新世紀エヴァンゲリオン(漫画)

登録日:2011/09/02(金) 17:30:56
更新日:2024/02/09 Fri 20:52:15
所要時間:約 7 分で読めます





新世紀エヴァンゲリオン』は、1994年から2013年まで主に「少年エース」で連載されていた、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の漫画版。通称「貞本エヴァ」。全14巻。

概要

本作のことを「原作の漫画」だと思っている者も少なくないが、アニメと漫画はいわゆるメディアミックスで展開された作品であり、別に本作が原作というわけではない。

作者はアニメ版のキャラデザを担当した本家本元・貞本義行。
数あるエヴァの派生作品・外伝作品の中でも特に敷居が低く、内容はアニメ版「新世紀エヴァンゲリオン」をベースに細部が微妙に変わっている程度であるため、殆どの人が違和感なく読めると思われる。

単行本3巻目くらいから次第に物語の進行や単行本の刊行ペースがどんどん遅くなって行き(これは主に作者の貞本義行が新劇場版や他のキャラクターデザインなどの仕事が多忙だったため)、前々から「なかなか単行本の続きが出ない」「本当に終わるのか」と散々ネタにされていた。

が、鈍足ながらもストーリーは連載17年目にしてようやくアニメ版のクライマックスに相当する旧劇場版の所に差し掛かり、2013年6月、遂に完結。約18年間にも及ぶ長期連載であった。
本作の最終回の掲載号はあまりにも爆発的に売れて品切れが続出してしまい、改めて再掲載されるという、漫画雑誌としては異例の事態が発生するほどとなった。

繰り返すが、この作品はあくまでアニメ版及び旧劇場版をコミカライズしたもので原作はあくまでアニメ版であり、ストーリーもアニメに準拠している。
が、作者の貞本義行の意向により、登場人物の性格や設定などが少し違う。


登場人物

かなり多いため、アニメ版との差異が目立つ主要人物のみを記す。

碇シンジ

徹底してナイーブだったアニメとは違い、やや子供っぽく、むしろ年相応な性格になっているため普通の少年という印象を受ける。
「逃げちゃダメだ」とは言わない一方、時に皮肉やジョークを言ったりもしており、トウジから「根性ババ色」なんて言われたことも。
特に、カヲルに言った「前歯全部折ってやる!」とか、アニメの彼なら絶対に言いそうにない。
幼少時に預けられていた人が“先生”から親戚(の兄一家)に変わっている。

綾波レイ

性格、設定はアニメと殆ど変わらないが、シンジとの交流を通じて徐々に心境に変化が生まれていく様子がより明確に描かれている。
ゼルエル戦の流れにおいて「碇くんを私に返して」と言い出したり、シンジに心配されるアスカに嫉妬したりと、シンジに対する想いは結構なレベル。
アスカからは完全にシンジと付き合っていると思われている。
壱話で助け起こされた時からシンジと触れ合う度に自身の変化を感じていることを自覚しており、アルミサエル戦前にはシンジに告げている。
しかし、アニメ版の伍話に相当する、シンジに押し倒された場面については、「ちょっと気持ち悪かった」と振り返っている。
真顔で妙なことを言い出すボケも意外と多く、ある意味で人間臭いキャラクターになっている。

惣流・アスカ・ラングレー

TV放映が終わってから登場。
こちらも性格はさほどアニメと変わらないが、猫かぶりな一面が強調されている。
また運動能力が非常に高く、ゲーセンで大暴れしてモブから「サーカスから来たのかこの女」と言われている。
ユニゾン特訓中に天井に仕掛けられた監視カメラを蹴り壊したのには当時の読者コーナーでツッコミが入った。
イスラフェル戦後にケンカせず落ち着いてシンジを評価したり、自分から同居を希望したり、レイとの仲を冷やかしたりと
シンジに対して恋愛感情を抱くような素振りはほぼ見せず、最後まで好きな相手は加持さん
本作では父親が存在せず、精子提供で人工的に生まれたという設定になっている。

ガギエルは彼女が単独で撃破した。……のだが、それゆえに作中では端的に語られるのみとなってしまった。
そのかわり、アニメ版の九話に相当する回はより丁寧に描写されている。

鈴原トウジ

三枚目キャラとして目立つ機会が多く、シンジによくいじられる。
髪の色は黒ではなくトーン。
シンジと出会った経緯はアニメと同様だが、優しい一面が強調されている。
本作ではエヴァパイロットに選ばれたことをシンジに直接打ち明けており、その恐怖をシンジに吐露するなど友人としての関係が強調して描かれている。
(このため、漫画版では参号機にはトウジが乗っていることをシンジは知っている)

そしてバルディエル戦では…

渚カヲル

アニメではミステリアスで中性的な雰囲気だったが、無垢な少年のような性格に変更。*1もはや別人。
当初は人間の感情や距離感があまり理解できず、場をわきまえない振る舞いを無自覚に繰り返し、時にはそれが残酷に見えることも。そのため、シンジの彼に対する態度もアニメとはかなり違う。
しかし、衝突を経てアニメとは違う意味で深い絆を結ぶ。
登場時期はゼルエル戦後。これに伴い、綾波やアスカと会話を交わすシーンが増え、彼自身がパイロットとして活躍する戦闘シーンも描かれている。
音楽と縁が深いのはアニメと同様で、街で聴いたという曲を放置されていたピアノで耳コピしている。

ちなみに、漫画版のシンジのファーストキスの相手である。

余談

差異

ストーリーはアニメに準拠していると書いたがそこに至る過程の描写がかなり違っており、
使徒の数も変わっており、サンダルフォンマトリエル(停電の回そのものはある)、イロウルレリエルは登場しない。

登場人物の心情、人間関係はかなり綿密に描かれており、そのためアニメより好きという人も。

日常描写も変わっており、アスカとシンジが「ガッテンしていただけましたでしょーか」と司会の老人(年老いた立川志の輔師匠?)が語るどう考えてもNHKの某番組なあれ(アスカ曰く「ジジくさい」)を見ているシーンがあったりする*2
つまりNHKないしその後継組織はセカンドインパクトの後も15年間ガッテンし続けていたのか、あるいはセカンドインパクト発生前の在りし日の再放送をしていたのか。これだけで想像が膨らむ一幕である。

また、語られなかった加持の過去などアニメの補完も行っている。
戦闘面も基本的にアニメ準拠だが使われなかった武装が使用されるなど変更がなされている。

特にバルディエル戦、アルミサエル戦が顕著であり、バルディエル戦でトウジは死亡し(これはアニメ版で元々考えられていた展開である)、
アルミサエル戦ではカヲルが弐号機を駆り戦闘を行い、この際ゲーム『新世紀エヴァンゲリオン2』に登場したデュアルソーを使用している。

細かい変更点や描写の違いは色々あるが追加シーンもそこそこにあり、
例えばアルミサエル戦の前に綾波とシンジが噴水の所で手を繋ぐシーンは綾波が人間的に成長している事を実感出来る、漫画版だけの隠れた名シーン。

+ ネタバレ
エヴァ量産型弐号機の戦闘の中でミサトに促されたシンジがアスカを助けるという明確な意志を持って、
初号機に乗って量産型と交戦という旧劇場版とは180度逆の熱いシンジ君が見れる。
まさに。まさにシンジさん。

これに似たような展開はスーパーロボット大戦シリーズでよくあったが漫画版で見れるとは思っていた人はいなかっただろう。 

一度は量産型を殲滅したシンジ。しかし、再び復活した量産型との戦闘に突入する。
アスカを守るために孤軍奮闘するシンジであったが、その思いによって初号機とのシンクロ率が急激に上昇。

それに引き寄せられるかたちでからロンギヌスの槍が飛来し、量産型によって捕縛されてしまう。

結果、人類補完計画の依り代にされ、パシャッ。
また、旧劇場版ではなかったアスカのパシャッも描かれた。
ちなみにアスカは加持さんの幻影にパシャッされた。
リツコや一部のネルフ職員らは死後に遺体がパシャッしている描写がある。

そして…






シンジは計画が発動して全てが無駄に終わったことに絶望してしまうも、レイとの繋がりや今までの「手のひらの記憶」からギリギリで奮起。永遠の安寧に誘う父親に対して全てを肯定しながらも「本当に人が分かり合えないかを確かめる」と決断して補完を否定した。
結果補完は破綻し、量産型は全て石化して地に堕ち、初号機も石化しつつ宇宙へと昇っていき、その欠片は地上へと降り注いだ。

一転して場面は一面雪景色。そこには友達に見送られて都会の学校へ向かうシンジがいた。そう、全てはなかったことになっていた。
説明がないため分かりづらいが、正確にはサードインパクト後から長い時間をかけて再構築され、人類の歴史そのものが一からリセットされた状態になったと思われる。
その証拠として、量産型だった十字架状の石柱が「遺跡」として描かれており、シンジが物語初期に持っていたガラケーがスマホに変わっているなどの時間的隔たりも描写されている。
そして、目的の駅でかつて友人だった面々と再会するのだった*3
アスカについては単に「新しい世界でこれから異性と出会うこともある」という暗示で、特にシンジとのフラグやラブコメ的な意味はないと連載終了後のインタビューで語っている。

なお、レイは登場しないが、補完が破棄されそうになった状況にて「碇くんが還って来るのを待っている」とモノローグで語っている
また、補完計画発動前に死亡したトウジ、ミサトは出てこないが、シンジのカバンにミサトが託したネックレスと同じ形状のチャームが下げられている。













君の本心を見せてみろ


次に君がとる行動が


僕に対する君の本当の気持ちの


証だ

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最終更新:2024年02月09日 20:52

*1 これは元々想定されていた初期設定通りの性格でありアニメの達観した美少年というイメージは声優の石田彰氏のイメージを反映したため。

*2 ちなみに実際の「某番組」は現実の2015年当時も放映されており、実質的に2022年まで放映されていた

*3 貞本氏のTwitterによると、最終回にケンスケを出したのにはちゃんと意味があるらしい