MOTHER3

登録日:2011/03/05 Sat 02:29:45
更新日:2025/05/13 Tue 02:52:50
所要時間:約 5 分で読めます





奇妙で、おもしろい。
そして、せつない。


『MOTHER3』とは、任天堂が発売したゲームボーイアドバンス用ソフト。2006年4月20日に発売。

非常に難産だったタイトルとしても知られている。くわしくは以下の記述を参照。


◆発売までの経緯

1994年に開発スタート。当初の予定機種はスーパーファミコンであった。
その後、対応ハードがNINTENDO64用ソフトに変更され『キマイラの森』とサブタイトルが付く。
さらに後、『奇怪生物の森』と変更され、機種も64DDに。
さらにさらに後、『豚王の最期』とサブタイトルを改め、プレイアブル出展される。


……が、後の2000年、開発の中止が報道される。ファンは肩を落とした。


しかし、後の2003年、突如として開発の再開が発表された。
機種はゲームボーイアドバンスに。
だが、この発表から1年が経ち、2年が経とうとしていた。
細かな情報こそ小出しにされてはいたが、ファンの間にはまたも暗雲が。
が、ゲームボーイアドバンス用の移植作『MOTHER1+2』の発売が発表されたのと同時に、ついに正式発表に至る。


そして、2006年。ニンテンドーDS発売の熱も冷めやらぬ中、遂に発売。


あの頃こどもだった「あなた」はすっかり「大人」になっていた。
しかし『MOTHER』シリーズはプレイヤーの年齢を選ばない。


まさに
『おとなも、こどもも、おねーさんも』


当初は3Dグラフィックで開発されていたが、機種がGBAになったこともあって従来作のような2Dグラフィックに変更されている。
キャラクターや地名などは、ほぼ『豚王の最期』時代のものを継承。
シナリオは細部にこそ調整はあったものの、基本的にはいじられていないとのこと。


◆本作の特徴

  • ストーリー構成について
『MOTHER3』は、ストーリーが8つの章で構成されている。
章によって冒険の舞台となる場所や時間、登場するひとたち、そしてプレイヤーが操作する主人公など様々な要素が変わっていく。

  • サウンドバトル
敵との戦闘では新たに「サウンドバトル」を搭載。
通常攻撃するとき、戦闘中のBGMにあわせてリズムよくボタンを押すと連続攻撃ができるシステム。
ミスするとそこで攻撃は終了してしまうが、最後まで連続で入力できると16回攻撃できる。
16回攻撃できると最大で初撃のおよそ2.5倍のダメージとなり、かなり有利。
本作では戦闘用BGMが相当な数用意されており、サウンドバトルのリズムも曲によってさまざま。
シンプルなリズムもあれば、いわゆる裏のリズムだったり、初見ではわかりづらいようなかなり複雑なリズムもある。
なお、敵を「ねむらせる」とサウンドバトルのリズムが心音として聞こえるようになり、タイミングがわかりやすくなる。

  • HPメーターのしくみ
味方の「HP」「PP」の表示は前作『MOTHER2』と同じドラムリール式
前作と同様、ダメージを受けるとHPが少しずつ減少する。
また「ちめいてきなダメージ」を受けてもHPが0になる前なら行動ができ、HPが0になる前に回復するか敵を全滅させるとHPの減少が止まり、戦闘不能になるのを防ぐことが可能。
さらに、本作では「ガード」をしている間はHPの減少速度がとてもゆっくりになるようになった。
便利なシステムだが、1回の攻撃に時間を必要とする前述の「サウンドバトル」とは食い合わせが悪い。
このため、「連続攻撃を続けて大ダメージを狙う」か「攻撃をすぐに切り上げ急いで回復する」か、戦況に応じてプレイヤーが判断する必要がある。

  • とくぎ
本作ではなかまごとに「とくぎ」という専用の戦闘コマンドがある。
前作にも登場した「PSI」をはじめさまざまなとくぎがあり、うまく活用することで有利に戦える。
「PSI」をつかうには「PP」が必要だが、それ以外の「とくぎ」はPPの消費をせずに何度でも使用できる。

  • たたかいのきおく
2章のある場所で手に入る、図鑑のようなグッズ。
これまでに出会ったモンスターがリストに記録されていく。
出会ったモンスターとの戦闘の練習もでき、サウンドバトルの練習やとくぎを試したりできる。

  • カエル
本作では前作のようにパパに電話をかけるのではなく、「カエル」に話しかけることでセーブする。
カエルはフィールド上のあちこちにおり、こまめにセーブ可能。
カエルの種類も会話もいろいろあり、ほかのゲームでは見られないような楽しい(?)セーブができる。

  • DP
4章以降になると登場する、「ドラゴンパワー」と呼ばれるもの。
いわゆる「お金」の役割があり、お店でグッズを購入したり、いろいろなサービスの利用ができる。
DPはおもに戦闘で敵を倒すとたまっていき、ためたDPはフィールド上の「カエル」に話しかけると預けたり引き出したりできる。

  • サウンドプレーヤー
本作では、収録されているBGMを自由に聴ける「SOUND PLAYER」モードがある。
最初からすべてのBGMを聴けるが、曲名の表示はゲームの進行に合わせて解禁されていく。
好きな曲を登録して聞いたり、ボタン操作を無効にできる機能もあり、ゲームボーイを音楽プレイヤー代わりにできるようになっている。
なお、本作の楽曲は『大乱闘スマッシュブラザーズDX』などを手掛けた酒井省吾氏が担当。
「これ、本当にGBAのゲームか?!」と思えるほどに高音質な曲が、かなりの数用意されている。


◆キャラクター

双子の弟。大人しく、優しい性格。
とくぎは「PSI」。味方の回復や補助効果のPSIが得意。

  • クラウス
リュカの双子の兄。弟に比べると元気で勇敢。

  • ヒナワ
みんなが大好きなおかあさん。
「タツマイリむら」の人達からも愛されている。
好きな花はヒマワリ。

  • フリント
強くて優しい、リュカとクラウスのおとうさん。
1章の主人公。
いつも帽子をかぶっている。また、動物と話すこともできる。
とくぎは「きあいをいれる」。戦闘時に専用の4つのわざをつかえる。

りこうな。リュカの仲間。
とくぎは「においをかぐ」。敵の情報や弱点を知ることができる。
戦闘ではボニーが食べ物系グッズをほかの味方につかおうとすると、ごくまれに自分で勝手に食べちゃうことがある。

「オソヘじょう」のお姫様。リュカの仲間。
賢くて強い、おとこ勝りな女の子。
とくぎは「PSI」で、攻撃系PSIが得意。

泥棒だけど何も盗まない正義の泥棒。
2章の主人公で、リュカの仲間。ちょっと口臭がするらしい。
左足が不自由だが、生活にも冒険にも支障はない。
とくぎは「ドロボーグッズ」。6つの専用グッズをつかったわざで敵を弱体化できる。
また、フィールド上では特定のカベに「カベホチ」をうちつけて、のぼりおりができるようにしてくれる。





※ここから多分にネタバレを含みます※










  • マジプシー
「ノーウェアとう」の各地にある7本の「針」の守護者たち。
オカマのような見た目にオカマのような口調だが、そもそも人間ですらなく性別はないらしい。
ひとつの「針」にひとりの守護者がおり計7人いるが、そのうちひとりは行方不明となっている。

  • サルサ
かわいいサル。
3章の主人公。恋猿が居る。
リア充。
とくぎは「サルげい」。いろいろな効果が発生するわざをつかえる。

  • ヨクバ
行商人。サルサをいじめた悪いやつ。
「タツマイリむら」の住人に「シアワセのハコ」と呼ばれるものを広めたが、それは「洗脳装置」であった。

  • ブタマスク
「キングP」に仕える、ブタのようなマスクをかぶったぽっちゃりな謎の兵隊。
島でさまざまな悪事を働く。



※ここよりさらなるネタバレ※

+ ...
◆重要な用語
  • ノーウェアとう
「ものがたり」の舞台となる島。
この島以外の「せかい」の全ては、人間たちによってすでに滅びさっているという。
この「ノーウェアとう」も「せかい」の一部だが、後述する理由により「せかいのおわり」から逃れることができた。

  • タツマイリむら
島で唯一の村。
「せかいのおわり」のその直前に「しろいふね」に乗ってこの島に逃げ、生き延びた人達が暮らしている。
ただし、ある理由から、村の住人は自らの意志で「島に来る前の記憶」を封印しており
村で生活するための新しい記憶にとりかえている……つまり、自分たちが思い描いた理想の「ものがたり」を演じながら生きているという。
元々家族だった者もいるが、それ以外は血のつながりのない他人同士である。
ただし、「しろいふね」で一緒に島に乗り込んだ赤ん坊のクマトラを除いて、村のこどもは島に移住後に産まれている。

  • リダ
「タツマイリむら」の北にある「クロスロード」で鐘をついている、異様に背の高い人物。
かなり目立っているが、こちらから話しかけてもいっさいしゃべろうとしない。
しかし、物語の終盤でリダからこの島と「せかい」の秘密を聞かされることになる。
上記のとおり、村の住民は島に来る前の記憶を封印しているが、彼だけはある理由により唯一その記憶を封印していない移住者である。

  • やみのドラゴン
マジプシーに守られている7本の「針」によって、島の地下深くに封印されている。
強大なパワーを持っているらしく、「せかい」が滅びてもドラゴンのちからにより「ノーウェアとう」だけは無事だった。
7本の「針」を抜いて封印を解くときドラゴンは目覚め、「せかい」は改革を迎えると言う。
なお、針を抜くことができるのは「選ばれた者」のみ。



※以下、最重要ネタバレあり※
+ ...


  • かめんのおとこ
キングPの命令により、リュカより先に「針」を抜こうとする者。
その正体は、1章で命を落としたはずのクラウスだった。

ブタマスクを率いる、「キングP」の正体である。
「ブタマスク」と「P」という言葉から、もしや……と思ったプレイヤーもいるかもしれない。
ゲーム内で読める「たたかいのきおく」の解説によると、確かに前作で登場したポーキー本人のようだ。

『MOTHER2』のラストで逃げ延びたポーキーは、時間移動を繰り返しながらさ迷いつづけ、
すべての時間や空間からしめ出され、その果てに「ノーウェアとう」に辿り着いた。
リダによると、ポーキーは「タイムトンネル」という時間と空間を自由に行き来できる装置をつかって時間移動をしていたらしい。
その度重なる時間移動の影響で、体は老衰しきっており、もはや自力で歩くこともままならず、マシンに寝たきりで息も切れ切れの状態になっている。
おまけにふつうの人間のようにふつうに歳をとることができなかった……つまり、不死の体になったという。
前作の最後に姿を消したポーキーは、肉体はボロボロだが精神は子供のまま、しかも永遠に死ぬことのできない体という非常に歪な存在と化していた。

「ノーウェアとう」に転がり込んだ彼は、色々な時代からさらってきた人々を洗脳し「ブタマスク」としてこき使ったり、
自分の好きなものだけを集めた「ニューポークシティ」という街を造ったり、好き放題するようになった。
また、島の動物たちを組み合わせて「キマイラ」を造ったり、生き物すら操ったりもした。
リダが言うには、ポーキーはノーウェアとうを自分のわがまま放題にできる「おもちゃばこ」のように思っているらしい。
やがて、「やみのドラゴン」の秘密を知った彼は「せかい」を完全に滅ぼすために、一度死んだクラウスをキマイラに改造し「針」を全て抜かせようとした。

最期はアンドーナッツ博士とどせいさんに開発させたという「ぜったいあんぜんカプセル」に入って、リュカ達に対峙する。
この「ぜったいあんぜんカプセル」とは、外部からのありとあらゆる危険から身を守ってくれる装置だが、一度入るともう出ることも入ることもできないという重大な欠点を持つ。
それはカプセルの中だけでなく、外にいる者にとっても、文字通り「ぜったいあんぜん」な装置であった。
一度入ったら出ることも出来ずもう死ぬこともできない彼は、カプセルの中で永遠の時間を過ごすこととなった。


「ときに人々をさらい、ときに世界を征服したり滅ぼそうとしたりして
絶対安全そうなカプセルに入ってて、打撃などでは倒すことも出来ない」


似たような存在を我々はどこかでみたことがある。









  • 「あなた」
このゲームのプレイヤー……つまり、あなた自身。
リュカ達の後見人であり、タツマイリの人々に奉られている。
この「ものがたり」を見守りその結末や様々な謎をどう解釈するかは、プレイヤーである「あなた」に委ねられている。



◆余談
  • 本作の世界の時代について
本作の物語の舞台は前作の『2』より「大きく未来」か「大きく過去」である。
過去か未来か、どれくらいの過去or未来かは、作中でも糸井氏の発言でも明言はされていない(『2』の50億年後という案はあったようだ)。

糸井氏は自身が明言していない謎についてはプレイヤー自身にその判断を委ねてあるため、別にどちらでもかまわないのだろう。

  • 開発の経緯
本作の開発~発売にあたっての経緯を糸井氏が「ほぼ日刊イトイ新聞」で語ったインタビュー記事によれば、当初はゲーム業界の時代の潮流もあって(前作を上回るような)大作を作ろうという強い意気込みがあったものの、開発が難航していくにつれていつしかその意気込みが重荷へと変わり、開発を中止したのはそれが大きな理由であったとのこと。
このことは糸井氏に深い影を落とし、楽しみにしていたファンに申し訳ないという気持ちが長年に渡って残り続け、「ゲームで発売できないならば書籍化や映画という形で発表するのはどうか」という打診も幾つかあったものの、いずれも当初の構想を表現しきることが困難であったことから悉く頓挫していた。

そんな中、時代が進んだことによってゲームボーイアドバンスという新機種が登場し、「この機種で改めて発表するのはどうか」と進言されたのをきっかけに、糸井氏は大作を作ろうとするあまり悪循環に陥っていた自らの内面を見つめ直し、本作をハードの特性や新たな時代の潮流に合わせた“丁度良い規模のゲーム”として、気持ちを新たにして無事に作りあげることが出来たのだという。

そのことについて、糸井氏は「マザー1もマザー2も元々はさほど期待を背負っているようなゲームではなく、良い意味での“軽さ”があった」と原点回帰するような気持ちがあったことや、「自分は開発を中止した前科があるから、やっと完成させたからといって、鳴り物入りで喧伝するような気持ちにはなれなかった」と消えぬ負い目があったことも併せて語っている。

  • 『スマブラ』の「リュカ」
『スマブラDX』当時は企画が進まなかったため、リュカの参戦は見送りになったが、
本作の正式発売により、晴れて『大乱闘スマッシュブラザーズX』での参戦を果たした。



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最終更新:2025年05月13日 02:52