リリン(新世紀エヴァンゲリオン)

登録日:2021/05/22 Sat 23:48:02
更新日:2024/04/11 Thu 23:53:36
所要時間:約 11 分で読めます









アダムより生まれし、人間にとって忌むべき存在。

それを利用してまで生き延びようとするリリン……

僕には分からないよ。



リリン(LILIN)とは『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する生命体である。

+ 目次

概要

由来は旧約聖書におけるアダムとリリスの間に生まれた悪魔で、ヘブライ語におけるリリスの複数形*1

初出では弐拾四話『最後のシ者』作中。

渚カヲルが「歌」を「リリンの生み出した文化の極み」と評し、綾波レイ(3人目)には「お互い、この星で生きていく身体はリリンの身体に行き着いた」とコメント、さらに弐号機の事を「アダムの分身そしてリリンの僕」と呼ぶ。


それらから総合すると、彼の言うリリンとは「人類」を指しているものと思われるが……。

旧劇場版』にて明かされた真実


人間は謎の生命体の一体(?)で、イレギュラーな形でこの世界に来たリリスの「偽りの継承者」。


シンジ君、私たち人間もね、

アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使徒なのよ。

他の使徒達は別の可能性だったの。人の形を捨てた人類の。

ただ、お互いを拒絶するしかなかった悲しい存在だったけどね。

つまりリリンは使徒としての呼び名




基礎データ

呼称:第18使徒
天使名:リリン*2
全高:1.8m前後(個体差あり)
体重:60kg前後(個体差あり)
象徴:なし
能力:「科学」による開発・運用、「知恵の実」由来の「心」


概要

アダムの項目に詳しいが、作中において、リリスがアダムの持つ生命の実を狙って自身の卵に当たる「黒き月」地球に衝突させる、ファーストインパクトが有史以前の大昔に発生。
アダム及びアダムが生み出した14体の使徒*3はその際の衝撃の影響で長き眠りにつき、その間に、地球に漂着したリリスが自身の体液であるL.C.Lによって地球は「生命のスープ」に満たされた結果、生命が誕生した。その生命の頂点にして知恵の実の継承する存在こそがリリンなのである。17番目に生まれたのに「18番目の使徒」であるのは秘密。

「使徒」とはいうものの、他の使徒とルーツが異なるだけあってその性質は大きく異なり、アダムより生まれし使徒はアダムの持っていた「生命の実」由来の力を持っているのに対して、リリンはリリスの持っていた「知恵の実」に由来する力を持っている。

それぞれの力を分かりやすく言いかえると前者は際限なく、無限の生命活動を行うことができる永久機関である「S2機関」、後者は人類が長年培ってきた「知性」、ひいては科学」である。


人間1人1人には他の使徒のような力はなく、A.T.フィールドも極めて弱い。対抗するために、知恵の実によって授けられた「科学」の力をもって臨むこととなり、また「科学」によって生活の快適化や効率化などのさまざまな副産物を得ている。
ゲンドウ冬月はその副産物の1つの形である「街」を「死と隣り合わせの地上を生き抜く術」「最も弱い生物がその弱さゆえに作ったパラダイス」と評している。


また他の使徒と著しく異なる点として、「意思の異なる群体」という生態を持つ点が挙げられる。

これまでの使徒は大多数が一個体の生命。仮に元から複数体存在するか、もしくは途中で複数体に分かれたとしても、目的や意思は基本的に共有されている。
個人個人の主義主張が異なり、それらが時に同調し、時に反発しながら文明を作り、発展させていったことはこの項目を見ている人たちにとっても想像に難くないだろう。
それはまさに「心」であり、これもまた知恵の実に由来している。
この知恵の実由来の「心」というものは使徒にとっても興味深い考察対象であったようで、作中では「精神攻撃」などの形で人間の精神に迫ってくる使徒も複数いた。

しかし作中で人類は「出来損ないとして行き詰った群体」とされ、そこから人類を「単体の完全な生命体」に進化させるために「人類補完計画」が進められ、その計画のゴールが、ゼーレとゲンドウのどちらの物になるかが、物語終盤のキーになっていく。


主な能力(?)

文明開拓

知恵の実に由来する力で、知性を元に文明を開拓し、地上で待つ「死」に対抗。
また「科学」の発展の産物とエヴァを用いて自分達よりはるかに強い使徒達に対抗・勝利している。


リリン≠人間?

作中描写を見る限り、リリンは人のことを指しているとみて間違いないように思われる。
しかし「リリン=(個としての)人間」かというと、完全にそうとは言い切れないような点もある。

そう推測できる根拠として、まず「リリン」は上記の通り、リリスとアダムの子たちの総称であり、特定の1人を指す名詞ではない為、「個々の人間」を指していない可能性があるという点が挙げられる。

また他にも作中でカヲルが「『リリン』と『人間』を意図的に区別している」と思われるような描写がところどころある。

まず呼称だが、カヲルは人のことすべてを「リリン」とは呼んでおらず、「人」や「人間」という言葉もそこそこの頻度で使用している。
「リリン」という聞きなれない言葉から怪しまれないようにするための措置とも考えられるが、ビデオフォーマット版で追加されたゼーレのモノリスたちとの会話でも「リリン」と「人」の呼称を混在させており、タブリスとしての正体が露見した後も上記の言葉を使っている。

さらに言うなら冒頭でのエヴァシリーズのくだりにもある通り、それを「『人間』にとって忌むべきもの」「『リリン』が生き延びるために使うもの」とわざわざ別の表現を使って評している。
生き延びるための手段は、十中八九「人類補完計画」であるが、人類補完計画は「人類を単一の生命体へ昇華させる」ので、死んでいるかどうかの観点から言えば「生き延びている」と言える。
だがその状態が「人間」と言えるかと言われると甚だ疑問である。
また個々の人間の視点からすれば肉体も精神も無数の他者と強制的に繋ぎ合わされるため、個々の生命としては「生き延びられていない」と評しても不自然ではない。
そしてエヴァシリーズ*4が人間をそのような状態にさせる要素なのであれば、「忌むべきもの」と評するのも、カヲルが「僕には分からないよ」とぼやくのも頷ける話である。

集合論的な言い方をすると、「リリン」は人類という「集合」のことを指していて、その中の個々の要素である「人間」はその中の「要素」と考えることも可能である。


旧劇における動向

アニメ版ラスト2話のリメイクに当たる旧劇を見た事のある人ならばわかるだろうが、NERV戦自からの襲撃を受けて壊滅状態になり、その後復活した弐号機によって激しく抵抗されるわけだが、見方によってはこれは「第18使徒リリンとの戦い」と見ることも可能である。


その後、人類補完計画が発動し、サード・インパクトが開始。世界中の人々はL.C.Lへと還元。
セカンド・インパクトの発生地である南極以外は青かった地球は、計画発動とともに赤く染まっていき、緑の十字架状の光が無数にでき、「リリスより生まれし者」達は「リリスに還る」こととなった。


最終的に計画の発動トリガーとなったシンジが補完を拒否し、他者のいる世界を望んだために人類補完計画は不完全に終わり、自らの「ヒトの形」をイメージできる者は元の世界に戻ることができるようになった。



漫画版

違っている点は多々あるものの大筋部分はアニメ版をなぞったストーリーであるため、基本的には扱いは同じ。ただし一部の使徒が登場しない影響で、「第13使徒」になっている。
しかし漫画版では絶望感あふれる旧劇での結末とは異なる形のラストを迎え、期間はとても長いが、確かな「救い」を感じられるものになっている。


新劇場版でのリリン

新劇場版でも「リリン」というワードは使われているが、カヲル以外でも式波・アスカ・ラングレーにて発言している箇所がある。
また発言でなければの予告において「LILIN+?」という文言でワードが出ている。
「+?」の部分だが、この直後に入るカットでは加持・ゲンドウ・ミサトリツコ ・アスカ・レイ・シンジ・カヲル、そしてマリが入ってくるが、この内加持・ミサト・リツコ以外は何らかの理由で人を超えた存在へと変貌していく、もしくは既に人の姿をした別の存在になっていることを考えると人をその領域から逸脱させる別の要素なのではないかと推測される。


新劇場版独自の要素として、カヲルが人類補完計画の執行者として、サード・インパクトの続きを推し進めようとするゲンドウの事を「リリンの王」と呼んでいる。


ちなみに『シン』にてシンジはアスカに「あんたはまだリリンもどき」と呼ばれる人類ではない別の存在になっていることが明かされている。


作中でミサトがリリスの事を「この星の生命の始まり」と評しているため、新劇場版においてもリリンはリリス由来の使徒である事が分かる。
新劇場版ではアダムにとって代わる(とされる)存在として「アダムス」が登場しており、セカンド・インパクトについても内容が変わっているため、リリンがどういった特質をもつ存在なのかはあまり語られない。

新劇場版における使徒は全部で12体で人類(リリン)は第13番目の使徒に該当する。ここは新世紀と数こそ違えど共通している設定である。


エヴァインフィニティ

『Q』『シン』で登場した生命体。
外見は頭部がなく赤い初号機といったところ。
「生命の実を与えられた存在」とのことで、人類補完計画によって人類という種から解き放たれた姿である。
ニア・サードインパクトによって人々の魂が新たな形に成った生命体。生命の実を与えられており知性も心もなくただハイカイするだけの存在。しかし触れたものをコア化侵食するという厄介極まりない性質を持っており北上ミドリの髪がピンクなのも微細なコア化による影響である。
『Q』までの赤い姿はあくまで「成り損ない」であり、『シン』にてフォースインパクトを完遂した際には地獄の門から無数の紫色のエヴァインフィニティが飛び出し津波のように世界を襲った。
更にゲンドウの仕込んだアディショナルインパクトによってリリスのようなエヴァンゲリオンイマジナリーが現れた、初号機の様だったエヴァインフィニティも白い首のないマネキンのような姿へ変わっていった。
最終的にはシンジがネオン・ジェネシスを発動してエヴァのない世界を願ったことによって身体が崩壊し人間に戻り解放された。

動向

サード・インパクト発動によって一度は全ての人類が消えた旧劇とは異なり、『』のラストにおいて、第10の使徒との戦闘時に初号機が擬似シン化第1覚醒形態に覚醒。
結果サード・インパクトが発生。この災害はカヲルがMark.06がカシウスの槍を初号機に向けて投擲したことで静止し「ニア・サードインパクト」に留まったが、そこから『Q』に至るまでの14年の間にMark.06リリスによって「サード・インパクト」が発生してしまい、大地はコア化し殆どの人類はエヴァインフィニティに成って絶滅寸前に追い込まれてしまう。

が、旧劇と異なり、少ないながらもこの災害を生き延びた者達がおり、そういった人達は、インパクトの影響でコア化した地を離れ、まだコア化されていない(もしくはコア化されたが復元された)生活可能な区域でどうにか生活をし、一部の者はWilleに参加し、次なる惨劇を回避するべく行動し、一部の者はWille傘下の組織であるKREDITにて生活支援を行っていた。


『Q』ではニアサード・インパクトのトリガーであるシンジを強く警戒し、彼の首にDSSチョーカーをセットし、覚醒に至らないように警戒していたが、紆余曲折の後にフォース・インパクトが発動してしまう。

トリガーである13号機を強制停止させたことでどうにか止めることには成功したが、フォース・インパクトは通過点に過ぎない為、生き残っている人類に向けられた脅威は消えていない為、Willeはゲンドウの遂行しようとする人類補完計画を阻止するため、新たな戦いへ身を投じる。
生き残っているリリンの「存亡」をかけて……。

『シン』では碇ゲンドウによりフォースインパクトの完遂とアディショナルインパクトが実行されてしまい、エヴァインフィニティが大量発生してしまい絶望の淵に立つも、Willeの尽力により神の与えた槍ではなくリリンの知恵と意志で『ガイウスの槍』作り出す。
それによって世界の新たな創生ネオン・ジェネシスを行い全てのエヴァンゲリオンを消し去り、世界を救った。
ではなく知恵を与えられたからこそ意志を繋ぎ勝利できたのである。


余談

エヴァの使徒の中で、特定の1人ではなく複数人をひとまとめにした総称の単語を名に持っているのはリリンのみである。

正体が正体なため、相手として立ちはだかるかどうかはともかくある意味全てのスパロボシリーズに出ている使徒と言えなくもない。

聖書におけるリリンには「新生児を襲う」などの伝説がある。
作中で繰り広げられる使徒たちとの戦闘はある意味ではアダムの子達を襲っていると考えることも可能……かもしれない。
基本的に襲ってきているのは向こうだが。





追記・修正は知恵と意志によってお願いします。

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最終更新:2024年04月11日 23:53

*1 一説には魔王サタンとの子ともされる

*2 「リリン」は天使ではないので厳密にはこの表現は正しくない。

*3 タブリス = 渚カヲルはこの時点ではまだ存在していない。

*4 厳密にはエヴァシリーズだけがそうするわけではないが。