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大平透

登録日:2022/12/03 Sat 12:59:00
更新日:2026/07/01 Wed 08:49:00
所要時間:約 11 分で読めるでごじゃる




大平(おおひら)(とおる)は、日本の俳優、声優、アナウンサー。
大平プロダクション代表、日本俳優連合副理事長も兼任していた。


プロフィール

生年月日:1929年9月24日
没年月日:2016年4月12日
出身地:東京府荏原郡蒲田町(後の東京市蒲田区、現:東京都大田区)
血液型:O型
最終所属:81プロデュース

生涯

父の仕事の関係で5歳までをインドネシアのジャワ島で過ごした後に帰国。戦時中は疎開を兼ねて四国などに移住していた。

クリスチャンだった父の勧めにより、日本ルーテル・アワー*1のオーディションを受け合格、専属アナウンサーとしてデビューする。明治大学卒業後、フリーランスとなってからは、開局して間もないニッポン放送でアナウンサーの活動と並行する形で、ディレクターやプロデューサーとしてドキュメンタリー番組を制作していた。

1955年に開局したラジオ東京テレビ(現:TBSテレビ)傘下の「TBS劇団」へ入団、フライシャー・スタジオによる短編アニメシリーズ『まんが・スーパーマン』で1人5役を生吹き替えで演じた。この『まんが・スーパーマン』は日本のテレビ放送で初めて日本語吹き替えが行われた作品でもある。翌年には実写版『スーパーマン』で主演・ジョージ・リーヴスの吹き替えを担当した。

1958年にTBS劇団が解散となり、フリーランスに転身した後、1963年に声優の管理を行う「有限会社大平プロダクション」を設立。さらに、1982年には大阪に「大平透声優ゼミナール」を開校(1999年に閉校*2)し、声優の養成にも力を注いでいた。

かつては『スーパーマン』などのシリアスな役を演じることが多かったが、この間に『恐妻天国*3』のフレッド・フリントストーン役やハクション大魔王役などギャグ作品の主役に次々と抜擢されていった。
知名度の高い作品で主要キャラクターを演じる機会に恵まれていたことについては「つくづく私はラッキーだなって思いますよ。来る仕事、来る仕事、みんな当たっちゃうんですよね(笑)。」と本人も晩年のインタビューで自負していた程である。

日本における声優業界の黎明期から活動していた人物の一人であり、彼のコミカルなキャラクターから悪役までこなす演技の幅は高く評価され、2007年には「第1回声優アワード」で功労賞を、2013年には「第7回声優アワード」で「シナジー賞(タツノコプロ50周年*4)」、「東京国際アニメフェア2013」では第9回功労賞を受賞した。

2014年に81プロデュースに移籍。

2015年頃から体調を崩しがちになり、2015年12月からは復帰訓練のため、声優活動を休養。

2016年4月12日、肺炎により死去した。86歳没。
同年6月20日には献花式が都内で行われ『笑ゥせぇるすまん』の原作者の藤子不二雄Ⓐの他、声優関係者ら500人が出席し、多くの功績を残した大平を偲んだ。

特色

低く野太い独特の声色が印象的で、ハクション大魔王や『ミッキー&フレンズ』のピートや『ザ・シンプソンズ』のホーマー・シンプソンのようなギャグキャラクターから『STAR WARSシリーズ』のダース・ヴェイダーや『マグマ大使』のゴアなどの冷酷な悪役まで幅広い役を演じた。
東映特撮『スーパー戦隊シリーズ*5』や『メタルヒーローシリーズ』5作品などナレーターも多く担当した。
『戦隊』シリーズでは温かくも威厳ある語り口で、子供達から人気を博した。

その独特な低い声が最もよく知られているが『恐妻天国』のフレッドやグズラなどはその情けないキャラクターを表現するために高い声色を使って演じている。

人物像・エピソード

身長は180cmと、昭和一桁生まれ世代としてはかなりの長身で尚且つ、がっしりとした体躯の持ち主だった。
吹き替え黎明期はスタジオも狭く、マイクも一台だけというのが普通な時代で、マイクを奪い合いながらの収録は、大柄な大平が現場にいると尚の事苦労したらしい*6
ザ・シンプソンズ』ファンクラブの関係者は、初めて彼と対面した際に「マフィアのボスみたいな人が来た…!」「『ダース・ヴェイダー』そのもののオーラがある。」と恐縮してしまったとか。

ラジオアナウンサー出身ということもあり「声優」という呼称に抵抗は持っていなかったが、その分「声優」という肩書きには人一倍強いプライドを持っており、いわゆる「芸能人声優」には批判的な姿勢を示していた。
また、かつて「声優」の地位が非常に低かった吹き替え黎明期には「差別的とも言えるほど低い報酬」「吹き替えなんて日本語が喋れればその辺のバスガイドだって出来る。」といった心無い扱いや発言を経験し、腹に据えかねる思いだったと後年語っている。

デビュー当初からプロデューサーとして活動していた経験から、演技の質に対しても厳しい目を向けることがあった。
ある中堅の役者が手抜きの芝居をしたと判断すれば「お前さっき手を抜いただろ!」と叱っていた他「俺は喪黒福造の調子でしか喋れないんだ!」「お前ら脇を固める奴らがフルスイングしてくれなきゃ良い番組にならないだろう!」と共演者に発破をかけることもあったという。
とある共演の役者が昼食時に飲酒していた時には、本人を直接注意せずに番組プロデューサーへ「昼間から仕事せずに酒を飲むような奴とは仕事をしたくない。」「そいつか俺のどちらか下ろすよう決めてくれ。」と頼んでいた。
「声優」という職業に誇りを持つ彼は、そのようないい加減に仕事をする姿勢を強く嫌っていたのである。

彼の熱意は共演者の仕事に対する姿勢だけではなく、作品そのものに向けられることも多々あった。
「私は声優であり、プロデューサーであり、演出家である」「演者も自ら演出していかないといけない」を信条としており、台本に書かれた台詞で気に入らない部分や改善の余地があると考えた箇所があれば、その都度総監督らと相談し、台詞を変更することがあった。
五月蝿く修正を求めることから、現場のスタッフ間では彼の存在をたびたび恐れられることもあったようだが「自分が出演した作品はより面白いものとしてヒットに結びついて欲しい」という思いから、疎ましく思われるのを承知の上で進言していたという。
「シンプソンズ・ファンクラブ」ブログには、彼が実際に吹き替えで使用していた台本が公開されているが、細部にまで至る手書き修正の数々から、彼のホーマーや作品全体に対する敬意と思い入れの強さが窺える。

仕事に対し厳格なことから彼と面識の少ない人物からは「恐い人柄」というイメージを持たれがちであったが、実際に彼と対面したシンプソンズ・ファンクラブ関係者は彼の印象について「凄くきっちりされた方。」、「丁寧な方で、曲がったことが嫌いで、ちゃんとしていない人にはきちんと叱ることが出来る方だった。」と語っている。

同年代の大塚周夫も「アテレコをやってる人間で、こんな形でお芝居を真剣に勉強してきた連中って、80代じゃもう僕と大平透、中村正、加藤精三、大木民夫の5人しかいないんですよ。」と述べていた。

特撮版『マグマ大使』では、宇宙の帝王「ゴア」の声優として起用されたが「演技と台詞のタイミングが合わせづらい」という問題が発生し「声優だけのギャラで良いからやらせて欲しい。」と自らスーツアクターも兼任することになった。スーツを着ての演技時には大量の汗をかいており、収録の合間には自宅から連れて来た家政婦に冷却や汗拭きをして貰っていた。
顔出しでないにも拘らず『マグマ大使』ファンの子供からは「ゴアだ」と石を投げつけられることもあったとか…。

『ハクション大魔王』をはじめ、タツノコプロダクション制作のアニメ作品の多くにレギュラー出演していた。タツノコや読売広告社とは親密な関係を持っており、タツノコ作品の収録では「座長」と呼ばれていたり、ある時は「読広の社外取締役」とも言われていた。

ハクション大魔王

ハクション大魔王の好物は当初の設定では「コロッケ」とされていたものの、「今の子供が好きな物はハンバーグだろう。」と大平が指摘したことにより「ハンバーグが好き」という設定に変更されたという。

2001年に放送された『ハクション大魔王』の続編アニメ『よばれてとびでて!アクビちゃん』でも大魔王が脇役として登場するが、CSアニメ故に低予算である都合から、当初は別の報酬が安い声優をキャスティングしていた。ところが、これに対して大平は「大魔王は他の奴にはやらせん!」と待ったをかけ、新人と同ランクの報酬で出演を引き受けた。
「『スーパーマン』の声優」として有名になって以来、そのイメージが定着し過ぎて仕事にも制限がかかってしまった時期、大魔王は本人にとって「三枚目」という新たな路線を切り開いてくれた、特に思い入れの強い存在だったことも関係しているのだろう。
演じてきたキャラクターに対する彼の拘りの強さを物語る逸話の一つといえる。

喪黒福造

笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造が自身にとって一番地声に近い声だという*7
当初は喪黒の声は熊倉一雄が起用される予定であったが、総監督から大平に喪黒役のオファーが出され、喪黒の声を披露した所、原作者の藤子不二雄Ⓐも大絶賛する程で、満場一致で喪黒役に起用されることになった。
喪黒のモデルとなったのは親交が深かった大橋巨泉であるが、アニメが放送されて以降は大平に似てくる様になったと原作者が語っている。

ホーマー・シンプソン

声優とファンの距離感を重んじ、馴れ馴れしい付き合いは好んでいなかったものの、「シンプソンズ・ファンクラブ」の代表と交流を重ねていくうちに、自らファンを自宅へ招待するようにもなったという。

2007年に公開された『ザ・シンプソンズ MOVIE』では、声優に話題性を狙った有名芸能人を起用したことにより、ファンの間では反対署名などが行われるなど大きな波紋を呼んだ。結果、DVD化の際にはオリジナル声優陣で改めて吹き替えが収録されることが決まった。そこで大平は、オリジナル声優復活のために尽力してくれたファンへの恩返しとして「シンプソンズファン感謝祭」を企画、ファンを無料招待したのである。

この時に行われたサイン会は、当初は彼の負担を考慮して抽選形式が予定されていたのだが、それに対して本人は「ファンの方、全員に書く!」「それじゃ、可哀想でしょ?不公平でしょ?ある人は貰って、ある人は貰えないんじゃ、とっても可哀想です。僕は全員の方にサインをしてあげたい!!」と反対、当日の全来場者500人全員への「伝説のサイン会」が実現したのだった。
ファンを心から大切にしていた彼の堅実で義理堅い人柄がひしひしと伝わってくるようだ。
感謝祭はその後も2009年から2013年にかけて5回に渡り開催された。

主な出演作品

※「☆」はタツノコプロダクション原作作品。

アニメ

  • グズラ〈初代〉(おらぁグズラだど、世紀末伝説ワンダフルタツノコランド -円盤星人UBO-)☆
  • ホラ貝ホーラ(怪物くん〈第1作〉)
  • ハクション大魔王(オリジナル版、世紀末伝説ワンダフルタツノコランド -円盤星人UBO-、よばれてとびでて!アクビちゃん、アクビガール)☆
  • 大柿矢五郎(いなかっぺ大将)
  • カバ(カバトット)☆
  • 南部博士(科学忍者隊ガッチャマンシリーズ、世紀末伝説ワンダフルタツノコランド -円盤星人UBO-)☆
  • タマゴン(かいけつタマゴン)☆
  • ベルトサタン(ポールのミラクル大作戦)☆
  • 鬼(ヤッターマン)☆
  • 野球十兵衛(一発貫太くん)☆
  • オナベス(ルパン三世〈第2シリーズ〉
  • タコキチ(とんでも戦士ムテキング)☆
  • 権藤透(未来警察ウラシマン)☆
  • アンリ・バルタン、オルテガ、ゴードン(ルパン三世 PartⅢ
  • デカパン、ボス、クミコのパパ(おそ松くん〈第2作〉)
  • 喪黒福造〈初代〉(笑ゥせぇるすまん、さすらいくん)
  • ヘーカー(ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え
  • ガイモンONE PIECE
  • キングブル(一発必中!!デバンダー)☆

特撮

ナレーション

映画

吹き替え





追記・修正、よろしくお願いするでごじゃりまするよ~。

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最終更新:2026年07月01日 08:49

*1 1950年にアメリカ・ミズリー・シノッド・ルーテル教会が全日本ルーテル教会連合と共同で設立した、日本初のキリスト教布教を目的とした放送局。2003年に解散した。

*2 1991年には東京にも開校された。

*3 ハンナ・バーベラ・プロダクション製作のテレビアニメ『原始家族フリントストーン』のフジテレビ・TBS系放送時のタイトル。

*4 岡本茉利、森功至、小原乃梨子も同様。

*5 『秘密戦隊ゴレンジャー』から『科学戦隊ダイナマン』まで、および『恐竜戦隊ジュウレンジャー』の計8作品。

*6 納谷悟朗は当時の様子を「邪魔っけでしょうがなかった。」と冗談めかして語っているが、それに対して大平も冗談めかして「でも私が主役だったからねえ。」と笑いながら答えている。

*7 ただし、地声に近い声での演技は第1期のみであり、第2期の『湯けむり哀歌』からはハクション大魔王のような声となっている。