仮面ライダースーパー1

登録日:2025/10/17 Fri 19:00:00
更新日:2025/10/27 Mon 18:14:43
所要時間:約 30 分で読めます






NASAの科学者・沖一也は惑星開発用の改造人間である


彼は宇宙においてその力を活かす事に人類の未来を見出していた


しかし、闇の王国・ドグマの存在を知った事で


仮面ライダースーパー1となったのだ






走れ、風のように

飛べ、鳥のように

叫べ、虎のように


人類の未来を賭けて、ドグマ王国を打ち倒せ!




仮面ライダースーパー1』とは、1980年10月17日から1981年10月3日まで夜19時に放送された特撮テレビドラマである。
毎日放送と東映がタッグを組み、石ノ森章太郎のキャラクターデザインで送る「仮面ライダーシリーズ」の第7作。
いわゆる昭和2期シリーズの3部作としては2作目にあたる。




【概要】

前作は『仮面ライダー(新)』。*1
後の世に栄光の7人ライダーとして語り継がれた1期シリーズの終了から、4年間の静寂を破り復活した2期シリーズの先鋒である。

序盤は原点回帰と新要素の空を飛ぶ能力という伝統と革新の折り合いが上手くつかず苦戦していたが、ライダーの外見や戦法の大胆な変化や世界観の陽性化がもたらしたバラエティ豊かな路線による立て直しが好評を博し、新年度の4月まで放送する2年目の延長案が溯上に上がる程の人気作品となった。役者や制作の都合も合わさり、最終的に10月から次作品に切り替える方針に軟着陸する。

こうして大空のスカイライダーからバトンを受け取った本作は、宇宙という更なる領域を目指し、野心的な挑戦要素を数多く盛り込む。



  • 悪の組織の被害の産物だった改造人間は、人類発展の宇宙開発という夢のために自ら志願して平和目的の機関で誕生(変身の積極性)

  • 原点回帰ゆえにベーシックな徒手空拳スタイルとなった前作に対し、少林拳という明確な闘法の方向性(カンフーアクション)

  • 惑星開発用改造人間という設定に紐づいた多種多様な装備(特殊能力を持った5つの腕)

この設定に際してそれまでは大学生が常であった主人公は20代後半のアストロノーツになり、更にオンロードとオフロードのバイクを専用で2台使い分けるなど独創性を徹底的に追求し、てんこ盛り全部乗せの個性の塊となった。
企画書の冒頭ではその特殊な成り立ちを「人類の明日を守るためのヒーロー」と端的に述べている。




これまでの仮面ライダーを超えた存在を目指して生まれた主人公は、その通称を「スーパーライダー」
初代仮面ライダーが放映された70年代を通り過ぎ、1980年という新時代を担う1番手。
古来伝承の拳法と宇宙開発の最新技術の温故知新で戦う新たな1号。

こうして主人公の名前は仮面ライダースーパー1となった。


【あらすじ】

アメリカに居を構える、国際宇宙開発研究所。
そこでは、食糧難や人口増加など21世紀に起こりうる諸問題への対策を思案していた。
やがて人類の未来を宇宙に託し、宇宙進出の足がかりにすべく惑星S1での前進基地の建設に乗り出す。
しかし未知の惑星S1は人間には過酷な環境下である可能性が高く、如何なる危険があるか想像もつかない。
そこで、如何なる障害・環境にも対応できる改造人間を生み出すべく、開発局に秘密分署・改造人間プロジェクトチームを発足、研究に着手した。

研究員の1人である主人公・沖一也は、その第1号への改造手術を自ら志願する。
科学者である両親を亡くし、孤児として研究所で育った一也は、やはり人類の平和を宇宙に夢見た父の意思を継ぐ事を決意していた。
2度と人間には戻れないと承知の上で、研究所長のヘンリー博士に頼み込む一也。
一也の育ての親でもある博士はその気持ちを汲み、手術に踏み切った。

手術は成功し、眩い光と共に生まれ変わった一也。
惑星S1を目的とした銀のボディのコードネームはスーパー1。
惑星用改造人間・第1号である。



しかし一也の運命は、ドグマ王国を名乗る謎の集団の来訪によって一変した。
人類を滅亡の危機から救い、ユートピアの建設を目指すと嘯く闇の王国。
しかしその思想は劣った人間を抹殺して優れた者を選別する優生思想の極地であった。

優秀な人材としてスーパー1提供を求められるも、研究所とは真逆の思想をヘンリー博士は断固として拒否。
不服従の報復として研究所は炎に包まれる。

恩師や育った故郷を守るために一也はスーパー1へと姿を変えようとするが、どうしてもそれができない。
一也の変身は巨大なコンピューターによって制御されていた。


(駄目だ…変身できない!)

(変身さえできたら皆を助ける事ができるのに…)


(変身だ!変身せよ沖一也!!)


しかし奇跡は起こらない。
生身の抵抗虚しく、ヘンリー博士も含めた職員と研究施設は為す術なく全滅した。


だが、一也だけは無意識のうちにスーパー1へと姿を変えて危機を脱する。
炎の海を生き延び、制御コンピューター無しでも変化した謎の答えを求めて、一也は秩父連山の赤心寺の門を叩く。
中国拳法である赤心少林拳の荒修行によって、変身の極意を探ろうとしていた。

半年の修練にも成果が見出せず、更に東京にドグマ出現の報せを聞き焦る一也。
もはや猶予もなく、赤心寺の老師・玄海は100人組み手による極限の鍛錬「地獄稽古」を申し渡す。
老師自らが最後の100人目を務めた過酷な修行の末、命の危機に瀕して咄嗟に変身ポーズを起動させる一也。
変身の極意とは、命の危機すら超越した無念無双の境地に胎動する呼吸だったのである。

一也は修行を終え、ドグマ打倒に赴く。
ヘンリー博士や研究所の仇であるドグマ怪人・ファイヤーコングの正体は猿渡剛介という人間で、拳法・猿渡拳の使い手。
改造人間の争いは、拳法家同士の精神のぶつかり合いでもあった。

猿渡拳と怪人の能力である火炎放射の合わせ技で攻め立てるファイヤーコングに、赤心少林拳の格闘技と宇宙開発用の装備・ファイブハンドを戦闘に転用して対抗するスーパー1は、必殺のキックでこれを撃破。
一部始終を見ていた谷源次郎は、その姿に「仮面ライダー」見出す。

かつて悪の組織ネオショッカーと戦い、星となった8人の勇者の生まれ変わり。
歴代の戦士たちの戦いを間近で見てきた谷の命名によって、「仮面ライダースーパー1」は誕生した。



スーパー1こそ、仮面ライダースーパー1

スーパーライダーだ

いま、悪の王国・ドグマ打倒を胸に秘めて

スーパーライダーは疾走を開始した

【作風】

初代『仮面ライダー』より前作の『スカイライダー』の前半まで大半の作品でメインライターを務めた伊上勝が諸々の事情で降板*2し、前作の中盤から徐々に頭角を顕し最終回まで取りまとめた江連卓が初めて一貫してメインライターを担当。
その作風はヒーローの"変身"という概念を番組を30分で終わらせる便利な道具として扱う事を好まず、苦難や逆境を乗り越え、己に打ち克った先に訪れる象徴と捉えていた。

そうした"江連節"とでもいうべき精神性を重視する作風が如実に現れたのが番組前半2クールの修行路線である。
沖一也はドグマ怪人の特異な武器や拳法に敗北すると修行を行い、時に赤心寺の老師に教えを請う。
鍛錬によってギリギリまで己の身を削り、苦難を耐え凌ぎ、敵ではなく未熟な己に打ち克つ。
それこそが江連脚本でいうところの"変身"であり、物語の導入部の修行が変身の呼吸なのは象徴的である。

江連卓はその精神性を北派少林拳の「梅花拳」に準え、スーパー1は梅花の心を持った仮面ライダーとして創造された。
冬はジッと耐え、春には慎み深く華を咲かせる梅の花は、艱難辛苦に耐えてやがて修行により成長する沖一也の生き方その物なのだ。
そんな作劇のモチーフである梅花拳を修行の成果として明確に登場させたのが12話と13話に跨ぐ前後編の「梅花の型」である。


スーパー1はそう簡単には変身しない。いや、出来ないのだ。

人間としての知力体力の全てを使い果たして

敗北が決定的になって始めて変身モードが胎動する。

江連卓

一方でこうした作品への拘りの強さは「一也の成長を描く上で歴代ライダー要素は不要」という持論に繋がり、同じく脚本を務めた前作『スカイライダー』の最終回も揉めに揉めた末ライダーマン形式の空中で爆発して行方不明(いざとなったら再登場できる)という形に落ち着くまで上役の平山プロデューサーと議論を紛糾させた。この展開は「仮面ライダーが死んだ」と多くの子供たちを勘違いさせると共にトラウマに陥らせた*3が、最終的に劇場版でのワンシーンで8人ライダーを出す事で子供たちの夢はギリギリの所で守られ、それすらも不承不承であったという逸話が残っている。

しかしこうした江連卓の拘り、悪く言えば頑迷さがスーパー1の個性を生み出した事もまた一面の事実であり、スーパー1はテレビシリーズの1年間を先輩ライダーの力を借りずに1人で戦い抜いた。

【関連用語】


  • 仮面ライダースーパー1
番組タイトルにして主人公を務めるヒーロー。
平和目的のために自ら志願し、惑星開発用改造人間となった。

本来は惑星開発用の機能であるファイブハンドと、修行により身につけた赤心少林拳を武器に戦う。
どちらか片方でも充分に主人公を張れる要素を2ついっぺんに持っているという欲張りセットが最大の特徴で、ファイブハンドの多種多様な能力の切り替えで敵を攻略し、拳法で鍛えた必殺キックでドグマ怪人を撃滅する。

企画当初より「メカニックライダーの宇宙飛行士」という要素は決まっており、後から拳法家の要素が追加された。
江連卓が北派少林拳の道場に通っていた*4という凄まじい経緯から沖一也役の高杉俊价とスーパー1のスーツアクターである中屋敷哲也は実際にレクチャーを受け、ただでさえ常人離れした身体能力を持っていた両名のアクション精度は更に磨きがかかり、本編の切れ味鋭い殺陣に繋がっている。


「新しい時代の1号」の名に相応しくデザインもどこか近未来SF的になっており、ハチをモチーフにしたツリ目の複眼がチャームポイント。

  • ドグマ(D・O・G・M・A)
前半2クールの敵組織。
人類の旧体制を破壊し、帝王テラーマクロの独裁によって新天地を築こうと目論む。

軍隊然としていた従来の悪の組織に対して(独裁)国家という体裁を取っているのが最大の特徴で、警察や裁判所、描かれてない所では内閣府や大臣なども存在しているが、その悉くがお飾りであり、テラーマクロの決定を復唱するだけの追認期間に過ぎない。
少しでも異を唱えれば直属の親衛隊を差し向けられ"思想犯"としての粛清は免れない。
大いなる恐怖(テラーマクロ)によって統治された闇の王国である。
後年ではドグマ王国の名称で統一されている。

その独特なあり方のため展開する作戦も変わり種が多く、コンピューターによる能力と相性測定で男女を強制的に番いにして理想の国民を生み出し、特権階級の選ばれた者のみが居住を許された施設の建設など、王国建設のモデルケースのような試みが目立つ。

帝王のご機嫌取りは中でも最重要課題で、時には金品や美術品を個人的に求める作戦も行われる。
果ては刀剣の献上のためだけに怪人1人を使い走りにしたりなども。

組織の守り神はカラスで、テラーマクロが意思を伝える際は鈴が不気味に鳴り響く。

  • ジンドグマ
後半2クールの敵組織。
B26暗黒星雲からやってきた異星人。
悪魔元帥を頂点に、4人の幹部が常駐している。

戦闘員はドグマのものを洗脳・再利用しており、劇中ではあまり明確化されていないが前組織のドグマもB26星雲の流れを汲んでおり、ジンドグマはそれに不満を抱いていた物たちが結成したという設定。
中にはドグマに所属していながら明確に自分の意思で裏切った人員も混ざっており、劇中の交代劇は実はそのあたりの事情が絡んだ内ゲバである。

「暴力、略奪、破壊」の三大原則を旨とし、技術力を求める人間には協力要請の書状を送るが、無視すれば即座に実力を行使する斬奸状に等しい悪魔の手紙。
ジンドグマに逆らえば直ちに殺し、必要なものは略奪し、無用なものは全て破壊せよ。


トップの悪魔元帥は4人の幹部をまるでコンペでもさせるように競い合わせ、事あるごとに鎬を削っている…とここまで書くとシリアスだが、その実態はライダーシリーズでもぶっち切りにアットホームで緩い。

悪魔元帥は上記の構図こそ作り出しているが基本的に鷹揚かつ柔和な態度で突飛な作戦でも最低限の質問以外は余計な干渉はせず趨勢を見守り、4幹部も議場で言い争いや陰口、トドメに「お前そんなコントみたいな作戦を元帥閣下にプレゼンする気か?(要約)」なんて発言を面と向かって放ったりこそするが、作戦の邪魔をしたりなど足の引っ張り合いはせず、喧嘩するほど何とやらな間柄。しいて言えば4幹部が揃った席で怪人にイタズラさせることはちょいちょい見られるが、その程度(説明のための実演を兼ねているのだろうか?)。
最終局面でも幽霊博士が既に散った幹部の名前を口にして「敵はとってやる」と宣言しており、単にライバル心が強い"だけ"であったようだ。

極め付きはおやつにかき氷を出して全員でめちゃくちゃ良い笑顔で食べたりなど悪の組織を標榜するには微笑ましいシーンが目立ち、それを象徴するように組織内ではドグマの不気味な鈴の音とは対極の陽気なファンファーレが悪魔元帥登場の合図となっている。

おまけに侵略対象であるはずの人間の一部ともそこそこ良好な関係を築いているらしく、支持者やスポンサーが密かに後援会を結成し、劇中では仮装パーティーに興じていた。

一見すれば視聴者にも突っ込まれるくらいの緊張感のない集まりだが、そこはやはり地球を征服しにきた悪の異星人組織。
いざ作戦となればその緩い姿勢のまま様々な計画を繰り出し、締まらない雰囲気のまま大量破壊や殺人も厭わない、ある意味で普遍的な悪の組織より恐ろしい集団である。

  • 国際宇宙開発局
一也がスーパー1に改造された研究所。
この中に秘密分署として存在するのが改造人間プロジェクトチームである。
所長のヘンリー博士と10人の研究員で構成されており、一也も研究員の一人。

1話で壊滅してしまった主人公の所属組織だが、その後なんとか復活したようで、終盤に再び名前が登場した。
人類の未来を宇宙に託した平和組織…なのだがどうにもキナ臭く、一也やヘンリー博士も知らない暗部が存在するようである。

  • 赤心寺
秩父連山の大森林に密かに建てられた寺院。
どこからともなく青年たちが集まる荒修行の場であり、中国拳法の修練場。
研究所が壊滅した一也は赤心寺の門を叩き、半年の修行の末に変身の呼吸を体得、以降も数々の修行に挑む。

半年でいくらなんでも習熟しすぎでは?と暫し突っ込まれるが実は一也は5歳の頃に亡き父と共に既に門を叩いており、定期的に玄海老師の指導を受けていたという裏設定が存在する。
弁慶は苦楽を共にした兄弟子で、劇中で散見される親しげな様子はそのため。



  • ジュニアライダー隊
ジンドグマ編より登場したスーパー1の支援組織。
寄り合い所帯の少年少女たちが協力してジンドグマに誘拐された科学者の救出に貢献し、感謝の印として装備を進呈された。

名前から分かるようにかつての少年ライダーを更に低年齢層にした組織。
スーパー1を模したヘルメットと自転車で活動し、バラエティ豊かな秘密道具を駆使して事件の気配を察知してスーパー1に知らせ、接敵するとスーパーボールを投げてジンドグマの怪人を牽制する。

土曜日朝7時という本来の視聴層である小学生すらテレビに触れられない時間帯*5への変更を受け、更に下の未就学児童を意識した視聴者参加型要素。
構想にあたっては児童文学の殿堂である「少年探偵団」を参考にしており、要するにスーパー1が最後の最後で悪と対峙するさらばだ明智くんのポジションを担う構図である。

【スーパー1の装備・能力】

  • ファイブハンド


画像出典:講談社シリーズMOOK 仮面ライダー 昭和 vol.8 仮面ライダースーパー1』監修:東映、石森プロ(2018年3月1日発行)


スーパー1の代名詞である5つの腕。
物理的に5組存在し、両腕の前腕部は取り外し可能の磁石ジョイント。

基本形態で赤心小林拳の繊細な手技に最適なスーパーハンド
精密さに欠けるが100t以上の怪力を発揮するパワーハンド
小型ロケットを射出して周囲の地形を探査するレーダーハンド
右手は超高温火炎・左手は冷凍ガスを噴射する冷熱ハンド
3億ボルトの電流を発するエレキハンド

を使い分ける。
換装の際は「チェンジ、〇〇ハンド」と叫びながらベルト両脇のチェンジボックスを押す。

それぞれ資材運搬、環境調査、極端な気候と遭遇した際の温度調節電力供給など、過酷な宇宙での開発作業を想定したものだが*6、一也の創意工夫によって戦闘に活用された。

ライダーマンのカセットアームから試行し、中々うまくハマらなかったマルチツールの決定版。
両手首のみという限定的な換装ではあるが「並列の多種多様な能力を敵に応じて使い分ける」フォームチェンジの始祖的な存在であり、アーケードゲーム『ガンバシリーズ』など、作品によってはフォームチェンジに分類される*7

後により明確に宇宙をテーマとした作品『フォーゼ』が作られた際には、この「手を換装して対応する」のをより宇宙服的に作り直したアストロスイッチおよびモジュールシステムが登場している。
実際に宇宙モチーフとして『スーパー1』のフォロワー要素は組み込まれていたとのことなので(例として拳法家ライダーの登場*8など)、ひょっとしたらこれもシステムとしてのスーパー1から出来たのかもしれない。


  • Vマシーン(Vジェット)/ブルーバージョン

スーパー1の足となる2台のバイク。
大型で最高速度に優れるがオンロードで移動やパトロール・索敵に用いるVマシーン、それに比べて小型だがオフロードで荒地での運動性に優れたブルーバージョンといった塩梅で使い分ける。
Vマシーンはヘンリー博士が前もって制作しており1話で脱出の際に使用した。
劇中では説明されないがブルーバージョンは後から日本で一也が託された設計図を元に制作。

個性の象徴として出した史上初の2台バイク体制…というのは実はトラブルの産物。
アメリカ帰りのライダーという事で大型で派手なVマシーンが平山Pにより考案されたが、上記のとおり舗装路しか走れずジャンプもできない。当然ライダーの花形であるバイクアクションも不可能。

そこで「じゃあ馬の乗り換えみたいに使い分けよう」という革新的アイディアに至りブルーバージョンが誕生した。
時代劇のエッセンスを根底に含んだ仮面ライダーの真骨頂である。

  • その他の設備
スーパー1自身の体も含めてこれら多数のメカは、定期的なメンテナンスが不可欠である。
そこで一也は谷モーターショップの近隣に秘密の研究室を建設。
内部には体のメンテナンスを自動で行うチェックマシンやコンピューターなどが用意されており、一也はここで調整を行う。


【登場人物】


【沖一也と仲間たち】


主人公。
人類の未来のために自ら進んで惑星開発用改造人間「スーパー1」への改造手術を受けたが、ドグマの襲来によって全てを失う。
当初は変身すらおぼつかず戸惑っていたが、赤心寺での修行によって克服。
かつての知人だった谷源次郎から「仮面ライダー」の称号を授かり、当初の目標とは違う意味で人類の未来を懸けて悪の王国ドグマとの戦いを決意する。

出自は研究員という事もあり頭脳明晰で、少林拳も収めており文武両道。
真面目だが堅物ではなく、他者には笑顔で優しく接する好青年。
しかしストイックすぎるきらいがあり、困難に直面すると思い悩み、一心不乱に修行する。

シリーズでも類を見ない"前向きな理由で誕生した改造人間"
それゆえに肉体への悲壮感も漂わせないが、本来は宇宙開発という夢のために得た力を悪との戦いに行使しなければならないという違ったベクトルの悲しみを背負っている。

宇宙飛行士という事で年齢は従来の主人公よりちょっと高めの27歳(先輩であるスカイライダー/筑波洋より年上)。拳法修行の時は道着だが社会人ライダーという事でジャケットやネクタイなど大人っぽい服装も多い。
拳法要素という事なのか聖子ちゃんカットジャッキーみたいなモコモコ頭をしている。

演ずる高杉俊价は元自衛隊レンジャーという異色の経歴を持ち、圧倒的な身体能力で役を勝ち取った。
劇中で度々見られるロープ1本で高所から下降するシーンはオーディションでも披露したガチ特技であり、ビルの6階から実際にやってみせたという。
これに拳法のレクチャーを受けたことも合わさり、劇中では数々の危険スタントや激しいアクションを体当たりで熱演した。


・谷源次郎
我らが2期シリーズのおやっさん。前作から引き続き登場する唯一の登場人物としてシリーズを繋ぐ架け橋。
前作の喫茶店ブランカは店じまいし、本作では谷モーターショップというバイク屋さんにジョブチェンジ。

ヘンリー博士とは知人であり、研究所襲撃の直前に後事を託されていた。
一也とも幼少の頃に面識があり「あのイタズラっ子がなぁ」と感慨深げにしている。

なので一也の事情は最初から知っており、モーターショップを隠れ蓑にスーパー1をサポート。
怪人の追尾装置や無線機を開発し、時に前線に赴き戦闘員程度なら蹴散らす。

・チョロ(小塚政夫)
谷モーターショップ唯一のメカニック。(というか他に店員が見当たらない)
一也を兄貴と呼び慕うサモ・ハン・キンポーにしてお調子者の3枚目。

俗っぽい性格だが人柄は良く、店にやってくる子供達とも分け隔てなくフランクに接する。

かつては「日本一の大泥棒」を自称し、肩の関節を外して子供も入れないような狭いスペースを通り抜ける珍妙な特技を持っている。
ドジなようで要所要所で意外と良い仕事をする本作の名コメディリリーフ。

・草波ハルミ
本作のヒロイン。
同じく谷モーターショップ勤務(僅かな描写からすると事務職っぽい)

弟や年少者の悪戯に雷を落とす世話焼きお姉さんだが自身も勝ち気でお転婆な気質で、事件に首を突っ込んでは人質になる。
ジュニアライダー隊の発足以降は隊長を兼任。

一也に想いを寄せており、オフの日は積極的にデートに誘ったり拳法の指南を受けている。
拳の方は筋も悪くないらしく、ズブの素人の状態から終盤では一級の免許をもらったらしい。*9

スーパー1の正体を知らず、カミングアウトされた時は愕然としていた。
人の身を捨て、夢のためにいずれは宇宙に旅立つ運命の一也とは結ばれない運命にあるが、それでも健気に慕う。

前作のライダーガールズ制から一転して一也との関係性を重視した単独のメインヒロイン。
特技は寄り目と一輪車です。

・草波良
ハルミの弟。
一也を尊敬しており、姉弟ともども拳法の指導も受けている。
ジュニアライダー隊発足後は隊員の中心的存在になった。

この手の作品にはお約束の子役ポジで、子供目線でゲストキャラや事件に関わっていく。

【ドグマ編の重要人物】


・ヘンリー博士
改造人間プロジェクトチームの所長。
孤児だった一也の育ての親でもある。

人間の体には戻れない手術を自ら志願した一也を慮るが、両親の死と夢にかける一也への思いを誰よりも知っており、手術を執刀した。

ドグマの隷属の命令を拒否したため研究所の焼き討ちと共に殺害されるが、遺された一也のために数々の備えを残し、死してなおスーパー1の戦いを助ける。


1話のゲストキャラで至って善良な科学者だが、演ずる大月ウルフのステレオ外国人風の怪演で妙にインパクトが大きい。

・玄海老師
赤心寺を率いる、赤心少林拳の最高師範。
赤心拳の秘奥の全てに通じており、一也が怪人に敗北すると打開策として様々な修行を課す。

たまの稽古では一也を軽くあしらい、敵の首領と真っ向から渡り合って一太刀浴びせ、極め付きは劇場版のストロングすぎる活躍でファンからはライダーシリーズ最強人類の呼び声も高い。
玄海老師は改造人間である。

一也の修行中に谷さんから手紙を受け取るなど交流があり
実はヘンリー博士→谷さん→老師→ヘンリー博士…みたいな状態で一也のバックアップ網はかなりガッチリしている。

・弁慶
赤心少林拳の師範代。棒術に優れている。
玄海老師の一番弟子で、劇中では実質的な腹心。
一也の兄弟子にあたる。
髭面の無骨な巨漢だが心根は優しく、修行に打ち込む一也の身を案じて老師への陳言も厭わない。

基本的に赤心寺で一也を見守っているが前線に出ると戦闘員程度なら容易く蹴散らす滝ポジを稀にやってくれる。

その最期は、まさに弁慶の立ち往生。

【ジュニアライダー隊】


・水沼マサコ
ジンドグマ編から唐突にレギュラーになったハルミの友達。
初登場時は交通遺児救済バザールの屋台を手伝っていた。

ジュニアライダー隊では副隊長や通信手を担当。

・石川ミチル
ジュニアライダー隊員の少女。おませのミチル。
気が強く、弟や年少の隊員の面倒を見るしっかり者だが、好きなアイドルの腕時計を宝物にしているなど可愛らしい一面も。

年の割にアフレコも闊達な可愛らしい幼女で、一部のロリコン紳士な視聴者に大人気。

・石川マサル
ライダー隊の最年少隊員。チビのマサル。
未就学児童レベルで小さいので隊員共通の自転車に乗れず、ブリヂストンの幼年向け自転車ドレミのスーパー1モデル(Vマシーンを模している)に乗っている。ぶっちゃけ宣伝

目の下のクマがやたら険しく、年相応に棒読みで興味本位に動いては事件に巻き込まれるので、視聴者のヘイトを集めがち。
そのせいで怪人の被害にもそこそこ遭っており、中には石鹸で生きたままゲル状に溶けて排水溝に吸い込まれるなどエグい体験もしている。

【ドグマ】

テラーマクロの法衣を初めてとして怪人以外の構成員のイメージカラーはで統一されおり、そこに機械化の象徴としてが混ざる2色が基本スタイル。

・テラーマクロ
王国を統べる帝王。
普段は薄暗いベールのような影に包まれながら玉座に掛けており、鈴の音と共に姿を現して命令を降す。

あまり声を荒げて激昂したりなどはしないが、それが却って不気味さと威厳を醸し出し、恐怖とカリスマによって部下をコントロールしている。

世界の汚濁を救うためにきたと嘯き、理想の王国建設を目指す独裁者。
意に沿わぬもの、能力の劣るものには問答無用の粛清が待っている。

ドグマの首魁らしく何かしかの拳法に精通し、劇中では玄海や弁慶に対し「積年の恨み晴らしてくれる」と零しており、何かしらの因縁がある事を窺わせるが、これは本編では開示されなかった「かつては玄海の兄弟弟子だった」という裏設定の名残。
玄海もギョストマ回などでドグマ拳法にやたら詳しいのはこのためで、本性を現したテラーマクロに師匠を殺されるなどの因縁があり、ドグマ打倒を心に誓った。


初期案では「マクロ教授」という名前で、超人的な頭脳を持つ国籍不明の怪人物。
政財界の黒幕として築いた無限の財力と人脈で世界中の不穏分子をかき集め、ユートピア建設を旗印にドグマ王国を打ち立てたとされている。
ほぼ没設定だが下の「財力と人脈によってドグマを作った」という大まかなアウトラインは残っているらしく、本編で金品や権力に執着する台詞が多いのはこのため。

諸々の設定を纏めると「正体はB26の異星人にして地球では玄海の師匠に弟子入りし政財界で成功して大物になった」と、とんでもない事になるのだが、この辺の折り合いがどうなっているのかは不明。



・メガール将軍
ドグマの戦闘指揮官にして総司令官。
テラーマクロに絶対の忠誠を誓う。
用心深い性格で、謀反や暗殺に備えて複数の影武者を用意している。

シリーズの立て付けとしては大幹部にあたり、基本的にアジトに詰めて指示を飛ばしているが、現場に出る時は愛馬バラガに跨り出陣する。その様はまさに中世の将軍。

鎧に身を包んだヒゲ面のオッサンで、顔は銀粉を塗りたくったような銀色。
改装手術の産物なのかスカウト活動のために紳士服で変装をした時も顔は銀色のまま。

慢心しがちな悪の組織においても「死体を確認しろ!」とお約束事項に突っ込みを入れたり生真面目な性格。
(ドグマの思想に従う者であれば)拉致した科学者を丁重にもてなすように命じたりなど、才あるものには礼節を以て理性的な応対をする。

将軍という立派な肩書きだが組織内では配下の怪人に度々命令を無視され、失態や手抜かりがあればテラーマクロの無言の威圧や折檻を受け、帝王の権威を傘にきた親衛隊にイビられるなど、中間管理職の悲哀が漂う苦労人。なぜ悪の組織にいるのか不思議なくらい。

その意外な正体が明かされ最後の決戦に臨む22話は、夢のためという前向きな理由で改造された異色作であるスーパー1へのアンチテーゼが組み込まれたエピソードで、ファンからも名作の誉れ高い。

ラフ画の段階では軍服的なデザインだったが、実物を作るにあたって鎧に置き換えられた。
兜の両目のあたりから伸びてる2つの突起のせいで「ウサ耳」とか呼ばれる。

・親衛隊
テラーマクロ直属の部隊。
弓や槍などの武器を用いた武術に優れ、人間社会に紛れ込んでのスパイ活動や配下の怪人の行動の監視などの諜報で不穏分子を探り、普段は表に出ないテラーマクロを代行して命令を伝える帝王の影。
監視対象はメガール将軍も例外ではない。

メガール将軍とは双方共にタメ口で話す関係で、お局の現場の事情を考えない口出しにメガールはキレたり拒否もするが「この命令は帝王のご意思である」と言われると逆らえない微妙な力関係。
帝王の御前であろうとお構いなしに管理職同士が鎬を削っているストレスフルな環境である。

頭部にハートマークのような赤い被り物をしており、槍などの武装をしているせいで一部ファンからは
「汚いトランプ兵」(不思議の国のアリス)と揶揄されている。

・ドグマ怪人
テラーマクロの技術によって改造人間となり、その命令を実行する組織の主戦力。
単体の動植物をベースにしたスタンダードな形式*10だが機械と合成されており、機械部分が多いためメカニカルな外見で従来の組織の改造人間と差別化したデザインが特徴である*11
スーパー1に必殺キックを喰らって地面に叩きつけれた時などに鳴るガションガションした効果音は、ダメージで機械部分のパーツが飛び散っているという設定。

作品の性質上なんらかの拳法に通じた怪人が多く、それ以外でも特殊な超能力を持っていたりなど、モチーフの生物以上に素体の人間側のアクが強い。

大半の構成員がテラーマクロを崇拝しており、爆死の寸前に「テラー、マクローッ!」と万歳三唱するのが様式美。*12
ただし全員が生粋の狂信者という訳ではなく改造にあたって市政の優秀な人間をスカウティングする話もある。

選民思想の王国らしく上はA級怪人、下は三等怪人など怪人の中ですら階級制度があり、怪人といえど下っぱには小間使い程度の仕事しかない厳しい格差社会で、待遇への不満を契機に暴走を始めた怪人も登場した。

命令を聞かない者や謀反の兆しがある者は「服従カプセル」という装置を頭脳にセットされ、テラーマクロの意思と鈴の音だけで立ち所に自我意識を破壊され盲目的に従う人形になってしまう。

なおウニドグマはドグマ所属ではなくショッカーの怪人である。

・ドグマファイター
戦闘員。
体の90%が機械に置き換えられたサイボーグ。
見た目も分かりやすく機械に包まれており、ゴーグルとイヤホンがチャームポイントである。
号令の唸り声も機械音声のような電子音だが、別に発語できない訳ではなく普通に意思疎通も可能。

怪人の作戦を補佐し、多種多様な武装で戦闘に参加し、白衣の科学班やオートバイ部隊がいて、そしてたまに怪人の能力実験に雑に殺される…要はいつもの戦闘員です。

当初の名前は「ファイター」で本編中でもそう呼ばれているのだが、後から登場したジンドグマの戦闘員と区別化するために組織名が頭につき「ドグマファイター」となった。


【ジンドグマ】


・悪魔元帥
ジンドグマの首魁。
異星からの侵略者らしく宇宙服っぽい装甲服に身を包み、機械の力を信奉して全身を機械化している。
陽気なファンファーレと共に笑顔で登場し、不気味なほど穏やかな態度が逆が恐ろしい。
ジンドグマの作戦は都度4幹部がそれぞれ提案し、悪魔元帥の承認を得てから行う。

4幹部を競い合わせつつ地球侵略を目指しているが平時は余裕の表れなのか作戦にもあまり口を挟まず、作戦会議…という名の食卓を囲んで5人で食事を楽しんだりしている。
が、最終回までラスト3話の最終決戦では失敗続きで暢気な態度に流石に怒号を飛ばした。

"宇宙プラズマ"という未知のエネルギーを秘めた稲妻電光剣を守り刀としているが…

・魔女参謀

口元を黒いベールで覆い、網タイツでおみ足を出した妖艶な女性幹部。
魔女の名に相応しく杖を持ち、妖術や呪いの力にも精通している。
地味に杖はキセルや吹き矢になるマルチツール。

人間の苦しむ様を見るのが好きなサディストで、人質を脅すためだけに戦闘員をサメのいる海に突き落とすなど冷酷。
取る作戦も要人誘拐や兵器強奪など従来の悪の組織チックな物が目立つ。
前線では直接戦闘はしないが変装による撹乱工作をこなし、ヒッピーや新聞記者、看護婦など様々な熟女コスプレ変装で視聴者へのサービスを欠かさない。

しかしオフではジンドグマの幹部らしくユーモラスで、他の幹部と口喧嘩をしたり、給湯室のOLのような愚痴を飛ばしている。
かの有名なオヤツのかき氷を持ってきたのは実はこの人。


・鬼火指令

武人系の切り込み隊長な幹部。
猪武者で血の気が多く、気が短くキレやすい。
脅迫に失敗し電話ボックスに当たり散らして破壊するシーンは視聴者の腹筋を崩壊させた。

そんな粗暴な性格に合わせ作戦傾向も大雑把な破壊作戦などが目立つ。
出撃回数も多く、前線でスーパー1と数多く交戦した。

一方でジンドグマの幹部らしく休み時間では楽しそうに雑談したり、戦闘員を暗殺部隊"夜行虫"に育成するなど部下の面倒見も良く、総合すると悪の親方的な性格である。

・妖怪王女

SM嬢みたいな蝶々のマスクにピンクのレオタードの女幹部。
王女というだけあり可愛らしいと形容できる程度には歳若い。

人間が慌てふためくのを楽しむ愉快犯的な傾向があり、行う作戦もジンドグマを象徴するように一際個性的。
「雨の日に傘を配布したら手に取るに違いない」「赤色灯を見れば異常事態だと思ってパニックになる」と、くだらないように見えて結果的に人間心理や社会の仕組みを巧みに突く絡め手を用いる。
他の3幹部や悪魔元帥すら疑っていたチョロの泥棒としての能力を見抜くなど、密かに知能派。

性格は穏健派…を通り越してやる気がないようにすら見える。
見た目も可憐すぎるため悪の幹部としての威厳もあまりない。
見た目通り4幹部の中では年少らしく、同じ女の魔女参謀には小娘扱いされて憤ったりするが、女という総体をバカにされると団結して反論する仲良しさん。

・幽霊博士

怪人製造や毒薬などの兵器開発などを担当する科学者の幹部。
神経質な性格で、何かと物事に費やす時間を秒単位で細かく表して話したがる。

科学者らしく手製の時計を市政にバラ撒き、ラジコンを電波ジャックして操るなど技術力を誇示する作戦傾向にある。

会議場という名の食卓では愚痴の多いお爺ちゃんといった感じで、悪魔元帥がくるまで食べられないので腹が減ったと連呼しながら貧乏ゆすりをして咎められ、自分の天才的な頭脳を自慢しては小馬鹿にされるなど弄られ役が多い。
しかし一方で仲間思いでもあり、良いと思った作戦は素直に褒め、幹部仲間が先んじてスーパー1に倒されると敵討ちに燃えるなど身内への情に厚い人物でもある。

スーパー1に最後の対決を挑んだ黄金病計画では広範囲に被害を出し人心を煽り立て、かつてないほどに苦しめた。

・ジンドグマ怪人
B26暗黒星雲の超科学力で作られた怪人たち。

ナイフハサミなどの器具や、ビデオや冷蔵庫など人間社会の日用品の特徴を付与されており、ユーモラスな外見が多いがモチーフの器物に因んだ意外な超能力の数々でスーパー1を苦しめた。
改造人間を通り越してもはや付喪神なのだが、素体がいる改造人間なのか、完全に無から作られたロボットなのかはハッキリしていない。
いずれにせよ、ドグマが正式なスーパー1の設計図と首っ引きで長期間かけても出来たのが自前のファイブハンドを持ち得なかった上にオツムもアレなバチンガルが関の山だったのに対し、テスト用で破棄が前提のロボットスーパー1をしれっと作ってみせるなど技術面は大幅に上回っていると言える。

当初はデストロン怪人のような直接的な破壊兵器を主とする予定だったが、江連卓ら脚本家陣の「日常生活にある物の方が身近な恐怖を引き出せる」という提案を受けて軌道修正し、ライダーシリーズでも類を見ないユニーク軍団の登場となった。


・ジンファイター
戦闘員。ドグマファイターの顔を銀のマスクで覆った外見。*13
残存していたドグマファイターを奪取して再利用した。
魔女参謀によって徹底した洗脳教育が施され、ジンドグマ憲法の「暴力、略奪、破壊」の三原則の遵守が義務付けられている。


基本的な役割はドグマファイターと同じだが組織のカラーに影響されてか人間社会に興味津々で、ラーメン屋の匂いに吊られて持ち場を離れたりコミカル。
ドグマファイターと同じで最初はただの「ファイター」として扱われており、後付けで組織名を頭につけるようになった。


【消えた流れ星】

こうしてスタートした番組は、関西での初回視聴率23%。
平均視聴率も20%付近を維持し、最高視聴率はなんと26%。
当時すでに娯楽の多様化・分散化によるチャンネル争いが激化の一途を極めていた時勢を鑑みればかなりの高数値を記録していた。
金曜夜19時のゴールデンは、金の心を持つ男の独壇場である。

煌びやかな銀のボディ、少林拳やファイブハンドの華やかな能力、精神性を強調した泥臭くも逞しい物語。
その全てが好評であり、ヒーローショーも満員御礼。
その勢いは伝説を築いた初代仮面ライダーやV3に迫りつつあった。

しかし2クールを過ぎた4月、関東圏は土曜朝7時、頼みの綱の関西ですら土曜17時というローカル枠に突如として飛ばされる。

…一応後の90年代に『まんが日本昔はなし』・2010年代末期に『新幹線変形ロボ シンカリオン THE ANIMATION』が放送される事になるこの枠だが、当時はいわゆる半ドンで土曜は子供たちが普通に小学校に通っていた時代であり、小学生程度をメイン層としていた番組にとって翼を捥がれたに等しかった。

一縷の望みに賭け、制作サイドは変更後の時間帯に視聴を見込める未修学児童層に狙いをシフトし、ジュニアライダー隊の登場と敵組織の交代によって、全体的にコミカルで賑やかな路線へと転換した。
拳法家同士の対決を中心とした個人の精神性に重きを置いた物語はジュニアライダー隊とジンドグマのチーム戦にシフトし、スーパー1は悩める拳法家からライダー隊が回した話を終わらせる最強のヒーローへと様変わり。

しかしそれは古来伝統の格闘術と革新的な宇宙技術で戦う沖一也の人物像、そして精神性を重視した修行と根性の物語を放棄する事も意味していた。


結論から言えば枠移動の時点で詰み確定の状態であり、路線の如何に関わらず高視聴率の獲得は不可能である。
必死の努力も虚しく、2期シリーズは3作目の構想すら上がらないまま終了した。

前半と後半の作風の温度差にはこういった背景があり、通り一遍のフワッとしたイメージで語られる「前半路線が不評なので路線転換するも打ち切り」といった風評は全くの間違い。

「前半路線は大好評の人気作品であり、後半路線はテレビ局側の事情に振り回された結果で、作風の硬軟に関わらず枠移動の時点で続行はほぼ無理」
という実情を作品の名誉の為に記しておく。

理不尽な枠移動の介入がなく、当初の根性路線のままで1年間を貫けば大好評のまま次作も決まり、昭和2期シリーズは現在とは違った立ち位置になったのだろうか?
というのは歴史のIFとしてコアなファンの間で度々挙げられる議題の一つ。


大人気番組だった本作への裏切りともいえる仕打ちの理由は現在に至るまで判明していない。
諸々を勘案するとTBS編成局の子供向け特撮番組を軽視する姿勢に原因がある事が推察されるが、かなり闇深案件であるらしく正式な理由は現在に至るまで暗い宇宙の彼方に隠されている。



新時代を夢見た流れ星は、テレビ局という現実的な壁を前に当初打ち出した要素の数々をスペースデブリの如く投棄せざるを得ず、無念のまま消えていった。


しかし人々は諦めない。こんな最後を承服できるはずもない。
熱く燃え上がったライダーファンの情熱はやがて10号誕生への戦いへと繋がっていく…

つづく

【余談】


  • 作品の雛形は前作『スカイライダー』の番組強化案『仮面ライダーV9』まで遡る。この時点で宇宙飛行士のメカニックライダーという要素は固まっていた。スーパー1のクレストや装備の随所に『V』があるのはこれに起因する。
    • その時点での主人公の名前は『沖正人』で、下の名前はとある登場人物に流用された。これら経緯を踏まえて『正人さん』のエピソードを見ると、また味わいも変わってくるのではないだろうか。

  • 沖一也役の高杉俊价は実は歌手志望だった時期もあり、前作スカイライダーとの引き継ぎ式のイベントで試しに歌うや大ウケし、主題歌を自ら歌うことになった。オープニングを主演俳優が歌うのは実にV3以来。
    • オープニングだけなら割と類例と音波兵器は多いのだが更に前期エンディングも担当し、他には劇中の処刑用BGMとしてお馴染みの『無敵の勇者スーパー1』などの挿入歌を合わせ実に6曲を担当。その歌唱力がかなり高く買われていた事が窺える。
      • その人気たるや、子供向け特撮ヒーローの主題歌という立ち位置にもかかわらずゴールデンディスク賞を受賞したほど。


  • 数多くのライダーを演じた昭和のミスター仮面ライダー、スーツアクターの中屋敷哲也が最後に演じた主役ライダーにして、拳法を取り入れた華麗な殺陣は全盛期のアクションとしてしばしば引き合いに出される。本編を見るとあまりのキレッキレアクションに早送りなどを疑いたくなるくらい。とにかく本編の戦闘シーンを見てください。
    • 当人としてもスーパー1への思い入れは強いらしく、次作の仮面ライダーZXの特番では主役を後進に譲り、先輩側になったスーパー1のアクションを継続して担当した。


  • 前作の第4の壁を突破して視聴者に語りかける次回予告のノリを引き継ぎ、一時期は道着姿の沖一也が登場し次回の紹介を放棄して健康に良い拳法の呼吸法をレクチャーする内容になったが、前作ほど定着せずすぐに普通の次回予告に戻った。





♪〜いつもの次回予告BGM (M36 B)*14



「さぁ、元気で追記・修正をやろう」


「全身に力を入れて、項目の底までスクロールして」スウーッ…

「止めて!」ハァーッ…「ゆっくり打つ」

「これをやると、体にとても良いんだ」

「テストの前なんかにやると落ち着くぞ!」

「友達のwiki篭りにも教えてあげてくれ!



※追記・修正は人類の未来を宇宙に懸け惑星開発用改造人間に志願するか地獄稽古を乗り越えてからお願いします。


S06.スカイライダー←S07.スーパー1→S08.ZX

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最終更新:2025年10月27日 18:14

*1 分かりにくいのでこれ以降『スカイライダー』と表記する

*2 ただし本作でも第20話からサブライターとして参加している

*3 尤も、上記に挙げたV3におけるライダーマンの末路やそれ以前にダブルライダーが消息を絶った2話、後年においてもBLACKやクウガ、ドライブにおける回のように、演出上「ライダーが死んだ」と思わせたり一時的ではあるが本当に死亡するストーリーはいくつか存在する上、いずれの場合も後になって生存が確認されたり蘇生する流れがきちんとある。

*4 EDクレジットに"拳法指導"の肩書きで記載されている龍明宏が江連のリアルお師匠

*5 当時は土曜日も午前中に普通に授業があった(いわゆる半ドン)ため

*6 そのため漫画『SPIRITS』では、Vマシーンによる推進力追加と合わせてパワーハンドで岩をどかすのが「第一部・9大ライダー紹介編」におけるスーパー1の初登場コマであった。この時点では一也の職は宇宙ステーションスタッフ

*7 その場合は名前の後ろに〇〇ハンドとつく

*8 実際に「弦ちゃんに拳法設定は追加できない」→「なら流星を拳法キャラにして、一也の要素を2人で分割する形にしよう」として星心大輪拳の設定が完成したと言及されている

*9 具体的になんの免許なのかは説明されていない

*10 末期になると龍や鬼などの空想上の生き物や蔦と電話などバラエティ豊かになった

*11 形式としてはデストロンの機械合成怪人あたりが近いが、ドグマ怪人は生物と武器部分で分けずにメカニカルな意匠が全身を覆っている

*12 裏切ったムカデリヤのみ違う。

*13 幽霊博士の指揮下には金マスクの個体も存在

*14 エンディングのアレンジ、BGM大全集では「リターンマッチだスーパー1」のトラックに収録。次回予告やアクションシーン全般で使われるスーパー1の代表的なBGM