徳川定定

登録日:2021/01/29 Fri 21:22:20
更新日:2024/11/22 Fri 20:48:52
所要時間:約 6 分で読めます




私も若い頃は随分と無茶をしたものだが、ここまで派手ではなかったよ。

銀魂』の登場人物。
(原作では「定々」で表記)

CV:土師孝也、岐部公好(第179話のみ)

【概要】

江戸幕府十三代将軍。
茂茂そよ兄妹の伯父で早くに両親を亡くした二人の養父でもある。
また、月詠の師匠で元御庭番衆の地雷亜(鳶田段蔵)の元主君でもある。

初登場は一国傾城篇だが、それ以前の紅蜘蛛篇の全蔵の会話でもその存在に触れられている。
温厚な物腰の好々爺だが、若い頃はかなり派手好きだったらしく、側女も多数いたらしい。
ブリーフ派かつアッチが足軽かは不明。
天人襲来の折、心労で倒れた十二代将軍に代わって将軍職に就き、「売国奴」と軽蔑される一方で幕府を立て直した名君とされている。
将軍職を譲った現在でも相談役として権威を振るっており、家臣の中には茂茂よりも後見人の彼の発言に従おうとする者もいるほど。
吉原の老い先短い花魁・鈴蘭の想い人であるとの噂を聞きつけた銀時達がせめて最期に会わせようと探していた最中、紆余曲折を経て彼らとの面会に至る。





以下、ネタバレ






この国を統べる私を、法そのものである私をどうやって裁くというんだね?


実は普段の温厚の人柄は仮面に過ぎず、本性は他人を平然と道具として扱い傷付け嘲笑う外道そのもの
現在の権力も政敵を次々に暗殺し築き上げたものである。
天人への対応も天導衆に迎合し、彼らの後ろ盾を得ていたというのが事実。
そもそも、地雷亜が暗殺に手を染めていく事に悲観し、彼の妹が命を絶った事を踏まえると、勘のいい読者はどんな人物であるかおよそ察しがついていたかもしれない。
地雷亜出奔後は御庭番衆を解散させ、ら天照院奈落を利用していた。
また、幕府の建て直しに当たって、「寛政の大獄」と呼ばれる大規模な反幕勢力への粛清を主導し、その過程で銀時らの師である吉田松陽は捕えられて処刑された。
鈴蘭もその道具として利用されていたに過ぎず、彼女が家臣の六転舞蔵と恋仲になり駆け落ちを企んでいると知ると見せしめに舞蔵の左腕を斬り落とし、「次に鈴蘭に会ったら二人まとめて殺す」と脅迫し、数十年に渡り舞蔵を苦しめ続けていた。

鈴蘭の名前が出されるとその本性を現し、要人殺害と佐々木暗殺未遂の罪を銀時達に擦り付け処刑しようとする。
さらには賊を侵入させた責任として舞蔵の残った右腕まで切り落とす。
銀時新八神楽・月詠・信女らによる国盗り合戦が開始されても奈落をはじめ多数の兵を有する余裕から傲慢な態度を崩さず、素性を知りもしない松陽に対する侮蔑の台詞を吐く。
そのまま朧に警護され避難しようとするが、茂茂が真選組見廻組をはじめとした江戸の全警察組織を動員し、旗本達も投降した事で戦局が一変する。
将軍暗殺篇での回想で明らかになる事だが、実は茂茂自身も幼少期に自分の影武者を平然と見捨てる定定には少なからず疑念を抱いており*1、さらに舞蔵との会話を密かに聞いていた事で決断に至ったのだった。

茂茂の裏切りに激昂した定定は朧の忠言も聞かず吉原へ向かい鈴蘭を殺そうとするが、避難船は既に銀時達に制圧されており*2、挙句は朧の攻撃への盾替わりにされてしまう。
天導衆が騒ぎを聞きつけ現れたのを知ると図々しくも彼らの元へ亡命しようとするが、茂茂が天導衆の介入を断固として拒否したうえ辞職願を出した事で完全に後ろ盾を失い、すべての罪を白日の下にさらされ反逆罪と要人暗殺の罪で投獄される。


【末路】

もはや用無しと天導衆達が協議する一方、なおも自分に利用価値があると信じて疑わない定定。
騒動から程なくしてそんな彼がいる獄舎に奈落の兵が現れる。
ようやく迎えに来たかと定定はさっさと連れ出せと横柄に促す。

茂茂残念だったな!お前に私を裁くことはできぬ!誰にも、天にも、私を裁くことはできはしな…!

狂喜する定定だったが、気付くとその身体は一刃のもとに貫かれていた。
唖然としたまま膝をつく定定。

その通りだ。たとえ将軍だろうと天であろうと誰にもお前は裁かせねえ。

お前を裁くのは……このオレだ!

その眼前にいたのは天の使いの烏ではなく、隻眼の復讐鬼だった。

き、貴様は…!

思い出す必要はねえよ。いずれ天導衆、ふざけた烏ども、いや、世界の首引っ提げてそっちいくからよ。

先生に…よろしくな…!

怯え狼狽する定定に高杉は容赦なく太刀を振り下ろす。
暗殺で上り詰めた男にとってあまりに皮肉のきいたあっけない最期だった*3
なお、これ以上の政情の混乱を恐れた上層部の意向により、公には病死と発表された。


【余談】

出番は一国傾城篇と回想のみながらも、その中で外道っぷりをいかんなく発揮した。
仁徳により登場人物達や読者に広く愛された茂茂や、茂茂殺しの悪名に始まるも騒乱の中で覚醒し命を賭して無用の流血を阻止した喜喜とは比べる価値もない矮小な器である。
また、喜喜が息を引き取る際、茂茂をはじめとする先代将軍達の幻影に迎え入れられるのだが、その中に定定の姿は見当たらない。彼らと同列に扱う価値すらないということだろう。

作中では他にもいわゆる悪代官ポジションのキャラも少なくはないが、それらはどちらかというと短編に多く、逆に長篇に多い哀しき悪役でもないかなり異例のキャラといえる。他には岡田似蔵と華陀と圓翔くらいであろう。
また、彼の所業が少なからず関わって命を落としたり、人生を大きく歪められた主要キャラ達の関係者も少なくはなく、確認できるだけでも
  • 吉田松陽
  • 地雷亜の妹
  • お登勢の夫の寺田辰五郎
  • 茂茂の影武者達
  • 佐々木異三郎の妻子
  • 一橋斉斉とその息子の喜喜
らが挙げられ、天導衆と並び本作におけるすべての元凶だといえる。
逆に言えば彼の存在がなければ或いは攘夷戦争も起こり得なかったかもしれないので、そういった意味では非常に影響力のある人物だったともいえる。

名前の元ネタは江戸幕府十三代将軍徳川家定
そのほか、攘夷運動への弾圧「安政の大獄」の主導者である井伊直弼や多数の妾を抱えていた十一代将軍徳川家斉の要素も含んでいると思われる。
ただし、解釈によって差はあるが、いづれも定定のような外道ではない。(特に悪役のイメージが強い井伊直弼も、近年は教養人としての側面が取り上げられるなど再評価が進んでいる。)


私も若い頃は随分と追記・修正をしたものだが、ここまで派手ではなかったよ。


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最終更新:2024年11月22日 20:48

*1 為政者としては正しい判断かもしれないが、その理由も代わりは幾らでもいるというものだった。

*2 この際、月詠の錫杖で思いっきり股間を狙われている。

*3 なお、明確に描写されてはいないので定かではないが、直後の現場に信女の姿がある事などから、恐らくは見廻組が高杉の進入の手引きをしたものと思われる。