川尻早人(ジョジョの奇妙な冒険)

登録日:2012/07/21 Sat 04:26:18
更新日:2025/03/09 Sun 17:45:35
所要時間:約 5 分で読めます






お前に味方する『運命』なんて……
お前が乗れるかどうかの『チャンス』なんて……


今! ここにある『正義の心』に比べればちっぽけな力なんだッ!
確実にここにある!!


今 確かにここにある『心』に比べればなッ!



ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』の登場人物。
ストーリー後半から登場し、4部のクライマックスエピソード『アナザーワン バイツァ・ダスト』は彼が実質的な主人公となっている。

担当声優
佐藤ゆうこ (ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル)
佐藤利奈 (アニメ版ダイヤモンドは砕けない)


◆概要


吉良吉影が川尻浩作に成り代わり潜伏している川尻家の長男で、11歳の小学生。
前髪をセンター分けにしており、顎の高さまである薄い金色の髪の毛が特徴的な少年。
美男美女である両親の血筋もあってか、彼自身も容姿の整ったなかなかの美少年である。

スタンド使いではない一般人で、当初は母親のしのぶから「何を考えてるか分からない」と言われる暗い性格だったが、
吉良との戦いを通して大きく成長し、スタンド使い達にも負けない勇気と度胸を身に着けていく。

オタク趣味な所がありビデオカメラなどの機械類にも詳しい。
「自分は本当に愛し合う両親から産まれたのか?」という疑問からそれらを両親の部屋に仕掛け盗撮と盗聴を行っていた。*1

なお、初登場時は外見も不気味な根暗オタク少年そのものだったのだが、話が進むにつれてどんどん精悍になっていった。


◆主な活躍


【ぼくのパパパパじゃない】

両親の盗撮を続ける中、ある日を境にそれ以前とは異なる不自然な行動が多くなった浩作(吉良)を不審に思った早人は、
気付かれないように彼を尾行し、そして吉良がスタンド能力を使ってDQNカップルを殺害する現場を目撃してしまう。
※ちなみに早人はスタンド能力者ではないので、具体的にどうやって吉良が被害者を抹殺したかは分からないものの、
それでも彼視点では吉良が触れた瞬間被害者が消滅したように見えたため、「吉良が何かをして消した」とは確信していた。

この一件で吉良が「パパ(浩作)に化けた殺人鬼」であると確信し、自分の命と母・しのぶを守るために吉良と対決していくこととなる。

しかし、吉良も早人が何かおかしな行動をしていることに勘付いており、上述の尾行に後で気付いた吉良に問い詰められる危機に陥るが、
今までの不審な行動や殺人現場を全てテープに収めどこかに隠している、と逆に吉良を脅迫し、彼に自分と母に手出しするなと告げて危機から脱した。
…かに思われたが、その直後逆上した吉良によって『キラークイーン』の能力で事故死に偽装され殺害されてしまう


【アナザーワン バイツァ・ダスト】

しかし、早人を激情のままに殺害してしまったことは、我に返った吉良にとっても最悪の事態であった。

爆発の規模などを調整し、「早人が風呂場で転んで頭を打ち、打ち所が悪く死んでしまった」ように見える偽装工作をしていた吉良だが、
承太郎たちが「川尻浩作」を怪しみ始めたタイミングでこんな事故を起こせば、彼らは間違いなく自分を調べに来るだろう。
かといって、早人の死を隠しておこうにも、しのぶがいる以上、ずっと隠しておくことなど不可能である。
最早吉良が承太郎たちの追跡から逃れるには、吉良自身が「素晴らしい町」と公言して憚らない杜王町から出る他なかった。

自分にとって最悪と言っていい選択肢を取るしか生き残る道がないことに、吉良が心底絶望したまさにその時、
そんな彼に反応したかのように独りでに動いた『矢』に貫かれた吉良の『キラークイーン』は、新たな能力『バイツァ・ダスト』に覚醒する。
『時間を爆破』し、その間の出来事を無かったことにする『バイツァ・ダスト』の能力によって早人も生き返ったが、
この際、早人は自分を通じて吉良の正体に近付こうとする者を爆発してはその都度時を巻き戻す『爆弾』に変えられてしまっていた。

この能力を得たことで「自分は無敵になった」と確信し、見るからにハイになった吉良は、
自分を怪しむ早人に本名を名乗りながら「もう君やママを殺したりはしない」「これからは家族のように仲良くしよう」と余裕をぶっこいて一方的な「停戦」を持ち掛ける。

そして、社会の窓が開きっぱなしの通りすがりのオッサンと吉良を探す岸辺露伴寝坊して待ち合わせに遅れた東方仗助達と出会った早人は、
吉良の情報を自分から聞き出そうとした彼らが(早人の目には)独りでに爆発し、死亡する光景を目の当たりにする。
その後、気付けばその一時間ほど前の時間に戻っていた早人は、今度は彼らと出会わないようにするが、
自分に話しかけなくとも彼らがまた爆死したことで、「たとえ時間が巻き戻り、自分の行動が変わっても、一度爆死した人物は必ず同じ時間に爆死する」という法則に気付き、
同時に、吉良がこの繰り返しによって、自らの素性を探る者たちの全滅を狙っていることを察する。

かといって、自分が仗助たちに警告しようにも、その過程で彼らに吉良について聞かれ(、そして彼らが爆死す)ることが必至である以上、
仗助たちが爆死する運命を変えるには、吉良が死ぬか、仗助達が死亡する前に吉良が『バイツァ・ダスト』を解除するしかないと考えた早人は、
吉良が密かに屋根裏で育てていたスタンド使いの猫草『ストレイ・キャット』の「空気弾」で吉良を殺す決意をする。


そしてぼくは生まれて初めてマジに心の底から神様にお祈りした…

『どうかこのぼくに人殺しをさせてください』

…と

幾度となく繰り返されたループで、仗助たちの「爆発」が起き始める時間を記憶した早人は、その前に自ら吉良と接触し、
油断している吉良の胸に「空気弾」を撃ち込むが、そのちょっと前に、ほんの仕返しに吉良に手を火傷させた事で彼が胸ポケットに入れていた腕時計が盾となり、殺害に失敗してしまう。*2
本来ただの小学生である早人が、殺人鬼だと分かっている自分を殺す決意をし、実行に移したという事態を受け、
吉良は早人が何度も「今朝」を繰り返したことと、その過程で邪魔者である承太郎たちの大半の死を確定させてきたことを察し、
承太郎たちが爆死する様を確認した後で、一旦『バイツァ・ダスト』を解除すると宣言する。
最早打つ手がなく、絶望する早人を前に勝ち誇る吉良。



『バイツァ・ダスト』は無敵だッ!

そしてこの吉良吉影(きらよしかげ)に 『運』 は味方してくれているッ!


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

『名前』…今言った…その…『名前』

おっと… 私の「本名」を言っちゃったかなァ~~~! フフフ…
そう… わたしの名は吉良吉影(きらよしかげ)
フフフ ハハハ 誰かに喋っても構わないよ…
ところで、今何時だね?


ぼくはしゃべっちゃいない
最初っからぼくはあんたの事を
一言だってしゃべっちゃあいない

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

ああ…でも相手に質問されても『バイツァ・ダスト』は作動するのだ
書いたりしてもな…

ぼくは『電話』しただけなんだ
ねぼうして遅刻したって言ってたから
番号調べて……起こしただけなんだ

? 何の事だ? ………?
何を言っているんだ……

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

あんたがしゃべったんだ…

しゃべったのはあんた自身なんだ

ぼくはただ待ってただけなんだ
ねぼうしないで早く来る事を待ってただけなんだ


早人の不可解な言動に思わず背後を振り返る吉良。

ド ド ド ド ド ド ド ド ド

そこに立っていたのは、吉良を追うスタンド使いの一人・東方仗助。
目前にある勝利を確信し、油断した吉良が自分の本名を自らの口で名乗る瞬間を目撃していたのだった。

ド ド ド ド ド ド ド ド ド



おい仗助ェ~ 雨が降ってきたけどよォー
みんなとの待ち合わせの時間に間に合うぜ~~~っ!

待て! 億泰…

偶然か! これは運命なのか!
今よおー ブッたまげる名前をよぉ こいつがしゃべったんだぜッ!


バッ!? バ…バカなッ!!

てめー 今、確かに吉良吉影(きらよしかげ)っつったよなあぁ~!!

実は、何度も「今朝」を繰り返してきた中で、
  • 『吉良が早人に本名を名乗る』こと
  • 『仗助が寝坊して仲間達との待ち合わせに遅れる』こと
この二つの「運命」を知った早人は、
仗助にモーニング・コールを掛けて起こし、吉良に自分の正体を名乗る場面を先延ばしにさせ、仗助が早くこの場に来ることに賭けていたのだ。*3

吉良は自分が「無敵の能力」と称した『バイツァ・ダスト』を過信するあまり、
あれほどひた隠しにしていた自分の正体を自分自身の口で敵対者にバラしてしまうというあまりにもお粗末な大失態を犯してしまった。

まさかの事態に驚愕する吉良を、容赦なく仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』の拳が襲う。
たとえ人違いであっても、それが分かった時点で『クレイジー・ダイヤモンド』の能力で治せばいいとして、倒れた自分を追撃しにくる仗助に、
さしもの吉良も、『バイツァ・ダスト』を解除して『キラークイーン』を戻さなければこの窮地を切り抜けられないと悟り、
なおも襲い来る『クレイジー・ダイヤモンド』から自分の身を守るため、やむを得ず『バイツァ・ダスト』を解除。
その時間までに『バイツァ・ダスト』の繰り返しの中で爆死させられた者は仗助たちの中にはおらず、解除されたことでその運命は立ち消えた。
早人はついに運命を変えることに成功したのだった。



やった! 間に合った!

『運命』に勝った!


その後、仗助・億泰コンビと吉良の決戦が始まると、早人は仗助たちに庇われる形で彼らと行動を共にし、
スタンド能力がないために吉良への攻撃には参加できないながら、彼らを懸命にサポートする。
仗助の『治す』能力に期待していたからとはいえ、爆弾にされた億泰を救うために自ら億泰に触れ爆発することも厭わない精神力には仗助も感嘆した。

そして、追い詰められ、ボロボロになった吉良に対し、記事冒頭の啖呵を切り、吉良にもう諦めるように言い放つが、その後目にしたのは…!!


◆早人の『能力』



おめーのそのブッ飛んでる根性… プッツンしてるぜ~川尻早人…

まじに小学生かよ…小僧〜!!


なお、確認するが、川尻早人はマジに小学生である。

本当にただの小学生である。

それも、特別な血統だとか超能力だとか前世だとか、そういったものは一切持っていない、どこを切っても完全な一般人の子供である。

それが、超能力者である殺人鬼の正体に感づき、暴き、一度は殺されながらも仗助たちに情報を伝えたのである。

早人の『能力』。
それは、特殊な力をも補って余りある『勇気』。

波紋だのスタンドだの吸血鬼だのがひしめくジョジョの世界にあって、彼が成し遂げた業績は、大金星程度では収まるまい。
この精神力は「ワムウ相手にも勝てるのでは?」とさえ囁かれている。


◆早人のパパ(浩作)パパ(吉影)




ぼくは「裁いて」ほしかった…

あいつを誰かが「裁いて」ほしかった


早人は、不器用かつ一途な仕事人間だった『パパ』浩作とは特別仲が良かったと言うわけではなかった。
だが、そんな『パパ』でも『パパ』である事には違いなく、その
『パパ』の仇である吉良には『誰かに裁いて欲しい』という思いを持っていた。

しかしながら、偽りの『パパ』であった筈の吉良も、正体がバレてしまうまでは、早人にも、しのぶにも優しかった。*4
…ある意味では、仕事漬けだった本当の『パパ』以上に。
たった一ヶ月間だけの偽りの『親子』関係ではあったし、そう演じていただけだったのかもしれないが、
本性を知るまでの吉良は間違いなくしのぶにとっての『夫』であり、早人にとっての『パパ』だった。
結果論かつ皮肉な話ではあるが、早人がかつては疎遠だったママ(しのぶ)との距離が縮まったきっかけも、
家庭崩壊寸前だった川尻家を「直して」くれたのも、間違いなくパパ(吉影)だったのである。

パパ(浩作)の仇であり、ある意味自分達の恩人とも言えた吉良は、よりにもよって早人の目の前で『事故死』してしまった。
早人は、二重の意味で『パパ』を失ってしまったのである。
その光景を見た早人の顔には、正義を成し遂げた満足感もなければ、『パパ』の復讐を果たした達成感もなく、
どこか寂しげで、哀しげな表情で、『パパ』の形見となってしまった通勤バッグを抱きしめた。
ようやく吉良を倒すことが出来た仗助たちも、早人にかけてやる言葉が見つからず、切ない表情を浮かべて立ち去っていく彼の小さな背中をただ見送る事しか出来なかった…。
なお、この早人の望みは、早人自身は知る術はなかったものの、とある女性とその家族の執念によって叶えられた。
杜王町にある、幽霊のみが知る場所で、殺人鬼の邪悪な魂はその犠牲者たちと杜王町そのものによって断罪されたのである。



そしてその夜、事情を知らないしのぶと共に『パパ』の帰りを待ち続ける早人。
しかし、『パパ』が決して、もう二度と帰ってこないことを知る彼の目からは沢山の涙が溢れ出すのだった……。





ぼくも…待ってる…よ…ぼくも…
『パパ』が…帰ってから…いっしょに食べるよ…



そう… ところであんた…最近 背のびた?





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最終更新:2025年03月09日 17:45

*1 ちなみに、浩作がどういうつもりだったかは不明だが、しのぶは浩作との関係を羨ましがる周囲への優越感から付き合っていたといい、結婚の経緯も「デキちゃった婚」である。

*2 繰り返される時の中で、「ウエッジウッドのコーヒーカップを割ってしまう」運命があることを知った早人は、ほんの些細な仕返しのつもりで、吉良がコーヒーを持った時にカップが割れるように仕組んだ。

*3 ちなみに、単に寝坊して遅れるという形から、吉良と交戦したことで遅れるという形になったが、『仗助が承太郎達との待ち合わせに遅れる』という「運命」自体は変わっていない。

*4 アニメ版30話では無言で登校しようとした早人に「早人、いってきます、は?」「…いってらっしゃい」と不審に思われつつも声をかける場面が描かれた。