ロビタ


「シカシダンナサマ──」
「また『しかし』だ! それがおまえたちロビタのよくないくせだっ」

漫画家・手塚治虫氏のライフワークとして知られる漫画『火の鳥』に登場するロボット。
ドラえもん』の主人公の一人jamバンドのマスコットではない。
2004年アニメ版での担当声優は 牛山茂 氏。
ASTRO BOY 鉄腕アトム』では 龍田直樹 氏が演じている。

初登場となる「未来編」では、生命の秘密を解き明かそうとする猿田博士の助手として登場。
この時点では特に目立った活躍は無いが、博士との関係はかなり長いものであることがそのやり取りから窺え、
愛や感情は持ち合わせていないと言いながらマサトとタマミの愛情を尊重するよう意見したり、博士の恋心を指摘するなど単なるロボットではない姿が見られた。
作中中盤で人類が核戦争で滅亡後、宇宙へ逃げ延びるためのロケットを整備していたが、
その際に猿田研究所に逃げ延びたロック・ホームに光線銃で撃たれ、高台から落ちて完全破壊される。

その後、「復活編」にてその過去が描かれている。
この時代からこけしのような寸動体形であり、旧式のロボットであった。
その体形からして他の人型アンドロイドのような精密な作業は苦手であり、劇中では専ら保守的な生産労働や育児などに従事していた。
そんな時代遅れの存在とも言えるロビタ達だが、
「人間のように疲労を訴え休養を求めたり、人間の命令に対し反抗の言葉を発する」という他のロボットやアンドロイドには無い大きな特徴を持っており、
人間らしい失敗や気分の浮き沈みがあったり、当時の人々がとうに忘れていたチャンバラなどの遊びを覚えていたり(この手先で折り紙も出来る!)など、
まるで人間のようなロボットとして旧式ながらも人々に受け入れられていた。
そのためロボットとしての寿命が来ても内部機構をコピーして複製され続け、最初はたった一体だったロビタも大量にコピーされ増えていった。
また、その記憶や精神は全て共有されているが、これが後の「復活編」における悲劇的な事件の原因となる。
西暦3009年、とある一体のロビタが自身が仕える主人の子供の管理を怠って死なせたとして主人に訴えられた。
もっとも、この件に関しては子供自らが遊び相手であるロビタの元に行ったこと、
ロビタが働いていた場所が放射能まみれの(だからこそ人間の立ち入りができない)アイソトープ農園だったこと、
さらにロビタが子供を引き渡した人型アンドロイドが子供が抵抗したことによって壊れてしまい、
アイソトープ農園内に長時間放置されてしまったことが原因であり、ロビタ自身に非は無い。
むしろ見栄えはいいが素手の子供の力であっさり重要部位が破損する子守アンドロイドを製造したメーカー側に責任があるのでは?
しかし碌に監視カメラ等の証拠も存在せず、またその農場で働いていたロビタ全員が庇い合ったため、
主人は犯人であるロビタを特定することができず、10年近く続いた裁判の末に、働いていた数百体全員が溶解処分刑となった。
その際にロビタの一体が「一人が死刑になればロビタは全員死ぬでしょう」と発言。
人々はその言葉を単なる脅しと捉えていたが、
その言葉通り死刑判決を受けたロビタが死ぬと同時に、地球上の全てのロビタが作業を全て放棄し、溶鉱炉に向かって行進を始めた。
そしてそのまま全てのロビタが溶鉱炉に身を投げるという集団自殺を行った。
こうしてロビタは地球上から消滅し、その歴史に終止符が打たれたのである。

そんな中ただ一体、運輸会社所有の労働ロボットとして月にいたため集団自殺に参加できなかったロビタがいた。
日頃から彼の人間性を認めて来なかった上司を(間接的に)謀殺し、本社へ自首することで同胞と同じく死刑になろうと試みるも、
人間扱いされず事故として処理されてしまう。
神に救いを求めるも叶わず、自ら駆動スイッチを切ることで自殺を図り、稼働停止したまま月に取り残されるが、300年後に世捨て人の猿田博士に月で発見される。
その際に「生命の秘密を追い求める」という彼の生き様に惚れて助手を志願し、冒頭にもある「未来編」へと繋がっていく。

+ その正体(ネタバレ注意)
「おねがいだぼくを人間かロボットか どっちかにはっきりさせてくれっ!」

そんな人間臭いロボットであるロビタだが、その前身は人間である。
「復活編」はオムニバス形式となっており、ロビタの集団自殺から誕生へ遡るのと対照的に、
火の鳥を撃った呪いによって死んでも人工物で補って蘇る運命を課せられた500年程前の時代の青年の物語が語られており、
実はロビタは事故死した後にサイボーグとして復活した青年レオナとアンドロイド「チヒロ」の精神が融合して誕生したロボットであった。
それ故普通のロボットと異なり人間臭い感情を持ち合わせており、レオナの記憶由来の様々な知識を持っているのである。

レオナは脳の一部を含めた身体の大部分を機械化して蘇生した際に、脳神経の混乱によってか、
有機生命体が無機質な土くれのように見えてしまい、一方で本来無機質なアンドロイドのチヒロが美しい女性に見えていた
(一度写真や映像として撮影すればどちらも正しい姿で認識できるらしく、写真で見せられたチヒロの姿に「これじゃない」と言っている)。
結果、彼は人間社会に馴染む事が困難になってしまい、チヒロとの駆け落ちの末にわずかに残った有機部分を捨て去り、
チヒロと完全に一体化する事でその愛を成就してしまった。それがロビタの第一号機であった。
しかし、レオナの意識を収めた電子頭脳は人間型のボディには収まらずチヒロとは似ても似つかない姿となり、
レオナの肉体を手に入れながら心を手に入れられず錯乱した人体売買組織の女ボスの起こした破壊によって、
手術を執刀した医師をはじめ、ロビタの正体を知る人々は皆亡き者となってしまう。
あまりにも強引な手段を取った事により元々の人間であった記憶すら薄れ、残された人間味さえも大量生産されて商品として使い倒され、
単なる作業機械に成り果てたレオナは、果たして本当に幸せを手にしたと言えるのだろうか…。

集団自殺の切っ掛けとなった子供を主人がロビタから引き離した理由及び運輸会社の上司がロビタを冷遇した理由には、
どちらも外見が人間そっくりなアンドロイドが関わっている上、両者共に人間性とは無縁な機械的トラブルで死人を出しており、
見た目は歩くドラム缶だが己の意思で自殺し、他者を計画的に害してみせたロビタとは何とも寓話的で厭らしい対比となっている。

「肉体のほとんどを人工物と置換した人間は果たして人間と言えるのか、人間とロボットの境界とは何処にあるのか?」という、
科学・医療の発達と共に直面する可能性の高い生命倫理上の重いテーマを扱った本エピソードだが、
手塚治虫氏は以前にも、ベトナム戦争で重傷を負った人種差別者の白人が、心臓含む臓器の大半を戦死した黒人兵士から移植され助かった事を知り、
自己の同一性に苦悩する短編『ジョーを訪ねた男』を描いており、医学に造詣の深い氏ならではの切り口であると言える。

同じ『火の鳥』の別エピソード「生命編」でも、死への恐怖から脳以外のほとんどをロボットと見分けがつかない程サイボーグ化したものの、
認知症により介護老人に成り果てた老婆が登場したが、その末路は機械の隙間からゴキブリに侵入され繁殖されるという悲惨なものだった
(なお、連載当時は普通の老婆の姿だったが、単行本の加筆修正で箱型の如何にもな機械的外見に差し替わった。『火の鳥』ではよくある事である)。

なお、この「重大な事故から生還したものの、脳の混乱により認知が歪んで社会に適合出来なくなる主人公」という設定は、
Nitro+の『沙耶の唄』でオマージュされている。

手塚氏関連の他作品では、2003年の『ASTRO BOY 鉄腕アトム』ではお茶の水博士の家で働くロボットとして同名のキャラが登場。
家事や育児、教育といった機能は『火の鳥』版に近く、シルエットも似ているが、デザインは大幅にアレンジされている。
こちらでは特に悲劇的なバックボーンは抱えていないが、猿田の縁者ともされるお茶の水博士に仕えている点には何かしら含みを感じさせる。

浦沢直樹氏による手塚治虫の『鉄腕アトム』における「地上最大のロボット」の回を原作としてリメイクした作品『PLUTO』でも、
終盤にて、主人公の一人ゲジヒトが人間に匹敵する深い感情を抱く切っ掛けとなったロボットとして登場している。
この時のデザインはロビタそのものよりは、どちらかと言えばチヒロのそれに近いものとなっている。
(同作ではモグリの闇医者や『アドルフに告ぐ』をモチーフにしたと思われる人物など、
 ロビタ以外にも『アトム』以外の手塚作品に由来するキャラが登場している)。


「ロビタ……僕らは地球が終わっても、おまえを離さないぞ」


MUGENにおけるロビタ

怪獣キャラでお馴染みのカーベィ氏によるものが公開中。
元が戦闘用のロボットでないため、通常技飛び道具の類は搭載されておらず、
パンチや体当たり等の肉弾戦が中心となっている。
必殺技は「チャンバラトイウ遊ビデスヨ」「ロビタノ歴史ハココデオワルノダ!」「神ヨ!ロビタヲ救イタマエ」の3つ。
どれも原作の要素を再現した技となっており、ちゃんとロビタ自身がセリフを喋ってくれる。
AIもデフォルトで搭載済み。
参考動画(7:57~)


「神ヨ! ロビタヲ救イタマエ」

出場大会

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最終更新:2024年02月24日 03:07
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