春日一番

登録日:2021/01/01 Fri 00:06:54
更新日:2025/05/02 Fri 06:48:38
所要時間:約 15 分で読めます







俺が一番! 春日(かすが)一番(いちばん)だ!



桐生一馬に代わる『龍が如く』シリーズの新主人公。
最初に『龍が如くONLINE』に登場し、その後『龍が如く7 光と闇の行方』でナンバリングタイトルの主人公としても登場した。

CV:中谷一博


【概要】

東城会の三次団体・荒川組の若衆。通称『イチ』
神室町ソープランドで産まれ、行方不明となったソープ嬢の母親の代わりにソープランドの店長やソープ嬢たち、そして神室町の人々に育てられた生粋の神室町生まれ神室町育ち。実父は不明。
しかしその生まれから「ソープの一番」「どん底の一番」などと呼ばれ、中学時代は荒れに荒れていた。
中学卒業後に育ての親の店長が亡くなってからは高校にも行かず、神室町で喧嘩に明け暮れていたが、ある時喧嘩を売って半殺しにした相手がヤクザだったため、報復として拉致され拷問を受ける。
一番は咄嗟に当時「殺しの荒川」として有名だった荒川組の名前を出して難を逃れようとするが、一番を拉致したヤクザは荒川組と敵対していた組であり、ビビるどころかこれ幸いと荒川組の組長・荒川真澄に「お前の知り合いのガキがやらかしてくれたから責任を取れ」と連絡してしまう。
脅しのつもりが逆効果になってしまい、万事休すと思われたその時、荒川真澄は現れ、更にその場で指を詰めてまで見ず知らずのガキを助けてくれた。
それには、自分の組の看板に泥を塗られないため*1というのもあったが、武闘派として名を馳せて久しい自分の名を、「殺しの荒川」として覚えてくれていた事への彼なりの感謝も含まれていた。
この男気に惚れ込んだ一番は荒川に盃を貰おうと押しかけるも拒否される。
めげずに事務所の前に立ち続けること百日目、とうとう荒川が根負けする形で遂に組入りを認められ、荒川組の一員となった。
春日一番、16歳の頃であった。

が、2001年の1月1日、若頭沢城が東城会直系の坂木組(ONLINEでは荒川組と親戚関係にある室井組)の組員をハジいてしまったと荒川から話をされる。
坂木組に対しては幹部会で近江連合との内通の疑惑を指摘しておりあちらから目を付けられている最中であったのに加え、直径の組に対して若頭がやったともなれば組そのものが東城会を敵に回す事になりかねない。
組存続のために沢城の代わりにムショに務めに行ってくれと荒川に頼み込まれた一番は、「ようやく親っさんに恩返しできる」とこれを快諾。
坂木組(室井組)とのいざこざは荒川組とは無関係とするために絶縁の身となり、自ら警察に出頭することとなった。

……と、ここまでが『龍が如くONLINE』と『龍が如く7』の共通の流れであり、ここから一番の出所を期にそれぞれのストーリーに分岐していくことになる。


【人物】

組に入ってからは荒川を「親っさん」と慕い、忠誠心は人一倍高かったものの、
荒川の様な義理人情を重んじる昔気質の極道を目指していたため、借金取りの様なシノギでも相手に事情があれば見逃してしまう事もあり、
稼ぎが悪かったため、組の金庫番である沢城からは覚えが悪く、よく殴られていた。

『7』では荒川の息子である真斗の付き人も任されており、赤ん坊の頃に患った重度の低体温症の後遺症で多臓器不全にあった車椅子生活の真斗の身の回りの世話を行っていたが、
「若をおかしな場所に連れて行くな」という沢城の命令と、それに反するような真斗の無茶ぶりの板挟みになって苦労している。
しかし、一番本人は真斗を友達であり兄弟だと思っていた。

荒川を慕う想いはは並外れて強く、『ONLINE』でも『7』でも荒川本人の手で銃撃され、生死の境を彷徨う事になったが、
それでも自分を撃ったのには何か理由があるはずと信じ、荒川の子分を名乗り続けている。

一見すると熱血単細胞に見えるが、意外と口が上手く、頭の回転も早い。舌戦になると強い。
特に『7』のブリーチジャパンの久米はよく言い負かされており、痛いところを突かれて逃げて行ったり、実力行使に出たりしては返り討ちにあっている。
必要とあらば意外と極道らしいやり口を見せることもしばしばある。

義理人情には厚く、女性や子供に優しい一面も持ち合わせている。

『7』では子供の頃は桃源郷で何年落ちのドラクエをずっとやっていたらしく、ドラクエの大ファン。
そのため、ターン制バトルで交互に殴り合うような喧嘩の仕方が身についてしまっており、弱い相手でも一方的にボコるような戦い方は性に合わず全力を出せないと語る。そのせいで弟分のミツからはドMだと思われていた。
それもあってか仲間の存在を非常に大切に想っており、よく仲間の悩みを聞いたりトラブルの解決に協力したりしている。
「春日一番という人間は荒川の親っさんから教わった度胸とドラクエの勇者から教わった勇気で出来ている」とは本人の弁。

また、刑務所生活でもその義理堅さは一切錆び付いておらず、仲間のナンバから裏切られた際は出会いの際に命を救われた*2事から、
「ツルんでいるのではなく俺がツルませて貰っている」と表現して裏切りを許す*3等している。

勇者に強く憧れており、異人町で何故か道路に突き刺さっていたバットを抜いた際は聖剣っぽくてテンションが上がり、それ以降職業が「勇者」となる。
更にそれによって妄想力が強化されたのか、戦う際に敵の姿が変わったり、大技を出す時にイメージ映像が見えたりするようになった。
また、強者にはオーラの様なものが見え、謎のガードマンと相対した時は巨大な龍が見えた。

昔の髪型はツーブロックのパンチパーマだったが、
出所後に伸びた髪にパンチパーマを当てようとしたら、担当した若い美容師にパンチパーマの技術がなかったため、カーリーパーマのボンバーヘッドにされてしまった。
それを見た足立は大爆笑していた。
『ONLINE』側では特に深掘りはされておらず、出所直後からボサボサのボンバーヘッド状態だったので天然パーマの可能性もある。
なお『ONLINE』『7』ともにメインビジュアルが恐ろしく人相が悪く、更にふてぶてしい笑みを浮かべているのだが、本編ではひょうきんなアクションを取っていることも多い。

刑務所暮らしが長かった故か21世紀に入ってから登場した電子機器については疎く、スマホや電子タバコはおろかノートパソコンすら見た事がない。
しかしいざ使い方を教えて貰った後は素早く吸収し、スマホアプリでのタクシーやデリヘル*4発注や、自身の声を録音して留守電メッセージに設定するなどの知識はすぐに備えている。実際の刑務所はテレビ、新聞が見れるが、春日は独房に居たことから少々情報が途切れてもおかしくない。

背中の刺青は、龍に化けんとする鯉「龍魚」
の狭間、「進化」「変化」を意味するものとされる。
ちなみに一番は本当は龍を彫りたかったらしいが、一流の極道の象徴である龍は若造が背負えるものではなかったため、龍魚になったという。
『ONLINE』では桐生と錦山の墨を手掛けた歌彫の作であると明言されており、出頭前に線彫りまでは完了し歌彫としても色も入れる予定だった。
しかし春日自身に金銭的余裕がなく*5色を入れる前に出頭したため、メインストーリー終盤になって歌彫の手により漸く色が入ることとなった。

『7』のミニゲームの会社経営では色々あった結果「一番製菓」の社長業を引き受けることとなり*6、ニック・尾形の援助の元、意外な経営手腕を発揮。
一番製菓を横浜一の大企業にまで押し上げる辣腕ぶりを見せる。株主総会で平謝りしたり土下座するのが主な仕事とか言わない。
なお、一応前科者なのに自分でCMに出たりもする。「あ!一番製菓の社長の春日一番さんだ!」「私が社長です!」

神室町にいた頃は女性関係はさっぱりだったが、『7』の仲間の紗栄子やえりは一番に好意を持っている節があり、場合によっては異人町の各スポットの女性からも好意を持たれる事になる。またサブストーリーでとある女性から想われていたことも判明している。つまり意外とモテる
そしてそれによって修羅場になり、ボッコボコにされたりもする

余談だが、服役期間がこれまでの『龍が如く』シリーズの本編期間と丸被りしているため、その間にあった事件の事は全く知らない。
つまり、前主人公であり、伝説の極道であった桐生一馬の事は全然知らないという事である。
ちなみに真島の兄さんについては「片目の狂犬」の噂を聞いたことはあるらしい。*7
なお『7外伝』で語られた事によると、桐生さんの方からはムショ生活中に春日の事は名前を聞いた事がある程度には知っていたらしい。

【バトルスタイル】

『7』での固有ジョブはフリーターと勇者。

フリーターは従来の龍が如くに近いステゴロの喧嘩殺法スタイルで、極み技の「路上凶器の極み」は使用する場所によって過去作のヒートアクションと同じものが発動する。例えば、自転車が近くにあればそれを叩きつけたり、コンビニの前なら敵を電子レンジにぶち込んだり、といった感じ。
しかし、フリーターは武器を装備できないため、RPGスタイルの『7』では攻撃力が低くなってしまう。

勇者は偶然発見した道路に突き刺さったバットを引き抜いたことで目覚めるジョブで、基本的にはバット装備だが、他にも角材や大人の店で買える巨大マッサージ機なども装備できる。
星龍会で持ち物検査を受ける際、その時点での最強武器は電マなので、「丸腰です」と言いつつ電マを発見されそうになる春日にプレイヤーは冷や汗をかくとか*8
こちらはバットを使う攻撃系の技以外にも、勇者らしく仲間を回復したりバフをかけたりといった技を覚えるバランスのいいジョブとなる。

ジョブ以外の固有技として、仲間との絆を上げると威力が上がる「絆技・強襲の極み」や、会社経営でランクを上げると覚える「札束ビンタ」などがある。
会社経営で1位になると強力な全体攻撃「サテライトレーザーの極み」を覚える。横浜一の大企業の社長は衛星兵器すらも使えるのだった。

『ONLINE』でのバトルスタイルは一貫して喧嘩殺法とされており、「喧嘩に作法もない、勝てばいい」というスタンスを取っている。

【龍が如くONLINE】

産まれたのは場末のソープランド。誕生日は1977年の大晦日。
母親は売れないソープ嬢で、産まれた赤ん坊に「一番」と名付けた後すぐに姿を消したという。

懲役15年の判決だったが、荒川を馬鹿にした受刑者を半殺しにして刑期が伸びてしまい、17年の服役となった。
出所後、神室町に戻った一番は、神室町が近江連合に支配されている現状を知り、何度かしょっ引かれた事のある顔見知りの刑事・北村の案内で「X」と名乗る謎の男から、荒川が神室町を近江に売り、現在は神室町の支配者として君臨している事を聞かされ、近江を神室町から追い出すため荒川の殺害を依頼される。
当然それを拒否した一番は自分で真実を確かめるため荒川に会おうとミレニアムタワーの荒川組事務所へ向かうが、荒川によって銃で撃たれてしまう。
事態を予測してXが呼んでいた救急車で一命を取り留めた一番は、撃たれる瞬間荒川が笑っていた事から、「ヤクザが歯を見せて笑う時は本当にヤバい時だけ」という荒川の教えを思い出し、「親っさんは助けを求めている」と考え、Xに借りが出来てしまった事もあり、荒川を助けるため、近江連合を神室町から追い出すのに協力する事を決断する。

そして同じく神室町を取り戻そうと活動していた秋山等と協力し、神室町を牛耳る近江四天王との戦いに身を投じるのだった。

【龍が如く7】

『7』では一番の産まれたソープランドは、第一作にも登場した高級ソープランド「桃源郷」となっている。
育ての親である店長の名前は「春日次郎」。
誕生日も一日ずれて1978年の元日となっており、母親に一番と名付けられたエピソードもなくなっているため、誕生日と養父の春日次郎の名前との兼ね合いで名付けられたのかもしれない。

こっちでも荒川を馬鹿にした受刑者を半殺しにして刑期が3年延びてしまい、1年多い18年の服役となる。
その事件後は看守から「待っている人がいるなら耐えろ」と諭されたのと、暴力沙汰を起こした一番に他の受刑者が怯えて近付かなかった事からトラブルを起こす事もなく、2019年に無事出所となる。
服役中に荒川からもらった手紙に綴られた親心から、荒川は自分を待ってくれていると信じていたが、出所した一番を迎えに来る者は誰もおらず、更に接触してきた足立から荒川が東城会を裏切り、近江連合の若頭代行となっている事を聞かされる。(刑務所内は極道の情報を規制される)
それを信じなかった一番は足立の制止を振り払って神室町に戻るが、18年の時が経った神室町はすっかり様変わりしており、荒川組の事務所もとうになくなり、桃源郷もどっかのヤクザがダンプで突っ込んだせいで廃墟になってしまっていた。
帰る場所もなく途方に暮れる一番だったが、足立から近江の幹部会が神室町で行われる事を聞かされ、荒川に会おうとその場に乗り込む。
しかし、ようやく再会した荒川は一番を銃撃し、一番は意識を失う。

その後、一番は何者かの手によって異人町へと運び込まれ、元看護士のホームレス・ナンバの治療で命を救われる。
行き場も目的もない一番はホームレス生活を送ることになるが、行動を共にすることとなったナンバと共に事件を解決したのを期に、
異人町のスナック街を仕切っている浜子に気に入られ、立ち退きを要求するブリーチジャパンに対して居住権を主張して盾になる代わりにスナック街の店舗の一つに住むことを許される。
そして住まいを手に入れたその夜、ナンバと共にこれからの目標を語り合い、「勇者はスライムを倒して成りあがるもの」というナンバの言葉を受けて成り上がりを決意するのだった。

警察をクビになって無職になった足立とも合流した一番はとりあえず職を探すことになり、ハローワークでソープランド「乙姫ランド」の求人を紹介される。
色々あって無事乙姫ランドに雇われた一番たちは、店長の野々宮から最近休みがちのソープ嬢・菜乃葉の裏引き疑惑の調査を依頼されるが、
それによって菜乃葉が異人町の極道組織・星龍会絡みの裏ビジネスに巻き込まれていることを知り、星龍会本部に直接乗り込んで会長の星野に直談判し、直系組長の戸塚が勝手に行っていた裏ビジネスを取り止めさせる事に成功。
トラブルを解決し、意気揚々と乙姫ランドに戻った一番たちだったが、そこでは野々宮が首を吊って死んでいた。

野々宮の葬儀の後、一番たちは菜乃葉の姉の紗栄子から野々宮の死が自殺ではなく他殺であることを知り*9、その犯人と目される中華マフィア横浜流氓の大物・馬淵を探る事を決意する。
ハローワークを介して馬淵が経営する貿易会社・横濱貿易公司にバイトとして潜入した一番たちは、馬淵が中国人民元の偽札を作っている事を知る。
それをネタに馬淵と接触しようと偽札を持ち出そうとした一番たちだったが、それを発見されてしまい、馬淵に捕らえられてしまう。
一番たちはハン・ジュンギに助けられたものの、馬淵はその際の映像を編集して一番たちを星龍会からの刺客という事にし、星龍会との戦争を始めてしまう。

その戦争をどうにか食い止めようと一番たちは異人三の間を走り回ることになり、その中で異人三の真実、ブリーチジャパンのバックにいる近江連合存在を知る。
そして元ブリーチジャパン代表であり現東京都知事の青木遼の写真を目にする事になるのだが、一番はそれを見た瞬間、青木遼が神室町で死んだと聞いていた真斗だと気付いた。
更にブリーチジャパンの現代表・小笠原の口から、馬淵を取り込み、彼が立てた殺人の計画に許可を出したのも青木遼であった事も明かされる。

一番は異人町を訪れた青木遼に接触を図り、やはり青木遼は真斗であった事を知る。
そして18年前にムショに入るきっかけとなった事件は沢城ではなく真斗が起こしたものである事、荒川が自分を実の息子の身代わりに使った事も真斗の口から聞かされるが、それでも一番は荒川を信じるのを止めなかった。

改めて真斗や近江連合と敵対し続ける事を選んだ一番は、再会した弟分のミツから荒川が味方を必要としていると聞き、大阪の蒼天堀に向かう。
本当はミツの手引きで荒川と会える場を用意する手筈だったが、我慢できずに自分で近江の本部に侵入してしまい、何故か近江の本部にいた真島と冴島と戦うことになってしまう。
化け物じみた強さの二人に苦戦する一番たちだったが、そこに荒川と大吾が現れたことで喧嘩は中断。
一番は再会した荒川から、東城会崩壊の真実と、大吾と渡瀬が東城会と近江連合の同時解散を行おうとしている事、そして荒川がその協力者であった事を聞かされる。
当然その場では近江の幹部たちの猛反発が起き、大混乱となったが、そこに突然現れた謎のガードマンの協力もあって渡瀬と大吾を守る事に成功し、東城会と近江連合は解散となった。

騒動が終わった後、一番と荒川は二人で語り合い、「また明日」と約束して別れた*10


荒川の死体が港に上がったのは翌日の朝の事だった。


荒川の死に衝撃を受ける一番だったが、それを指示した黒幕と思われる真斗を殺すことを荒川は望んでいないと考え、真斗を殺して仇を討つのではなく、ぶん殴って目を覚まさせてやる事が自分のやるべき事だと、一番は改めて真斗の野望を止める事を誓う。

そのための手段として、まずは青木が手駒にしているブリーチジャパン横浜支部の支部長・久米に接触する方法を考える。
久米は一連の事件から部外者との接触を極力避けていたが、青木の勢力固めの一環として衆議院選挙に立候補しているため、同じ「候補」になれば接触の機会を得られる。
そんな訳で春日たちも星龍会の星野会長の協力を得て候補を立てる事を考えるが、紆余曲折あって結局は春日自身が立候補する事に。

それを察知した久米陣営から先んじて中傷のビラが撒かれるなどの妨害を受けるが、元よりのグレーゾーン層住人からの人気や、春日と久米の弁舌力の差から久米が逃げるような展開まで起きてしまい、よもやの久米落選もあり得る流れになってきてしまう。
ここに至り、久米から泣きつかれた青木は春日へより直接的な「警告」を行う。

異人町で久米に話を聞くチャンスを掴むべく久米の選挙演説現場を追いかける春日だったが、その最中にコミジュルからハン・ジュンギに一本の連絡が入る。
コミジュルによると「匿名のタレコミによると沢城が星野会長を殺害しようとしている、とのことである。
久米を放り出して大急ぎで星龍会本部に駆けつける春日だったが一歩間に合わず、会長の部屋には撃たれて既に死んでいる星野会長と、ソファに座る沢城がいた。

「イチ…お前はいつだって遅ぇんだ」

異人町に流れ着いた自分に目をかけてくれた星野会長を、衆院選選挙を利用して久米に接触しようとするのを妨害するためだけに殺害した男。
そして、荒川の親っさんを殺したかも知れない男。
激昂した春日は沢城に殴りかかる。

決別した後も沢城に対しては一貫して「カシラ」呼びを崩さなかった春日だが、唯一この時だけ「沢城」と呼び捨てにしている。

様々な武器術を修めている武闘派の沢城との戦いは激しさを極めたが、仲間の協力もあって何とか沢城を打ち倒した春日。
ここで負けた以上は自分は終わりと悟ったのか、沢城は荒川殺害の真実の他、一番にとって衝撃的な事実を告白する。

以下最大級のネタバレ







一番自身も知らなかった事実。
それは実の父親は荒川真澄であるということ。


荒川は茜という女性との間に子供を作ったが、その頃荒川がいた組の組長は自分の娘と荒川の縁談を考えていたためそれに怒り、荒川はおろか茜と赤ん坊まで殺すように指示を出した。
追われる身となった茜は咄嗟にコインロッカーに赤ん坊を隠し、荒川はそのロッカーをこじ開けて赤ん坊を助け出した。
しかし、その赤ん坊は荒川の子供ではなく、同じ日にコインロッカーに赤ん坊を捨てた沢城の子供だったのである。
それが荒川真斗であった。*11

肝心の荒川の子供は、その後にコインロッカーに現れた「店長」と呼ばれる男が助け出し、連れて行った。
そして沢城はその全てを目撃していた。*12

なお、「沢城がロッカーに入れた子供が荒川に連れられていった」のは、沢城が入れた本人であり、沢城たちの手元にロッカー番号の書かれた鍵があったため間違いないが、「隣のロッカーから発見された子が荒川の子である」「それを引き取りに来たのが桃源郷店長の春日次郎である」ことはあくまで状況からの推測でしかない。

荒川は一番と交わした最後の会話で「茜が桃源郷で子供を産んでいる夢を見る」と語り、一番が息子だと気付いていたような素振りを見せていた。
後に真斗も「何から何までクソ親父にそっくりで、そういうところが好きになれなかった」と口にしている。
家族だからこそ一番の素性について何か感じるものがあったのかもしれない。
また、『8』では沢城が茜を「春日の母親」と明言しているため、事実はどうあれ少なくとも沢城にとってはそれが確定事項と言う事になっている模様。

これらの事を沢城の口から聞かされた一番は、荒川を殺された怒りと予想外の事実を知った混乱で冷静さを失い、真斗の居場所を聞き出すために近江連合の下っ端を殺しかねない程タコ殴りにする等暴走してしまったが、それを見かねた謎のガードマンに真斗の動向に関する情報をダシに誘い出され、彼と戦って敗れた事で頭が冷え、冷静さを取り戻した。

かくして謎のガードマンが提供する情報……コミジュルの監視システムに引っかかった情報から、大陸で有名な殺し屋・ミラーフェイスが日本に来ており、警察に逮捕された沢城を口封じのために殺害しようとしているという計画が判明する。
この計画を指揮しているのが、沢城の口から語られた「本当の荒川殺害実行犯だと思わしき人物」の石尾田であったため、春日は石尾田とミラーフェイスを追い、とある廃ビルで彼らを追い詰める。

石尾田を打ち倒し、荒川殺害の真相を問い詰めるが、石尾田からは確かに自分も殺害に向けて動いていたが、実行犯は自分ではなく、解散宣言の日に近江を裏切って荒川側に付いたはずだった天童だと言われる。その事実に驚愕した瞬間、仕掛けられていた爆薬が爆発、ビルのフロアを丸ごと吹き飛ばし、物語はそこでいったんフェードアウトする。

そこから少し時は経ち、神室町。その地区の選挙候補者の街頭演説が行われている人だかりの中。
民自党*13の幹事長にも異例の若さで就任し、今を時めく政界の大スターとなった青木が応援演説に来るとあって、ただの選挙演説にしては異様な熱気の人だかりであった。
候補者が青木を紹介し、青木が壇上である選挙カーワゴンの屋根の上に上った時、人ごみの中にボロボロのコートを被った不審な人物が現れる。
その不審者はコートを脱ぎ捨てると共にメガホンを手に、自分は神奈川二区の候補者であり青木先生に挨拶しにまいりましたと叫ぶ。
同時に選挙カーの下にナンバと足立が走り込み、手を組んで踏み台になり、春日は選挙カーの上にいる青木の目の前へと一気に駆け寄った。
候補者は怒って立ち去るように言うも青木が制する*14。近づく事に成功した春日は握手を求め、青木をグイッと引き寄せた。

「荒川組事務所に荒川真澄殺害を指示した音声データが残っている。俺は明日それを取りに行く」

春日はそれだけ告げると、退散して姿を消すのであった。

これはもちろんブラフである。
仮にそんなものが本当に存在するのなら、いちいち青木に宣言して対応の猶予を与えずとも、黙って取りにいけばいいだけの話。
冷静に考えればそれで終わる話だが、あらゆるリスクを潰して行動しないと不安が拭えない性格の青木はそれができなかった。

加えて、青木の元には腹心と呼べる近江の極道は天童しか残っていない。
荒川組事務所を家探しするとなると、まず天童を向かわせ、その天童が見つけられないとなったら青木自身もミレニアムタワーに来るだろう。
そこまで読み切った、青木=真斗のそんな性格をよく知っている春日の策である。

かくしてミレニアムタワーに天童と青木をおびき出した春日。ミレニアムタワー最上階の荒川組事務所でまずは天童と対決。

一方青木は選挙結果速報の会場でニック・尾形の工作により、自身に逮捕状が出たものと思わされ、音声データが実在し、音声データが流出したのではないかと焦る。
警視総監の堀ノ内の警告も無視して自らミレニアムタワーの事務所に向かうと、そこには倒れ伏す春日一行と、座って一服している天童だった。
その天童から「連絡が付かなかったのは取り込み中だったからだ」「音声データは無かった。ブラフだった」と聞かされ安心し、
その場にいた極道たちに「こいつらを始末しろ。二度と死にぞこなって戻ってこないように死体も残すな」と命じてしまう。

その瞬間、倒れて気絶していたと思われていた春日が急に眼を開いて起き上がる。
この状況は全て春日の演出であり、倒れていたのは安心した青木が致命的な事を口走るよう仕向けるための演技だったのだ。
先ほどの殺害指示の瞬間は、物陰に隠れていたハン・ジュンギと紗栄子によって撮影され、最速でネットで拡散されてしまった。
本物の天童はノックアウト済みであり、座っていた天童は実は石尾田との対決の場にいたミラーフェイスであった。

石尾田と対決した廃ビルでは、監視していた天童の部下によって予め爆弾がセットされており、石尾田が敗北したのを確認して爆破されたのだが、足立が寸前で爆弾の存在に気付いたためギリギリで難を逃れている。
この時、外部の人間である自分を使い捨てようとした事に反発したミラーフェイスも、一矢報いるために春日に協力している。

逃げ延びた後は青木を安心させ、公衆の面前に姿を現すようになるまで、自身は死を装って身を隠した。
この時身を隠すアジトはニック・尾形の提供で、前述の工作もこの期間に依頼している。

数々の春日の罠にはまって失脚は免れない状況に追い込まれてもまだ止まらない青木…荒川真斗を止めるべく、遂に真斗と直接拳を交える。


俺は前に進むだけだ。誰も……俺を止められやしない……

いや……俺が止める。絶対に

この時ゲームでは「護衛を大勢従えた青木遼vs春日パーティ」と「護衛のいない荒川真斗vs春日一番タイマン」の2回戦う。
前者は普通の戦闘であり護衛もちゃんと強いので手を抜くと負ける戦闘だが、
後者は「全てをさらけ出す春日自身」を表すために春日は強制的にジョブがフリーターになる代わりに、真斗自身は弱く、負けようのない勝ちバトルであるという異色のラスボス戦。

護衛を全て蹴散らし、一番は真斗と一対一の殴り合いを行い、真斗を思いっきりぶん殴り勝利する。
しかし真斗は突入してきた警官から拳銃を奪い、その場から逃走してしまう。

そして真斗は自分の始まりの場所、コインロッカーにやって来たが、一番はそれを予想していち早くそこに来ていた。
真斗はその場で自分の頭を撃ち抜こうとするが、一番はそれを涙ながらに説得する。


アンタ嫌がるかもしれねえけどよ……

やっぱり若と俺は兄弟なんすよ……

だから若には……
死なないでほしいんですよ 俺……

お願いです……お願いですから……

わかって……下さい……

お願いです……


真斗はその説得に応じ、警察に自首してどん底からやり直す事を決意する。

……しかしその瞬間、真斗が「青木遼」として散々に利用してきた久米が、真斗の腹部にナイフを突き立てた。
一番にわずかな言葉を遺し、真斗はそのまま帰らぬ人となってしまう。

しばらく時が経ち、荒川親子との小規模なお別れ会の日。
一番はそれに参加していた元東城会の面々から、行き場をなくした極道を受け入れるために立ち上げた警備会社、本来は荒川も手伝うつもりでいたその仕事を、荒川に代わって手伝ってみないかと誘われるが、一番は「自分の居場所は異人町」とそれを断った。
異人町に来てからかけがえのない仲間を手に入れることが出来たが、自分はその恩を何も返せていない、「行き場のない人間に受け皿を作る」という荒川がやり残した仕事は異人町でもやれる。
そう語った春日は、異人町に残る事を決めるのだった。

荒川との血縁関係については、DNA鑑定で調べることもできたが、
血の繋がりがどうだろうと春日次郎と荒川真澄の2人が自分の親父であることは何も変わらないし変えたくもない、と行わない事を決めた。
なので実父が荒川なのかは確定しないままとなった。

【余談】

担当声優の中谷一博氏は、『1』のキーパーソン・錦山を演じている。
桐生の代え難い兄弟分であり、桐生の与り知らぬうちにのし上がった錦山は、言わば一番にとっての真斗にあたる人物であり、また錦山が変わったきっかけも、荒川の裏切り(のカバーストーリー)と同じ「家族の死」であったりと、含みを感じさせるキャスティングである。
……が、このキャスティングは指名ではなく中谷氏がきっちりオーディションを受けて勝ち取った役である。
中谷氏は意欲的に出演を願ってオーディションに挑んでおり、結果が出るまで「十中八九ダメだな」と不安を抱き出演が決まった際にはドッキリとさえ思ったらしい。


どん底まで行きゃ……あとは上しか 行く道がねえ

どん底から見える景色ってのは 真っ暗じゃねえ

地に足付けて上を見上げりゃ 希望で輝いてんだ

あんたの言う通りですよ 若……

追記・修正はどん底に落ちてからお願いします。
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最終更新:2025年05月02日 06:48

*1 無視しても「無関係」と釈明しても、組員を見捨てたという噂を流されてしまうのは見えていた

*2 医療の心得があるナンバがその場にいなければ命を落としていてもおかしくなかった

*3 元々ナンバの目的が行方不明の弟の捜索という心情を理解できるものだった事もある為

*4 デリバリーヘルプ

*5 春日に恨みを持つ人物からは「痛みに耐えきれなくて逃げ出したから線彫りで止まっている」と蔑まれていた

*6 名前が一致したのは偶然とのこと。

*7 一番が荒川組入りしたのが96年。その昨年に堂島宗兵殺害事件が発生していため立花不動産の買収王…もとい堂島の龍については知る機会がなかった模様。

*8 実際はストーリー上では何も発見されない

*9 一番目線でも、大入り袋の用意の最中という自殺としてはあまりにも不自然な状況であったのを見ている

*10 本来は食事をする予定だったが、星龍会会長の星野からの食事の誘いがブッキングしてしまった。星龍会会長も荒川と深い縁のある人物でしかも40年来とときて荒川も断れなかった

*11 真斗が入れられたコインロッカーは施錠されており、逆に一番は無施錠だった。冷静に考えれば「鍵を渡す算段が立たないのであれば施錠などしない」という所に思い至るが、刺客に追われていた荒川はとても冷静な判断ができる状態ではなく漏れ聞こえてきた真斗の泣き声を頼りに誤ったロッカーをこじ開けてしまった。

*12 なお、実父が隣のロッカーを破壊している間も幼き一番はずっと眠り続けていた模様。

*13 作中に登場する架空の政党。与党。

*14 実際、無礼を働いているのは春日の方ではあるが、大人気の政治家が泡沫候補を追い払う事はイメージ低下になるリスクもあり、追い払えない。以前にも春日は久米にその手で無理やり近づいている