宅地建物取引士

登録日:2020/06/28 Sun 22:37:09
更新日:2020/07/05 Sun 13:30:13
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宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)とは、不動産の取引や賃貸物件の仲介を行う際に必要となる国家資格のことである。
略称として宅建士(たっけんし)とか宅建とか呼ばれることが多い。
不動産の専門家(スペシャリスト)である。

概要

家やビル、土地などの不動産の売買や、マンションやアパートの仲介を行う際に必要な国家資格。国土交通省の認定資格である。

不動産の売買はたった1回であっても非常に高額である上に権利の問題も複雑に絡んでくるため、不動産業者がお客様と契約を結ぶ際は、専門家である宅建士が権利関係や取引の条件などをきちんとお客様に説明してあげる必要がある。
また、この説明は宅建士の資格を持っている人じゃないとできない(独占業務)。
契約書にサインをするのも宅建士にしかできない仕事である。

不動産屋では最低でも5人に一人以上の割合で専任の宅建士を置く義務がある(必置資格)。
例えば、従業員6人の不動産の事務所ならば、最低でも2人以上の宅建士を配置する必要がある。

新設当初は宅地建物取引員と呼ばれ、のちに宅地建物取引主任者に名称変更された後、2015年(平成27年)より現在の宅地建物取引士(宅建士)に格上げされている。
宅建士は従来の取引員や主任者時代に比べて権限および責任が大幅に強化されている。

法律系の国家資格の中では行政書士と並び入門編と言われることが多く、比較的取得しやすいとされる。

宅建士は士業であるため、資格を取得するためには試験に合格するだけでなく、名簿に登録する必要がある。これが情報処理技術者試験日商簿記検定などの検定試験との違いである(情報処理技術者試験は一応国家試験であるが、合格しても特に独占業務は発生しないため、事実上の能力認定試験と言われることが少なくない。)。また、更新制度もある。

宅建士は試験に合格すれば必ず登録できるものではない。例えば、未成年者は原則登録できない、自己破産した者や前科者は一定期間登録できない、暴力団関係者は登録できないなどの制約がある。
また、宅建士になってから法律違反を犯した者や暴力事件を起こした者は登録が取り消されてしまう。また、一定期間は再登録ができない。
なお、試験に合格したこと自体は(カンニングなど不正行為が発覚しない限り)一生有効であるため、再登録する際はもう一度試験を受ける必要はない。

ちなみに、不動産業界以外では無用の長物と誤解されることもあるが、そんなことは全くない。
建設会社は勿論のこと、実は銀行など金融業界でも重宝される資格である。士業でありながら実は英語や簿記会計、ITと並んで汎用性の高い資格なのである。
また、マイホームの購入やマンションの契約など、プライベートでも役に立つ資格でもある。

独立開業でも役に立つ資格でもあり、例えば同じ不動産資格の管理業務主任者やマンション管理士、法律系士業の行政書士や司法書士、金融のファイナンシャルプランナー(FP)、経営コンサルタントの中小企業診断士など他の資格と組み合わせると大きな武器になり得る魅力的な資格なのである。

雑誌などで発表される人気資格ランキングでは、自動車運転免許やTOEIC、日商簿記検定情報処理技術者試験などと並び、常に上位にランクインしている。

宅地建物取引士国家試験

通称、宅建試験。宅建士になるためにはまずこれに合格する必要がある。

法律系の国家試験ではあるが、受験制限は特に設定されていない。大学の法学部やビジネス系の専門学校に通っていなければ受験できないなんてことはなく、最終学歴が高校卒業や中学校卒業でも受験できる。
※他の法律系試験だと、例えば司法試験(弁護士)は法科大学院修了または予備試験合格者、税理士試験は法学部や経済学部などの卒業生または日商簿記1級または全経上級合格者、社会保険労務士試験なら最終学歴大学卒業または他の難関国家試験の合格者、など受験するために厳しい条件が課されているものもある。

最年少の合格者はなんと、12歳(小学6年生または中学1年生)である。すごい!
ただし、前にも書いたが、未成年者は原則登録できないため、この子もおそらく試験に合格しただけだろう。

受験制限が緩いことや、法律系の国家試験の中では比較的難易度が低いことから、非常に人気の高い資格試験である。年間20万人近くの人が受験する、マンモス級の超人気国家試験であり、年1回のみ実施の試験で、かつ、単一の試験区分の国家試験としては最大規模である。
運転免許試験や情報処理技術者試験、危険物取扱者試験などはたしかに受験者数自体は多いのだが、試験が年に数回実施されており、試験区分も複数に分かれている。)

試験は年1回、10月に実施される。他の士業や医療系資格と異なり、すべての都道府県に会場が設置される。(他の士業や医療資格だと、一部の都道府県でしか実施されないものもある。)

範囲としては不動産に関する内容全般が出題されるが、特に権利に関すること(民法など)と取引に関する法律(宅地建物取引業法)についての出題が多い。他にも不動産に絡む税金や、不動産の価格評定、都市計画、実務についての問題が出題される。
他にも出題数は少ないが、土地や建物に関する基礎知識の問題もあるため、高校レベルの地理学や物理学の知識も必要である。

問題数全50問のマークシート形式であり、4択問題のみが出題される。試験時間は120分(2時間)である。
他の法律試験だと解答形式が記述式だったり、司法試験や公認会計士、弁理士などでは論文課題が課されるため、完全マークシートの宅建試験は法律試験の中ではだいぶ良心的であると言える。
合格ラインの目安は35問以上の正解と言われている。ただし、簿記検定などと異なり合格ラインは一定ではなく、変動するため注意が必要である。(例えば問題が簡単だった年だと37問正解しないと不合格、とか、逆に問題が難しかった年なら34問の正解でも合格になる可能性がある、など。)

なお不動産業界で働いている人だけの特権として、指定された講習を受講すれば、一部の問題(土地や建物に関する基礎知識、実務について)が免除される。通称5問免除。有効期間は受講後に修了試験に合格してから3年以内(宅建試験本番3回分)である。
これを利用すれば、例えば合格ラインが35問だった場合、5問は免除されて全問正解扱いになるため、残りは30問正解すれば良くなる。
(自動車運転免許の試験で言えば、教習所の修了試験に合格すれば、試験センターでは筆記試験のみ受験すれば良くなる、という感じである。ちなみに似たような制度の国家試験は意外と多く、例えばIT系の専門学校の学生ならば、修了試験に合格すれば基本情報技術者試験の午前科目が免除される、などがある。)
ただし5問免除を利用すると、試験時間は本来より10分短くなってしまう(110分、1時間50分)ため、注意が必要である。

難易度

平成時代以降の合格率は例年15%程度である。
合格率だけ見ると如何にも難関国家試験のように見えるが、学歴に関係なく誰でも受験できることや、全問4択問題のマークシート形式であり記述問題や論文課題が課されないため、超が付くほどの難関試験というわけでもないようである。
事実、他の法律試験だと合格率が例年10%未満のものや、受験者の大部分が有名大学の卒業生であるものも多いため、宅建試験は法律試験の中では入門編であり、まだやさしいほうなのである。

しかし、士業になってからは(主任者や取引員の頃よりも)難易度が上がっているので注意が必要ではある。
昔は短期決戦を狙うことも可能だったらしいが、最近では半年以上、場合によっては1年近く粘り強く勉強する必要があるとも言われている。
一応独学で合格を狙うことも可能性ではあるが、ほとんどの人は通信教育やスクール(予備校)などを利用しているのが現実である。

昔は合格率が20%を超えることが少なくなかった。また、初期の取引員の頃は合格率が90%を超えた年もあった。今では考えられないことである。これ故に、宅建試験が簡単であるという噂が広まってしまったのであろう。
ただし、合格率30%以上の回は1973年(昭和48年)が最後であり、それ以降は徐々に難化し、合格率20%以上の回は1982年(昭和57年)が最後である。1983年(昭和58年)以降の宅建試験はすべて合格率20%未満である。
宅建試験もそうだが、実はできたばかりの知名度が低い資格は合格しやすく狙い目であり、人気が出てから難易度が恐ろしく上がったという資格は結構多い。行政書士などもそうである。

他の資格試験だと、ITエンジニア向けの基本情報技術者試験や、経理担当者向けの日商簿記検定2級などが宅建試験と同じくらいの難易度と言われることが多いが、実際にはプレッシャーの観点で言えば宅建試験が最もキツい。
なぜか?情報処理技術者は年2回試験があり、簿記に至っては年3回も実施されるが、宅建試験は年1回しか開催されないからである。
また、宅建試験は情報処理や簿記に比べると計算問題が少なく考えさせられる問題もあまり出題されないが、法律試験であるため、覚えるべき事柄は情報処理や簿記とは比べ物にならないくらい多いのである。
中学校の社会科や、高校の地歴公民の暗記が苦手だった人には、宅建試験はかなり苦戦するかもしれない。
ただし、逆に言えば、法律試験ではあるものの記述式問題や論文課題は課されないため考えさせられる要素は少なく、「覚えてしまえば勝ち」といえる試験でもある。
例えば基本情報技術者試験では高校レベルの数学の問題や、アルゴリズムやプログラミングの問題が出題されるため、ロジカルシンキングが苦手な人にとっては地獄である。また、簿記2級は一つ間違えると連鎖的に失点してしまう危険性が大きく(芋づる式)、最近では1級から降りてきたような内容(連結会計など)が追加されているため、暗記モノの宅建試験とはまた違った難しさがある。

余談だがどういうわけか宅建試験は例年、10月の情報処理技術者試験と日程が被ってしまうのである。おそらく国土交通省(宅建試験の実施団体)と経済産業省(情報処理技術者試験の実施団体)は仲が悪いのかもしれない。ちなみに情報処理技術者試験は4月と10月の年2回開催される。

ちなみに同じく法律系の入門試験と言われる行政書士試験は、記述式の問題もあるため、宅建試験よりはやや難易度が高いと言われている。

同じ不動産関連の資格としては、管理業務主任者(管業)が宅建士と同じくらいの難易度と言われることが多い。管業はマンション管理会社の必置資格であり、宅建士のマンション版といった感じの国家資格である。
管業試験では宅建試験に比べて出題範囲は狭いが、その分、マンション管理に関してより深い知識が求められる。
管業の独占業務としては、マンション契約時に管理組合(マンションを買った人が必ず加盟しなければならない団体)に重要事項を説明してあげること、マンション設備の管理状況(老朽化に対する修繕、耐震補強など)をチェックして報告することなどがある。
ちなみに似たような国家資格にマンション管理士もあるが、こちらはあくまで管理組合やマンション購入者の相談に対して助言してあげるコンサルタントの資格である。

ちなみに不動産の最難関資格としては、不動産鑑定士があげられる。これは不動産の価格を評価する専門家の資格である。
あまり知名度が高くない資格だが、不動産鑑定士の試験では論文課題が課されるため、実は司法試験や公認会計士と並ぶ最難関級の国家試験であると言われることもある。


追記、修正お願いします。

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