予定もあったが諸事情により頓挫。
ただしストーリーは4期準拠のゲーム『妖怪創造主現る!』に流用されており、原作準拠のゲーム『異聞妖怪奇譚』にもラグレシアが登場している。

【あらすじ】

中国から来た雷虎仙人を倒した鬼太郎に、竜仙人はいまだかつて体験したことのないすごい連中が動き出したらしいと告げる。
程なくして円盤から鬼太郎と同じ幽霊族の生き残りを名乗る男・寝太郎が出現、かつては海上で栄華を築いていたが地下に沈んだという大帝国・ムー帝国の存在を知らせて果てた。
鬼太郎ファミリーと地上を蹂躙しようとするムー帝国の決戦が今始まる!!

【主な登場人物】

複数話にわたり登場するキャラを中心に紹介。

ご存知我らが主人公。序盤で生き別れた兄に遭遇、彼の無念を晴らすためムー帝国との戦いを決断する。
大長編だけあって時間を加速させられて白骨化したり、全裸で緊縛された後ネズミ妖怪に変えられるなどリョナ描写にも磨きがかかっている。

ご存知鬼太郎の父親。今回も妖怪の知識を披露し鬼太郎達をサポート。
流石の彼も車の言葉までは分からないようだ。

ご存知ヒロイン。相変わらずねずみ男を制裁する役どころが多いが、終盤ではとある大役に任ぜられる。
パンチラスク水も披露する。

ご存知鬼太郎の悪友。本作でも金にがめついのは変わらないものの、ガジュマルの精戦では思わぬ成果を見せる。

  • 砂かけ婆、子なき爺
ご存知老人コンビ。砂かけは豊富な知識と砂太鼓や砂袋といった道具、子なきは親戚の政治家・金角副総理とのコネを活かして立ち回る。
子なきのキンタマが映るシーンも。

  • 一反木綿
ご存知乗り物。他のファミリーに比べると活躍はほとんどない。
終盤ではガイコツベビーの侠気に涙を流すという珍しいシーンが見られる。

  • ぬりかべ
ご存知パワーファイター。いきなり雷虎仙人に操られるという不憫な初登場だったものの、役小角との戦いやヤドカリマンモス戦においてファン感涙の大活躍を見せた。
本作で鼻がある事が判明する。

  • 呼子
ご存知(?)一つ目一本足の妖怪。初登場時だけ「山びこ」と呼ばれる。
原作では鬼太郎ファミリーとして長らく脇を固めてきたにもかかわらず大した活躍がなかった彼だが、鬼太郎達仲間を攫われなんと八面六臂の活躍を果たすことに
笠の下の頭も明らかになるぞ!

  • 油すまし
ご存知(?)ゲゲゲの森の村長。体から油を排出できる他、政府の会議に来賓として招待されたり相手の呪いを反射する能力「呪いがえし」など地味に活躍の場が多い。

  • ガイコツベビー
本作のゲストキャラクターでその名の通りガイコツのような顔をした赤ん坊。モチーフはメキシコの仮面だが画報によればヨーロッパ出身らしい。
当初はムー帝国の尖兵として登場したが、根は善良な性格で鬼太郎達と一戦交えたことで彼らの情に絆され寝返った。
初期原稿ではねずみ男の腕を食い千切る姿などが見え、凶悪な性格だったようだ。

  • ボゼ
ガイコツベビーに代わり登場したムー帝国の幹部で元ネタは九州の土俗神。
普段は手に縞模様のついた美女の姿をしているが、本来は元ネタ通りの姿。焦ると一人称が「ワシ」になるなど本来の性別は男性と思われる。
ねずみ男に1億円を払い、鬼太郎のチャンチャンコと下駄を奪わせた。

  • シーサー
3期ファンにはおなじみ『新編』『最新版』からの続投キャラ。本作では両親も登場。
ペットにするため拾った猫が妖怪・五徳猫に変身、大事件を巻き起こしてしまう。

かつては鬼太郎達と対立関係にあったが、ムー帝国によって復活させられた妖怪・凶王の陰謀を阻むため鬼太郎に協力。「ひとだま食い」を呼び出し敵が操る「ひとだま爆弾」を処理した。
妖怪大相撲でも審判として1コマだけ登場している。

  • 見上げ入道
妖怪学校の先生。なぜかやたら出番が多く、金霊に狂わされたりムーの飛行船を倒すため鬼太郎に協力したほか妖怪大相撲でもまわし姿を披露。

妖怪大相撲で鬼太郎と戦った、アニメファンにはおなじみの妖怪達。
特に四肢をニョキニョキニョキーッと出現させるまわし姿のベアード様の姿はインパクト抜群。後の『ゆる~いゲゲゲの鬼太郎』にも「おすもうベアード」名義で登場し、ファンを困惑・驚愕させた。
ある意味では6期のアレを先駆けていたと言える……のか?

  • 毒娘
猫娘の知人でねこいらず屋の店長を務める美女。毒の息で呪いを解いたり、毒のキスをして相手を衰弱させる事もできる。
ねずみ男と同じ半妖怪だけあって狡猾な性格。

  • 金角副総理
子なき爺の親戚で、海部首相の補佐を務める。モデルは当時の内閣で副総理だった金丸信。
首相に同調して危険を知らせた鬼太郎達を嘲笑するものの、いざ危険に晒されると助力を懇願するなど少々調子の良い性格。

  • 寝太郎
ムー帝国に30年間監禁されていた幽霊族の生き残りで、つまりは鬼太郎の兄。
卵型の円盤から現れたその顔は鬼太郎に瓜二つで、違いは体格と服装、髪のトーンぐらい。
妖怪・手洗い鬼に円盤ごと踏み潰されて液化、その後赤ん坊の姿として転生した。
実は目玉おやじと結託していたムー帝国の王子。

  • ムー帝国の総理大臣
先住民からムー帝国を簒奪した張本人で、シャチホコのような頭をしている。
側近の歯痛殿下とともに行動し、妖怪戦車やヤドカリマンモスを操って地上世界を侵略しようと企んだ。
しかし彼の背後にはさらなる黒幕がいることが示唆されている。

  • 創造主
動物を妖怪に進化させる能力で総理大臣達を生み出した全ての元凶。その姿は、『おばけナイター』に登場した審判そっくり。
体の中には無数の寄生虫を飼っており、体内に侵入した鬼太郎達を苦しめた。
正体は公害から生み出された存在であり、公害を生む人間に復讐するため地上を征服しようとしていたようだ。

他にもつるべ火、傘化け、ろくろ首、かみきり、毛目玉、モウリョウ、さら小僧、火車、元興寺*2、水虎*3、百目といった懐かしの面々が大勢登場する。

【その後の展開】

本作以降『鬼太郎』シリーズは青年誌であるビッグコミックと漫画サンデーに『鬼太郎霊団』、月刊少年ライバルに『ねずみ猫の巻』が掲載されたに留まっており、本作を最後に水木本人の手による連載形式での発表は一切行われなかった。そういう意味では、本作こそ鬼太郎サーガの集大成とみなすこともできるだろう。


「あっ アニヲタWkiだ これからは項目の追記・修正につとめねばならん」
鬼太郎たちは決意をあらたにした……

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年01月21日 01:43

*1 ただし「かめおさの巻」はネーム運びや台詞回しなどが他話と微妙に異なり、この回のみ森野がネームを担当した説が囁かれている。

*2 ご丁寧にも水木先生まで登場。

*3 『妖怪ラリー』に登場した中国系の個体と河童に似た和風の個体2種類が登場。