鋼の錬金術師 シャンバラを征く者

登録日:2011/12/11 Sun 02:14:57
更新日:2025/04/11 Fri 00:37:48
所要時間:約 8 分で読めます






二人の約束の日、世界は動く



概要

鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』とは、2003~2004年に放映されたアニメ『鋼の錬金術師』の完結編として公開された劇場用アニメ。
2005年7月23日公開。

引き続き監督は水島精二、脚本は會川昇が担当。

後半が完全なオリジナルストーリーとなったアニメ第1作の世界観を基に製作したため、原作とは全く違うオリジナルの完結を迎えている。


あらすじ

弟を救うために「門」をくぐり、西暦1910年代*1の現実世界の住人となったエドワード・エルリック
そして1923年のドイツ、18歳のエドは同居人のアルフォンスと共に錬金世界への帰還のためにロケット工学の研究を行っていた。
そんな中、研究資金のパトロンを見つけたというアルフォンス。
しかし、その裏にいたのは理想郷≪シャンバラ≫を目指す怪しい魔術の研究を続けるトゥーレ協会だった。
一方、錬金世界・アメストリスでは13歳のアルフォンス・エルリックが兄を探す旅を続けていた。ただひたすら兄を求め続け、当てもない旅をするアル。
やがて平和となったアメストリスに異常な現象が起こる。

二つの世界をつなぐ兄弟、そしてそれを取り囲む人々、想い、欲望───それらが重なった時、門は今一度開かれた。


登場人物

≪現実世界・西暦1923年≫

主人公。18歳でやっと10cm伸びた。
機械鎧の代わりにホーエンハイムが遺した義手義足をはめている。神経の電気信号を読み取って本物の手足のように動く優れものなうえ、肘部の仕掛けを差動させることで出力を増大させられるが、その後オーバーヒートの反動で故障してしまうのが欠点。
元の世界に帰る方法を色々と模索しているが、「生きている限り人は世界とは無関係でいられない」という事実を突きつけられ……
女心に疎いのは相変わらず。

  • アルフォンス・ハイデリヒ
CV:小栗旬

アル(弟の方)に瓜二つの病弱な青年。ロケットの開発に全力を注いでいる。
エドが語るアメストリスでの冒険を夢物語と一笑に付しているが、一方で常に此処ではない何処か“しか”見ていないエドのことを心配している。
肺癌を患って余命僅かであり、自分の生きた証を残そうと躍起になってる。

  • ノーア
CV:沢井美優

エドがひょんなことから助けたジプシー(ロマ)の少女。錬金世界のロゼ・トーマスに少し似ているが、別人。
テレパス能力を持ち触れた相手の記憶や感情を読み取ることができるが、その能力を同朋からも疎まれている。
流浪の民である自分が定住できる理想郷を心の底では求めている。
やたらエロい。エッカルトとはある意味で似たもの同士。
中の人は美少女戦士を演じていた。

  • ヒューズ

マース・ヒューズ中佐にそっくりな警官。
気前のいいおじさんのようだが、ナチ党支持者でジプシーに対しても偏見を持つ。
最終的にノーアを守るための行動で吹っ切れたのか、ナチスと縁を切った。

  • グレイシア

ヒューズの恋人。花屋を経営している。
ノーアに対しても偏見なく接する心優しい女性だが、そのことですれ違うヒューズとの仲は中々進展していない。

  • フリッツ・ラング

キング・ブラッドレイそっくりな映画監督。左目には眼帯ではなくモノクルを着けている。
勘違いしたエドに襲われかけるも、彼に協力。
戦争の世を憂えており、夢である映画の世界を尊重している。
最終盤、彼が語るモノローグはサウンドトラックにも大きく引用されている締め括りの言葉となっている。
実在の人物で、実際に左目にモノクルをしており、後年には右目に眼帯をしている。
史実では母親がユダヤ人であったため、1934年にフランスに亡命する。そんなラングが錬金世界で民族浄化を行っていたヒトと瓜二つというのは皮肉にしても重い。
「映画も兵器も等しく科学技術の賜物だ。ならば私は映画を作り続けよう。絢爛なる白昼夢を。あり得べからざる、もう一つの世界を…」

  • 女優
ライラそっくりなお茶汲み。
プライドが高いのかエドに冷たい態度をとっていた。

  • ジプシーのカップル
傷の男ラスト(の元となった女性)そっくり。

アニメではどうしようもないヘタレだったが、今作でもヘタれた。
父親としての責任感からエドを帰す方法を探す過程でトゥーレ協会と接触。
結果として拘束されエッカルトによりエンヴィーともども『門』を開くための触媒にされるが、最後は息子のために文字通り命懸けで『門』を開く。
だがそれは更なる悲劇を生む事に……。

TV本編最終回で意味ありげに門の向こうに行ったが、龍の姿(錬金術の使えない世界であったため戻れなくなった)で古城に潜伏していた。
ラングの求めで古城を訪れたエドを襲撃していたところ、トゥーレ協会が世界中から掻き集めた「これぞロンギヌスの槍」と称される槍をありったけ打ち込まれ捕獲される。
その後は拷問を受けたらしく自我が崩壊し、大人しくさせるためホーエンハイムを咥えた状態で『門』の触媒として利用された。
裏鋼では着ぐるみだったことが発覚。

  • フューラー
俗に言うナチス総帥。
台詞は無し。

  • カール・ハウスホーファー
CV:津嘉山正種

アルフォンスのパトロンを申し出たミュンヘン大学の教授。
その正体はトゥーレ協会の幹部。
計画最終段階で「あの世界がシャンバラ(理想郷)だとは思えない」と計画の反対を主張しエッカルトに撃たれるが、一命は取り留めた。
実在の人物。

  • ルドルフ・ヘス

後のナチ副総領で、ハウスホーファーの相棒。
実在の人物。

  • デートリンデ・エッカルト
CV:かとうかずこ(現・かとうかず子)

トゥーレ協会の会長で、魔術の研究の第一人者。ダサい格好だが、童顔美人で案外巨乳。
一見、物腰柔らかな貴婦人だが腹の底ではシャンバラ=錬金世界から魔術=錬金術の力を得ようとするどす黒い欲望と野心を秘めている猜疑心の塊のような人物。
魔術師を名乗るのは伊達ではなく、現実世界の人間ながらエンヴィーとホーエンハイムを触媒に一時的ながら『門』を開くだけの技量を持っている。
実の所、ゲスな悪党ではなく、根っこのところは「理外の存在」に怯える臆病者であり、良くも悪くも普通の人。
+ ネタバレ
彼女の本当の目的は錬金術の力を現実世界に持ち出すことではなく、『錬金世界(アメストリス)の破滅、及びそこに住む人々の鏖殺』
隣り合うもう一つの世界の存在、そしてそこに自分たちにはない錬金術という魔法のような技術や、ウラニウムという使い方次第で悪魔のごとき威力を発揮する元素を発見する知識があると知ったエッカルトが感じたのは、理解し得ぬモノへの恐怖という根源的な感情だった。
「自分たちを上回る存在が攻め込んでくる前にこちらから排除しなければならない」という、恐怖を払拭する衝動に駆られたエッカルトは、錬金世界を理想郷シャンバラであるとトゥーレ協会ひいてはナチス高官を騙くらかすことで協力を取り付け、真の目的を達成するための武力などを揃えていた、というのが本映画における騒動の真相。
錬金世界に移動する際に『門』の中にいる存在たちと融合し、エドの機械鎧錬成のように自身の鎧を自在に錬成し肉塊を介してロケットや鎧兵を操る力を得る。
真相を暴露し錬金世界の人々を「同じ姿をした化け物」と蔑み、「この世界の人はアンタたちに戦争を仕掛けたりしない!」というエドに対しても「わかるものか!」と逆上同然に激昂。
鎧兵の群れで取り囲むもアルの錬金術により事前に支配権を上書きされ敗北。
最後は門を越えて現実世界に戻され、全身肉塊に覆われた醜悪な姿で再起を求めてノーアを狙い、ヒューズに撃たれ絶命した。
裏鋼では居酒屋で優雅にティータイムをしていた。
モデルはナチスの初期メンバーであるディートリヒ・エッカート。勿論史実では男である。

  • エリック・ヤン・ハヌッセン

カーニバルの興行主。自称・千里眼の持ち主で、フューラーの預言者となった。
ノーアの超能力に目を付けジプシー仲間から彼女を買い取るも逃げ出され、偶然参加していたエドが彼女と接触することとなる。
実在の人物で、最終的にはヒトラー政権成立後に暗殺された(彼に危機感を抱いたためとも、彼がユダヤ人であったためともされる)。


≪錬金世界・アメストリス≫

もう一人の主人公。
最終回の事情により、体の返却に際して記憶を含む成長分を失っているため心身ともに13歳相当。エドと同じ赤いコートを纏い、髪型がエドに似てきた。
かつて鎧に魂を定着させていたことから魂が剥離しやすくなっており、自分の魂の一部を鎧に移し操ることが可能。

ヒロイン。
帰ってくる保証のないバカ幼なじみを健気にも待ち続けており、別れている間の成長分すら計算に入れた機械鎧も用意している。
だが、本心ではどこか諦めているのかもしれない。
「もう、待たせてくれないんだね…」

眼帯の元大佐。
一連の事件がトラウマとなり、錬金術を封印して伍長に自主降格し、北方の雪山に駐屯。
しかし兄弟の危機についに立ち上がる。
「悪いが一人乗りだ」

ロイにはついて行かず中央司令部で彼の帰りを待っている。
その後も交際しているのかは…微妙。

軍を退役し、家族と共にリオールの復興に努めている。あの像はないと思うが。
3年経っても相変わらずの筋肉美。

リオールで子供と共に暮らしている。過去のトラウマは克服した模様。

内臓喪失が響き、すでに故人。

  • ピナコ・ロックベル
想い焦がれる孫とその幼なじみを見守るばっちゃん。

  • シェスカ
今作ではウィンリィと一緒に行動することが多い。

  • ジャン・ハボック
  • ハイマンス・ブレダ
  • ヴァトー・ファルマン
  • ケイン・フュリー
  • マリア・ロス
  • デニー・ブロッシュ
軍人の皆さん。元大佐の帰還に歓喜。

TV本編最終回で出立後、一人放浪したのちボロボロの姿で行き倒れていたのをウィンリィが発見し保護。
ロックベル工房に居候させてもらっていたが、かつて敵対していたアルに協力。
そして彼がずっと望んでいた「ママに会う」願いは遂に叶えられることになる。

ダンテによって自我を奪われた後、地下都市で岩などを食べて外見も異形の怪物へ成長した食欲の化身。
真っ白な巨体に同じ顔を持つ無数の触手が生えた姿は最早あんた誰?状態。
地下都市でアルとラースに襲いかかるが、赤い石の精製という本来の機能自体は残っていたためラースが逆転する一手となる。
え?ダンテ?何のこと?

  • ハスキソン

冒頭でエルリック兄弟と対決した黒マスクの物理学者。
ウラニウムという新物質の発見を取り立てて貰おうとエルリック兄弟と接触するが、兵器転用したその威力と採掘の過程で死人が出る危険性を指摘され逆上。
追い詰められ「錬金術師(キミたち)の禁忌など知ったことか!」と半端な錬金術で採掘員たちの死体に人体錬成を試みるも、門の向こう側に連れて行かれ……
ある意味今回の事件の元凶
CVを務めた石塚氏はその後、ハガレンアニメ第2作『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』にてヴァン・ホーエンハイムを演じる事になる。


主題歌

OP「Link」
歌:L'Arc~en~Ciel

ED「LOST HEAVEN」
歌:L'Arc~en~Ciel


余談

本記事で「アニメ製作途中で急遽劇場版製作が決定したため、別作品として温めていた脚本を急遽TVでやり残したことを合体させて製作された」という情報が長らく記載されていたが、これは誤情報。
実際は「時間がなかったため、手持ちの史料で作れるものにした」ということが會川氏の2022年5月8日のツイートで明かされている。





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最終更新:2025年04月11日 00:37

*1 エドが門を潜った先が第一次世界大戦末期の1918年、最終回がその3年後の1921年