「氷冷の精霊機 スィレク」



[解説]
風の精霊機『ガーメノス』の姉妹機で、機体コードは『YU-O-383/CA/F「ノービィエッグ(NO-BIAHTUG)」』である。水の魔素を冷却系に使用した特殊な精霊機。建国期に於いて、カーライル王朝・聖王国で建造された。通称は、「霜と共に来る巨人」。
この機体は、未完成の『ガーメノス』弐号機フレームを転用して建造された。フレームそのものは『ガーメノス』と同一ながら、腕部複合型魔道砲ガントレット『ビネレ』の重量増加を解消するための改修に伴い、腕部などのフレーム構造がむき出しになっていた箇所に二次装甲が追加される。更に駆動系である魔力収縮筋も、出力を36%ほど引き上げられたモデルを採用した。それに加え、脚部は機体重量増加に対応するため、接地点が大幅に改められる事となる。
本機は他の精霊機に比べて、頭部の大型化がなされているが、これは広範囲対応型の索敵装置やAI、ECMなどの重要機器が集約されているためである。ことに索敵機能やECMなどの能力に直結するため、アンテナ部分がが大型化した。
本機に搭載された高効率の冷却システムは機体のみならず、周囲に霧や霜をおろすほどの強烈なものである。だがそれは本機に備え付けられた法撃型魔導砲である魔術圧縮空気砲『シャガルバフッテ』の運用のため、そこまでの強力さが必須だったのだ。この法撃型魔導砲は、通常の機兵ではこれによって発生する熱が機体に籠り、排熱が追い付かずに魔力収縮筋が破裂してしまう危険性が高い。それほどの高温を発する装備ではあるが、その威力は特筆するものがあり、聖華暦830年現代の陸上巡航艦クラスの艦艇を揺るがし、大ダメージを与えるほどの衝撃力を発する。
この精霊機は、聖華暦101年にロールアウトした後に、広範囲対応の索敵用機兵として前線に配置された。その後、聖王国に残る記録では聖王国軍のカナド遠征に、専任の装手と共に参戦。そして戦闘中行方不明となっている。
実はこの機体は、カナドで行方不明となった後、長らくカナドの一部族たるヒサナ族で保有されていた。この機体は装手を選ぶ機体であり、それから類推するに専任装手はヒサナ族に投降し、帰化した物と思われる。だがこの精霊機は人魔大戦のさなか、魔獣との交戦中に谷底に転落。ヒサナ族からも失われてしまう事になる。
こう言った事情により、この精霊機は記録や伝承には名前が出てくるものの、存在の証拠が見つかっていなかった。故に聖華暦780年頃に同盟のトレジャーハンターに発見されるまでは、この機体は単なる伝説上の存在であり、作り話の類であると考えられていたほどである。ちなみにトレジャーハンターに発見されたこの機体は、技術的な解析を目的として即座にアイオライト・プロダクションが高値で買い上げた。
ただし後々に某別企業の技師が語ったところによれば、実はその256倍……は大げさだが、64倍出してもまだ御釣りが来る価値があるはずだ、との事であった。それに実はそのトレジャーハンターに情報を流し、この機体の捜索を焚付けたのは、アイオライト・プロダクションと関わりの深いとある情報屋であったとの噂も聞かれる。これが本当であるならば、全てはアイオライト・プロダクションの手のひらの上で動いていた事になり、そのトレジャーハンターも良い面の皮であった。
そしてこの精霊機は、アイオライト・プロダクションの研究施設にて、技術獲得のために復元工事が行われる事になる。だがしかし、発見時は砲撃型魔導砲と頭部は当時のまま健在であったものの、下半身、特に下肢が大破した状態であった。また本機の魔力収縮筋に関しては、当時はまだ放棄されていなかった科学技術の粋を結集した、強力な品であった。それについては第二世代機兵の完成と共に、ヒステリックなまでの科学技術排撃運動が持ち上がり、それ故にこの魔力収縮筋関連技術は完全に失われていた。これにより第一次の復元工事の時点では、本機体は完全な修復には至っておらず、自立が困難であったほどである。
時は流れて、聖華暦830年代である。カーライル王朝・聖王国はメルシデン市の冒険者組合支部に所属し、冒険者活動を行っていたカナド人アストラ・ヒサナ・ファミリアと、エルフ族リルク・トルプ・アーラスの2人組に、アイオライト・プロダクションより指名依頼が入る。それは精霊機『スィレク』の復元のため、狩装兵などの科学技術を使用した機兵に詳しいカナド人であるアストラに、精霊機の復元工事に役立ちそうな幻装兵関連技術やパーツ、装備品などの収集を依頼したい、との依頼であった。だがアイオライト・プロダクションの事である。何か隠された目的や秘密が無いとは、ぜったいに言えないはずだ……。
[武装・特殊装備]
[腕部複合型魔道砲ガントレット『ビネレ』]
魔導砲を構造内に複合装備した籠手状の装甲で、その重量による精霊機『ガーメノス』からの大きな設計変更は、開発元に多大な負荷をかけた。籠手の先端部には、格闘用のクローが固定装備されている。
魔導砲を構造内に複合装備した籠手状の装甲で、その重量による精霊機『ガーメノス』からの大きな設計変更は、開発元に多大な負荷をかけた。籠手の先端部には、格闘用のクローが固定装備されている。
[魔術圧縮空気砲『シャガルバフッテ』]
高圧縮による空気振動および衝撃による広域範囲制圧砲として開発された。この砲は一撃で広範囲を射程に収められるが、反動を制御する関係で、搭載AIが本来担当している操縦補助機能の6割以上にもあたる演算能力を法撃管制を回し、結果として機体本体は全く動けない上、機体冷却の為に発射毎に大きくインターバルタイムが必要となる。その上連続発射は3発が限界だ。これは冷却機能に多大な魔力を消耗する事、反動による機体そのものに蓄積するダメージ、そして装手が極めて消耗するための、3つの理由によるものだ。
高圧縮による空気振動および衝撃による広域範囲制圧砲として開発された。この砲は一撃で広範囲を射程に収められるが、反動を制御する関係で、搭載AIが本来担当している操縦補助機能の6割以上にもあたる演算能力を法撃管制を回し、結果として機体本体は全く動けない上、機体冷却の為に発射毎に大きくインターバルタイムが必要となる。その上連続発射は3発が限界だ。これは冷却機能に多大な魔力を消耗する事、反動による機体そのものに蓄積するダメージ、そして装手が極めて消耗するための、3つの理由によるものだ。
[大型シールド]
特別な能力は無いが、大型の盾は白兵戦、格闘戦の際に非常に有効。機体そのものに固定された、固有装備である。
特別な能力は無いが、大型の盾は白兵戦、格闘戦の際に非常に有効。機体そのものに固定された、固有装備である。
[粒子ブレスカーテン『バイサルフレア』]
高エネルギーを持った粒子を、魔獣のブレスのごとくカーテン状に吐き出して敵の攻撃を防ぐ。明らかに科学技術による装備。発生装置が機体そのものに固定された、固有装備である。
高エネルギーを持った粒子を、魔獣のブレスのごとくカーテン状に吐き出して敵の攻撃を防ぐ。明らかに科学技術による装備。発生装置が機体そのものに固定された、固有装備である。
[ECM『ティングス』]
敵対陣営所属機のレーダー、通信などを妨害する装備。かつて聖王国の軍がカナド地方に遠征した際、本機体が参戦しているのだが、その際の戦闘で破損している。聖華暦830年現代では取り外され、おそらくカナド人たちの手によりそのスペースに予備動力が搭載されている。本来は、固有の固定装備であった。
敵対陣営所属機のレーダー、通信などを妨害する装備。かつて聖王国の軍がカナド地方に遠征した際、本機体が参戦しているのだが、その際の戦闘で破損している。聖華暦830年現代では取り外され、おそらくカナド人たちの手によりそのスペースに予備動力が搭載されている。本来は、固有の固定装備であった。
[大型刀]
業物ではあるが、ただの野太刀と見てよい。特に秘密も無い、品質が良いだけの普通の大刀である。
業物ではあるが、ただの野太刀と見てよい。特に秘密も無い、品質が良いだけの普通の大刀である。
[管制ユニット]
元は第4期LEVの一部であった、AIの搭載されている管制ユニットを、そのまま改造して操縦槽に転用している。管制ユニットの型番はHi-CONTECST/BRAU-SyS-J41Ver.8.1As/A2。AIの型番と名称は、type-79型Ai『プラズ=キャルク』である。
これがどの程度の能力を持ち、どれだけ操手をサポートできるのかは現状不明。過去の記録、伝承、古文書などの情報を洗い浚い調べても、記録の欠片すら残っていない。
元は第4期LEVの一部であった、AIの搭載されている管制ユニットを、そのまま改造して操縦槽に転用している。管制ユニットの型番はHi-CONTECST/BRAU-SyS-J41Ver.8.1As/A2。AIの型番と名称は、type-79型Ai『プラズ=キャルク』である。
これがどの程度の能力を持ち、どれだけ操手をサポートできるのかは現状不明。過去の記録、伝承、古文書などの情報を洗い浚い調べても、記録の欠片すら残っていない。