ディメンション・スライド(遊戯王OCG)

登録日:2025/09/28 Sun 23:17:25
更新日:2025/10/04 Sat 00:59:59
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《ディメンション・スライド》とは、遊戯王OCGのカードの1枚である。


概要

通常罠
自分フィールド上にモンスターが特殊召喚された時に発動できる。
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してゲームから除外する。
その特殊召喚がエクシーズ召喚だった場合、このカードはセットしたターンに発動できる。

初出は第7期第8弾「GALACTIC OVERLORD」。
自分の場にモンスターが特殊召喚された時、相手の場の表側表示モンスター1体を除外する効果を持つ。

効果自体はモンスター1体の除去とシンプル。
「時~できる」なのでタイミングを逃し得るのが難点だが、方法を問わず特殊召喚全般がトリガーとなるため、発動自体は比較的容易。
また、除外による除去である為、破壊やバウンスよりも再利用が難しい場合が多く、破壊耐性を無視して除去が出来る点もプラスなポイントになっている。
ちなみに古いカードテキストのため分かり難いかもしれないが、「選択して」とあるように、発動時に対象を取る効果となっている。

なお、発動条件は「自分の場にモンスターが特殊召喚される」事である為、相手が自分の場に壊獣などを特殊召喚してきた場合でも満たせる。
相手がモンスターの除去や何らかのデメリットの押しつけを狙ってモンスターを出した際に、思わぬ一撃を喰らわせることができる。
だがそもそもの話、壊獣など除去を兼ねた送りつけモンスターは、捲りの第一手目として使われることも多く、加えて場に出された時点で大なり小なりこちらに損害が出ているもの。
相手の場にもモンスターが求められるこのカード1枚だけではリカバーとしては不足なので、カウンター気味に使えるとはいえ過信は禁物。
また、対象にできるのは相手の場の表側表示モンスター限定なので、送りつけられたモンスターを即座に除去することは不可能という点にも注意。


独自性

ここまでの紹介では、良く言えば汎用的、悪く言えば凡庸な単体除去罠のようだが、このカードには特異な強みがある。
それは「発動のトリガーとする特殊召喚がX召喚であるなら、セットしたターンでも発動できる」点。

展開にX召喚が組み込まれているデッキやテーマであればこの条件を満たすのは容易であり、第7期のカードなので、1ターン中の発動回数に制限もない。
1回の特殊召喚時に複数枚同時に発動することで、相手の場のモンスターをごっそり持っていく事も可能になっている。
通常の用途として罠カードとして使うもよし、予めセットして擬似的な速攻魔法として使うもよしと、フレキシブルな使用が見込める。

またカードのセットは優先権を放棄する行為ではないため、セット後に相手に別のカードを発動されて発動タイミングを失うという事は無く、使い勝手としては手札から発動する場合と大差ない形で伏せた直後にすぐ使用する事が出来る。

なお、「セットしたターンに発動できる」効果は基本的に自分のターンに使う事を前提としているが、相手ターンにこのカードがセットされた場合でも、何らかの方法でX召喚が行えればそのターン中に効果を使える。

このカードを運用する上で、特に相性のいいデッキとしては次のような例が挙げられる。

十二獣モンスター1体から即座にX召喚ができる為、モンスターを並べる手間を省きやすい。
またモンスターの効果の性質上、打点が低くなりがちなので、攻撃して次のメインフェイズ2に《天霆號アーゼウス》を出したい場合、ワイルドボウの効果が封じられた時に攻撃を行う際の保険や、予めこのカードで相手モンスター除去しておくことで、アーゼウスの全体除去を行う為のリソースを温存するなどの用途として使うことも出来る。

複数のXモンスターと、通常罠の発動をトリガーに蟲惑魔をリクルートできるLモンスターの《セラの蟲惑魔》を擁する罠テーマ。
「落とし穴」「ホール」系の罠カードの除去をすり抜けてきたモンスターに対するダメ押しの除去として有効な働きが見込める。
効果で除外されたモンスターに干渉できる《シトリスの蟲惑魔》《アロメルスの蟲惑魔》が存在する点でも相性が良い。
除外したモンスターをX素材にして再利用を更に困難にしたり、自分の場に特殊召喚して有効活用したりできる。

これらに限らず、X召喚主体のデッキであればセットしたターンの発動が出来る可能性は十分ある為、構築時の枠に余裕がある場合入れてみると面白いかもしれない。


裁定について

このカードに限った話ではないが、「魔法・罠をセットしたターンに使用できる」効果・効果外テキストについては、覚えておきたい裁定が幾つかある。
例えば、通常罠をセットしたターンに発動できるようにする《王家の神殿》《白銀の城の狂時計》 と併用する場合。

  • 《王家の神殿》
永続魔法
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分は罠カード1枚をセットしたターンに発動できる。
(2):自分フィールドの表側表示の「聖獣セルケト」1体とこのカードを墓地へ送って発動できる。
手札・デッキのモンスター1体またはEXデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する。

  • 白銀の城の狂時計(ラビュリンス・クックロック)
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン、自分フィールドに「ラビュリンス」モンスターが存在する場合、自分は通常罠カード1枚をセットしたターンでも発動できる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードが墓地に存在する状態で、「白銀の城の狂時計」以外の「ラビュリンス」カードの効果または通常罠カードを自分が発動するために、手札のカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
このカードを手札に加えるか特殊召喚する。

自分の場に「ラビュリンス」モンスター、(1)未使用の《王家の神殿》、このターンにセットした《ディメンション・スライド》が存在し、手札の《白銀の城の狂時計》の(1)を発動したとする。
その状況で、セットした《ディメンション・スライド》をX召喚をトリガーとして発動する場合、《王家の神殿》《白銀の城の狂時計》《ディメンション・スライド》のどの効果で発動したことにするかを自分で選ぶことができる。
ただし、混乱を招かず適切な処理ができるよう、どの効果を適用して発動するのかを、相手にきちんと伝えなければならない。

もっとも、セットとX召喚さえできれば1ターンに何度でも発動できるこのカードに対して、ターン1制限の付いている《王家の神殿》や《白銀の城の狂時計》の(1)を使用するのはメリットが少ない。
基本的には《ディメンション・スライド》自身の効果で発動する事になるだろう。

また、デッキから任意の通常魔法・通常罠をセットできる《三戦の号》の効果でセットする場合。

  • 《三戦の号》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):このターンに相手がモンスターの効果を発動している場合に発動できる。
デッキから「三戦の号」以外の通常魔法・通常罠カード1枚を自分フィールドにセットする。
この効果でセットしたカードはこのターン発動できない。
相手フィールドにモンスターが存在する場合、セットせず手札に加える事もできる。

この効果で《ディメンション・スライド》をデッキから直接セットしたとする。
その場合、X召喚に成功しても、その《ディメンション・スライド》はこのターン中発動できない。
《王家の神殿》などと併用しても、発動は不可能となっている。


弱点

そんなこのカードだが、弱点もいくつか存在している。

1つ目としては「発動条件による制約」が挙げられる。
「自分の場にモンスターが特殊召喚された時」と言うこのカードの発動条件は確かに緩いものではあるのだが、それでもその制約上好きなタイミングで発動が出来るわけではない。

通常罠でモンスター1体を除去したい場合、《強制脱出装置》が存在する。

  • 《強制脱出装置》
通常罠
(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に戻す。

手札へ戻すか除外するかの違いはあるものの、フリーチェーンであるため、柔軟性はこちらの方が上である。

また特殊召喚についてだが、昨今の遊戯王で相手ターンにモンスターを展開する手段が増えてきてはいるものの、相手ターンになると使うタイミングが限られてくる。
相手への奇襲を目的に設計される罠カードでは、この発動条件は状況によってはかなりの足枷になり得る要素となる。

上述した通り、セットしたターンに発動が出来るという部分によって罠カードゆえのタイムラグを無視できる点は明確な強みであるため、ここで差別化を……と言いたいところだが、その独自性ゆえに少し困った問題点が挙げられる。


2つ目は「メインフェイズ1の動きが不自然になりがち」になる点である。

遊戯王OCGや遊戯王マスターデュエルをプレイしたことのある人なら分かるだろうが、基本的には魔法・罠カードをセットする場合、メインフェイズ2に行うのが定石とされている。

ところがこのカードは自分のターン中に発動したい場合、どうしてもメインフェイズ1にセットする事が多くなるため、カードを伏せるタイミングとして不自然に思われ、何かしらの警戒をさせてしまう可能性がある。
しかし見ようによっては通常と異なるアクションを行うことで相手に対して動揺を誘ったり、リソースの浪費を誘発したりするなどの心理的な駆け引きに持ち込める可能性もある。
また、先ほど挙げた【蟲惑魔】もそうだが、【M∀LICE】や【ブラック・マジシャン】など、戦略的な理由があって、初手にカードをセットするデッキも少なくはない。
この駆け引きの部分については、使い手の腕前が試されるところになる。

この様にクセの強い部分も多くあるが、セットしたターンに発動できる点などを有効に使用できれば、強力な効果になるのは間違いないので、X召喚を多用するデッキなどで、枠に空きがある人は入れてみると面白い働きをするかもしれない。


余談


  • 自身の効果で「セットしたターン中に発動できる」よう設定された初のカードになっている。
    「セットしたターン中に発動できる罠カード」は2025年9月現在、遊戯王OCG内で僅か11種類しか存在しておらず、貴重な効果である事がよく分かるだろう。

  • イラストでは《始祖の守護者ティラス》が《暗黒界の龍神 グラファ》を異次元に飛ばしている。
    《暗黒界の龍神 グラファ》は墓地からの自己蘇生が可能なカードであり、それを封じる除外はあちらにとって強烈な痛手となるためメタとしては有効な一手となっている。


追記・修正は土下座をして床にセットされた後に行って、wiki篭りを異次元に飛ばしながらお願い致します。


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最終更新:2025年10月04日 00:59