羊羮(ようかん)

登録日:2012/02/20(月) 21:43:20
更新日:2025/04/16 Wed 12:46:27
所要時間:約 5 分で読めます




羊羮(ようかん)とは、読んで字の如く羊の(あつもの)、すなわち 羊のスープ の事である。
なお、(あつもの)とはトロみのあるスープを指し、サラサラとした(たん)とは区別される。
紀元は中国の唐代とされるが、更にルーツを辿れば北部の遊牧民の料理であったようだ。


■作り方

鍋に水を張り、沸騰させたら羊の肉、もしくは羊の脚部と季節の野菜を入れる。
煮えたら臭み消しのショウガ等を入れ、と胡椒で味を整えれば完成。
羊の脂がスープに溶けだし自然にトロみが付くが、もしこれが物足りなければ小麦粉、もしくは片栗粉を水で溶いて加えよう。
茶色く濁ったスープはコクもあり美味。
ただ、成長しきったマトン肉は人によっては臭みが気になるかもしれないのでそういう人はラム肉を使おう。


■日本では

日本には鎌倉時代か室町時代に禅僧から伝えられたが、肉食文化の無い、
ましてや羊肉なんて食べようとも思わない日本には残念ながらこの羊スープは浸透しなかった。

よって、日本では伝来した途端に途絶えてしまった料理という事になる。

うーん。残念。




追記・修正はこの羊スープを食べてみたかった人がお願いします。

この項目が面白かったなら……ヽ|・∀・|ノ













……と、言いたいが。
禅僧達は元々肉など(表向きは)食べなかったので、このレシピを聞いたのは良かったが、
代わりに豆を使ってスープを作り自分達の食事としていたらしい。
トロみは葛粉で代用していたとか。あるいは、もともと精進料理の一種として伝来したのかもしれない。

その後、茶道文化が日本に興ると点心としてこの豆のスープが出された。
そして、お茶に合うようにとこれを甘くし、更に葛粉を利用して煮こごりの状態にしお茶菓子として提供しやすくしたとされる。

そう、これが現在の和菓子の中の和菓子として確固たる地位を得た「羊羮」の誕生である。
未だに「羊のトロみつきスープ」を名乗っているのは元の料理がそれであった名残なのだ。

だが、現在の黒くて甘いあの羊羮を見て原型を想像出来る者はいまい。
茶菓子として生まれたばかりの頃の羊羮は甘く煮た小豆(甘味は貴重な砂糖でなく甘葛で付けていた)に、
葛粉を加えて蒸した「蒸し羊羮」であったが、後に寒天を利用した「練羊羮」が発生し広まっていったとされる。
一応日本統治時代の台湾には日本から羊羹が持ち込まれ中国文化圏に逆流しているため
「なんか日本では甘い点心になっちゃったらしい羊羹(yánggēng)として現在の中国でも売られて定着している。
なお羊羹の凝固には寒天や葛粉のみならず、小麦粉や餅粉、場合によってはタピオカ澱粉や蕨粉なども使用されることもある。

一方、お菓子となったことで原型にはない効果が誕生した。保存性である。
真空パックなどない当時、羊羹は時間をおくと表面に結晶化した糖の膜ができてシャリシャリした食感と共に腐敗から守る効果が生まれた。
これにより殿様への献上品や参勤交代のお供としても重宝した。
以降も、カロリー摂取や携帯性、食べやすさにも優れている点から、戦時中から現代まで携行食や非常食として重宝されている。
極寒でも凍らない、水無しでも食べられるといった点からエベレスト登山の案内人(シェルパ)からも好評だとか。

ともかく。おやつ、手土産、贈答品、携行食、保存食。どんなシーンにもピタリとハマる、そんな万能な素晴らしいお菓子である。
特にやらかしを誰かにお詫びに行くときは虎屋の羊羹が鉄板とされる。


■羊羮の種類、派生品

◆練羊羹

現在最もオーソドックスな羊羹。文字通り小豆あん、砂糖、寒天を練りながら作る。
水羊羹より水分が少ないため食べごたえがある。
とはいえ、よぉ噛んで食べるほどではない。
携行食や非常食として重宝されているのもこれ。


◆芋羊羮

蒸し羊羮からの派生。さつまいもを蒸して熱い内に四角に固めたもの。寒天は必ずしも入る訳ではない。
明治時代、練羊羮が高価であった事から庶民の為に作られた浅草生まれの江戸っ子の味。

ただし前身となる駄菓子は江戸時代から存在していて、酒井伴四郎が甘藷と栗を一緒に練り固めた芋羹なるものを日記に書き残している。
48種類が数えられる羹の中には芋羹もあり、料理名としては安土桃山時代以前から存在していた。
鎌倉時代に中国から伝来した当時の芋羹は羊羹と同様に汁物であり、具材も江戸時代に広まった甘藷ではなく里芋を用いている。
中国の一部地方で春節(旧正月)に毛芋(里芋)・青菜・清白(大根)・甘藷・麺類などの入った毛芋羹を食する習慣があったことから、餅雑煮の先祖だったとする説もある。
日本でも餅無し正月では里芋を使った芋吸物や芋雑煮が食されていて、正月用に拵える里芋の塩炊きや神饌にする里芋と大根の水煮を芋羹と称する地域もあった。

生まれた星購入店舗の組み合わせにより、体の大きさが変わることがある


ういろう

米粉に砂糖を練りあわせ小麦粉やわらび粉を混ぜて蒸して作られる。これも蒸し羊羮からの派生である。
ただし、似たような郷土菓子は全国各地で独立発祥している。どこにもある米で菓子を作ろうとするのは普遍的な発想のようだ。


◆水羊羮

練羊羮からの派生。人によっては練羊羹より水羊羹の方がポピュラーかもしれない。
普通の羊羮より寒天の量を少なくする分水分を多くし、柔らかく爽やかに作る。夏の暑い最中にはよく冷やして食べよう。
一方福井県栃木県の一部地域では、夏より冬の風物詩として有名。というか冷蔵技術が発展するまでは、寒天が出来上がる冬に作るお菓子だったのだ。


◆丁稚羊羮

近畿地方における安価な羊羮の名称。小豆の出汁のみを使う等してコストを押さえてある。
小麦粉か上新粉(白玉粉で代用する場合もある)で練り固める蒸し羊羹。
だが、福井県や滋賀県の信楽では水羊羹を丁稚羊羹と称することもある。


◆塩羊羹

切り口を開けるとにゅるっと出てくる一口サイズの羊羹。スーパーの菓子コーナー等で購入できる。おばあちゃんのおとも。


◆玉羊羹

小さな風船を爪楊枝で刺すとコロンと出てくるピンポン玉サイズの羊羹。
日中戦争時に、戦地でも柔らかい羊羹が食べられるようにと開発したのが始まり。当時は風船の紐を解いて現代の一口羊羹のように食べていた。


◆えいようかん

あずきバーでお馴染み、井村屋驚異の技術力が5年という長期保存を可能とした羊羹界の革命児。*1
糖分や塩分が多量に含まれていると腐敗菌の活動を阻止する効果があるので、羊羹は日持ちしやすく一般の和菓子屋さんにとっては未開封消費期限が2年くらいの羊羹を作るのは難しくない。
だが、もし見積もりを誤って食中毒を起こすと問題なのであえて余裕を持った消費期限にしている。
もちろん消費期限を5年まで伸ばしたのは大したものである。
災害等の備蓄用非常食として最適なアイテムである。なお、これ一本(60g)でご飯茶碗一杯分(171kcal)のカロリー摂取が可能。
長期避難生活の甘いものの欲求に答えるだけではなく、エネルギー源としても優秀な一品。非常持ち出し袋に飲料水やカンパンと一緒にどうぞ。
ちなみに航空自衛隊が井村屋と共同で開発した
長期保存可能で自衛官が高温下で持っても溶けないチョコレート味の高カロリー保存食として JASDF羊羹 が存在し
おそらくそれを元に改良して一般販売したチョコえいようかんがある。


◆シベリア(シベリヤ)

カステラの間に羊羹やあんこが挟まった菓子。
明治~大正時代に広まったが、現在では作っているところが少ない。
見た目はサンドイッチのようだが、厚さ半分に切ったカステラの下の部分を型に入れ、羊羹液を流し込み、カステラの上半分をのせて冷やし固めている。
しっとりしたカステラと甘い羊羹のコントラストが絶妙。
実は現在に至るまで発祥地、考案者、名称由来、分類(和菓子?菓子パン?ケーキ?)不明の謎大き菓子。少なくともあんこが存在しないロシアのシベリア発祥ではないのは確かである。


もりのようかん(森の洋館/羊羹)

※アイテムのもりのようかん
シンオウ地方ひいては『ポケモン』シリーズ屈指のホラースポット
アイテム(お土産)としても登場し、遥か離れたイッシュ地方でもアララギパパから貰える。
なおアイテムの方は正式な表記は「もりのヨウカン」。
英語では悲しいかな羊羹ではなくなっている(もっとも煎餅や饅頭と違い、洒落を兼ねているので和風のものでなくても変更は避けられない。)
洋館のほうは「Old Chateau(古城)」、羊羹の方は「Old Gateau(古いケーキ)」と韻を踏んでいる。


◆煮凝り

煮魚の煮汁が朝の寒い日に固まっているあれ。
元の羊羹に近い物はこれだと言われている。


◆アスピック

↑の西洋版、名前の意味はフランス語で「コブラ」を意味する。
どこぞの蛇の王と名前が同じなのもこれで納得だろう。


◆ようかんマン

殺伐としたスレに
救世主が!
  __
ヽ|・∀・|ノようかんマン
 |__|
  ||

ありがとう
ようかんマン!

 i~~~|
 |__|
  ||



■作り方

特に簡単なのが「水羊羮」
店で買ってきた棒寒天をちぎって沸騰したお湯に溶かし、缶詰の餡子を入れて煮て、型に流して冷やし固めれば完成である。
今年の夏に如何でしょう?


なお糖分の塊なので、いくら美味しいからって一気に大量に食べると体内の糖分の量が跳ね上がって危険なことになるので注意。







『追記修正を……』
『お願いします☆』

↑※羊羹のパッケージです

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年04月16日 12:46

*1 通常の羊羹は和菓子屋などで売られているものは精々数日、コンビニ等で売られている個包装フィルム式のものでも1年程度の消費期限である。