雪代縁

「雪代縁」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

雪代縁 - (2021/05/12 (水) 16:09:32) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/06/29 Wed 17:59:33
更新日:2024/04/16 Tue 08:02:48
所要時間:約 17 分で読めます





守りなど無い!守る必要なども無い!!
俺が唯一守りたかったものは既に貴様に…


貴様に奪い取られている!!!




雪代(ゆきしろ)(えにし)とは、漫画るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の登場人物。


■プロフィール

安政2(1855)年5月生まれ。双子座。血液型A型。
明治11年時23歳
身長:175cm 体重:68kg
特技:中国語会話
趣味:死んだ姉との会話
CV:佐々木望(OVA版)
演:新田真剣佑(実写映画版) 荒木飛羽(実写映画版・少年時代)


■人物

人誅編及び追憶・星霜編の主要人物であり、原作漫画本編のラスボス
毛先の跳ねた白髪と丸い色眼鏡(サングラス)が特徴の青年。実写版ではパーマのような癖毛になっている。
緋村剣心が働いてた頃の妻・雪代巴の実弟で、剣心の義弟にあたる。
ただし仲は悪いなんてものではなく、縁は剣心を殺したいほど……否、死すらも生温いと思うほど憎んでいる。



■剣心と縁の因縁(追憶編)

縁は幕府方の武家・雪代家に長男として生まれた。
物心つく前に母親は亡くなり、歳の離れた姉である巴に育てられた縁にとって、巴は理想の姉であると同時に母親のような存在であった。

幕末、姉・巴の許嫁であった清里明良が祝言を目前にして抜刀斎時代の剣心に斬殺されたため、
この時点で剣心は縁にとって「姉の幸せを奪った仇」だった。
(清里は巴の幼なじみでもあり当然縁とも関わりの深い人物であった事は明白だが、清里と巴の祝言が決まった際には駄々をこねまくったらしい)

その後、清里の仇を取るために一足先に抜刀斎へと接近していた巴を追って縁も家を飛び出し京都へ向かい闇乃武と接触。
そして連絡役を任され早く復讐を終え一緒に家へ帰るべく抜刀斎と同居している巴の下を訪れるが、自分の知らぬ間に姉の心は復讐から遠ざかっており、逆に自分だけを家に帰そうとする姉の言葉にショックを受ける。
無論これは自分が始めた復讐から大切な弟を遠ざけようという巴の切実な思いから出た言葉であったが、早く姉に帰って来てほしかった縁がその言葉に納得出来るはずもなく、その憤りは姉を不幸にした抜刀斎へと向けられることとなった。

そして闇乃武の言葉を信じた縁は命令通り再度抜刀斎の家へ赴き手紙を届け巴を連れ出そうとする。
だがその時既に巴は闇乃武によって人質にされており、縁は抜刀斎の後を追い戦場となっている森へ踏み込むが、
そこで彼は抜刀斎が巴を袈裟切りにしている場面を直接目にしてしまう

事情を知らなかった縁は「抜刀斎が巴を殺した」と判断。(実際のところ斬ったの抜刀斎だが、抜刀斎自身も巴を斬るつもりはなかった)
このとき縁はまだ10歳であり、黒かった髪が真っ白になるほどの憎しみを覚える。


■その後

戊辰戦争で雪代の生家は離散*1
戦乱の渦中で一人になった縁は鳥羽伏見の戦いの最中に抜刀斎の前に一瞬だけ姿を見せた後、13歳で単身上海へ渡航する。
幕末以上の混乱の渦中にあった上海で子供一人で生きていくことは不可能に近く、一か月も経たず野垂れ死にしかけるが、運よく現地にいた日本人一家に助けられる。
しかし回復した縁はその一家を皆殺しにして金品を奪い取るという凶行に及んだ。
ちなみにわざわざ皆殺しにした理由は幸せそうなのがムカつくといった酷く身勝手な物だった。故に佐之助からも「性根からして腐ってやがる」と真っ当な糾弾を受ける。
この凶行に加えて、後に武器の違法取引などの様々な犯罪に手を染めて多くの人間を直接的もしくは間接的に殺めてきたことを考えると、彼も決して一方的な時代の被害者などではない。

また、この時奪った一家の財産と共に「倭刀術」に関する資料を入手し、独学でこれを習得。
そうして個人での武力も手に入れた縁は、上海の闇社会に身を投じ、若年にして大陸経由の密造・密輸武器全てを取り仕切り、
当時世界最新鋭の兵器を備え戦艦の艦隊編成すら可能とする強大な上海武器マフィアのボスに登り詰める。

それと同時に彼の脳は消えることのない抜刀斎への憎しみを糧に、24時間365日狂ったように覚醒状態を維持し続け、毎日少しずつ、その神経を研ぎ澄ましていった(後述)。


■明治10年前後

武器マフィアのボスとしての活動を続けており、その一環で志々雄真実一派に鋼鉄艦・煉獄を販売している。
ただし縁自身は志々雄たちと剣心が直接戦うことになるとは思っていなかったらしい。
万が一京都編で志々雄が剣心を倒してしまっていたら復讐の機会を失ってしまうところだったので、剣心の勝利はある意味僥倖だっただろう。
死の商人として更に罪を重ね続けた結果、斎藤一すらも「日本にとって危険な人物」と警戒するほどの存在となっていた。


■人誅編

10年ぶりに日本へと帰国し、剣心との間に因縁を持つ「六人の同志」を結集。
メンバーは剣心に片腕と武士としての死に場所を奪われた鯨波兵庫、師匠を殺された戌亥番神、友人を殺された乙和瓢湖、姿を見られ恥をかかされた八ツ目無名異、
あと別に剣心に怨みを抱えているわけではない外印たちの五人。
組織の技術と財力を駆使して彼らをバックアップし、剣心に関わる東京の人々を次々に襲う「人誅」を決行。

更に剣心と10年ぶりに直接対面し、宣戦布告と同時に巴の死に関する怒りをぶつけ、彼を精神的に追い込んで行った。


神谷道場にて

先の宣戦布告の通り六人は神谷道場襲撃を決行。
そこで激しい"死闘"が繰り広げられ、同志たちが倒されたことでついに剣心と縁の"私闘"が始まった。
戦い始めこそ斎藤と佐之助からは「才能があり、鍛練も積んでいる。だがそれだけだ」「志々雄には遠く及ばない」と評されたものの縁が攻勢に転じたことで空気は一変。前述の倭刀術を駆使し、剣心の飛天御剣流と互角以上に渡り合う。
剣心を翻弄する攻撃の数々を目の当たりにして、当初は楽観視していた周囲の面々も緊張感を抱く。

剣心には「巴を殺してしまった」という罪の意識があり、縁には「復讐をする」といういわば罰の意識があったため、剣心は無意識のうちに全力を出せずにいた。
一方の縁にも真剣を使用しつつも剣心に死なない程度の重傷を負わせ行動不能にしなければならないため手加減をせねばならず、
真剣を使用しての不殺」というかなりのハンデがあった。

そしてあの志々雄すらも圧倒した剣心の奥義、天翔龍閃までも打ち破り、追い詰める。
しかしそこで縁が人誅の目的、「剣心ではなく薫を殺害し、剣心に自分と同じ苦しみを味わわせ生き地獄に突き落とす」という計画を口にし、剣心の怒りに触れてしまう。
その怒りが起爆剤となって剣心は薫を守るため縁に怒涛の反撃を繰り出し、真剣を使いつつも死にかけの剣心を何とか生かしたままダウンさせねばならない縁は後手に回る。瀕死の身ながら今迄にない力を発揮した剣心は形勢逆転するものの、倒したと思っていた鯨波の妨害により縁を取り逃がしてしまった。
その結果……


余談だが、この戦いで剣心が縁を殴った後に逆刃刀を構えながら「例え巴の本当の魂がお前に微笑んだとしてもそれだけは絶対に許さんッ!!!」と激怒するシーンが例の「働きたくないでござる!!!」のコラ画像の元ネタである






薫は縁に殺されてしまい、剣心はまたしても大切な人を守れなかった悲しみに押し潰され、縁の人誅は完遂する。
その後剣心は精神的に再起不能に陥り、逆刃刀を鎖で封印して落人群に身を落とすのだった。








孤島の隠れ家

なんと、薫は生きていた
外印の発言など伏線は幾つかあったので一部の読者にはバレバレだったが。
幼き日に抜刀斎が巴を斬るところを見てしまった縁は、巴と同年代の女性が死ぬことに本能的な拒絶反応を起こすようになってしまっており、そのため薫を殺せずにいたのである。
「剣心に自分と同じ苦しみを味わわせる」と言っておきながら、剣心の目の前で殺そうとしなかったのはこのため。
ちなみに剣心たちが見た薫の死体は、外印が作った屍人形だった。

誘拐した本物の薫と共に組織がアジトにしている孤島へ逃亡した縁は、剣心戦での負傷の療養を兼ねて薫を軟禁したまま東京で剣心が生き地獄に落ちたまま死ぬのを待つことにする。
だが、縁自身も一連の人誅が正しい行為ではないと深層心理では理解してしまっていたため、計画を完遂してからは妄想の姉が笑わなくなってしまう
そのことは自身の中の姉を唯一の心の支えとしていた縁を酷く動揺させ、「やはり薫を殺さなければ巴は笑ってくれない」と考え即座に薫を殺そうとするも、やはり身体が拒絶したため命を奪うことはできなかった。

以降、薫を殺せないが東京に帰すことも出来ない縁と帰る手段がない薫、互いに動けない状態ということで一時休戦状態となる。
しかし縁の身の上を知っており彼に思うところのあった薫は手料理を作るようになり、縁も姉の作ってくれた料理のことを思い出し「マズい」と言い食い残しながらも必ず箸を付けるようになった。


一方剣心は、燕に「暴れている鯨波を一人で食い止めている弥彦を助けてほしい」と頼まれ人生の答えを見つける。
長年悩み続けていた悩みの答えにようやく辿り着き、潜在能力を今まで以上に発揮。
以前よりもさらにスピードが上がったというインフレ設定付きで復活し(公式ガイドブック・剣心華伝より)、
さくっと鯨波を倒し、薫の生存を知って彼女を助けに縁の隠れ家へと向かう。


浜辺の私闘

浜辺で量産ヅラの四人と黒カッパを退場させたあと、再び剣心と縁の私闘。
「多くの人を、そして巴を殺してしまった自分はどうするべきなのか」という問いの答えを見いだした剣心は、過去最高の精神状態と実力で縁に立ち向かう。
また今度は最初から剣心を殺すつもりでいた縁も、以前に増して強くなっていた(要するに縁にとっては不殺の概念がなくなった)。疾空刀勢など前回には見せなかったハイレベルな技も駆使して剣心の命を刈り取ろうとする。
そして互いに凄まじい戦闘を繰り広げるが…



剣心の攻撃を一発もくらわずに、一方的に剣心をぶちのめす縁。


飛天御剣流の技を次々と完膚なきまでに返り討ちにし、頼みの九頭竜閃すら通算3撃目で出だしから掌底で発動を潰される。
公開処刑ともいえる両者の圧倒的な実力差に、斎藤すら「(剣心の)全ての詰め手が封殺された」とさじを投げてしまうほど。

ボコボコにされた剣心に対し、「早く立て!」と煽る縁。
そんな剣心に薫が声を出して剣心を鼓舞するがそれを見た縁は、薫に巴の面影を重ね合わせ、攻撃を中断。
あろうことか倭刀を手放し、剣心の前に突き立て、剣心にこの剣で自害をしろと命じる。


さあ死ね、死ね、死ね…死ね!!!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!!

この時の縁の形相は「復讐という『正義』を成し遂げようとする英雄」などでは微塵もなく、
ただの「血に飢えた醜い悪魔そのもの」である。

ようやく起き上がった剣心はその剣を手に取り……緑に投げ返す。
そして、自分はまだ死ぬ訳にはいかない事、緑が仕掛けた「生き地獄」の中でようやく「答え」を見出した事…その「答え」を語り、そして「緑…お前の中の巴は、今、微笑(わら)っているか?」と諭され、激昂の末「夢だろうと(うつつ)だろうと幻だろうと、二度と姉の姿が見えないように完膚なきまでに殺す」為、奥の手である狂経脈まで繰り出す。

狂経脈を発動したことで更に強くなった縁は、剣心をあらゆる意味で完全に超えた「速さ」を以て剣心の背後に立ち倭刀をわざわざギロチンの如く剣心の首の前から廻すような形で斬りかかる、倭刀を置いて剣心を小馬鹿にしながら一方的に嬲り打ちのめす、といった舐めプを見せる。
だが追い詰められた剣心が発動した龍鳴閃によって、全身の平衡感覚を麻痺させられ大幅に弱体化する事になる。
縁は麻痺した器官を自分で潰すという荒業でなんとか攻撃力を維持した*2が、もはやお前の攻撃は当たらないと剣心に諭される。

たしかに剣心を失意のどん底に落とした時も、縁に見える巴は笑ってくれなかった。
本当に巴は復讐を望んでいるのか?本当に巴は、抜刀斎を殺せば笑ってくれるのか?
考えても答えは出せず、「それでも抜刀斎が憎い」という強すぎる憎悪だけを頼りに、剣心との決着をつけようとする。

かつて一度は破られた天翔龍閃だったが、今度の剣心には緑と対する事に一切迷いがなく、それどころか長らく迷っていた人斬りの「罪」に対する答えを見つけたことで、
以前に志々雄への奥義の一撃を見ていた斎藤や蒼紫ですら目を大きく見開いて驚くほどの勢いで、未来への新たなる一歩を踏み出す。
以前とは別次元の力をその身に受けながらも精神的に巴に縋り付く縁だったが、彼が幻視したのはこの期に及んで愚かで身勝手な復讐を止めようとしない弟を哀しげに見下ろす姉の姿だった。
この迷いに加えて龍鳴閃が発端で弱体化していたこともあり、倭刀を折られて敗れてしまった。

それでも立ち上がる縁だが、見限った副官の呉黒星が逆上して剣心を銃で不意討ちした後、薫まで射殺しようとした光景を見て、巴のことを思い出して反射的に前に出る。
更に激昂して黒星を叩きのめしトドメを刺そうとするも、剣心に止められる。
落ち着きを取り戻した縁は自分が薫を助けてしまったことに動揺した上、剣心から礼を言われたことで自分が本当に守りたかった人のことを思い出し、その場に泣き崩れたのであった。


その後、縁は警察に拘束されるが、連行される直前に薫から巴の本心が綴られた日記を手渡される。
その日記を読んだかどうかは定かではないが、彼は護送の船から姿を消し、行方を晦ましてしまった。
斎藤は特に眼中にも無いのか「あんな脱け殻など放っておけ」と口にしていたようで、彼の捜索をするつもりも無いらしい。

それから少し後、京都の落人群に気力も狂気も抜け落ち以前の剣心のように座り込んだ縁の姿があった。
そしてそんな彼の隣に座ったのは……




■戦闘能力

戦闘力は間違いなく作中最強クラスである。
わかりやすい物差しとして、普段の縁は「四神を4人同時に相手にするのと互角*3」であるため、この時点で十分作中上位…チートの域である。
が、まだ「るろうに剣心」の範疇ではある。なかには身長8メートル以上体重1㌧超えの巨人の一撃をまともに受け止め可能なキャラもいる。

ところが狂経脈を発動すると四神に加えて先に述べた上海武器マフィアの全兵隊をまとめてぶつけても到底かなわない領域に達してしまう。

また単行本完全版だとキャラごとに花札の図柄が描かれているのだが、その中の作者が強さを明確に表したと言う花札の内では、6人の最強キャラの一人として紹介され、
最強キャラの中でも縁だけが例外的に「0点札」に*4
理由は「印象を残したかったから。禿山は虚無感が一番強い」という理由。
確かに剣心への復讐以外頭にない縁には妥当な札であるが。

剣術は剣の才能に加えて元からの身体能力に秀でており、独学にもかかわらず剣心にも退けをとらないほどの腕前。
狂経脈発動時には剣心に「貴様の剣の威力は拙者の剣を上回っている」、「攻めているときは無類の強さを発揮する」と評価されるほど。
ただし同時に技も性格も全てが攻撃という一面に特化している為、守りに入らざるを得ない状況になると作中のように一気に劣勢になってしまう。
更に斎藤曰く戦う前から精神が肉体を凌駕しているらしく、九頭龍閃をまともに喰らって尚笑みを浮かべながら立ち上がるほどである。
泥水を啜り人肉を喰らい何度病に伏せようとも剣心への憎しみから立ち上がったという、彼の語るまだ上海に渡ってまもない頃の凄惨極まりない生き様がそれを裏付けている。


使用する武器は「倭刀」の一振り。
室町前期まで主流だった「太刀」であるらしく、刀身はかなり長い。刀としてもそれなりの業物。
なお鍔や柄の拵えは大陸風の装飾が施されており、柄尻には紐の飾りが付けられている。


倭刀術(ワトウジュツ)

かつて大陸を荒らしていた倭寇の剣術と日本刀に対抗すべく考案されたという大陸独自の剣術。
日本剣術の速さと日本刀の切れ味に、大陸のしなやかで破壊力ある体術を取り入れたようで、斬撃に何らかの勢いを乗せて攻撃するものが多い。
縁のものは先述の通り上海渡航後に殺害した一家が持っていた資料を読み解き独学で身に付けたものであるため、若干我流混じりらしい。
ただしその実力は本物で、青年時には誰にも負けない倭刀術の使い手になっていたという。


  • 蹴撃刀勢(シュウゲキトウセイ)
斬り上げた刀の峰を蹴り、威力を倍加させて放つ斬撃。

  • 回刺刀勢(カイシトウセイ)
相手の斬撃に刀の柄尻をぶつけ相殺すると同時に、その衝撃を利用して自分の体を軸に刀を半回転させ刺突を放つ。
龍巻閃に近いカウンター技。

  • 朝天刀勢(チョウテントウセイ)
地面に刀を突き刺し、飾り紐を持った状態で柄尻を踏み台に跳躍する技。……技?
この技について、二戦目にて浜辺で足元が不安定なのでもう使えないはずだと剣心に指摘された際には「倭刀術における序の口に過ぎない小技」だと語っていた。

  • 掌破刀勢(ショウハトウセイ)
振りかぶった刀の峰を反対の掌で押し出し、その勢いで斬り付ける技。

  • 轟墜刀勢(ゴウツイトウセイ)
相手に刀を突き刺し、そのまま持ち上げた後に地面に落下させる技。
「刀を突き刺して持ち上げる」点でとんでもない力が要りそうである。

  • 疾空刀勢(シックウトウセイ)
倭刀の重さと反動を利用して空中を疾走する。要は二段ジャンプ。
この技を引き合いに出して前述の朝天刀勢を小技呼ばわりしていたので、こちらこそが倭刀術の真骨頂とでも言うべき妙技なのだろう。
これについて高荷恵は「そんなの無理よ!」と至極当然の反応を示していたが、蒼紫は一目で技の原理を見抜いた。
曰く「跳躍の力と落下の力が丁度釣り合う最頂点に於いては、上下にかかる力が0になり一瞬だが完全に静止し、いわば浮遊状態になる。その一瞬を使って、雪代縁のしなやかな筋力と荷重のかかる剛刀の反動を駆使すれば決して不可能ではない」とのこと。
……一言で言えば二重の極みをも上回るレベルのトンデモ理論である。願わくば是非いつか某科学読本で考察して頂きたい所。

  • 戰嵐刀勢(センラントウセイ)
片足を伸ばしながら姿勢を落とし片足を軸に回転、その遠心力を利用した連続斬りを放つ。
威力は九頭龍閃と互角に打ち合う程。
後述する実写映画でもこの技を再現したと思われるシーンがある。

  • 虎伏絶刀勢(コフクゼットウセイ)
倭刀術絶技。
刀の鍔の辺りを逆手のように持った状態から深く沈み込むように踏込み、大地からの反動を乗せた下から斬り上げる一撃を放つ。
158cmの剣心の抜刀術すら避けることができるため、相当深く沈みこんでいる。
天翔龍閃に対して放つ場合、(斎藤の分析によると)踏込みで一撃目の斬撃を回避しつつ発生する空気が吸い寄せるのを利用してこちらの斬撃を一瞬速く繰り出せるため、
一度目の対決時には先の外印戦で天翔龍閃を見ていたこともあって、見事剣心の天翔龍閃を打ち破っている。本人曰く「刹那遅ければ相討ち。殺さないようにするのは難儀だったが一度見ていたのが功を奏した」らしい*5
しかし二度目の対決時には吸い寄せの力が段違いに増していたことで攻撃体勢を崩され、斬撃を繰り出せず敗北を喫した。

とはいえ原作中では天翔龍閃を唯一破った技であり、名前も「龍虎相打つ」といった意味合いで設定されたものと思われる。


狂経脈(きょうけいみゃく)

縁の切り札。後ろ盾なしで上海闇社会を支配した縁の真の「力」。
姉斬殺のトラウマ以降、剣心への絶えぬ復讐心により神経が昂ぶらない時が無かった所為で常に活性化された状態にあり、
その結果神経が血管以上に太くなってしまった特異体質が原因。
斎藤や蒼紫すらもこの能力の基盤が一体何なのか見抜けず困惑していたが、医者である恵の知識を以てこの力の正体が神経だと判明し、縁が彼女の言葉を肯定する形で全容が明らかになった。

発動すると反射神経が異常なまでに鋭くなり、超人的な動きを見せるようになる。
縁の部下のカッパ曰く
「普段の縁が相手なら、自分の護衛の四星(上記の量産ヅラ)4人がかりなら互角に戦えるから意見が言える。
が、狂経脈を出されたらもうこいつら4人に加えて全兵隊まとめてぶつけても歯が立たない。」
と怯える程に総合戦闘力が増大。

剣心に反撃はおろか回避や防御をさせる余裕すら与えず、一方的に怒涛の連撃を繰り出した。
剣心の神速は「相手の動きを先読みする」速さだが、縁の狂経脈は「目に映らない」は元より「神速の相手が動いたことを確認してから動いても間に合う」速さである。
剣心の「先読み」は相手の姿が見えなくても動きの先を予知できる超能力のようなものだが、狂経脈はそれを純然たる「速さ」だけで凌駕する。
故にそのスピードは宗次郎の縮地*6すら凌ぐ。何このチート。

また感覚神経も強化されるため、目は飛び散る血の一滴一滴を見極め、耳は骨の軋みの一つ一つすら聞き分け、皮膚は舞い上がる砂の一粒一粒まで感じ取るという人間離れした超感覚をも得られる。


しかし慢心したのか、わざわざ高く跳躍し疾空刀勢で飛び掛かった隙を突かれて、神速の納刀術「龍鳴閃」による超高音の鍔鳴りを耳に食らった結果、その鋭敏さが仇となり耳だけでなくその奥の「三半器官」にまで大ダメージを与えられてしまい、まともに立ち上がる事も出来なくなってしまった。
狂経脈はチート級の攻撃力を持つ必殺技だが、同時に防御力を紙以下に下げてしまう両刃の剣だったのだ。

平行感覚を狂わされた後は自ら麻痺した鼓膜をえぐり、立ち上がった上で攻撃力と防御力が下がるのを幾らか防いで戦闘に復帰した。
もちろん痛覚も鋭くなっているが、それは常軌を逸した精神力で耐えている。
なお元々パワーも増幅されていたのか、平衡感覚がイカレているはずなのに剣を振った衝撃で10m以上先まで砂浜と海を割った魔神剣かよ。これには作中で戦いを見守っていた面々も「何て馬鹿力だ」と驚愕している。



■他

『再筆』

設定が大きく変更。まず六人の同志が、縁を除く五人の同志になっている。
縁は本編のように強い力を持つ強敵ではなく、基本的な強さは志々雄や斎藤一どころか鵜堂刃衛にすら遠く及ばないが、
ひたすら剣心への強い憎悪で敵を倒していくというターミネーター染みたキャラになっており、
剣術を習ったことはないが壊れかけた小刀一本で斎藤・蒼紫・左之助を続けて撃退していくという展開になるらしい。 再筆でも化け物でした
ちなみにその過程で肉体の一部を徐々に失っていくものの、その度に狂気と執念を増していき、最後に剣心と戦うとのこと。
あと鼠を生きたまま喰う


裏幕-炎を統べる-

終盤、煉獄売買の交渉相手として登場し、志々雄本人とも対面している。
ちなみに本来の交渉相手は別におり、志々雄達がそれを殺して成り代わっていたが特に気にしなかった。

このとき、志々雄一派は言い値で現金一括払いという、縁にとって断る理由が一切ない破格の好条件を提示している。
元の取引相手は「自分の勢力の力を見せつけて頭金(とロリ2人)払った後は10年払い」という舐めきった条件を出そうとしていた。
本編中で志々雄が「煉獄を手に入れるのに全財力の5分の3を使った」と言っているので、縁の言い値も大分凄かった模様。
なお、外印も志々雄配下についていたのだが、縁と志々雄の取り引きに関する仲介などはしておらず、両者の対面は全くの偶然。
そもそもこの取引自体志々雄にとっては「殺した相手がたまたま鋼鉄艦の取引してたので横取りした、ラッキー♪」というものである。
方治が武器商人を駆け回って手に入れたとは何だったのだろうか?と思われるかもしれないが、ノベライズ版ではこの取引以前から方治が甲鉄艦が必要と考えて資料を取り寄せていたので駆け回っていたとしても別に矛盾はしない。
尤も、そんな煉獄はたまたまピンポイントに煉獄破壊用の炸裂弾を持って煉獄の前に現れた左之助によって呆気なく破壊されてしまうのであった…
(津南が左之助に護身用として渡した炸裂弾は元は煉獄破壊の為に作られたものである
縁も志々雄もたまったもんじゃない酷いオチである。二人は津南に煉獄を見せて煉獄破壊用の炸裂弾作らせる切っ掛けを作った鮫男をフルボッコしてよい。


OVA『星霜編

原作のような武器商人ではなく、純粋な復讐者になっており、外印たちのような六人の同志も登場しない。
そういった変更もあってか剣心との戦いでは、剣心が贖罪のために斬られることを自ら望むも、薫が剣心を庇う姿を見て、その時の薫に巴の姿を重ねて断念。一応、狂経脈は使うものの原作と比べると派手な動きは少なく、しんみりとした決着を向かえる。
剣心のことを許したわけではないが、彼の闘いの人生を見届けると言い残して去って行った。
原作よりは救いのある結末だったといえる。
おそらく全メディアで一番良心的な縁であろう。


実写映画『最終章 The Final』


俺がお前に与えたいのは痛みではない…

苦しみだ

概ね原作漫画と同じ大筋を辿るが、上海マフィアの頭目という設定を反映してか中国語も堪能となっている。…無論原作の彼も特技が中国語会話というくらいなので話せないわけではないだろうが。
劇中での振る舞いを見る限り、相手が日本人の場合でも主に敵対者を煽る際に中国語を口にしている様子。本編中では「(他人を攻撃から庇う佐之助に対して)かっこいいねぇ」「(気丈に竹刀を構える薫に対して)人を活かす剣か。くだらねえ」などと眼前の相手に皮肉を浴びせていた。
汽車の中で体術を用いて警官隊を蹂躙した後に斎藤が臨戦態勢に入った時には、流石に武器無しで彼を相手するのは分が悪いと悟ったのかあっさりと降伏して一旦逮捕されるも、清国(中国)の要人とのコネクションや領事裁判権*7を利用して合法的に場を切り抜けるという狡猾さを見せる。
その他、元十本刀の沢下条張も明治政府への間者として味方に付け、自分達のアジトの場所について偽の情報を流させたりもした。なお張はその後、縁の屋敷の中で気に入った倭刀を己の物にするべく彼に挑んだものの戦闘シーン省略で返り討ちにされてしまい、おそらく死亡した模様。

また、過去に日本人一家を皆殺しにした経緯や屍人形の下り*8が丸ごとカットされ、単身で神谷道場に乗り込み佐之助や大勢の門下生を素手で捩じ伏せた後に薫を拉致するなど『星霜編』に若干近い展開も盛り込まれた
尤も、映画中盤において一味の手により大軍勢で東京の街を破壊し尽くして住人達も襲わせるなど、本編中に働いた悪事だけ見れば原作よりも大規模かつ非道な物となっており、狂気の度合いは負けず劣らずではある。
「煉獄級の甲鉄艦10隻を東京湾に並べて東京を火の海にしてやってもいいが、姉さんは静けさを愛する人だったからそれはしないでおく」と言っていた原作の彼がこの光景を見たら何と言うだろうか…。
人質にした薫を絞め殺そうとするも姉の死がトラウマで、殺せずに発作を起こした点は原作と同様。

クライマックスの剣心との決闘も大部分は同じだが、シチュエーションや決着の付け方は少々異なる。
戦いの舞台は浜辺ではなく縁の屋敷となり、物語の時季も夏から冬へと変更されているため巴が最期を迎えた時と同じように雪が降り注ぐ中での一騎討ちとなった。
公開時の舞台挨拶によると、縁がこの時に白い装束を纏っているのは巴が息を引き取ったあの時の彼女の衣を意識しているためとのこと。また作中では言及されていないものの狂経脈を意識した特殊メイクも腕などに軽く施されていたという風に演じた新田氏の口から語られている。
最終的には、息も絶え絶えになりつつ巴の形見の小刀で縁が放った一撃を剣心が敢えて己が身で受け止め「すまなかった」と詫びた事に彼は動揺。
直後、乱入した黒星が薫を射殺しようとしたところを自ら盾となり銃弾を受けた。そして原作通り黒星を殴り殺そうとした所を剣心に止められて我を取り戻し、「俺が守りたかったのはこんなものじゃない!」と慟哭の声を上げたのだった。

その後は警察に連行され、独房の中で自分宛てに届いた巴の日記を読み、真意を知った事で号泣する場面が描かれている。
原作と違い、脱走はしていない。


■余談

中国から渡ってきたという設定を意識したのか、原作では彼の行動による一部の擬音や台詞は漢字で表現されることがある。
例:「破顔ィ…(ニィィ…)」、「嘲笑フ(フフフ)」、「破亜亜亜亜亜ッ!!(ハアアアアアッ!!)」、「(シッ)」、「噴ッ!(フンッ!)」、「由羅…(ゆら…) 」 など。
また、登場当初は長い大陸暮らしにより日本語の発音を忘れかけていたとのことで、時々台詞の語尾が片言になっていた。


キャラとしてのモチーフは作者自身であり、自分の中の一種の憧れを投影した志々雄とは対照的に自身の嫌いな部分をぶち込んだキャラらしい。
故に縁を描いていると自己嫌悪に悩まされ続けたとか。


OVAにおける縁役の佐々木望氏は『劇場版 るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 維新志士への鎮魂歌』で高槻厳達役も演じていた。
ちなみに厳達はどちらかと言えば清里に近いポジションであり、厳達の妹である朱鷺に至っては巴と縁の要素を足して2で割ったような人物とも言える。


RPG『十勇士陰謀編』の主人公である聖/輝は家族を殺され、心身ともにボロボロになって行き倒れたところで親切な一家に保護されるという縁と似たような経緯をゲーム冒頭で迎える。
その後、記憶喪失になっていたという事情があったとはいえ、幸せそうなのがムカつくなどという感情を抱くこともなく*9
逆に家族の復讐を果たそうと何も事情を知らない復讐相手の娘を誘拐した人物(聖/輝にとっては兄の仇)を阻止しに向かい、倒した後は自分は仇を取ろうとはせず*10説得するなど
縁とは全く真逆の復讐を否定するような行動を取っている。


雪代姉弟は『武装錬金』に登場する早坂姉弟のモデルとなっている。
相変わらずシスコン全開だがこれで一応二人も救われた……のかもしれない。
というか、秋水は縁と比較にならないほど好青年だしな! 環境が違えば結果も違うってやつかもしれない。
更に『エンバーミング』の主人公のモチーフでもある。……結構、何気に作者のお気に入りなのだろうか?


るろうに剣心・北海道編 序章 明日郎 前科アリ』のラストページの一角には、縁と思しきボロ布を纏った白髪の人物が描かれている。とはいえ、それ以降は音沙汰無し。
戦闘の中で自ら三半規管を引きちぎって失い、何より彼を10年以上突き動かしていた復讐への執念も消え失せて脱け殻と化しているであろう今、再起して新たな戦いの舞台に身を投じる展開が今後あるのかどうかは未だ不明。
北海道編の敵組織「劍客兵器(けんかくへいき)」の一員である凍座白也により、剣心と深い関わりのある猛者達の一人として彼の名前が挙げられてはいたが果たして……?



「どうすればいい」か?
そうだな……強いて答えるなら
せいぜい「追記修正するがいい」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/