ショウ・タッカー

登録日:2016/02/04 Thu 19:07:42
更新日:2020/05/21 Thu 00:29:07
所要時間:約 12 分で読めます




漫画『鋼の錬金術師』の登場人物。

CV:永井誠(一期・二期共通)
演:大泉洋



合成獣錬成の分野で有名な国家錬金術師。銘は『綴命』。

人語を解する合成獣の錬成を成功させたことで国家錬金術師の資格を得た錬金術師であり、見た目は丸眼鏡のくたびれたおじさんといった風貌。
以前は結婚していたが2年前に妻に逃げられ、それからは一人娘のニーナと愛犬のアレキサンダーと共に暮らしているが、
国家錬金術師として研究に没頭するあまり、娘たちに思うようにはかまえないでいる。
国家錬金術師の資格を取得する以前は、生活が貧しく苦しいもので、妻が出て行ってしまったのはその生活苦に耐えられなかったからだとの事。

列車ジャック事件を解決したことでエドワード・エルリックロイ・マスタングに見返りとして生体錬成に詳しい錬金術師の紹介を頼み、
合成獣の分野で有名だったタッカーが紹介されることとなった。

しかし、この頃のタッカーはなかなか研究成果が振るわず、前年の査定では厳しい結果に終わり、資格剥奪の瀬戸際に立たされていた。
とはいえエルリック兄弟を無下に扱うことはなく、自身の研究室にある蔵書を彼らに開放して自由に読んでいいと告げ、
エルリック兄弟もその言葉に甘えて蔵書を読み耽る傍ら、父親にかまってもらえないニーナの遊び相手を務めることにした。

その後、再び『人語を理解する合成獣』の錬成に成功し、その成果をエルリック兄弟に披露した。



※以下ネタバレ














見ててごらん
いいかい? この人はエドワード

えど…わーど?

そうだ、よくできたね

よく…でき…た?

信じらんねー 本当にしゃべってる…

あー、査定に間に合ってよかった これで首がつながった
また当分、研究費用の心配をしなくてすむよ

えどわーど、えどわーど、えど…わーど、えどわーど、
お…にぃ…ちゃ…


初めはタッカーが練成したキメラに目を輝かせていたエドだったが、自身の名前に続いてキメラが話した単語を聞き、何かに気付いたかのように硬直する。
そして、硬直が解けたエドは、静かにタッカーに問いかけた。



タッカーさん…人語を理解するキメラの研究が認められて資格をとったのはいつだったっけ?

ええと、2年前だね

奥さんがいなくなったのは?

…2年前だね

もうひとつ、質問していいかな……





ニーナとアレキサンダー どこに行った?

……君のような勘のいいガキは嫌いだよ


そう。思うような研究成果が得られずに焦ったタッカーは、ニーナとアレキサンダーを使って人語を話す合成獣を錬成したのである。
そのことに気付いたエドは、同時にタッカーが国家錬金術師の資格を得るきっかけとなった同様の合成獣を初めて錬成した時期と、彼の妻が失踪した時期が重なっていたことから、
タッカーは最初に妻を合成獣の材料に使い、人語を話す合成獣を錬成したということを察し、妻子を実験材料のように扱ったタッカーに怒りを爆発させる。*1



そうだよな、動物実験にも限界があるからな! 人間を使えば楽だよなぁ、あぁ!?

は…何を怒ることがある? 医学に代表されるように人類の進歩は無数の人体実験のたまものだろう? 君も科学者なら…

ふざけるな! こんな事が許されると思ってるのか? こんな…人の命をもてあそぶような事が!

人の命? はは! そう! 人の命ね! 鋼の錬金術師! 君の手足と弟のそれも君が言う“人の命をもてあそんだ”結果だろう?


逆鱗に触れられ、激昂したエドはタッカーに手を上げ、怒りのままに拳を叩きつける。
タッカーを殺してしまいかねないエドを見かねたアルが兄を制止するも、タッカーは反省する様子もなく、乾いた笑いをあげる。


はは…きれい事だけで、やっていけるかよ…

タッカーさん。それ以上喋ったら今度は僕がブチ切れる

静かながら渾身の殺意がこもったアルの言葉にぐっと声も出ずタッカーはようやく黙った。
その後、タッカーは人道に有るまじき行為から資格を剥奪され、二ーナと共に自宅に拘留される。

何で誰も分かってくれないんだろうな…なぁニーナ…

そう寂しげにニーナに話しかけるタッカーの前に現れたのは、傷の男(スカー)であった。
傷の男はタッカーを容赦なく殺害した後、事切れた父に呼びかけるニーナが人と動物を錬成して出来た合成獣であることを察し、
人の心を持ちながら永遠に人間に戻ることは出来ない(分離させる術がない)彼女を哀れみ、冥福を祈りながらその命を奪った。

その後、タッカーの狂気の研究の犠牲となったニーナはエルリック兄弟にとって忘れがたいトラウマとなり、
エドは「最後の錬成」で真理からの「錬金術の使えないただの人間に成り下がるか」という問いかけに、
「成り下がるも何も、自分はただの無力な人間だ」と言いながらこの一件を引き合いに出し、
アルは最終回で「僕達が助けられなかった女の子がいます。その子をずっと忘れる事ができません」と、お互い名前は挙げていないがニーナについて言及している。


尚、「人と獣のキメラ」といえば、グリード一味やキンブリー隊なども後で登場するが、
「人語を理解する」どころか、「人間の理性と獣の特性の両立」に成功しており、
タッカーのキメラは彼らに比べて明らかに完成度が低く、(人間を材料にしたことを露見しないようにするためもあったのだろうが)見た目もほぼ獣寄りになっている。
ちなみに彼らは元は軍人であり、公には死亡宣告がなされながらも秘密裏に軍に拘束され、合成獣の材料とされた経緯を持つ。
つまるところ軍は、タッカーよりも何歩も先を行っていながら、彼に国家資格を持たせていたことになる。

この点については、公式ガイドブックにてエドとマスタング大佐によって考察が為されており、
軍主導による非人道的な実験の隠蔽と、キメラ研究の程度を実際より低く周知させるための「表向きの権威者」に仕立て上げられた、という結論に至っている。

ただこの場合、国家資格を得た時に作ったキメラが人間を使った物だと軍に把握されていることになり、
キメラを鑑定した人がそういった知識を持っていた、という事になる。
(エドも専門外だったためか、「おにいちゃん」という言葉を聞くまでニーナだとは気づいていなかった)

余談だが、原作コミックのカバー裏の背表紙ではその巻で死亡したキャラが天に召される姿が描かれており、
ホムンクルスのような敵サイドのキャラも天に召されていたのだが、彼のみ地獄に堕ちている。
落ちたキャラはマリア・ロス少尉もいるが、彼女は死んだとされながらも実は生きていたためであり、
ついでに言うとロス少尉は叫び声を上げながらフェードアウトしているだけなのに対し、タッカーは血の池地獄のようなところに堕とされている。


◆鋼の錬金術師FA(アニメ二期)
アルを怒らせるシーンがカットされた他、多少台詞の違いはあるものの、ほぼ原作通りである。
オリジナルのシーンとしてエドに殴られた後に国家錬金術師の証である銀時計を払い飛ばされ、それを這い進んで拾い上げるタッカーの姿が描写され、
『国家錬金術師』の権威に執着し続けて道徳を失っていたという部分が強調されている。

間に合ったんだ…これでまた…国家錬金術師に…


◆赤きエリクシルの悪魔
序盤のエピソードが再現されているが、タッカー自身はすぐに傷の男に殺されてしまう。
タッカー邸には失敗作のキメラが解き放たれており、火を吹いたりしていて危険。止めろよ、軍。


アニメ一期
序盤の展開が変更されており、エドが国家錬金術師試験を受験する前(リオール大暴動事件の2年前)にタッカー邸で研究資料を閲覧し、
居候していた設定になっている。
また、ニーナとはこの時に面識があり、兄弟とニーナはグレイシア婦人(ヒューズの妻)の出産に立ち会っている。
ちなみにこの事件の時にエドはニーナから指摘されて手合せ錬成に気付いている。

原作通りにニーナをキメラに練成するのだが、キメラを披露した際には原作よりも早いタイミングでキメラの正体をエドに気づかれてしまう。
おまけにニーナをキメラに練成した理由が原作とは異なっており、マッドサイエンティストの部分がより強調されたキャラとなっている。


何故です、タッカーさん! あなたはニーナとの生活を続けるために査定に通らなければいけないんじゃなかったんですか!?

キメラを作る理由などない。目の前に可能性があったからそれを試した。人の言葉を理解するキメラ…それを作ってみたかっただけだ

禁忌とは知ってはいても人の錬成を試さずにはおれなかった。君も私も同じだよ…

科学者の、いや人間の…己の知識を実践したいという欲望に限りなどない

自分に与えられた力がどれほどのものかを、この世界に隠れた秘密の全てを知り尽くし試してみたい…それが錬金術の本質だ


原作同様にエドに散々殴られた後、キメラとなった二ーナを再練成で元に戻そうと試みるエドに対し、

ハハハハハ、私のキメラは完璧に練成されている! 誰にも元に戻せんよ! 気をつけろよ、母親みたいにしないようにな!

……と、罪悪感どころか人体練成の失敗を引き合いに出した罵倒でエドを嘲笑した直後にバスク・グラン率いる軍が現れ、ニーナと共に連行されてしまった。

ちなみにニーナの方はエドの妨害で逃がされるのだが、逃げた先の路地裏で運悪く傷の男に出会ってしまい、
最期は錬金術で肉体を分解され木端微塵になるという原作以上に悲惨な死を遂げた。このシーンはかなりグロい。
傷の男が去った後、原型をとどめない遺体となったニーナを最初に発見したのはエルリック兄弟だった事が悲劇に更なる拍車をかけてしまった。
一方、軍に移送されたタッカーは上層部の一存で処刑が執行されたとの事。

※以下ネタバレ












ひさしぶりだね、エドワード君

処刑されたとされていたタッカーだったが、21話にて生きていたことが判明。
だが、第5研究所でエドと再会した時のタッカーは以前のタッカーではなかった。
面影こそあるものの、熊のような獣の胴体に頭部から背面にかけて上下逆さの人間の身体が組み込まれているという異形のキメラと化していた。
おまけに肉体の構造が変化したせいなのか、声が人間だった頃よりも低くかすれている。

表向きは死亡した事にされて第5研究所で研究を続けており、そこに侵入して来たエドと再会した際には、


ニーナは…ニーナは…あの子はあんたのせいで死んだのにッ! 何であんたがまだ生きている!?

ニーナのためだ。今なら君の気持ちがよくわかるよ

エドを研究室に案内するとそこには、その部屋にはニーナやアレキサンダーに似たキメラが隠されていた。
現在に至るまで失敗を繰り返しながらキメラの練成を続けていたらしく、その過程で自身もキメラになってしまった模様。
そして、さらに奥の扉の向こうにはティム・マルコーが所持していた赤い液体…賢者の石の試作品が大量に保存されていた。
実はホムンクルスと密かに結託してエドに賢者の石を作らせようと目論んでおり、その見返りとしてニーナを蘇らせようとしていたのである。

姿だけ蘇らせてどうする!? そこにニーナの魂は無い!

ニーナ似のキメラを抱きかかえたタッカーはエドに答えを教えるかのごとく自分の頭に指を差した。


魂ならあるさ…ここに

私の記憶の中にニーナ…その全てをホムンクルスのニーナに植え付ける

そうすれば本当に完璧な私の望むニーナが生まれる

当然エドからは「そんなのニーナじゃねえ!」と否定された。
結局エドはアルを人質にされても人間を犠牲にしてまで賢者の石を作る事ができず、後から現れた軍や傷の男の介入により、
計画は失敗に終わってその場から逃走した。

その後は他の合成獣人間やキンブリーと共にグリードに拾われデビルズネストに潜伏していたが、
キンブリーがアーチャーから軍復帰の話を持ちかけられた際に一緒に誘われる形で再び軍に戻る。
軍に戻った後はアーチャーの部下として極秘に生物兵器としてのキメラの制作を行なっていたが、リオール消滅後は再度姿をくらます。


終盤ではアルが賢者の石そのものに練成された事を知り、彼を騙す形で賢者の石を使わせて人体練成を行なった。
その結果、生前と全く同じ全裸のニーナを練成する事に成功した。


いやぁ、アルフォンス君ありがとう!

ニーナだ。ほら、私の言うことがわかるんだ。ねえニーナ、パパと呼んでおくれ

タッカーは練成の成功に喜んでいたが、それを見ていたアルは薄々気づいていた。…そのニーナには魂が無い。
するとそこへスロウスが現れ、彼女の登場に怯えるタッカーに対し、残酷な事実を告げた。


大丈夫よ。そんな魂の無い人形に興味は無いわ

魂を繋ぎとめる事が出来るのは、強力な意志だけ…あなたには無理だったわね

タッカーが練成したニーナは見た目こそニーナそのものだが、常に無表情で話しかけたタッカーの声に無反応であり、
ニーナの魂が宿っているかどうかというレベルではなく、もはや「生きている」と言えるかどうかすらわからない人形そのものであった。

スロウスの言う「魂を繋ぎとめる強力な意志」が無かった事を突きつけられたタッカーはその事実を認めることができずに動揺し、
もう一度賢者の石を使わせるよう頼み込むのだが、タッカーに失望したホムンクルス達からは用済み扱いされ、最終的に切り捨てられてしまう。
その後、ニーナを抱えて彷徨っていたところ、偶然エド達と鉢合わせになるのだが…


ハハ…ニーナ、ご挨拶なさい。ハハハ…どうした? 恥ずかしいのか、そうか

ニーナ、遊ぼうか? そうだ、アレキサンダーは? アレキサンダーはどこだ? しょうがないやつだなあ、ニーナ…

既に精神崩壊を起こしていたタッカーは、エド達には目もくれずにダッチドールに成り果てたニーナに話しかけてばかりであった。
そんな彼の姿を目の当たりにしたエドは哀れむような表情を見せつつ、イズミと共に立ち去った。


いいのか?

魂の無い人形…それがあの人の罪の形です。それを抱いて生きていくんです。…それでいい

最後まで自らの過ちを認めず、独善的な理想ばかりを求め続けてきた彼に待っていたのは、
思いあがった報いと呼ぶべき絶望という因果応報の末路だった。
傷の男にあっさり殺された原作及びFAとどちらがマシだと感じるかは視聴者次第。

エピローグでは人知れず廃墟の地下で練成陣をあたり一面に描いているタッカーの姿が確認できる。
劇場版には登場しない。まだ、どこかでニーナと共にひっそりと生きているのかもしれない。




ちなみにアニメ一期のオマケ四コマではかなりファンシーな犬っぽい姿のタッカーが登場している。
あと、かなりかわいい猫耳ニーナも出ている

ナンバー48「キメラになって生きているものも……」

い、イヤそこに突っ込むんじゃなくて!

ちなみにニーナ

おにーちゃん!

悪魔めえぇぇ!!ナデナデ


アニメ二期のオマケでは妻の尻に敷かれていた、というか鬼嫁だった事がニーナから語られている。

そんで妻をその辺の犬っコロと合成してキメラにしちまいました!!

タッカーさん、あんたよく耐えたよ…!



ちなみに「……君のような勘のいいガキは嫌いだよ」までの一連のやり取りは、しばしばパロディ・コラージュのネタにされる。
元々印象的なシーンであったことに加え、エドのセリフを「……〇〇〇と×××どこに行った?」といった具合に、
少し書き換えるだけでお手軽にパロディが成立する汎用性の高さが人気の秘訣。






追記・修正は自分の娘をキメラに練成してからお願いします。

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