多人数戦(TCG)

登録日:2022/03/17 Thu 23:35:00
更新日:2024/01/28 Sun 19:43:58
所要時間:約 8 分で読めます





TCGにおける多人数戦とは、一般的な1vs1対戦ではなく3人以上で対戦することである。

この項目では、現在『Magic the Gathering』、『遊戯王OCG』、『デュエル・マスターズ』、『バトルスピリッツ』の多人数戦について扱う。

【概要】

基本的に、3人や4人で互いに争いあう「無差別戦」、2人でチームを組み、2vs2で戦う「チーム戦」に分かれる。
多くのTCGでは、1vs1で戦うことを前提にカードが作成されており、多人数戦はカジュアルルールとして行われることが多い。


【分類】

◆無差別戦

全てのプレイヤーが敵になる。敵同士ではあるが、場合によっては他のプレイヤーにも利益を使うカードなどを使用し媚びを売るなど、政治的で一歩違った戦いが楽しめる。

しかし、多人数戦の理念として「下手に目立つことをすると集中狙いをされて真っ先に退場する」ということになってしまうので、確実に勝利できる状況になるまで目立たないようにするという立ち回りが推奨されて膠着状態を作りやすい。
逆に言えばこのようなヘイト管理こそが対戦の醍醐味ともいえるのだが、慣れないうちはこのヘイト管理の理念が難しい。つまり「膠着状態を打破しよう」と下手に動くと「あいつが動いてきた。他2人から殴られたくないから報復に動こう」という理由で動いてしまうというわけ。
そのため最終的には「狙われたくないので動かない」という対戦に終始しやすく、専用のルールがないと2、3回やった程度で飽きてしまう。「大乱闘スマッシュブラザーズX」のお気楽対戦などであった事例を想像すると分かりやすいだろう。

特徴として「全体に効果を及ぼすカード」が強く、「特定の1つにしか効果を及ぼさないカード」は弱いとされる。
たとえばクリーチャーをすべて破壊する《神の怒り》の場合はカード1枚で3人以上の対戦相手のクリーチャーを吹き飛ばすことができるので通常の1vs1よりも効果が大きくなる。
一方で呪文1つを打ち消して相手を妨害する《対抗呪文》の場合は、3人以上の対戦相手が使ってくる致命的な呪文のうち1つだけしか打ち消せない。
相手の邪魔をするために自分の行動を我慢していたら、別の対戦相手が勝利するきっかけを与えてしまうだけになる。
そのため通常のゲームよりも大胆に動くことが合理的な対戦理論となっており、例えばMtGの統率者戦においてコンボ環境を強力に加速させている。

◆チーム戦

2人でチームを組み、別のチームと対決する。基本的にライフは共用、デッキや手札、コストを支払うリソースについては別々という事が多い。自分や自分のフィールドを対象とする効果をチームメイトに使用できるか否かはゲームによって異なる。よく確認すべし。
チームメイトがフィールドアドバンテージで有利を取るスタンスなのに、全体除去を使用するなど、足を引っ張らないように気を付けよう。

多人数戦がカジュアルのTCGであれば、攻撃は左右のプレイヤーのみか誰でもよいか、相手を対象とする効果は相手1人を選択するのか相手全員なのか、といったことを事前に決めておかないとトラブルのもとになりかねないので要注意。

【具体例】

以下からは各TCGにおける多人数戦について記していく。

Magic the Gathering

世界初のTCGであるMtGでは、「多人数戦が実際に公式ルールとして扱われている」ことが特徴である。
「無差別戦」「大乱闘戦*1」「双頭巨人戦(チーム戦)」に加えて
  • 各プレイヤーが1人の統率者を制定し、それを自由に出せるハイランダールール「統率者戦(EDH)」
  • 1vs3で戦い、1人側は本ルール専用の「計略カード」が使用できる「アーチエネミー(魔王戦)」
などの変種ルールが存在する。
通常のカードのみでプレイできる無差別、大乱闘等は「変種ルール」。統率者や計略カードなど普段使わないカードや領域を使うものが「カジュアル変種ルール」としてルールブックに記載されている。

・多人数戦専用カード!?

公式ルール化されていることから、「多人数戦でこそ真価を発揮するカード」というのもかなり多い。
これらのカードは1vs1でも使用可能だが、他のカードより性能が劣ったり、まったく効果に意味がないバニラ同然だったりすることが多い。中には実質何もしないと同義の実質「多人数戦専用カード」もある。
また、「このクリーチャーが攻撃するとき、他のプレイヤーを同時に攻撃するコピートークンを出す(ターン終了時に追放される)」、「選ばれたクリーチャーは次の攻撃時に自分以外の相手を必ず攻撃する」「すべてのプレイヤーが何かしらの行動をして、その行動の結果で自分が利益を得る(=対戦相手が多ければ多いほど利益が増える)」といった多人数戦で役立つ能力が存在する。
さらに「統治者」という、「ターン終了時に利益をもたらすが、戦闘ダメージを受けると奪い取られる」というメカニズムも存在する。これは1VS1でも機能するが、多人数戦であれば自分が利益を得る、あるいは相手を優位から引きずり下ろすために自然と奪い合いになって対戦が活発化していくのだ。


さえずる魔女/Chittering Witch (3)(黒)
クリーチャー — 人間(Human) 邪術師(Warlock)
さえずる魔女が戦場に出たとき、あなたの対戦相手と等しい数の、黒の1/1のネズミ(Rat)・クリーチャー・トークンを生成する。
(1)(黒),クリーチャー1体を生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-2/-2の修整を受ける。
2/2
例えばこのカードの戦場に出た時の効果。1VS1であればネズミを1体しか出さないが、例えば4人対戦の多人数戦であれば、3人の対戦相手がいるため、出てくるネズミが3体に増える。
このカードもそうだが、多人数戦用セットで登場する新カードは、「多人数戦でこそ真価を発揮するカード」の宝庫といえる。


永劫機関/Aeon Engine (5)
アーティファクト
永劫機関はタップ状態で戦場に出る。
(T),永劫機関を追放する:ゲームのターン順を逆転する。(たとえば、プレイが時計回りに進行していたなら、今後は反時計回りに進行する。)
「多人数戦専用カード」の例として、例えばこのカードは「ターンの順番を逆転する」というUNOにおける「リバース」のような効果を持っているが、1vs1の場合ターンの順番は自分→相手→自分と逆転したところで全く影響を及ぼさない。
多人数戦の場合であれば「自分の次のターンに能力を起動することで*2、そのプレイヤーのターンの後に再び自分のターンが来る」という扱い方が出来る。

ちなみに大人数で戦う大乱闘戦ではこのカードを厳密に適応すると「ターンマーカー*3が一つだけ逆回転になる→そのうち2つのターンマーカーが接近する→ターンマーカーが3人以内に入ってしまい、ターンマーカーを動かせなくなってゲームが止まる」というバグがある。
そのため大乱闘戦のすべての能力は「自分の両隣にしか作用しない」となっているが、このカードだけは「全体に作用する(すべてのターンマーカーを逆回転にする)」という特殊裁定を使うことが推奨されている。


Magister of Worth / 真価の宗匠 (4)(白)(黒)
クリーチャー — 天使(Angel)
飛行
議決 ― 真価の宗匠が戦場に出たとき、あなたから始めて各プレイヤーは「恩寵」または「糾弾」のいずれかに投票する。「恩寵」がより多くの票を得た場合、各プレイヤーはそれぞれ、自分の墓地にある各クリーチャー・カードを戦場に戻す。「糾弾」がより多くの票を得た、あるいは票が同数だった場合、真価の宗匠以外のすべてのクリーチャーを破壊する。
4/4

Expropriate / 召し上げ (7)(青)(青)
ソーサリー
動議 ― あなたから始めて各プレイヤーは「時」または「金」のいずれかに投票する。「時」1票につき、このターンに続いて追加の1ターンを行う。「金」1票につき、その票に投票したプレイヤーがオーナーであるパーマネント1つを選ぶ、それのコントロールを得る。召し上げを追放する。
投票というシステムを用いたカードも存在する。カードに書かれた選択肢の中からターン順に従って投票を行うというもので、選挙の提案者が損をすることがないようにデザインされている。
通常の選挙と違ってターンが遠いプレイヤーは事前に他者の投票の内容を知ってから票を入れることができる他、「自分と違う選択に票を投じたらダメージ」「自分だけ追加で票を得る」「自分が票をすべて掌握する不正選挙を行う」という不正選挙推奨カードも存在する。
つまり文字通り政治的な駆け引きを積極的に行わせるためのカード。

議決は二択の多数決、動議は一票ごとに何かの効果をもたらすというもの。
議決は多人数戦では使用者に不本意な結果をもたらすことが多く、その一方で使用者以外からは「死票」が生ずることが疎まれる。さらに1VS1では「最多または同数」の選択肢を常に使うことができ、特に《議会の採決》《強制の門》はレガシー環境を不本意な形で荒らした。

これを再調整したのが動議。これは「使用者に利益、または自分に不利益をもたらす選択を迫られる」というもので、「死票」が存在しないこともありカジュアル人気も高い。
特に使用者に利益をもたらすタイプの動議カードは対戦相手が多ければ多いほどに効果が上がる。例示した《召し上げ》は多人数戦ではそれはもう凶悪なカードとなる。
一方で対戦相手が1人しかいない通常の2人対戦ではわざわざ使うだけの価値がないとされ、議決の問題点をスマートに解消することに成功した。


Pramikon, Sky Rampart / 天空塁壁、プラミコン (青)(赤)(白)
伝説のクリーチャー — 壁(Wall)
飛行、防衛
天空塁壁、プラミコンが戦場に出るに際し、「左」か「右」のいずれかを選ぶ。
各プレイヤーはそれぞれ、その選ばれた方向にいる一番近い対戦相手と、その対戦相手がコントロールしているプレインズウォーカーしか攻撃できない。
1/5
変わり種として、「席順を参照するカード」というのも存在する。使用者が右か左を選択し、全員がその方向に何かを行う(このカードの場合は攻撃制限だが、他にもクリーチャーを渡すカードなども存在する)というもの。
例えば上記のプラミコンは、通常の1vs1の場合は右にいるプレイヤーも左にいるプレイヤーも同じ対戦相手ということになるため、単にマナ効率の悪いカードにすぎない。このカードの場合は攻撃制限能力がまったく機能しないということになる。
席順は基本的に問題にならないが、プラミコンのような席順に大きく関係するカードの登場によってトラブルが予想されたために「席を決めるタイミング」が明文化された。


統率の塔/Command Tower
土地
(T):あなたの統率者の固有色のいずれか1色の色のマナ1点を加える。

このカードのように、「統率者戦でのみ役に立つカード」、なんてものも存在する。一応レガシーとヴィンテージで使用可能なのだが、統率者なんてものが存在しないのでマナを出すことはできず、一切使い道のないカードということになる。
一方で統率者戦の場合は統率者の固有色*4なら何でも出せるので「ノーデメリットかつアンタップインの万能地形」といった感じ*5であり、色事故のリスクを大きく軽減してくれる。


Criminal Past / 犯罪者 (2)(黒)
伝説のエンチャント — 背景(Background)
あなたがオーナーである、統率者であるすべてのクリーチャーは威迫と「このクリーチャーは+X/+0の修整を受ける。Xは、あなたの墓地にあるクリーチャー・カードの枚数に等しい。」を持つ。(威迫を持つクリーチャーは、2体以上のクリーチャーにしかブロックされない。)

「統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い」では、このような「統率者の出自(背景)を示すカード」も登場した。全30種(うち1種は特殊なクリーチャーなので実際は29種)。
TRPGの経験者なら、自分の作ったキャラクターに設定を持たせたことがあるだろう。あれをMTGに落とし込んだもの。
それ以前に登場した「共闘」(共闘持ち2体を統率者に指定できる)の亜種で、「背景選択」という能力を持つ伝説のクリーチャーを統率者に指定した場合、追加で統率者として使用できる。

たとえばパン屋のおばちゃんのカード(《世話焼き、エリン・ハーブリーズ》)に、「実は彼女は《犯罪者》である」「《巨人育ち》なので本気を出すと大変力持ち」「《情熱的な考古学者》としての一面もある」なんて設定を付与するという、平たく言えば「共闘」の変形である。
もちろん背景選択を持たない統率者でも同時に統率者にできないだけで影響を及ぼすため、たとえば単なるかわいい犬や猫のカードが《民衆英雄》や《料理長》なんてこともある。
背景を山積みにすると「《貴族生まれ》にして《街路の浮浪児》になったが《異邦人》として迎えられた先で《人気の芸人》となり《民衆英雄》としてたたえられた《酒場流喧嘩殺法》を操る《ダンジョン探検家》、○○」 という、お前はメアリー・スーかよというレベルの統率者を作ることもできる。
ガチガチなEDH卓では「統率者にしか影響しないくせに重い」という点からあまり人気がないようだが、カジュアルでは「メアリー・スーと化した○○」のような素朴な遊び方ができるので人気がある。
当然だが通常の2人対戦など、「統率者」なんて概念のないルールではこれらのカードはまったく意味を持たない。

・投了は非推奨

多人数戦、特に統率者戦は「投了を非推奨にする(厳密に禁止するとは言ってない)」という理念がある。
たとえばあなたが「1人を即死させる」ギミックを1回だけ使うことができる時、
  • 最も勝ちに近いAさん
  • それなりの優位を築いているBさん
  • この2人と自分がにらみ合っているおかげでなんとか生きているCさん
がいたとする。
この時Aさんを倒してもまだまだ勝負は続くため、息切れしたこちらを残りの2人が結託して倒しに来るかもしれないし、逆にあなたがCさんと結託してBさんをやっつけるというシナリオも考えられる。
しかしもしAさんかBさんが投了という形で対戦を抜けてしまうと、このギミックで残った方を倒して、あとはCさんをじっくり料理すれば勝ててしまう。
つまり対戦相手1人が突然抜けるだけで拳のおろしどころが決まってしまい、多人数戦が一気に陳腐化してしまうのである*6

だが逆に投了が非推奨であるというルールを悪用して《森林の始源体》のようなカードで優位を築くための餌として生かし続けるということが多くのトラブルを生んだこともあったため、この辺はプレイヤーによって議論の種になりやすい。
上述の例で言えば
  • 「対戦相手の『対象を取るカード』の追加効果(キャントリップなど)を立ち消えさせて目論見を崩す」
  • 「Aさんに勝ってほしくないので、投了することによってAさんの勝利を妨害する」
  • 「投了することで自分の展開しているパーマネントの数を減らし、それを参照している対戦相手を弱体化させる」
  • 「対戦相手がコントロールする『敗北によって誘発する能力』をトスするために投了する」
というテクニックにもつながってくる。
この辺はコミュニティ次第というところがあるので、事前にちゃんと確認しておくこと。
確認せずにいきなり投了すると絶対に揉める。なんなら確認しても「そんなのありかよ」と揉めることすらある。

・多人数戦の影響

多人数戦のデータが十分に取れた時期以降のカードは、基本的に「膠着状態をカードの効果で無理やり打破させつつ、使用した人間が集中狙いされないようにする」という理念からデザインされている。
各人の間での駆け引きが求められる多人数戦では、ゲームの盤面とは関係のない「特定の個人を意識した行動」あるいは「ゲームの外での人間関係を意識した行動」、いわゆる対人メタによるトラブルが少なからず存在するため、多人数戦向けのカードはこうしたトラブルを避ける配慮が為されている。

また、《集い》《リスティックの研究》《混沌の掌握》《世界薙ぎの剣》のように、本来2人対戦用にデザインされたカードが多人数戦の流行によって評価を高めるということもある。
対戦相手に依存するカード、たとえば《知識の搾取》《法務官の掌握》は、スタンダードではカスレアとして去ったが、統率者戦では「強そうな対戦相手」「色の合う対戦相手」を狙えばいいのでむちろガチカードの1枚として重宝されている。
さらに特殊な打ち消し呪文《秘儀の否定》は「多人数戦ではアド損を相対的に回避できる」とする評価から需要が高まっているなど、多人数戦の中で研究が進んだことから再評価されるカードも増えてきている。

しかしその逆に「肝心の多人数戦では大したことがなく、1vs1でこそ真価を発揮するカード」が時折登場して環境を極めて不本意・不愉快な形で荒らしていくことも多かった。
特にまだ多人数戦用のデータが十分に集まっていなかった時期に初出のカードはその傾向が強く、《真の名の宿敵》(レガシー)や《議会の採決》(レガシー)、《老いざる苦行者、アローロ》(1vs1統率者戦)は公式でもたびたび失敗デザインとして挙げられている。
メカニズムでは「統治者」「イニシアチブ」あたりは2人対戦において大変強く、レガシーはおろかヴィンテージでも定番枠という強さである。

・多人数戦=統率者戦?

ここ最近では多人数戦といえば間違いなく「統率者戦」、カジュアルMTGという言葉もほぼ「統率者戦」のことを指し、様々なショップや考察ブログ、まとめブログが記事を書いている*7

とはいえ前述の通り統率者戦以外にも多人数戦は存在し、例えばチームメイトを作って戦う2vs2の「双頭巨人戦」というものも存在する。
ライフやターンをチームメイトと共有して戦うというルールであり、2vs2に合わせて共用ライフが多めに取られる他《神の怒り》のようなリセットカードはチームメイトを巻き込んでしまうので使いづらい。
専用のセット「バトルボンド」も存在しており、バトルボンド初出の能力にはほかのプレイヤー(≒チームメイト)と協力して唱えられる呪文「助力」や、自分やチームメイトのライブラリーから特定の名称のカードをサーチする「~との共闘」なども登場した。
スタンダードでも「ゲートウォッチの誓い」に登場した能力「怒涛」はチームメイトが唱えた呪文を参照することで、本来のコストより軽量で唱えることができる。
一時期は公式イベントのプロツアーで双頭巨人戦が行われたこともあるが、現在はショップ系のカジュアルイベントでも行われることは稀。

・多人数戦の功罪

MtGの本国であるアメリカなどでは、統率者戦の人気が非常に高く、スタンダード用のエキスパンションと同時発売の統率者デッキだとか、他作品とコラボの統率者デッキだとかが1年に10個以上のペースでバカスカ出ており、新規カードに注目が集まる他、「品薄カードの再録機会」「ストーリーでの登場人物のカード化機会」としても用いられているという、現在のWotC社の売り上げを支える重要な柱となっている。
統率者戦は普通の1vs1の対戦ではまず使われないようなカードに強い需要をもたらすため、「統率者戦需要」という名目での値上がりを起こしやすい。パワー9の面汚しと言われていた《Timetwister》は、統率者戦では使用OKな事から需要が高く、現在ではパワー9の中でも高額カードの仲間入りを果たしている。

その一方でやはり「2人対戦の環境に影響を及ぼす統率者戦用カード」も相当増えており、「多人数戦なんて興味ないのに巻き添えを受けている」「大型エキスパンション×4というスタンダードのローテーションに加えて特殊セットでの新録カードがたくさんあり、警戒すべきカードを覚えきれない」というプレイヤーの疲れを招いていることもまた事実。
特にパウパー*8では、統治者を得るカードとして強力だった《失墜》、実装されて間もなく4枚の禁止カードを出す「イニシアチブ」などが環境を不本意な形で荒らし、これらのカードが禁止に指定されたほどだった。
さらに失墜及びイニシアチブは、パウパーのみならずレガシーやヴィンテージで活躍しており、特に「白単イニシアチブ」は定番デッキとして活躍している。つまりパウパーではオーバーパワーだったのだ。
レガシーでも最近は、多人数戦用のセットに収録されたカードを軸に据えた・山積みにしたデッキなどが登場している。


統率者戦が多人数戦の代名詞となっていること、及びそもそも「勝利ではなく楽しむこと」を主眼に置いたカジュアルなルールであることから、派生したフォーマットもやたらと多い。スタンダードの範囲のカードを使える「ブロール」やコモンだけで戦う「コモン統率者」、プレインズウォーカーとインスタントかソーサリーを1枚ずつ選んで統率者にする「オースブレイカー」、統率者や採用できるカードに制限をかけた「タイニーリーダーズ」「ヒュージリーダーズ」「パウパー統率者」「神河ブロックパウパータイニーリーダーズ」……などなどメジャーどころだけでも挙げていけば本当にキリがないくらいたくさんある。

カードも増えれば遊び方の幅が増えるし、プレイヤーもなんだかんだで「このカード使ってやりてぇんだよなぁ」という気持ちが強い。
たとえ《ヴェンディリオン三人衆》《厚かましい借り手》の完全下位互換だと分かっていても、やっぱり少年時代の思い出《リシャーダの飛行船》の方を使いたい。
あるいは通常の2人対戦では絶対に使い道のない《森林地帯のドルイド》やら《世界混ぜ》やらのようなカードを使って悦に入りたい。
なんならいっそ競技のことなんて忘れて、《クローンの軍勢》《ウラモグの種父》のような派手さ全振りのクソカードを山積みにして遊びたい。
そんな気持ちをかなえてくれる夢のフォーマットが、この統率者戦。今後もMTGの遊び方の柱の一つとして、様々なルールが制定されていくことだろう。さらにそのような遊び方がうまく人口に膾炙すれば、ショップとしても不良在庫が宝の山になって万々歳だ。

このようにTCGの元祖でありながら、現行のTCGでは非常に珍しく「多人数戦の方が重要視されている」というのが、ここ最近のMTGの非常に大きな特徴である。そりゃ同じようなカードプールでも高額化と高齢化で先細りが確実なエターナルより、統率者戦の方がプレイヤー人口も多いし新参の獲得も狙えるし絵違い商法需要も高いしね……

・オンライン上では

ちなみに、デジタルゲームにおいてはMO(マジック・オンライン)では統率者戦などが行えるが、今のところMTGアリーナでは多人数戦はサポートされていない*9。今後サポートされる可能性はなくはないため、気長に待とう。


遊戯王OCG

いわゆるチーム戦にあたる「タッグデュエル」がマンガやアニメなどに存在する
アニメではタッグデュエルを通じてキャラクターの仲直りなど、ストーリーの進行にタッグデュエルを使用する場合がある。
恋愛シミュレーションゲーム遊☆戯☆王タッグフォースシリーズは、このタッグデュエルをウリとしていた。

またアニメにおいてはタッグデュエルだけでなく、一対多、多対多のデュエルもあり、特に遊戯王ARC-Vでは数多く見られた。
原作漫画においても、バトルシティ編では「遊戯・海馬vs光の仮面・闇の仮面」や、準決勝前の対戦相手を決めるためのバトルロイヤルといった形で多人数戦が登場している。
ただし、OCG公式として統一されたルール規定がほとんどないので、そのデュエル毎に異なるルールで行われることが多かった。

逆に遊戯王VRAINSでは一対多が数回あった程度でタッグデュエルやバトルロイヤルが行われることがなかった。
これは前作までと異なり、カードの位置が重要となり、かつ相手と共有するエクストラモンスターゾーンの存在から、
フィールドを共有しないタイプのデュエルが困難になったことも理由と思われる。

OCGでも2012年にルールが制定され、公認大会も開催されたが、新マスタールール制定に伴いルールが撤廃されている
よって、現在はローカルルールであり、実際に行う場合はどのようなルールで行うか個々で相談して決めることになる。

かつて公式で規定されていたタッグデュエルのルールでは2対2のチーム戦になり、ライフとフィールドと墓地や除外ゾーン共有の状態で、チームメンバーのターンが交互に回る形となる。
そのため、3ターン目以降のプレイヤーは、相方が用意した墓地のカードを最初から利用できる。チームで組む際はある程度シナジーのあるデッキ同士の方が回転を上げられる。
その場合、2人合わせて初期手札+ドローだけで都合12枚分あることになり、豊富なリソースを使えてしまうため、4人目のターンが回らずにデュエル終了ということもザラであった。

一方、特定のカテゴリや属性・種族などで制限のかかるカードや、デメリットを伴うカードを使った場合、相方がそれを前提に同じデッキを使っていない場合は、その動きを阻害してしまうことも。
野良で持ち寄ったデッキ同士で組んだ場合はこうした事故が起こることもあり、味方同士で組む際の相性の良し悪しも発生する。

一応、一対多での形式ではかつてボスデュエルというものがあったが、
これは1人側のプレイヤーは初期手札およびドローするカード順が固定、そもそもOCGのカードプールですらないごっこ遊び要素の強いもので、
通常のデュエルとは違いが大きすぎるものだった。

また、「遊戯王クロスデュエル」という4人対戦が売りのスマートフォンアプリが2022年に配信。さらに4人で強力なボスに挑む「レイドデュエル」など、新感覚のプレイが楽しめたが、残念ながら2023年9月にサービスを終了してしまった。


デュエル・マスターズ

デュエマにおいてはかつて公式から多人数戦での遊び方が提示されており、
  • プレイヤーへの攻撃は両隣限定
  • 両隣でないプレイヤーを呪文や効果の対象に出来る
  • 対戦相手を1人倒すたびに、ボーナスと強いて山札の1番上をシールドに加えられる
といったルールが提示されていた。

しかし、既に公式サイトからもページが消滅しており、有志のコミュニティがMTGの統率者戦を意識したルールで遊んでいる程度だった……
が、近年、公式から「デュエパーティー」というカジュアルフォーマットが制定された。

主なルールとして
  • コスト5以上のクリーチャー1枚を「パートナー」に設定し、コストを支払うことで専用のゾーンからプレイできる
  • エクストラウィンや追加ターンは無効、自身の同名クリーチャーは1ターンに1度しかバトルゾーンに出せない
  • デッキは60枚ハイランダーで、使用可能カードはオリジナル準拠、パートナーの文明を含むカードのみ使用可能
  • 初期手札、シールドは各6枚で、先攻もドローする
  • 常在型能力以外の相手全体を対象とする効果は、相手1人を指定して発揮する。
といったものが存在し、MTGの統率者戦を踏襲しつつもループやソリティアを排除し、アタックの応酬という原点への立ち返りが意識されている。

公式デッキも発売されており、新カードにはMtGの多人数専用カードを意識した「多人数戦で真価を発揮するカード」が存在する。


漫画においては不亞家に属する(オアシス)が多人数戦を得意としており、デュエルマスター候補を探すために訪れたとある島にて1人対20人の多面同時デュエルを行っている。Oを囲うように展開される100枚のシールドは圧巻の一言。ただしやっていること自体は1VS1×20のため、厳密には多人数戦ではない。
また『ケシカスくん』とのコラボ、「デュケシ・カスターズ」では2VS2での勝負が行われた。
アニメ『デュエル・マスターズVS』では3VS3戦が行われ、「マナは共有」「個別にダイレクトアタックでき、されたプレイヤーは脱落」「自軍への攻撃可能」といった特徴がある。


バトルスピリッツ

2対2で行う「タッグバトルルール」というものが2年目まで存在。
「チームライフは8個、チームリザーブは4個で開始」「ライフ・リザーブ・コアのトラッシュ・フィールドはチーム内で共用」「ネクサスは自分だけでなくパートナーのスピリットにも効果を与える。」「デッキ破壊は、両者のデッキをゼロにするまで敗北にはならない」など、ルールはある程度整備されていた。
しかし、ルールの一つとして「パートナーのデッキと同じ色のカードをデッキに入れることができない。」というものが存在し、混色化・多色化が進む中でこれが仇となって『バトルスピリッツ ブレイヴ』以降登場しなくなり、公式イベントでも行われなくなった。
今やるときは色の制限ルールは無いものとして、チーム戦で採用される使用枚数制限の共有を取り入れると良いかもしれない。

2015年には、1対複数プレイヤーで行う、ゲームでいうレイドバトルのような「異界デッキバトル」をショップバトルなどで開催。
店舗側などが担当する一人側のプレイヤーはカードをノーコスト召喚・使用できるといったルールがある。
しかし、一人側のプレイヤーは通常のバトルとは別にルールを把握する必要があるため難度が高く、結局1年で公式イベントでは開催されなくなった。


追記・修正は多人数戦で全員のプレイヤーにとどめを刺してからお願いします。

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最終更新:2024年01月28日 19:43

*1 左のプレイヤーに攻撃し、右のプレイヤーから攻撃を受けるのが特徴。エンチャント等の常在型能力も両隣にしか効果を発揮しない。

*2 MtGでは通常の場合、起動型能力は相手のターンでも使用できる。

*3 大乱闘戦ではプレイヤー数が多い事から、複数人が自分のターンを持つ事になっている。今誰がターンを持っているかを示すマーカー。

*4 その統率者自身の色のほか、起動コストの色なども含む。

*5 統率者戦では統率者の固有色と違う固有色を持つカードはデッキに入れられない。

*6 マジックオンラインでいまいち統率者戦が流行しない理由のひとつがこれだと言われている。気軽にプレイ、離席できるのはオンラインゲームであるMOの利点ではあるが、多人数戦では逆に大きな問題となる。

*7 人気はもちろんのこと、とにかく伝説のクリーチャーが1枚あれば記事を書ける上、ガチかカジュアルかという溝をすみわけによって解消する「デッキレベル」という概念がある程度のメタの読み間違いや手抜きを肯定してくれることもあり、非常に記事を書きやすいという実利的な部分も大きい。MTGは娯楽品にすぎなくとも、ブロガーやショップにとって記事は生活費を稼ぐ手段のひとつである。

*8 コモンのみでデッキを組む。

*9 1vs1統率者戦などはサポートされている。