バースト射撃

登録日:2011/04/06 Wed 11:51:23
更新日:2025/06/28 Sat 20:51:17
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概要

バースト射撃(制限点射機構)とは、「3点バースト機構」のように、一度の射撃操作で一定数の弾丸を発射したのち、射撃を停止する自動式火器の機能や発射形式。
「数発をワンセットにして撃つ」と言えば分かりやすいだろうか。

出現当時は3発が多かったが、最近では2発連射かつその間の発射速度だけを向上させるものも登場している。



長所

端的には「打撃力と効率を両立する」もの。
セミオートは1発ずつ引き金操作が必要で打撃力に劣る
フルオートは面制圧に向くものの、銃が反動と衝撃で暴れるので慣れない新兵はパニックになりやすく無駄弾が増える

自衛隊の小銃は750発/分なので30発の弾倉だと3秒弱で撃ち尽くす
必要以上/コントロールできない連射は誤射や跳弾の恐れがあり、第一持ち運べる銃弾にも限りがある。

そのため反動で狙いがずれる前に射撃を止めてしまう仕掛けとして考案された。

反動で狙いがずれる前に複数打ち込める(=相手を確実に倒せる)ので、新兵の撃ち過ぎ対策にはちょうど良いのである。



短所

練度の高い兵士には邪魔な機能である。
彼らはフルオートの衝撃にも慣れており、数発撃っては止める指切り(後述)を行い十分に手動でのバースト射撃を実現可能だった。
しかも銃に追加でギミックを仕込むので構造が複雑化して故障確率が上がる。

そもそもこの機構をアメリカが採用したのはベトナム戦争に徴兵した当時の兵の質そのもの(短期速成志願兵)がパニックトリガーで指を引ききって(握り込んで)しまうという戦訓からである。
ベトナム戦争ののちは同レベルの大規模かつ長期間の戦争もなかった(兵士の補充よりも兵士の練度向上が優先できるようになった)ため、訓練期間も十分に取れる新兵相手に当時の戦訓を反映するのは無駄とみなした米軍は兵器更新の折にフルオート機能が付いたM16A4/M4A1に先祖帰りしている。



指切りとは

フルオート射撃時にトリガーを引きっぱなしにしない「指切り」というテクニックがある。
ただし前述の通り新兵には難しいものであり、事前の訓練なしには反動に固まって満足に行うことはできないだろう。
機関銃の射手など普段からフルオートを行う兵科であればとても有効な技といえる。
例)アサルトライフルの発射速度は600~850発/分なので、この速度で2~3発だけ発射するにはトリガーを引いてから0.16~0.24秒で指を離さなくてはいけない



採用された銃器

概ねベトナム戦争後期~90年代の銃に搭載されていることがある。民間では採用されることはなく、下記の例でも民間仕様ではセミオートのみとなっている。
機構上の問題で、バーストモードでの射撃中に引き金を離すと次の射撃時に3発の撃ち残りがでるやつ(M16A2、M4)と毎回リセットされるもの(89式)がある。
以下例。括弧内が選択可能な全モードとなる。
 セーフティーガードというパーツを有効にしておくと焦ってもフルオートに入れてしまわない安心機構付き
 専用ストックを付けることにより取り付け基部にあるセレクターで3点バーストが出来るようになる。
  • H&K UMP(セミ/2/フル)
  • H&K MP5(セミ/3/フル)
 ネイビーモデルやA4以降に搭載。HK33A5、G3もオプションで3点バーストが実装されている。
 最新の20式ではバースト機構は削除された。
 オプションモジュールとして別途セレクターがあり、そちらを切り替えるとフルオート位置のモードがフルオートと3点バーストで切り替わる
 A1ではフルオートに戻り、既存のM4もA1へのアップデートが施されている。
  • イジェマッシAK-103-2、AK-107、108(フル/3/セミ)
  • AN94アバカン(セミ/2/フル)
 アバカン計画に沿って1994年に制式配備されたアサルトライフル。プーリーなどを駆使し薬室とボルトを同時に動かすことにより2点バーストでの発射速度はなんと1800発/分である。
 ただし、1800発/分で発射出来るのは最初の2発のみ*1。まぁそんな連射速度ではマイルドな5.45x39弾でもコントロールしきれないから仕方ないね。
 設計者が道半ばで逝去してしまい、配備は限定的となってしまった。ドクトリンは受け継がれ、AK-12の初期型などにも2点バーストは引き続き採用された(M1型でオミットされた)。
 安全装置とセレクターが別になっている。



実戦編

PCゲーム

銃の反動を再現している場合、長時間フルオート射撃を行うと(プレイヤーキャラクターが反動に耐えられなくなるのか)発射によるブレが大きくなるような実装になっていることがある。
数発撃っては止めて、数発撃っては止めて…という指切りをゲームシステムとして推奨しているといえる。タップ撃ちと称されることも。
これができるようになれば上級者へ一歩近づくのではないだろうか。

現実でバーストモードがある銃のほかにアンチャーテッドシリーズのG-MALやApex Legendsなど、2~5点バーストの銃が実装されている場合もある。
フルオートよりも連射速度が高いが毎度のクリックが必要、という設計がなされている場合があり、人を選ぶものの愛好家もいる。

サバイバルゲーム編

ガスガンはフルオート射撃を長く続けると、動力源となるガスの供給が射撃による消費に追いつかなくなり、作動不良を起こす。
そのため指切りによるバースト射撃は当たり前のように活用される技術である。
電動ガンとその純正オプションである多弾数マガジンの普及後も、燃費の良さや実銃のテクニックの一環として一定の地位を築いている。
(そもそもハイサイ等々連射速度の格差を埋めるためにフルオート不可能となっているフィールドも多いのはご愛敬…)
エアガン事態にバースト機能が実装されている場合は、ぜひ一度使用してみるのをお勧めする。



余談

先祖『ダブルタップ』

イギリス特殊部隊SASはその昔9mmパラベラム弾のFNハイパワーが制式拳銃だった頃、確実性を上げるために頭部に素早く二発撃ちこむダブルタップというテクニックを用いていたとされる。1発では心もとないと考えたが故のテクニックであり、バースト機能の考えに通ずる面もある。

フルバースト

よく「フルバースト(全火力一斉発射?)」という言葉を見聞きするがこれは軍事/銃の用語ではない。
ZOIDS/0のリノンやモンハンのガンランスハイマットフルバースト遊戯王の全弾発射から来たものと思われる。
バーストという単語は「なにもないところから、ごく短期間に集中する」という意味合いが強い。
これは軍事用語に限らず、例えばIT用語の「バーストエラー」も「なにもないところであるタイミングで短時間に集中してエラーが発生する」という意味である。
「フルバースト」は実銃のバーストを元にマガジンの弾を全弾撃ちきるまで止まらず撃ち続ける事を指すものとして造られた言葉であろう。
フルオート等実在の用語との混同は混乱のもとになるので、「フルバースト」はその言葉が登場する作品でのみ使用しよう。



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最終更新:2025年06月28日 20:51

*1 3発目以降は600発/分と普通