鋼の錬金術師(2003)

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鋼の錬金術師(2003) - (2021/03/24 (水) 21:36:05) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2012/06/16(土) 00:06:05
更新日:2024/05/03 Fri 13:31:49NEW!
所要時間:約 7 分で読めます




とりもどせ、すべてを。




2003~4年に放映された、月刊少年ガンガンで(当時)連載中だった荒川弘の人気漫画『鋼の錬金術師』のアニメ化作品。
製作はボンズ・アニプレックス。
監督は『地球防衛企業 ダイ・ガード』『シャーマンキング(2001)』の水島精二、ストーリーエディター(シリーズ構成)は會川昇が担当。
放映当時は原作のストックがまだ1年アニメとして放送するほどには貯まっておらず(放送開始時がグリード登場の頃だった)、
作者も交えて設定を大幅に変更し、原作のシナリオを下敷きにしつつも大胆な脚色を行い、原作とは一味違った世界観となった。

その功績あってか、2004年度の文化庁メディア芸術祭アニメーション部門に推薦されていたりと、ゲームCD等グッズや円盤売上も大ヒットで各方面から高い評価を得ている。
一方で一部原作ファンからは「改悪」だと批判する声も根強く、特に原作と大きく異なる結末や一部設定は賛否両論となっている。
最も、放送当時の原作で描かれていなかった部分との相違に関しては『改悪』とは言い切れない面もある*1
どちらも好きというファンももちろんいる他、批判する層にも「原作とは別作品として見れば面白い」等のアニメ作品としてのクオリティーは認めているという声が見られる。

TV版の好評を受けて、2005年には完結編である劇場版『シャンバラを征く者』が劇場公開。

また、2009年には原作の完結を踏まえ、原作のストーリーを忠実にアニメ化した『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』が放映。
それにより、単に「アニメ版」というとどちらのことを指しているのかわからないため、話題に出す場合はこちらの方は『2003年度版』や『水島版』、『旧アニメ版』等と呼ばれ区別される。
制作会社が同じBONESなため、錬成陣や銀時計など一部の美術設定は継承された。


【ストーリーの変更点】
○1クール目は原作1話のリオールの事件の後は、兄弟の人体錬成の後から9話まで国家錬金術師になりたての頃が回想として大半を占める。
○そのため最初はマスタングが中佐、ヒューズが少佐となっている。
○タッカー家に下宿して国家錬金術師資格試験の受験勉強をするエピソードを追加。この為に後々の悲劇が大きなものとなる。
○第5研究所のエピソードに大幅に追加。エドが賢者の石を錬成するという誘惑にかられる場面もある。
○真理の扉→門。門の向こうもオリジナル。
○シン国は登場しない。
…etc
特に原作ストックを消費しきった後半は完全なオリジナルストーリーとなり、原作にあった場面は第7巻の部分までである。

ちなみに作者のおまけ漫画によれば、アニメ化の時の話も描かれているが、その中で作者は原作ストックを考えて、最終回を先にアニメスタッフのお偉いさん(多分監督かプロデューサー)に話しているらしい。
だとすると、無理やりというかこじ付けにはなるが原作の流れ(アニメ当時の単行本は6巻くらいまでなのでそれ以降)と照らすと共通点がちらほらあるかも知れない。
※ややネタバレになるが、マスタングの目だったり、アニメ最終回でのエドのアレが原作クライマックスのアレと同じだったり…
また、作者が思いつきながらもまだ漫画では描いていなかったネタをアニメで先にやられてしまったということも何回かあったらしく、例えば大佐の無精髭や「死ぬまで殺すだけだ」等はアニメが原作より先にやっている。

わかりやすく両作品の違いを例えるとすれば、原作が「人間の底力凄い、素晴らしい」であればアニメは「人間は愚かで間違いを犯す、だからこそ美しい」である。


【登場人物】
主に変更点について紹介。

エドワード・エルリック
10歳で母の死を経験した為、悲痛な面持ちで母の人体錬成を決意。
また、同じ年に親しくしていた少女のキメラ化→死、異常殺人鬼の襲撃を経る等幼い時から精神的に追い詰められる。
さらに賢者の石を追い求めていることを強調していることから、そこを付け込まれホムンクルスの片棒を担がされたり、
人を殺すという現実を目の当たりにして狼狽したりと、メンタル面での追い詰められっぷりが著しい。
原作版では言わないような弱気な発言もするため、原作ファンからは「改悪部」としてこのエドの性格の違いが挙げられることもある。
他にも賢者の石の情報を求めるために自分が国家錬金術師の道を選んだ事をマスタングに出世の為に利用されただけだと思ったり、
イシュヴァール殲滅戦での軍の非道な行いを聞いたため軍人を信用できず軍に反抗的な態度も多く見せていた。
だが、最終的には過去のトラウマと向き合い、成長していくことになる。

アルフォンス・エルリック
原作とは違い人体錬成には乗り気ではなかった。
原作以上に穏やかな優しい性格が強調されており、引っ込み思案で暗い所がある。
ただ一人の家族であるエドのことを誰よりも気にかけており若干ブラコン気味。
自分の存在に疑問を抱いた時は原作以上に引っ張った。
終盤、仮の肉体である鎧にある変化が起こり、物語の最も重要な鍵を握り、真のヒロインと化す。
なお、前述のように穏やかさを強調するためか、生身のアルは髪と瞳の色に茶色が少しかかっており、原作より母親に似た容姿になっている。

○ウィンリィ・ロックベル
原作者から「原作以上にヒロイン度を増やしてください」と注文され、1クールでの出番は増えたが、原作以上に機械オタクであることが強調された上、
これらの変更点はファンから空気が読めないだのエドに色目使いすぎだのと批難され、ヒドインの烙印を押された。
しかし、ヒューズとの絡みの多さを逆算され両親の死にある確執を生んでいたり、話の筋にも大きく関わる。
劇場版の扱いは……これについては何も言うまい。

ロイ・マスタング
原作のような青二才振りは少ないが、ロックベル夫妻を上官命令で殺した過去があり、そのことが大きなトラウマとなっている。
イシュヴァール殲滅戦でのトラウマと罪の意識から原作以上にエルリック兄弟の身を案じているが、
そう感じさせない物言いと態度のせいでエドからは終盤まで不信感を抱かれていた。

リザ・ホークアイ
原作ほどの大きなデレはないが、要所要所で原作並みにデレている。

○アレックス・ルイ・アームストロング
大体原作と同じだが、アーチャーの部下になってからは兄弟に冷淡な態度を取らざるを得なくなった。

マース・ヒューズ
序盤が引き延ばされた為、死亡するのは2クールの最後、つまり丁度折り返し地点である。
それ故に慣れ親しんだ視聴者には衝撃を与えた。
死ぬまでの流れは未だ語り草になるとか。

○マリア・ロス
原作以上にエドとの絡みが増えた。
純粋に年上としてエドを心配している。
また、原作ほど不幸な目には遭わない。

バスク・グラン
原作では名前だけしか出ていない段階だったために性格が大きく違い、こちらでは軍の負の面代表みたいな描き方をされている(当時名前のみだった為か設定が固まっていなかった影響か)。
後に原作で登場した際にはその性格の違いに多くのファンが驚くことに。

イズミ・カーティス
原作では虚弱体質は専らギャグ描写になっていたが、こちらでは命に関わる描写が多く、よりシリアスに描かれている。
人体錬成の結果、救いがたい一つの存在も生み出してしまう…。

○シェスカ
原作ではチョイ役だったが、アニメでは大幅に出番が増えた。
ヒューズの死後、彼の遺志を継ぎホムンクルスの謎を追う。

○トリンガム兄弟
元々は小説版『砂礫の大地』のオリジナルキャラクターだが、逆輸入されアニメ版に登場した。
なんと終盤で大きな秘密を握っていたと判明。

ロゼ・トーマス
原作通りエドの助言で生きる希望を見出した…と思いきや、軍やホムンクルスによってさらに運命を狂わされることに。
…これって土6だよね?
真のヒロインその2。

傷の男
エドのライバルキャラとして描かれているため原作よりも若く端正な顔立ちになっている。
最初から冷徹な殺人鬼ではなく、キメラ化したニーナを目の当たりにし、殺した時から復讐を決意。
同じ弟だからか、アルとの絡みが多かった。
原作とは180度違う最期は感動必至。

○スカーの兄
恋人を蘇らせようと人体錬成を試み、精神を病んでしまう。

○ショウ・タッカー
悪行が明るみになった後、軍に連行され第5研究所でホムンクルスと共に賢者の石の研究を行う。
その時には自身もキメラ化していた。
死亡フラグを何度も建てていたが、その度にうまく切り抜け生き延びていた。

○ティム・マルコー
イシュヴァール殲滅戦をエドに語り、軍に保護された後ラストとグラトニーにあっさり始末されてしまった。

○バリー・ザ・チョッパー
原作では魂を鎧に定着させられた後の姿しか描かれていないが、こちらでは生前(?)の彼も登場。
国家錬金術師になった直後のエドとウィンリィを襲い、御用となった。女装趣味。

ゾルフ・J・キンブリー
原作ではシルエットしか登場しなかったのでほぼ別人。
精悍な外見の正真正銘のサイコパス。

○トリシャ・エルリック
帰って来ない夫を死の直前まで想い、息子達の気持ちをあまり考えてあげられなかった。

光のホーエンハイム
詳しくは項目参照。

キング・ブラッドレイ
原作以上に「白さ」を強調して、腹黒さが増している。

≪ホムンクルス≫
ラスト
人間を見下す一方で人間になるという願望を強く持つ。
スカーとの出会いで終盤で自分の存在に疑問を抱く。
色んな意味で原作とは真逆の人物。

グラトニー
特に変更なし。

エンヴィー
見た目や性格にさほど変更点はないが、何故かエドに異常な憎しみを抱いており、終盤にその理由が明かされた。

グリード
第5研究所に封印されていたが、エドとラスト一行の戦闘で解放され、そこでキメラ一行を仲間にする。

スロウス
原作ではガチムチだったが今作では女性。普段は大総領秘書官をしている。
その容姿は誰かに似ている…

ラース
ヨック島で出没した少年。右腕と左足がエドのものだが……

○プライド
ホムンクルスの首領格。
キング・ブラッドレイの正体。

○あの方
ホムンクルスを操っている謎の存在。原作の「お父様」にあたる。
その正体はダンテ(ライラ)。


≪オリジナルキャラクター≫
フランク・アーチャー
上昇志向の塊。軍の暗黒面を濃縮したような存在。

ライラ
ヨキの屋敷で働いていた錬金術師見習い。
その後はダンテの元で修行していたが…。

○ダンテ
ダブリスに住んでいる老婦人の錬金術師。
イズミの元師匠だが、今は関係は破綻している。
グリードが帰ってきた時には既に死亡していたが…。

怪盗サイレーン
項目参照。


【それ以外の変更点】

○紅い石
賢者の石の未完成品と呼ばれる物質。
「紅い水」と呼ばれる人体に有害な液体を凝縮・結晶化させることで完成する。
作中で登場する賢者の石の紛い物や不完全品と呼ばれる物質は全てこれが正体。
賢者の石には及ばないが錬金術の錬成増幅作用があり、イシュヴァール殲滅戦では国家錬金術師に配布されてイシュヴァール人の大量虐殺に用いられた。
実は国家錬金術師が所有する銀時計にも内蔵されており、銀時計には錬金術増幅機能があるという設定の真相でもある。
また液体でも純度が非常に高ければ強い錬成作用が発生する。

○賢者の石
生きた人間の命を材料にしている点は原作と共通だが、複数の製法が存在する他、原作は人間の魂を抜き取って作成していたのに対してこちらでは肉体そのものを材料にしている。
最初に登場した製法は紅い水に人間の命を封じ込める方法で、純度の高い紅い水と材料となる人間を専用の錬成陣の中に入れ錬成を行うことで完成する。
ホムンクルスに脅迫されていたとはいえエドは刑務所の囚人を材料に賢者の石を作りそうになり、400年前にはホーエンハイムがこの製法で賢者の石の作製に成功している。
この作成法は術者にも相当な負担がかかるらしく、ホーエンハイムは錬成に耐え切れず一度命を落としている。
イシュヴァールに伝わる製法はこれとは異なるもので自分自身に錬成陣を描き、人柱となる人間の命を自らの体に封じ込めていき十分に溜まった力を開放することで賢者の石になる。
スカーの左腕こそが彼の兄が研究していた未完成の賢者の石そのものであり、終盤で苦渋の末にスカーがあるものを賢者の石にすることに成功する。

○ホムンクルス
原作と最も設定の異なる存在。その正体は錬金術師が行った人体錬成の失敗によって出来上がった『肉塊』が、上述の「紅い石」を食べて成長し人の姿に変化したもの。
体内の紅い石の力により様々な能力と高い再生能力を持っているが、殆どのホムンクルスが不完全な人間として生まれたことに強い劣等感を抱いており、賢者の石の力で本当の人間になりたいと強く願っている。
そのため、原作のホムンクルスと異なり、ホムンクルスであることへの誇りなどは一切持っていない。
弱点は自分のオリジナル(錬金術師が蘇生させようとした人間)の遺骸。
これが近くにあると気分が悪くなり、戦闘はおろか、まともに身動きすることすらできなくなる(エド曰く「本物になれなかった歪な存在だから本物を前にすると竦む」)。
他にも遺骸を使った対ホムンクルス用の「封印の錬成陣」が存在し、この錬成陣にかかったホムンクルスは体内の紅い石をすべて吐き出し大幅に弱体化する。



主題歌
OP「メリッサポルノグラフィティ
 「READY STEADY GO」L'Arc〜En〜Ciel
 「UNDO」COOL JOKE
 「リライト」ASIAN KUNG-FU GENERATION
ED「消せない罪」北出菜奈
 「扉の向こうへ」イエロージェネレーション
 「Motherland」クリスタル・ケイ
 「I will」Sowelu




追記・修正は世界の原則じゃなく、いつかまた逢う日まで交わした、僕と冥殿との…約束だ。

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