7.62mmNATO弾

登録日:2011/08/29 (月) 16:41:58
更新日:2025/07/24 Thu 10:03:00
所要時間:約 4 分で読めます





性能

弾丸直径 : 7.82mm
首径 : 8.77mm
肩径 : 11.53mm
底面径 : 11.94mm
薬莢長 : 51.18mm
全長 : 69.85mm
初速 : 840m/s
マズルエネルギー : 3325J
別名 .308ウィンチェスター弾、7.62×51mm弾



概要

1954年にNATO諸国で小火器の統一を図るために選定された弾薬
当初は歩兵銃などでも用いられていたが、現在では機関銃狙撃銃などにて使用される。
民間でも大型獣の狩猟に用いられる。



歴史

アメリカでは第一次世界大戦直後から主力であった「.30-06弾(7.62×63mm)」の威力を維持したまま自動式の銃器に最適化した弾を開発していた。.276ピターゼン弾等ほかにも有力株はあったものの、結局.300サヴェージ改良弾(T65)を採用。
そして1940~50年の間にM1を改修(前述の弾薬に対応、脱着式弾倉やショートストロークガスピストンへの移行)しT44(のちのM14)を完成させた。

同時期のイギリスでは戦中にドイツ軍が用いたStG44と7.92x33mmクルツ弾から「必要なのはより軽量で必要十分な中間弾薬」との見解をもっていた。
そして戦中の.303ブリティッシュ弾の更新先として.280口径弾とそれを用いるEM-2小銃まで開発し採用まで進んでいた。
他国(主にFNハースタルとセトメ)も同様、FALもセトメライフル(のちのG3)も中間弾薬を前提にして設計、試作されていた。

しかし、50年初頭にアメリカ アバディーンにて催された試験では明らかにT65有利な600ヤードで比較された。.280口径弾は精度、威力ともに劣るのは必然(でも約7MOAで弾速700m/sは流石に悪すぎた)。
アメリカ、イギリス、カナダ、フランスによる合同会議でも上記の結果からカナダ、フランスはT65を指示しイギリスも折れてしまった。(一応アメリカは中立の立場であったが、もうT65の優位は言わずとも…であったのだろう。英wikipediaからなので要出典)

こうして1954年。T65はめでたく採用され7.62mmNATO弾となった。
この時.280口径弾の性能がもう少し良かったら


アメリカはM14を、イギリスはカナダ/オーストラリア(連れ)と共にベルギーのFN FALを採用した。
他ではドイツはH&K G3、スペインはセトメ、スイスはSG510、日本はM14を経て64式小銃。NATO非加盟国でも融通が利くように採用された。

しかし上記の通り7.62mmNATO弾でのフルオート射撃は想定されておらず、各国いろいろと対応を強いられた。下記はその一例である。

  • 2脚をつけて各個人が軽機関銃であるという運用をする
  • 銃の格が大きくなるのでキャリングハンドルをつける
  • フルオートを封印する(アメリカもこちらを採用した)
  • 弱装弾に対応し自国内ではそちらを使う

それでもアメリカは第二次大戦を経て細分化してしまった各銃*1を統一できるし、自国はM1ガーランドの設備を流用できるだろうしで一人勝ちだと思い込んでいた…

時は変わって1961年。ケネディ大統領の下、自由の担い手アメリカはベトナムの熱帯雨林に飛び込んだ。
しかしジャングルとM14では相性が悪かった。
長い射程は無駄となり、むしろ重くて長く制圧射撃も満足にできないと欠点ばかりが目立ってしまった。
弾薬としての問題もあり、携帯できる数が少なく継戦能力を増大できない。
そして北ベトナム軍のAK-47*2が機動力と火力で翻弄してくる…という三重苦がアメリカ軍を襲った。

これでは勝てないと急遽AR-15をM16として採用しベトナムに送り込む。こちらは銃が軽くてストックが腐食せず、も小さいが威力も十分。
よって1964年にはM14は生産終了が命じられた。M14は結局M1ガーランドとの設備流用はできずじまいに終わり、供与されたりモスボールされたりした。

その後、M16の弾は紆余曲折あって1980年に5.56mmNATO弾として標準化。
再度各国でてんやわんやすることになり、その裏で7.62mmNATO弾は歩兵用の弾薬としての役目を終えた。



現在

歩兵銃としては使用されなくなったが、狙撃銃や汎用機関銃の銃弾としては現役である。長距離での命中精度と殺傷能力の高さは5.56mmNATO弾にはない長所である。
きちんと連射向きの銃を用いればフルオートも問題ない。

アフガニスタンが戦場になった際には、交戦距離の面で5.56mmNATO弾では威力不足ではと考えられM14がEBR/EMRとして引っ張り出されそうになった(BHDで活躍していたドットサイト付きM14が良い?例)。

2022年にはNGSW計画を経て.277 FURY弾(6.8x51mm弾)とXM7が採用。
XM7の民間仕様(MCX Spear)では.308ウィンチェスター弾が使用できることからわかる通り、弾の格としては同じかそれ以上のパワーを持つという。
近年はSCAR-Hなどフルオート可能な7.62mmNATO弾対応銃が生まれては試されていた。アメリカ軍としてはこの格の弾こそ軍が持つべきものという認識なのかもしれない。

この弾の未来はどっちだ。



採用している主な小火器

ドイツ

イギリス

  • AI AW
  • MC51(G3の短縮型。同コンセプトのHK51がアメリカにて制作されている)

アメリカ

ベルギー

  • FN FAL(L1A1/SLR/C1など各国で独自の命名がなされている)
  • FN SCAR-H
  • FN MAG

日本

  • 64式7.62mm小銃
  • 62式7.62mm機関銃
  • 74式車載7.62mm機関銃

その他

  • セトメライフル(スペイン)
  • SG510(スイス)



同じ口径の別弾薬

  • .30-06(7.62×63mm)
  • .30カービン(7.62×33mm)
  • 7.62×39mm
  • 7.62×54R




追記・修正よろしくお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2025年07月24日 10:03

*1 BAR、M1ガーランド、M1カービン、M1トンプソン、M3グリースガン

*2 朝鮮戦争ではまだ最新の秘匿兵器であり運用されていなかった