電気工事士

登録日:2020/10/26 (月曜日) 00:03:08
更新日:2020/11/30 Mon 18:30:35
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電気工事士(でんきこうじし)は、日本の国家資格(免許)の一つ。または、その資格を持つ技術者のことを指す。

経済産業省の認定資格。危険物取扱者と並ぶ、工業系資格の代表である。

略称は電工(でんこう)。


概要

電気工事士は住宅(家)や店舗などの新築、リフォームの際に、配線図を基に施工を行う。

素人が誤った知識で施工を行ってしまうと、感電や火災などの重大事故が起こる可能性が非常に高いため、電気設備の工事は必ず電気工事士の資格を持った人が行わなければならないと決められている(業務独占資格)。


電気工事士には第一種(電工一種)第二種(電工二種)の2種があり、第二種では一般的な住宅や個人経営の小規模店舗の工事を行うことができる。

第一種では第二種でカバーする作業に加え、より大規模な工場や高層ビル、マンション、ショッピングモール、総合病院、学校などの工事も行えるようになる。電工一種は電工二種で取り扱える作業の資格を包含しているため、実質は電工二種の上位資格といえる。

(但し免状の更新や定期講習が不要の第二種と違い、第一種は五年単位で経済産業大臣の指定の定期講習を受講して免状を更新する必要があり、期限切れの状態で電気工事を行えば電気工事士法違反で、最悪免状の失効*1もあり得る。)


現代社会における「衣食住」の「住」を支える資格である故に、景気に関係なく安定した需要がある。

なおかつ業務独占資格(特定の仕事を行う際に絶対必要な資格の総称)で、さらに受験制限がなく学歴不問である*2ことから、不動産業界の宅地建物取引士(宅建)と並び非常に人気の高い資格となっている。


勿論、就職・転職活動の際にも履歴書に堂々と書ける(電気業界のみならず建築業界や不動産業界でも有利である)し、さらに実務経験を積めば自分で電気工事会社を立ち上げる(独立開業)こともできる*3


工業高校や職業訓練校の電気系の学科では、生徒全員が電工二種の資格を取ることを目標としているところがほとんどである。

逆に言えば電気科卒業なのに電工二種の資格が取れなかったら、「お前は学校で何を学んだんだ?」と厳しい目を向けられてしまうかも。

電工二種は試験に合格したら申請すればすぐに免許がもらえる。


電工一種は高校生にとっては難関であり、在学中に合格できたらクラスでは一目置かれる存在になるだろう。

そもそも試験に合格しただけでは電工一種の資格を取ることはできず、一定の実務経験が必要となる。大学(短期大学を含む)や工業高専で関連単位を取得して卒業していた*4場合は3年、それ以外の場合は5年である。

基本的には電工二種の資格を取ってから電工一種の試験を受験し、実務経験を積むというのが王道ルートとなっている。

(そのため、余計に他の資格のような階級と混同されがちだが、正確にはこの二種には階級的な関係はない

ちなみに工事担任者は名前が似ているが全く別の資格。こちらは総務省の認定資格で、ネットワークエンジニアのための国家資格である。


電気工事士国家試験

電気工事士の資格を取得するためには国家試験を受験し合格する必要がある。

試験は筆記技能(実技)の2段階あり、ともに合格する必要がある。

上期(筆記6月、技能7月)と下期(筆記10月、技能12月)があり、第一種は年1回下期のみ実施、第二種は上期と下期の年2回実施となる。

第二種に関しては、かつては同じ年度内は上期と下期のどちらかしか受験できなかったが、現在は上期と下期のダブル受験も可能となっている。


筆記試験

電気工事の作業に必要な基礎知識を測る。四択のマークシート方式で、問題数は全50問。30問(60%)以上正解すれば合格となる。

基礎理論、配電理論、材料・工具、作業方法、測定方法、検査方法、配線図、法令などから幅広く出題される。例年特に配線図のウエイトが大きい。

第一種ではこれらに加え応用知識や変電所の知識も要求され、より難易度が高くなる。

計算問題が多いため、前提学力として高校基礎レベルの数学や物理学の知識は絶対必要(といっても大学受験ほど高度ではないが)。中学校の数学や理科の内容すら怪しい人には正直かなり厳しい。


「筆記試験には合格したが技能試験で落とされてしまった」という場合、次回の試験に限り筆記試験が免除される。ただし次回までに技能試験に合格できなかった場合は筆記試験から受け直す羽目になる。


技能試験

筆記試験の合格者および免除対象者が受験できる。

電気工事士として必要な作業ができることを確認する。

与えられた材料および工具をもとに課題を完成させるという形式だが、第一種の実技ではより難易度の高い課題が課せられる。

合格基準は、「欠陥が一つでもあれば不合格」と非常に厳しい。

かつては「重大な欠陥は一つで不合格。軽微な欠陥は三つで不合格」だったのだが、2017年の改定で「欠陥に重大も軽微もない。一つでも欠陥があったらアウト」という考えに変わった。


難易度

筆記、技能を合わせた合格率は第二種(上期)は例年40%台、第一種は例年20〜30%台である。第二種は上期のほうが下期より合格率が高い。

電工二種は筆記の合格ラインは6割と低いのに加え、計算問題や専門知識を問われる問題の比率が低く、暗記だけで十分合格を狙える。しかも過去問の使い回しが多い。

技能試験は先述の通り、欠陥が一つでもあれば不合格という厳しい基準だが、問題があらかじめ公開されているので予習が可能*5

むしろハードルを上げているのは、工具や練習資材を揃えるのに3万円以上かかるという金銭問題かもしれない。


電気主任技術者

より上位格の資格として電気主任技術者(でんきしゅにんぎじゅつしゃ)というのもある。電気工事士が主に作業員の資格であるのに対し、電気主任技術者は監督現場責任者のための資格である。「気主任技術者試」を略して電験(でんけん)と呼ぶことも多い。


電気主任技術者の役割は電気工作物の保安、管理業務になる。

電気工作物とは、ものすごく簡単に言うと電気を作って送って受け取るもの全てである。我々にとって最も身近な電気工作物は「我が家」である。

電気工作物は大きく一般用電気工作物(受電電圧600V以下)と事業用電気工作物(それ以外)の2つに分けられ、事業用電気工作物は電気主任技術者による点検・管理が義務付けられている。600Vなんて学校、スーパー、ビルなどのちょっと大きい建物だったら簡単に超える。

さらに受電電圧7000V以上の施設は有資格者を置かないといけない、7000V以下の施設は点検・管理を委託することができるが、委託先には当然有資格者が必要なため、この資格の需要は高い。


電気主任技術者には第一種(電験一種)、第二種(電験二種)、第三種(電験三種)の3種がある。

種別によって扱える電気工作物に制限がある。

第一種電気主任技術者 すべての電気工作物
第二種電気主任技術者 受電電圧17万ボルト未満の電気工作物
第三種電気主任技術者 受電電圧5万ボルト未満の電気工作物

発電設備など他にも細かい制約はあるが概ねこんな感じ。

事業用電気工作物のうち8割くらいは三種でカバーできると言われている。

イオンモールのような大型商業施設やでかい工場になると二種が必要になる。

一種が必要な施設は…発電所変電所くらい。


需要が高い割に超が付くほどの難関資格として知られ、比較的易しめとされる電験三種ですら合格率は例年10%未満しかない。これは電工とは比較にならないほど高度な専門知識に加え、高校上級レベルの数学や物理学の知識が必要となるためである。


ただし電験三種は解答方式が五択のマークシートであるのと、科目合格制度(有効期限あり)があるのがまだ救いか。初心者は一発合格を狙うのではなく、3年以内に4科目(理論、機械、電力、法規)を制覇することを目指すのが望ましい。

より難易度の高い電験二種や電験一種は二次試験として記述式の問題もある。特に電験一種は電気系資格のみならず資格試験全体で見ても医師国家試験や司法試験、公認会計士試験ITストラテジスト試験*6英検1級と並ぶ最難関級の国家資格と言われることもあるらしい。また、電験一種は年間の合格者数が500人にも満たない非常に狭き門である(これは司法試験の合格者よりも少ない)。


この資格の需要自体は高い割には、実際にこの資格を取得できる人はかなり少ないため、電気主任技術者の資格を持っていれば、就職・転職活動では大きなアドバンテージになる。

電気主任技術者の有資格者は、第一種電気工事士の資格を無試験で取得することが可能。ただしやはり実務経験はやはり必要となる(高卒は5年以上、大卒・高専卒は3年以上)。

また、電気主任技術者の有資格者が第二種電気工事士試験を受験する場合は、筆記試験が免除され、技能(実技)試験だけ受ければ良い。


ちなみに電気通信主任技術者(電通主任)は名前が似ているだけで全く別の資格。こちらは工事担任者の上位互換である。


電気工事士の資格を持っているキャラクター



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最終更新:2020年11月30日 18:30