レリエル(新世紀エヴァンゲリオン)

登録日:2021/04/17 Sat 19:31:00
更新日:2021/04/23 Fri 14:00:19
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楽しいこと見つけたんだ。


楽しいこと見つけて、そればっかりやってて、何が悪いんだよ!


レリエル(LELIEL)とは『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する謎の生命体「使徒」の一体。
登場したのはTVアニメ版のみで、漫画版・新劇場版には登場しない。

+目次

基礎データ

呼称:第12使徒
天使名:レリエル
全高:伸縮可能。初号機鹵獲時は直径680メートル、厚さ3ナノメートル*1
体重:不明
象徴:夜
能力:ディラックの海・精神攻撃


概要

第3新東京市地下のNERV本部を目指し侵攻をした使徒の一体。
名前の「レリエル」はキリスト教ユダヤ教の伝承にある「夜の天使」に由来する。
ただし他の使徒同様劇中では天使名で呼ばれることはなく、主に「第12使徒」と呼称される。

外見は空中に浮かんだ白黒のオプ・アート*2の様な複雑な模様が描かれた球体に見えるが、こちらは実体ではなく影のような部分にあたり、パターン分析してもオレンジ(=使徒ではない)になる。
実体は球体の真下に現れる地表の黒い影の様な部分で、こちらはパターン青(=使徒)と識別される。
即ち「実体のような部分が影で、影のような部分が実体」とややこしい状態になっているので、この項目内では以降、球体部分を『』、影部分を『実体』と呼称する。
上述した全高で極薄の実体を内向きのA.T.フィールドで支えている。
初登場時には影の移動時にはタムタムのロールの様な音が小さく響いていた。

能力は実体の上にいる対象を、虚数空間「ディラックの海」に引きずり込む事。

+「ディラックの海」とは
物凄く簡単に言えば「負のエネルギーを持つ電子がぎっしり詰まった空間」。
かつて物理学者ポール・ディラックによって提唱された仮想的な空間状態。
物理において電子は「エネルギーが低いほど安定する」という性質を持っている。
我々が生活する世界ではエネルギーは最小値を0であるとして考えるのが普通である。
ところがディラックは自身が考案したディラック方程式で電子が負のエネルギーの解を持ちうることを発見。
上述した電子の性質を考えた場合、負の数に下限はないため、電子のエネルギーはいつまでも落ち込んでいく事になってしまうがそれは明らかにおかしいので、「負のエネルギーで完全に満たされた空間」こそが真空(エネルギーの最小地点)であるとし、この状態に「ディラックの海」という名を付けている。
「海」と言うのはおそらくエネルギー0を標高(海抜)0と考え、そこからさらに小さい部分は海であると考えた結果命名されたものと考えられる。
現在では場の量子論の発展によってこの概念がなくとも上記のような問題を解決できる事が分かり、今では否定された存在となっている。
劇中の時系列を考慮するに、既に理論上否定されているはずの存在だが、同一の概念かは不明。

そのように考えた場合、シンジ達のいる世界が「正の宇宙」であるならばディラックの海は「負の宇宙」、さながらレリエルの実体はその臨界面ともいうべき存在である。
(ただし後述する通り、影にも臨界面(平面ではなく球体なのでこの表現は正しいとは言えないが。)の性質があると思われる。)


引きずり込まれた先はリツコ曰く「別の宇宙」らしいが、劇中ではデイラックの海が描写されるシーンがない*3ため、詳細は不明。
恐らく普通の生物が生息できるような状態ではないと思われる。また「宇宙」と呼ばれるだけあって広さも相応にあるらしくレーダーやソナーでの確認も不可能。
またレリエルの実体を境目として宇宙が分断されているためか、中途半端に引きずり込まれた部分はそこを断面として切断されるといった特徴が挙げられる。

この様に「ディラックの海」が特徴として挙げられるレリエルだが、もう一つの特徴として「人の心に迫ってきた初の使徒」という点が挙がる。エヴァにおける精神攻撃と言えば後に登場するアラエルなどが有名だが、心に迫る試みは実はこの段階から始まっていた。

精神世界の電車の中でシンジと相対する位置に座り、彼に「自己」についてを解き、じわじわと彼の精神を追い込みにかかるという攻撃を行い、ただでさえ孤独に苛まれている彼の心に更なるダメージを与えた。


ちなみにレリエルは影には何の役割もないのかと言われると決してそんな事はなく、この部分を攻撃されると影が消失し、実体が出現する*4ため、ある種の攻撃トリガーである。
いかにも「ここを攻撃してください」と言う印象を与える見た目なので、なかなかに上手いトラップだと言える。

また後述する描写から考えるに「もう一つの臨界面」としての性質も持ち合わせていると思われ、実体側が対象の引きずり込みを行った「入口」なのに対して、影側は対象がディラックの海から出てくる「出口」として使われている。*5

これは推測だが、レリエルがアダムとの接触を行う場合、この実体側でアダムを周囲の環境ごと一度鹵獲し、アダム以外をディラックの海で始末した後にアダムを影側から戻し、安全にサード・インパクトを行おうとしていたのではないかと思われる。


主な能力

ディラックの海

影を攻撃した者の真下に実体を展開。
そのまま対象をディラックの海へと引きずり込んでいく。

精神攻撃

鹵獲した初号機に乗っていたシンジに対して、彼の姿を借りて登場し、彼の精神状態にダメージを与える発言をしてくる。
なお、言語等に関しては彼を依り代とすることで得たとされている。

A.T.フィールド

使徒の共通能力。
ただし、致命傷とならない様な物であればディラックの海へと送れば擬似的な回避ができると思われる。


劇中での活躍

TVアニメ版

第拾六話に登場。

影部分が先に現れ、時速2.5キロで第3新東京市をゆっくりと移動している。
しかし、見た目はどう見ても使徒であるにも拘らず、分析パターンはオレンジ。
ミサトは下手に動かない方がいいと判断し、パイロットたちには慎重に接近して反応を伺いつつ、市街地上空外への誘導も可能なら行うように指示。

戦闘配置は先鋒1機、後援2機。シンジはアスカに茶化された事とシンクロテストで1位に躍り出たことで自信が付いていた事もあって先方の座に半ば強引に付く。


作戦通り初号機は先鋒の位置へ、しかし後援2機は指定位置への到着していなかった。

エリアを移動するレリエル。
半ば焦りながらシンジは足止めだけでも行おうと、ミサトの指示を待つことなくレリエルの影を狙撃。

すると突如として影が消失し、分析パターン青が弾き出される。
出現位置は攻撃を行った初号機の真下の道路。
どんどん引きずり込まれていく初号機。シンジはミサト達に助けを求めるが、彼女達にはどうすることも出来ない。
断末魔の様な叫びは実体の内側の闇の様な世界への消えていった。

ミサトは急いで後援2機に救出指示を出すが、零号機が影を狙撃した際に再び実体を展開。
初号機の救出どころか自分達の方がディラックの海へ引きずり込まれかけたために、ミサトは救出を中断して2人に後退指示を出す。


その後レリエルは停止。国連軍が(NERVにプレッシャーを与える目的もかねて)それを囲むという状況に。


アンビリカルケーブルが途中で断線しているため、初号機はとっくに活動限界を迎えているがシンジが無暗に動き回ったりせずに、生命維持モードに切り替えをすれば16時間程度は生きていられる。


しかし逆に言えばレリエル攻略とシンジ奪還のタイムリミットは16時間であるという事。
アスカはシンジが増長した結果、自滅に近い形で今の状況に至った彼を馬鹿にするような発言をしつつも、彼の身を案じていた。
レイはアスカの真意に気付かずに言葉を額面通りに受け取って感情的な反応をする……。
ミサトはそんな両名を宥めつつシンジを「叱る」ために彼を救出するための案を練る……。


一方、ディラックの海。

生命維持モードに切り替えることでシンジはプラグスーツ内でどうにか生きていた。
一度は睡眠をとった(本人の様子からして快眠とは程遠い状態だったようだが。)ようで、モード切替から12時間が経過していた。
残された猶予は4時間前後。

そうこうしている内にプラグ内のL.C.Lが浄化能力低下に起因する濁り、そして血のにおいが充満してきたことで平静さを失い、エントリープラグ内で発狂。
しかし自分以外に誰もいない宇宙。その叫びを受け止めてくれるものはどこにもいなかった。


リツコは撃破用の初号機の強制サルベージ作戦として1つの案を提示。

現存するN2爆雷992発を投下し、着弾前のタイミングで零号機・弐号機がA.T.フィールドでレリエルの虚数回路に0.001秒だけ干渉。その間に実体内に大量のN2爆雷の雨を降らせて使徒を内部のディラックの海ごと破壊するという、ミサトが以前ガギエルに対して行った方法と類似したものだった。

レリエル撃破という観点においては希望の見える手であるが、肝心の問題は内部にいるシンジにも影響が出る可能性があるという事。
活動限界なのでA.T.フィールドが張れずに爆炎の海の中で死んでしまう危険もあるため、救出という観点においては大いに問題がある。
ミサトは当然反対するが、リツコは初号機を多少の損傷を覚悟で回収するという事を優先していた。「パイロットの生死は問わない」と言う非情な言葉を添えて……
あくまで必要なのは初号機でシンジのことは二の次。
その態度にミサトは怒りと疑問をリツコにぶつけるが、彼女は答えない。
作戦指揮権をリツコが握り、準備を始めていく……。
(なお、リツコもシンジの事を何も考えていなかったわけではなく、彼の生命維持設備の状態をみて予定を早めるなどの対応はしている。)


その頃、シンジは精神世界にて電車に乗っていた。
向かいの席には誰かいるが、顔は逆光で見えない。
相手に名前を聞くと、彼は「碇シンジ」と答え、「自己」についてを解きつつ、「喜びの反芻」「辛さからの逃避」と言う彼の生き方を自己欺瞞だと糾弾し、彼を追い詰めていく。
シンジは言い訳がましく反論するが、やがて耐えられなくなり発狂してしまう……。


保温、酸素循環、プラグスーツの生命維持も限界に達し、最期の時がすぐそこまで来ていることを悟ったシンジは蹲るが……






……お母さん!?


もういいの?そう、よかったわね。





場面は変わって第3新東京市。

作戦準備が整い、後は実行に移すだけと言う場面になり、爆雷投下まで60秒のカウントが告げられる。



が、ここで突如として異常が発生。

レリエルの実体部分に赤い亀裂がいくつも走り周囲に大きな地響きが鳴り響く。
当然NERV側は何もしていない。

するとレリエルの影の部分の模様が消失。漆黒の球体に変わったかと思うとそれを突き破るように腕が出現。

破った箇所から夥しい量の血がほとばしり、中から活動限界を迎え、動けないはずの初号機が現れた。
獣のような咆哮を上げながら、血まみれの姿でレリエルの影の風穴を無理矢理広げる姿は怪物以外の何物でもない。




私…こんなのに乗ってるの……!?


……………


何てものを…、何てものをコピーしたの!私達は……


(エヴァがただの第1使徒のコピーなんかじゃないのは分かる。)


(でも、NERVは使徒をすべて倒した後、エヴァをどうするつもりなの?)



目の前に広がる凄惨な光景を見た者達は思い思いに心を吐露する。
そして影を完全に破壊した初号機はのぼる朝陽と共に地上に降り立ち、使徒を撃破したのだった。


エントリープラグから救出されるシンジ。
「叱る」つもりだったミサトは彼の無事を知ると安堵の涙を流すのだった。





ただ会いたかったんだ。もう一度。



その後病院に搬送され、レイ・アスカの2人からのお見舞いを受け、安堵の表情を浮かべるシンジ。
しかし体に染みついた血の匂いは、消えることなく残っていた……。


この戦闘を経てシンジへの精神面における受難が始まり、アスカもまたシンクロ率をシンジに追い抜かれたことでプライドの崩壊が始まっていく事となる。


他作品での活躍

新世紀エヴァンゲリオン2

特殊ボスとして登場。
パイロットシナリオの場合はプレイヤーキャラで相対する事になり、非パイロットシナリオだと必ずシンジが相対する事になる。
精神世界ではレリエルからの精神攻撃からの対話の内容を選択する形で相手のA.T.を削っていく(隠しステータスとなっており、こちらからは確認できない)事で撃破を行うという特殊な戦闘形式になる。
レイやカヲルの精神世界の描写は必見。
アダム及びリリスの真意にかなり近づいた内容になっており、特にカヲルは数少ない心理描写な上、レリエルの撃破がクリア条件の一つになっている。
なお、倒すと必ず次回の庵野AIが心理モードになるためシリアスモードの暗殺を避けるために襲来させるのも有効。

新世紀エヴァンゲリオン(NINTENDO64)

本編には未登場だが、射撃訓練のミニゲームに的として登場。
だが影の方を撃つことになる。テストとしてこれでいいんだろうか。

バトルオーケストラ

使徒の1体として参戦。
影から(恐らく自らがディラックの海内に放り込んだ)ビルを吐き出すようにして攻撃するなど、変わった攻撃方法が多い。
飛行能力常時空中におり、覚醒時には敵の足元に実体を展開し、ジャンプ・ダッシュを封じる。

エヴァンゲリオンANIMA

使徒幼生の一体として登場。
当初はエンジェルキャリアーの繭の中に隠れ続けており、弐号機II式にコピーロンギヌスによる攻撃を誘発、繭に突き刺さった槍を虚数空間に取り込み、まんまと逃げ去った。
その後はエデンにいた別のキャリアーの元で眠りについていたが、槍の奪還に現れたゼーレの0・0EVA変異体に、槍を虚数空間から引き抜く過程で引き裂かれた上、同時に虚数空間の中でゼーレを待ち構えていたシンジのスーパーエヴァンゲリオンが飛び出した結果、断末魔を上げながら死亡した。

スーパーロボット大戦シリーズ

レリエルそのものは登場していないがMXではラーゼフォンとのクロスオーバーでラーゼフォンの敵、ドーレムが代役を務めている。


余談

レリエルの能力として登場した「ディラックの海」だが、登場回の次の回である第拾七話で起きたエヴァンゲリオン4号機と第2支部の消滅事故もS2機関の試験を原因としてディラックの海にのまれた結果であるとリツコは推測している。

またここまで述べてきたとおり、実体部分は球体真下の黒い部分であるが、インパクトに欠けるのか、使徒の紹介の際には影の側が用いられる事が多い。

後に公開された新劇場版の完結編であるシン・エヴァンゲリオン劇場版:||では「マイナス宇宙」と呼ばれる概念が登場するが、元になっているのはディラックの海である可能性もある。





追記・修正はディラックの海からお願いいたします。
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最終更新:2021年04月23日 14:00

*1 作中でのリツコの発言より。

*2 動いているように見える、着色されていないのに色がある様に見える、描かれていないはずの図形が見えるなどの特殊な視覚効果を与える絵のこと。

*3 引きずり込まれたシンジはエントリープラグ内の状態しか描かれていないため、外界は映っていない。

*4 リツコは「実体側の虚数回路が閉じると消えてしまう」と考えている。

*5 ただし、これはイレギュラーな使われ方だったため、本当にその用途で使えるものなのかは不明。