ピーウィーの大冒険

登録日:2023/02/02 (木) 22:30:09
更新日:2024/02/22 Thu 17:22:57
所要時間:約 17 分で読めます







The story of a rebel and his bike.


PEE-WEES
BIG ADVENTURE




概要


『ピーウィーの大冒険』(原題:Pee-wee's Big Adventure)は、1985年8月9日にアメリカで公開されたコメディ映画。
日本では劇場未公開、後にソフト化された。
鬼才ティム・バートンの、記念すべき長編デビュー作である。

当時手がけた短編作品『ヴィンセント』や『フランケンウィニー』をお蔵入りにされるなどディズニーで不遇をかこっていたバートンは、そこを去っていた。
しかし業界内で『フランケンウィニー』が口コミで評判になると、早速チャンスをつかむことになる。
彼の知り合いの女性がワーナー・ブラザースの上層部に観せたことがきっかけで、カルト人気を博していたコメディアン、ピーウィー・ハーマンことポール・ルーベンスの目に留まることに。
ピーウィーの人気が高まったのは、『Late Night with David Letterman』のレギュラー出演がきっかけで、1984年のカーネギー・ホールでのショーもすぐ売り切れになるほどだった。
さらなる飛躍を目指し主演映画の企画が立ち上がり、お眼鏡にかなったバートンも題材が気に入って気楽に仕事が出来そうと感じて二つ返事でOKした。
要はぶっちゃけ雇われ仕事だったのだが……出来上がったのはポップ、キッチュ、シュールの三拍子が揃った、どこからどう切り取ってもバートンの作品としか言いようがないものだった
「処女作にはその人の全てが表れる」と言うが、正にその通りになったわけである。

例えば冒頭の、おもちゃとギミック満載のピーウィーの家の描写。
全自動卵割り機つきの朝食ピタゴラスイッチに、窓から外を眺めてるかと思ったら魚が出てきて実は水槽だったことが分かるシークエンス。この時点でセンスを感じることができるはず。
そこから些細なことがきっかけでどんどん騒動を繰り広げていく展開は、まさにスラップスティック。
さらにストップモーションや書き割りの背景に激突などアニメ的手法が盛り込まれている辺りは、アニメ界出身のバートンらしい演出と言えるだろう。
終盤は大手スタジオでそこまでやっていいのかというくらいの不謹慎な展開が待っており、さらにメタ展開になると見せかけて絶妙に外してくる展開もある。
見た目は大人、中身は子供のピーウィーの狂気に満ちたキャラクターと、子供の無邪気かつ混沌とした心を表したかのような独特のビジュアルセンスを持つバートンの感性
それらが悪魔合体した幸福な出会いを果たした本作は、色々な意味で観る者に強烈なインパクトを与えてくるだろう。

また、本作でルーベンスは音楽にロックバンド『オインゴ・ボインゴ』のリードシンガー、ダニー・エルフマンを指名した。
バートン曰く「バンドのメンバーが他より多くて、他より変な楽器を使っていて、音楽はある意味でずっとストーリー志向で映画的に思えたんだ」
ルーベンスもバートンも『オインゴ・ボインゴ』のファンであり、エルフマンにオファーの電話をかけた。
エルフマンは曲を使いたいのかと思っていたが、バートンの依頼は映画音楽を作ってほしいというものだった。
……バンドの音楽と映画音楽。あまりにも畑違いの依頼という無茶ぶりである。
困惑したエルフマンは断ろうとしたが、マネージャーから決まったことを告げられ、今度はマネージャーを通して断ろうとするも「嫌なら自分で断ってください」と言われ、引き受ける羽目に。
しかしエルフマンはついに「やってやる!」と腹を括り、映画音楽の勉強を一から始めた*1。そしてこれが、人生最大の転機となった。
本作以降エルフマンはバートン作品に欠かせない存在となり、彼のほぼ全ての作品の音楽を担当。今では最も有名な映画音楽の作曲家の一人として知られている。
……その後の映画界にとって重要な存在を二人も発掘したルーベンス。その慧眼っぷりには驚かされるばかりである。
この出会いと初めて映画音楽に触れた経験について、バートンはこう振り返っている。

オーケストラが演奏した曲を聴くって体験は、たぶん僕がそれまでに体験したことの中でも最もエキサイティングなものの一つだったな。
ダニーに会って信じられないと同時にすごくおかしかったのは、『ピーウィーの大冒険』でやったみたいな仕事は初体験だったってことだ。
経験したことのないものがあると、それはいつも不思議なものに感じられる。
それはセックスすることに似ているんじゃないかな。
セックスは素晴らしいことだって言えるけど、初めて経験したときのそれはちょっと違うんだ。
音楽はいつだって重要なものだけど、それが一つのキャラクター、一つの明確なキャラクターみたいなものになったのは、ほんとに初めての体験だった。

ダニーはすごいよ。彼には映画音楽の経験がなかったんだから。でもそれが僕にとっては良かった。
映画に音楽をつけるプロセスを経験することになったんだからね。
彼は映画のビデオテープを持っていて、僕は彼の家へ出かけて行き、そこで彼が自分のキーボードでちょっとした曲を演奏するのを見物することができた。
僕らは完全に波長が合ってた。楽しかったよ。
彼も僕も言葉で表現できない何かがあっても、それは二人の間に存在していたし、彼はよくわかってたから、そんなこと別にどうでもよかったんだ。
ほとんど「素晴らしい。パーフェクトだ」ってな感じで、そういうときはそれだけいっそう気楽なんだよ。
僕はいつもできるだけ鋭敏になろうと努めていた。
自分にぴったりの人に出会ったらいつもと違う水準までいけるもんだよ。

引用元:ティム・バートン[映画作家が自身を語る] P76‐77

作品は製作費700万ドルという低予算ながらも、興行収入4000万ドル以上の大ヒット。
しかし、批評家からの評価は最悪と言っていいもので、その年のワースト10リストの常連となっていた。
批判の多くが「単なるイメージの羅列に過ぎない」というものだったが、バートンは……
「あきれたな、これは映画なんだぜ?ラジオ番組じゃないんだ。目に見えるものなんだからそれのどこが悪い?」
……逆ギレ開き直っていた。
さらに「第二のオーソン・ウェルズだと言われて認められた人たちを大勢知ってるけど、そういう人ほど得てして誉め言葉に潰されるものなんだ。厳しく叱りつけられるような批評をされた方がいい。批評なんてどれを信じても間違いだからね」とも発言している。

とはいえ金になる監督であると認められたのは確かなので、その後彼の元にはコメディ映画の脚本が殺到することになった。
しかし送られてきたのはどれもひどいものばかりで、丸2年吟味を続けていた。これからのキャリアに関わる重大な選択なので、そうなるのも当然と言えるだろう。
そしてようやく探し当てた脚本は、これまで読んだ中で最もまとまりがなく、典型的な物語構造の真逆を行く型破りな話だった……

あらすじ


グレーのぴちぴちスーツに赤い蝶ネクタイ、白いローファーがトレードマークのピーウィー。まるでおもちゃのような家で暮らす彼は町の人気者。
彼の一番のお気に入りは、赤い自転車。何たってこれに乗ってツール・ド・フランスで優勝する夢まで見るほどだ。
しかしある日、手品専門店やサイクルショップでの買い物の最中に自転車が盗まれてしまったからさあ大変。
1万ドルの払う気ナシの懸賞金をかけるわ、ラジオ局に掛け合うわ、さらには近所の人々を呼んで説明会を開いたりとあの手この手で自転車を探すが、その強引さで周りから引かれていく。
そんな中、ピーウィーは占い師から「アラモの地の底に自転車がある」とお告げを受ける。
……実際はハッタリだったのだが、彼はそんなことなど露知らず、はるばるアラモ砦まで大冒険を繰り広げるのであった……

登場人物


  • ピーウィー・ハーマン
演:ポール・ルーベンス/ 日本語吹替:島田敏

本作の主人公。名前の「Pee-wee」は、幼い頃ルーベンスが持っていたハーモニカのブランド名が由来。*2
その言動はまるで無邪気な子供そのもの……と言えば聞こえはいいが、いかんせんガワがオカマっぽいおっさんなので何とも言えない不気味さや狂気を醸しだしている。
さらに事あるごとに、一度聞いたら忘れられないほどけたたましく狂気に満ちた笑い声を上げてくるア゛ア゛ーッ!とかヒィハハハハーッ!とか。
ぶっちゃけ文字だけでは伝わり切らないので、機会があればぜひ一度実際に聞いてもらいたい。そのイカレっぷりが分かるので。
とはいえドティーに「僕はヤバい男だ。世をすねた一匹オオカミだ」と言うシーンもあるので、本人もある程度は自覚している模様。
一方で、劇中で4回も気絶するという、後の『スリーピー・ホロウ』のイカボッドばりの虚弱っぷりも見せつけてくる。
また、スペックという飼い犬がいる。かわいい。

そんな彼だが、何よりも大切な自転車が盗まれたことで大暴走。
警察に当たり前だが相手にされなかったピーウィーはあの手この手で協力を募るが相手にされず、インチキ占い師のお告げを信じてはるばるアラモ砦まで旅をすることに。
ちなみにこの自転車、煙幕を出したりオイルをばらまいたりなどギミック満載である。

  • ドティー
演:エリザベス・デイリー/ 日本語吹替:安達忍

サイクルショップに勤めるピーウィーのガールフレンド。
彼とドライブインシアターでデートすることが夢だが、当の本人は何故かドライブインシアターを嫌っている。
この時のピーウィーの「だが君は僕を分かってない。分かろうと思っても君には分からない。分かってはならないのだ」の台詞は、ある意味バートンの本音なのかもしれない。
自転車盗難後、店の自転車を特別価格でサービスしようとする優しさを見せたが、暴走するピーウィーには通じなかった……

  • フランシス・バクストン
演:マーク・ホルトン/ 日本語吹替:安西正弘

自身の誕生日プレゼントとして、ピーウィーの自転車を狙う近所の男。
いくら金を積まれてもなびかないと見るや本当に盗み出し、家まで押しかけてきたピーウィーに報復を受ける。
しかしその自転車が手に入るやすぐにポンコツ扱いして、共犯者のラルフにあっさり売り飛ばさせていた。
家の描写を見るに金持ちらしいが、いい年こいた大人が大きなプールに船や軍艦のおもちゃを浮かべてはしゃいだりする姿はぶっちゃけピーウィーといい勝負である。

  • ミッキー
演:ジャド・オーメン/ 日本語吹替:朝戸鉄也

ピーウィーが初めてのヒッチハイクで捕まえた男。
正体は指名手配中の脱獄犯で、本人曰く「カっとなって“ナイフで公園のベンチに傷をつけた”」ことから捕まったらしい。
実はこの時、すぐ隣であの赤い自転車が積まれたトラックが走っていたのだが、ピーウィーはそれに気づかず、二つの車は分かれた道をそれぞれ進んでいった……
その後ミッキーを捜索している警察の通行止めに出くわすが、ピーウィーの変装術によって無事切り抜けいい仲に。
しかし夜、落石事故によって車ごと転落。車の幌がパラシュート代わりになって助かったものの、ピーウィーは車から降ろされる。
その理由は、「お前が気に入ったんだよ。俺みたいなワルに関わるな」という彼なりの気遣いからだった。

  • ラージ・マージ
演:アリス・ナン

ミッキーの次にヒッチハイクの相手になったトラック運転手のおばさん。
突然ちょうど10年前に起きた事故について語りだし、ストップモーション顔芸を披露してくる。
あまりの恐怖からピーウィーは近くのドライブインで降りると言い出すが、その際「大女(ラージ)マージからよろしくと!」と頼まれる。
バートン曰く、このシーンになると必ずと言っていいほど場内大爆笑になっていたという


  • シモーヌ
演:ダイアン・サリンジャー/ 日本語吹替:小宮和枝

ピーウィーがドライブインで出会ったウェイトレス。
財布を無くして金を払えないピーウィーに、食べた分だけ皿洗いさせることで駄賃を出した。
その後一緒に日の出を見ようと、恐竜型の展望台へとピーウィーを連れて行く。
フランスはパリに行くことに憧れていているが、付き合っているアンディーが高校時代0点だったフランス語にコンプレックスがある故に嫉妬深く、別れられないのだという。
そんな彼女に対し、「何もしないで夢はかなわないよ」と、珍しくまともなことを言うピーウィー。
その後アンディーに襲われたピーウィーは貨物列車に飛び乗り、一緒に乗っていたホーボー*3のジャックと一緒に歌っていたが、やがてうんざりして飛び降りてしまった。
奇しくも、降りた先はアラモ砦のあるサン・アントニオだった……

終盤の展開(ネタバレ注意)


ヒッチハイクしながらの長い旅の果てに、ようやくアラモ砦にたどり着いたピーウィー。
見学ツアーに参加し、最後にガイドに地下室があるか尋ねるが……それがないことを突きつけられ、周囲から笑いものになってしまう。
その後もアンディーと別れフランスに渡る決意をしたシモーヌと再会したり、電話でドティーに説明会での非礼を詫びたり、アンディーに追い回されるうちにロデオに参加したり、
暴走族に絡まれた所を『テキーラ』の曲をバックにブレークダンスを披露して仲良くなったり、
バイク事故で気絶中に、医者に扮したピエロによって自転車を手術され地獄の窯に落とされる悪夢にうなされたりしていた。

悪夢から目覚めた後、テレビでまさに探していた自転車がワーナー・ブラザースの名子役ケビン・モートンにプレゼントされることを知る。
……こうして、ピーウィーの討ち入りが始まった。
重役に紛れ込んでスタジオの潜入に成功すると、ケビン・モートンのいる撮影所を聞き出し変装。キャストたちの中に紛れ込む。
テレビでの優等生な姿とは裏腹に、実際のケビンは監督の言うことを聞かずにキャストの演技に口を出すという生意気な悪ガキで、周りからも嫌われていた。
「僕の自転車は養護施設の子供たちに……」「いけないわ。あなたが新聞配達をして買ったのよ」
「子供たちにあげたいんです。これからの僕にはこの両親がいるんです」「ラスティー、あなたは子供たちのお手本だわ」
その実態とは真逆の、シスターとのやり取り。するとシスターの一人に変装していたピーウィーは「そうよ、私も新聞配達を始めるわ!」と、自転車を強奪。
かくして、ワーナーの撮影スタジオはてんやわんやの大騒ぎとなり、撮影所はピーウィーと警備員たちとのチェイスの中、次々と破壊されていった。

ビーチでダンスを楽しむ青春映画。リア充爆発しろ
北極のクリスマスの国を描いたホリデー映画。もう初期の初期からクリスマスを破壊してくるバートンェ……
ゴジラキングギドラの戦いを描いた怪獣映画。実はこれ東宝に無断での登場。バートン自重して*4

追いかける警備員の乗り物も、ボートを強奪した後サンタのソリが引っかかり、しかもソリにはサンタとゴジラが一緒に乗っているというカオス状態に。
バ ー ト ン お 願 い だ か ら 自 重 し て
壮絶かつコミカルなチェイスの末、ピーウィーは様々な自転車のギミックに加え、『ターザン』や『大脱走』のパロディをかましながら警備員たちから逃げ切った。
にしても、自社スタジオに討ち入りを許すシナリオを通すというワーナーの自虐っぷりよ……

が、逃げた先でピーウィーはペットショップの火事を目撃する。
動物好きのピーウィーはいてもたってもいられず、店のチンパンジーと組んで、動物たちを外に逃がしていく。
嫌いな蛇だけは嫌な顔をしていたが……結局全部助けて気絶。
スタジオを荒らした件でピーウィーは御用になるが、ワーナーの社長が「君の話は素晴らしい映画になる」と映画化を持ちかけてきた。速攻で話に乗るピーウィー。

その後、ピーウィーの活躍を描いた映画がついに完成した。タイトルは『ピーウィーの大冒険』
あれほど嫌っていたドライブインシアターで、近所の人たちや旅で出会った人たちに食事を振る舞いながら映画を楽しむピーウィー。
ミッキーを乗せた護送車もこの映画のためにわざわざ駆けつけ、シモーヌはピエールという新たな彼氏を見つけていた。フランシスは自転車のサドルで吹っ飛ばしていたけど
彼の冒険物語が映画化されたということで、もはや映画スター扱いだ。
……出来上がった映画は何故かスパイものになった挙句、主役は屈強でダンディな男に。そして当のピーウィーはベルボーイというモブ役だったのだが。*5
しかしピーウィーはそんなことは気にしない。
映画のクライマックスのキスシーンで、ピーウィーは言う。「ドティー、行こうぜ」
「最後まで見ないの?」と聞くドティー。
「見る必要ないよ。あれは僕だ」

仲良く自転車に乗った二人の影がスクリーン下部に映る所で、物語は幕を下ろす。

余談


〇本作を撮影しているすぐ向かいで、かのスティーヴン・スピルバーグ製作総指揮の『グーニーズ』が撮影されていた。
初めての長編映画で悪戦苦闘している一行を尻目に、スケジュール通りに進行していたという。
というか、スケジュール通りに行かなかったのが本作だけだったらしいが。
バートンはその後、ディズニー時代の同僚ブラッド・バードの声掛けで、スピルバーグのTVシリーズ『世にも不思議なアメージング・ストーリー』に関わることに。

〇終盤の舞台である映画スタジオのある場所は、ロサンゼルス郊外の都市バーバンク。
ここはハリウッドから車で15分、各社のスタジオが軒を連ねる、いわば映画の都の屋台骨とでも言うべき場所。
ちなみにバーバンクは、バートンの出身地でもある。

〇クライマックスの討ち入りで登場したゴジラとキングギドラのシーンは、監督もスタッフも日本人が演じているこだわりっぷり。
バートンの子供時代の夢は、ゴジラの役者になること。そしてその頃から強い破壊願望もあった。
それを考えると、まさに彼の面目躍如と言えるだろう。
が、その代償は大きく、東宝の許可が必要だとは知らなかったワーナーは訴えられ、支払いに応じた。
だから言わんこっちゃないって

〇本作の翌年の1986年、ピーウィー自身が司会を務める子供番組『ピーウィーのプレイハウス』の放送が始まった。
さらに彼は司会だけでなくエグゼクティブ・プロデューサー、共同脚本、演出までやってのけている。
舞台は映画に登場した家をさらにスケールアップしたもので、しゃべる家具やパペットたちと暮らすピーウィーの元に友達が訪ねてきて遊ぶというスタイル。
以前はNetflixで配信されていたが、現在は終了した模様。
もし機会があればOPだけでも観てほしい。『セサミストリート』の真逆を行く育番組っぷりが伝わってくるので。
また、ミュージシャン兼映画監督であるロブ・ゾンビは無名時代、この番組にアシスタントとして関わっていた。

マイケル・ジャクソンの『スピード・デーモン』のPVには、マイケルがピーウィーに変身する場面がある。
しかもこのPV、前半は撮影スタジオでの追いかけっこに自転車で逃げだすシーンまであり、本作へのオマージュあふれる内容となっている。

〇続編として、『ピーウィー・ハーマンの空飛ぶサーカス』が1988年に公開された。
監督はバートンから『ジャイアント・ベビー』のランダル・クレイザーに交代。
公開当時酷評されながらも現在はカルト的人気を得ている本作とは対照的に、こちらは興行的にも批評的にも恵まれていない。
さらに日本ではVHSしかソフトが出ておらず、配信もされてないので現在視聴難易度はかなり高い。
が、何気にベニチオ・デル・トロのデビュー作であったりする。

Nostalgia Criticで紹介された麻薬撲滅のための公共CMベスト11では、彼の出演したCMが堂々の1位に選ばれた。
神妙な面持ちで麻薬の危険性について語る姿だけでもシュールだが、本作や『ピーウィーのプレイハウス』のガンギマリっぷりを知ってると、ますますシュールである。
しかもこのCMが放映された数週間後に、後述のスキャンダルを起こしたことを考えると……

〇ピーウィーの自転車は2014年、eBayのオークションにて36,600ドル(日本円で約375万円)で落札された。*6
自転車にはサイン入り写真などの証明書が付属していたとのこと。
……実際に持ってたらピーウィーに地の果てまで追いかけられそうだ

〇80年代は飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を拡大させていったピーウィー。
日本でも和光証券のCMにも出演したり、とんねるずの木梨憲武が「ノリー・ハーマン」というパロディを演じていたくらいなので、その人気ぶりがうかがえるであろう。
……ところが人気絶頂の1991年7月26日、フロリダのポルノ映画館にて自慰をしていた所を見つかり御用に
2002年11月にも、児童ポルノを所持していた罪で再び御用になっている
よりにもよって、性の生々しさから一番遠い、子供っぽさを売りにしたキャラクターでこれはあまりにも痛すぎるスキャンダル。こうして彼は表舞台から姿を消していった……
それでもバートンは、自分を見出してくれた彼に恩義を感じていたのだろう。
バットマン リターンズ』ではペンギンの実の父親役*7*8、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』ではロック役で出演している。
さらにピーウィーの存在はその後のエンターテイメントにも間違いなく大きな影響を与えており、例えば『スポンジボブ』のキャラクターは、彼をモデルの一つとして作られた。
2016年には、Netflixにて配信された『ピーウィーのビッグ・ホリデー』で映画界にカムバックを果たす。
本作公開から30年以上が経ち、この当時で64歳になっていた彼であるが、驚いたことに全くと言っていいほど老けてない
しかし2023年7月30日、6年に及ぶ闘病生活の末、癌により逝去したことが報じられた。享年70歳。
たとえスキャンダルのことがあったにしても、多くの人々に笑いを届けたその功績は本物なのである。


追記・修正は、盗まれた自転車を取り戻してからお願いします。


参考文献
ティム・バートン―期待の映像作家シリーズ (キネ旬ムック―フィルムメーカーズ)
ティム・バートン[映画作家が自身を語る](フィルムアート社)
ティム・バートンのポートレイト(Television Networks.Biography:Tim Burton, Trick or Treat. New York: A & W Home Video, 2001. )
ボクらを作った映画たちシーズン3 第7話(Netflix)
ピーウィー・ハーマンのおかしな世界【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.35】
『ゴジラ』より怖い、その著作権

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最終更新:2024年02月22日 17:22

*1 インタビューで彼はバーナード・ハーマンやニーノ・ロータから多くの影響を受けたと語っている。実際自転車盗難が発覚したシーンのBGMは明らかにハーマンの『サイコ』を意識している

*2 ちなみにヤマハの子供向けバイク「PW」はピーウィーと読む

*3 いわゆる渡り鳥労働者でホームレスだが、アメリカの自由なフロンティアスピリットの象徴でもある

*4 ちなみに冒頭の家のシーンにも、ゴジラのフィギュアが登場している

*5 しかもBGMまで『007シリーズ』に似せている

*6 出典:https://www.news4jax.com/entertainment/2014/03/09/pee-wees-bike-sells-for-big-bucks/

*7 ちなみに母親役は本作のシモーヌ役のダイアン・サリンジャーである

*8 ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』でもルーベンスは、ペンギンの父親役を演じている