宅地建物取引士

登録日:2020/06/28 Sun 22:37:09
更新日:2024/11/29 Fri 01:01:29
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宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)とは、不動産の取引や賃貸物件の仲介を行う際に必要となる国家資格のことである。

略称として宅建士(たっけんし)とか宅建とか呼ばれることが多い。

不動産の専門家(スペシャリスト)である。



概要


免責事項

項目内に記載された難易度評価・社会的評価は、あくまで執筆者ないしは追記者の個人的見解によるものです。言われた通り資格取ったのに選考落ちたーなんて言われても責任は取らないよ!

また、実際に資格を取得したいと思った場合、当Wikiを参考にしようとは思わずにネットを切って参考書を買うなり講座を受けるなりすることを激しくおススメするよ!

家やビル、土地などの不動産の売買や、マンションやアパートの仲介を行う際に必要な国家資格。国土交通省の認定資格である。

不動産の売買はたった1回であっても非常に高額である上に権利の問題も複雑に絡んでくるため、不動産業者がお客様と契約を結ぶ際は、専門家である宅建士が権利関係や取引の条件などをきちんとお客様に説明してあげる必要がある。

また、この説明は宅建士の資格を持っている人でなければできない(独占業務)。

契約書にサインをするのも宅建士にしかできない仕事である。

不動産屋では最低でも5人に1人以上の割合で専任の宅建士を置く義務がある(必置資格)。

例えば、従業員6人の不動産の事務所ならば、最低でも2人以上の宅建士を配置する必要がある。

新設当初は宅地建物取引員と呼ばれ、のちに宅地建物取引主任者に名称変更された後、2015年(平成27年)より現在の宅地建物取引士(宅建士)に格上げされている。

宅建士は従来の取引員や主任者時代に比べて権限および責任が大幅に強化されている。

法律系の国家資格の中では行政書士と並び入門編と言われることが多く、比較的取得しやすいとされる。

宅建士は士業であるため、資格を取得するためには試験に合格するだけでなく、名簿に登録する必要がある。
これが情報処理技術者試験日商簿記検定などの検定試験との違いである(情報処理技術者試験は一応国家試験であるが、合格しても特に独占業務は発生しないため、事実上の能力認定試験と言われることが少なくない。)。また、更新制度もある。

宅建士は試験に合格すれば必ず登録できるものではない。例えば、未成年者は原則登録できない、自己破産した者や前科者は一定期間登録できない、暴力団関係者は登録できないなどの制約がある。

また、宅建士になってから法律違反を犯した者や暴力事件を起こした者は登録が取り消されてしまう。また、一定期間は再登録ができない。

なお、試験に合格したこと自体は(カンニングなど不正行為が発覚しない限り)一生有効であるため、再登録する際はもう一度試験を受ける必要はない。

資格を登録するためには「不動産取引に関する2年以上の実務経験」または「登録実務講習(有料)の修了」が必要となる。

また、資格は5年毎に更新が必要である。

評価

現代社会における「衣食住」の「住」を支える資格である故に景気に関係なく安定した需要があること、学歴不問であり高卒や中卒でも資格取得を狙えること、そして業務独占資格であることから、電気工事士危険物取扱者などと並び、就職・転職に強い資格の代表格と言われることが多い。

宅建士の有資格者は就職や転職で有利に働くことも多く、事務所のパートなどならこれだけで面接前から採用候補にして貰える可能性さえあり、特に大手の不動産会社の正社員を(特に中途で)狙うなら必須と思って良い。実際応募条件として「宅建士の有資格者であること」を課している企業も多い。

宅建士は検定試験とは異なり設置義務がある資格であるため、資格保有者に退職されてしまうと困ってしまう(最悪の場合、人数不足で営業が成り立たなくなってしまうことも…)。そのため、多くの不動産屋では宅建士の資格保有者に対して資格手当を支給するなどの優遇措置が与えられている。

ちなみに、不動産業界以外では無用の長物と誤解されることもあるが、そんなことは全くない。

建設会社は勿論のこと、実は銀行など金融業界でも重宝される資格である。士業でありながら実は英語や簿記会計、ITと並んで汎用性の高い資格なのである。

また、マイホームの購入やマンションの契約など、プライベートでも役に立つ資格でもある。

独立開業でも役に立つ資格でもあり、例えば同じ不動産資格の管理業務主任者やマンション管理士、法律系士業の行政書士や司法書士、金融のファイナンシャル・プランナー(FP)、経営コンサルタントの中小企業診断士など他の資格と組み合わせると大きな武器になり得る魅力的な資格なのである。

雑誌などで発表される人気資格ランキングでは、自動車運転免許電気工事士危険物取扱者TOEIC日商簿記検定情報処理技術者試験などと並び、常に上位にランクインしている。

地価が異様な高騰を示し土地や不動産の投機商品としての価値が爆上がりしていたバブル期には、それらを扱える宅建士であること自体がある種のステータスとなり、資格取得者が数年のうちに急増していた。


宅地建物取引士国家試験

※実際に受験する際は、ちゃんと公式サイトの説明を確認すること!
ここに書かれている内容との差異で問題が発生しても責任は取らないよ!

通称、宅建試験。宅建士になるためにはまずこれに合格する必要がある。

法律系の国家試験ではあるが、受験制限は特に設定されていない。大学の法学部やビジネス系の専門学校に通っていなければ受験できないなんてことはなく、最終学歴が高校卒業や中学校卒業でも受験できる。

※他の法律系試験だと、例えば司法試験(弁護士)は法科大学院修了または予備試験合格者、税理士試験は法学部や経済学部などの卒業生または日商簿記1級または全経上級合格者、社会保険労務士試験なら最終学歴大学卒業または他の難関国家試験の合格者、など受験するために厳しい条件が課されているものもある。

最年少の合格者はなんと、12歳(小学6年生または中学1年生)である。すごい!

ただし、前にも書いたが、未成年者は原則登録できないため、この子もおそらく試験に合格しただけだろう。

受験制限が緩いことや、法律系の国家試験の中では比較的難易度が低いことから、非常に人気の高い資格試験である。年間20万人近くの人が受験する、マンモス級の超人気国家試験であり、年1回のみ実施の試験で、かつ、単一の試験区分の国家試験としては最大規模である。

運転免許試験や情報処理技術者試験、危険物取扱者試験などはたしかに受験者数自体は多いのだが、試験が年に数回実施されており、試験区分も複数に分かれている。)

試験は年1回、10月に実施される*1。他の士業や医療系資格と異なり、すべての都道府県に会場が設置される。(他の士業や医療資格だと、一部の都道府県でしか実施されないものもある。)

範囲としては不動産に関する内容全般が出題されるが、特に権利に関すること(民法など)と取引に関する法律(宅地建物取引業法)についての出題が多い。他にも不動産に絡む税金や、不動産の価格評定、都市計画、実務についての問題が出題される。

他にも出題数は少ないが、土地や建物に関する基礎知識の問題もあるため、高校レベルの地理学や物理学の知識も必要である。

問題数全50問のマークシート形式であり、4択問題のみが出題される。試験時間は120分(2時間)である。

他の法律試験だと解答形式が記述式だったり、司法試験や公認会計士、弁理士などでは論文課題が課されるため、完全マークシートの宅建試験は法律試験の中ではだいぶ良心的であると言える。

合格ラインの目安は35問以上の正解と言われている。ただし、簿記検定などと異なり合格ラインは一定ではなく、変動するため注意が必要である。(例えば問題が簡単だった年だと37問正解しないと不合格、とか、逆に問題が難しかった年なら34問の正解でも合格になる可能性がある、など。)

なお不動産業界で働いている人だけの特権として、指定された講習を受講すれば、一部の問題(土地や建物に関する基礎知識、実務について)が免除される。通称5問免除。有効期間は受講後に修了試験に合格してから3年以内(宅建試験本番3回分)である。

これを利用すれば、例えば合格ラインが35問だった場合、5問は免除されて全問正解扱いになるため、残りは30問正解すれば良くなる。

自動車運転免許の試験で言えば、教習所の修了試験に合格すれば、試験センターでは筆記試験のみ受験すれば良くなる、という感じである。ちなみに似たような制度の国家試験は意外と多く、例えばIT系の専門学校の学生ならば、修了試験に合格すれば基本情報技術者試験の午前科目が免除される、などがある。)

「たった5問しか免除されないのか…」と思う人もいるかもしれないが、宅建試験はギリギリで不合格になってしまう人がかなり多いので、5問免除を使えばかなり有利になる。

ただし5問免除を利用すると、試験時間は本来より10分短くなってしまう(110分、1時間50分)ため、注意が必要である。

難易度


平成時代以降の合格率は例年15%程度である。

士業になってからは(主任者や取引員の頃よりも)難易度が上がっているので注意が必要ではある。

昔は短期決戦を狙うことも可能だったらしいが、最近では半年以上、場合によっては1年近く粘り強く勉強する必要があるとも言われている。

一応独学で合格を狙うことも可能性ではあるが、ほとんどの人は通信教育やスクール(予備校)などを利用しているのが現実である。

昔は合格率が20%を超えることが少なくなかった。また、初期の取引員の頃は合格率が90%を超えた年もあった。今では考えられないことである。

ただし、合格率30%以上の回は1973年(昭和48年)が最後であり、それ以降は徐々に難化し、合格率20%以上の回は1982年(昭和57年)が最後である。1983年(昭和58年)以降の宅建試験はすべて合格率20%未満である。
むしろ合格点が可変している事を利用して「1年に20%以上の合格者を出さない」としている可能性もある*2


余談だがどういうわけか宅建試験は例年、10月の情報処理技術者試験と日程が被ってしまうのである。おそらく国土交通省(宅建試験の実施団体)と経済産業省(情報処理技術者試験の実施団体)は仲が悪いのかもしれない。ちなみに情報処理技術者試験は4月と10月の年2回開催される。



宅建士の資格を持つ著名人


実在の人物


実は宅建士の資格を持つ芸能人は多い。

たけし軍団の水道橋博士、俳優の高橋光臣、筋肉芸人のなかやまきんに君、バブリー芸人の平野ノラ、お笑いタレントのゆーびーむ☆などがいる。

ちなみに平野ノラの父親も不動産業者だったという。

スポーツ選手では、元プロ野球選手の伊原春樹が現役時代に宅建を取得している。また、大相撲力士の隆乃若(本名:尾崎 勇記)は引退後に宅建を取得している。

架空の人物


実は『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の両津勘吉も宅建士の資格を持っている。

両さんは資格マニアであり、左脳をフル回転させて宅建の他、気象予報士や中小企業診断士、自動車運転免許全種(フルビット)、危険物取扱者(甲種以外の全類)、衛生管理者などたくさんの国家資格を取得している。


また、作中で宅建の資格について直接言及されているわけではないが、『サザエさん』に登場する花沢さん(花沢花子)の父親である花沢金太郎は、花沢不動産の社長である。現実の法律に照らし合わせれば、当然、宅建の資格を持っていることになる。

追記、修正お願いします。



最終更新:2024年11月29日 01:01

*1 例外として2020年(令和2年)と2021年(令和3年)は12月にも実施された。

*2 そのため事実上の選抜試験と言われることもある。