登録日:2023/04/05 Wed 06:37:51
更新日:2025/03/25 Tue 18:43:53
所要時間:約 9 分で読めます
ここは幸運なお客様だけが辿り着ける駄菓子屋でござんす
『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』とは、偕成社から刊行されている児童小説のシリーズ。
著者は廣島玲子で、挿絵はjyajyaが担当。
【概要】
『
かいけつゾロリ』『
ズッコケ三人組』などに代表される小学生御用達の児童文学シリーズ。
謎の女性、紅子が女将を務める客の望みを叶える駄菓子屋「
銭天堂」を舞台に、訪れた客の行く末を見届ける。
作者の廣島がjyajyaの作品からインスピレーションを刺激され、昭和レトロな空間に佇む駄菓子屋や巨体の女将が不思議な商品を売るというアイデアが思いつき、短編の一つが偕成社のアンソロジーシリーズ『迷宮ヶ丘三丁目消失
ゲーム』に『不思議駄菓子屋』として掲載。
本作の刊行が決まるとjyajyaに挿絵担当を依頼し本作が誕生した。
小学生の間で少しずつ口コミ人気が広がり、
小学生が選ぶ子供の本総選挙では2018年第1回9位→2021年第2回4位→2022年第3回1位と順位を上げ続けてトップに。
アニメ化も重なって児童書としては異例の400万部を突破。
【メディア展開】
アニメ版
アニメーション制作は
東映アニメーションで、第一期はCG作品で、カナバングラフィックスにが共同製作に参加していた。
2022年4月からは第2期が開始。第1期と異なり通常のアニメーションとなり、共同製作先はカナバングラフィックスからぎゃろっぷに変更されている。
その他
- 2022年には西武ゆうえんちにて開催された「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂ザ・リアル」のイベントが開催されたほか、本編に登場した駄菓子もガシャポンにて商品化されている。
- 2023年には舞台化&Nintendo Switchでゲーム化。
- 2024年には東宝配給で実写映画版が公開。監督は『リング』『L change the WorLd』などで有名な中田秀夫、脚本は多数のアニメ脚本を手がける吉田玲子がそれぞれ担当する。その他、韓国で実写ドラマ化が決定している。
【作風】
各回の主人公であるゲストキャラクターが己の望みを不思議な商品で叶えてその末路を描く、
『
ドラえもん』や『
笑ゥせぇるすまん』系譜の短編集。
現代社会を舞台としながらも、紅子やよどみ、銭天堂や常闇横丁は通常の法則から外れた存在であり、ふしぎ駄菓子も常識を超えた効果を備えた
ファンタジー要素も含まれている。
小学生向けの作品ながら人間性や喜怒哀楽がシンプルかつリアルに表現され、優しさや良心といったものから、
怒り、嫉妬といった負の感情までありありと描かれる。
登場人物の
欲望は
- 好きな女の子と仲良くなりたい
- テストで楽に良い点数を取りたい
と如何にも学生らしいものから
- 育児放棄に悩む兄弟
- ゲームの世界に行きたい引きこもり青年
- 孤独で寂しいから話相手が欲しいアラフォー女性
といった多種多様なテーマが含まれ、客の年齢層は子供から高齢者まで幅広い。
駄菓子の効果に良くも悪くも翻弄される姿を描くが、困難に陥った末に覚悟や良心といった人として大切なものが試され、駄菓子はあくまで自分を見つめ直すきっかけのような描かれ方も多い。
基本的なスタンスとして善人は報われ、悪人は裁きを受ける勧善懲悪もの。
悪い事をすると自分に返ってくるという
教訓、
道徳要素が含まれ、児童文学という事もあって悪人が勝ち逃げするという展開は
よどみや怪堂のようなメイン悪役を除きゲストキャラクターに至っては非常に少ない。
大抵は紅子が何かしら忠告するもその場で語られた能力に魅入られ忘れてしまい、欲に溺れたりする事で困難が訪れるも、そこで良心を見せられるかが運命を決定づける。
自分の利益を捨ててでも他人を助けたり、最初から他人の救済を目的とする人物は
ハッピーエンドが多い。
他人を貶める、犯罪や我欲に走るなどを続けた場合は
バッドエンドに直行し、最悪の場合でも死亡する事は無いものの、
中学生で歯が全て無くなる、
封印されいつ出られるかもわからない恐怖を味わい続ける(後の話で解放されるも現実世界で1年経過して昔報道された行方不明者として保護)など一部は取り返しのつかない代償を支払う。
始めは恨みや怒りに取り憑かれていても身近に親身になってくれる人物がいたり、ギリギリで踏み止まった場合は途中で改心し、最終的に救われる者もいる。
出版前の原案では更に不幸なオチになっていた話もあるようで、児童書という配慮から担当がストッパー役として打ち合わせの段階で調整している。
【銭天堂】
お客様が住む町の横道、常闇横丁に現われるという、紅子が店主を務める昭和レトロな駄菓子屋。
女将の紅子、看板猫の墨丸、小銭から生まれた金色の招き猫たちが住み込んでいる。
店内には抽選機が置かれ、回す事で新たな客の入店が可能。
建物は2階建てで1階が店舗、2階が紅子と招き猫の居住スペース、
地下が招き猫たちの働く工房となっている。前住民は座敷わらし
幸運な
お客様(動物も可)のみがこの店に辿り着け、かなづちでも人魚の如く泳げるようになる「型ぬき人魚グミ」など、人間の望みに応じたふしぎ駄菓子を購入できる。
例外として同行者がいた場合は共に入店できるが、客当人以外は購入できない。
一度駄菓子を買った客の再来店は基本的に不可能で、話の最後に再び銭天堂を探す事も多いがまず辿りつけず、一期一会のチャンスをモノにできるかどうかという思いが込められている。
(例外として怪盗ロールパンなどの一部の菓子を使えば再入店は可能)
料金は全て小銭で支払うのが特徴で、尚且つ相手がどこかに持っている小銭を言い当てて支払いに指定。
駄菓子の効果に溺れて客が不幸になってもアフターサービスは無いが、一部の回では商品に電話番号が書いてある、よどみの妨害や客の望みを取り違えたといった不測の事態では介入する場合もある。
基本的に銭天堂で駄菓子を商いしているが、たまに出張販売として神社に出向いたり、
スーパーに幸運の
お客様だけが辿り着けるガチャガチャがおいてあったり
トランクに菓子やおもちゃを詰め売り歩いたり世話になった相手に無償でプレゼントする事も。
【ふしぎ駄菓子】
銭天堂で販売されている不思議な効果を持った駄菓子。
名前は基本語呂合わせ。
値段は1円〜500円までのワンコインかつ客の持っている小銭を指定するので、高すぎて払えないという事態は発生しない。
あくまで駄菓子屋の商品の範疇であるため、飲食物以外にも人形や玩具も含まれる。
工房長こがねを中心に、駄菓子で幸福になった客の小銭から生まれた「金色の招き猫」が新作駄菓子の開発や量産を行なっている。
店に並べる駄菓子は一度銭天堂の祝福の招き猫に奉納され、一定期間を経て店頭に並ぶ。
人間の欲望や時勢に合わせてラインナップは日々更新され、「肩こり地蔵饅頭」のように数十年経過して販売しなくなった駄菓子も存在する。
傾向としてメリットだけでなく何らかのデメリットが含まれている場合が多く、紅子が口頭で(デメリット以外の)効果を説明した後説明書を読むなどの忠告をするも、浮かれた客が自ら気付く事は少ない。
銭天堂のふしぎ駄菓子は効果があっても客本人のやる気や努力といった自発的行動が更に必要となる事も多い。
しかし、たたりめ堂の悪意の駄菓子は明らかに銭天堂より楽で強力な効果を突き詰めているが、
よどみの目的は悪意の回収であるため使ったが最後不幸な結末を迎える確率は高い。
【登場人物】
CV:池谷のぶえ
演:
天海祐希
本作のストーリーテラー。
摩訶不思議な効果をもたらす菓子を販売する駄菓子屋「銭天堂」の女将。
小銭の柄が入った和服を着用した、年齢不詳の女性。
相撲取りとも称される大柄な体型に、簪を刺したお団子ヘアーの白髪、外見は中年〜初老のおばちゃん。
劇中に登場した老人が子供の時から現在の容姿で、それどころか戦国時代から菓子を売り歩いていた事が語られている。空手の習い事をしている好きなお菓子は
ドーナツと釣り鯛焼きで釣った鯛焼き
動物と意思疎通を測れる、駄菓子の能力を他人から消滅、あるいは譲渡も可能、誰かが過去をやり直しても認識できるなど、最早人知を超えている。
スタンスとしては客の生き様を見定めるため、自分で選択した結果を重視するタイプ。
望みを叶えて幸福に終える事を願いながらも、選んだ末に
どちらに転ぶかは自分次第という精神を貫いている。
購入時に商品の注意や説明書をよく読むよう忠告する以外客に介入する事は少なく、たたりめ堂の介入で不幸になった場合はたまに救済に訪れる場合も。
人間が苦悩しながらも幸福を勝ち取った時や駄菓子の誘惑すら断ち切って第3の道を選択した時などは賞賛し、過去の客との再会を喜ぶなど人情味も感じさせる。
定期的によどみや駄菓子で不幸になった客に襲撃されるも、腕っぷしや奇策で乗り切る豪胆さを持つ。
基本的にいつも和服で通しているが、旅行先の釣り場では釣り人スタイルで登場し、純粋に魚釣りを楽しむという珍しい場面が見られた他江城秀元が銭天堂の菓子を盗んだ際警官に扮していた
CV:片山福十郎
銭天堂の看板猫。
紅子とは相棒のような関係で、金色の招き猫にも一目置かれている。
非常に頭が良く、紅子が動物の言葉を理解できるように墨丸も人間の言葉を理解し、不在時には音声を録音した人形と共に店番を任されている。
紅子によると駄菓子の感想や新しいアイデアも出してくれるとか。
よどみの銭天堂襲撃時には黒い招き猫二匹を相手に獅子奮迅の活躍を見せた。
紅子の外出時はマフラーに偽装する事もできるが、一般人にもバレそうになっている。
こがね CV:
高木渉、こはく CV:
ファイルーズあい、ちゃちゃ CV:
宮本充
こばん CV:坂本千夏、まめ&つぶ CV:木野日菜、他
銭天堂に住む金色の体をした招き猫達。
幸福に終えたお客が代金として払った小銭が変化すると彼ら金色の招き猫が誕生する。
銭天堂では主に裏方として駄菓子の製造を行っている。
CV:
榊原良子
演:上白石萌音
銭天堂のライバル店「
たたりめ堂」を営むロリババア。
しゃがれ声と小学生のような不釣り合いな容姿に、彼岸花の柄が入った浴衣を着ている。
人間の悪意や不幸虫を糧に駄菓子を精製し、紅子と同様数十年経っても容姿に変わりがなく人間ではない模様。
その昔に目を付けた客が先に銭天堂で駄菓子を買っていた事で自身の誘いを断られ恥をかいたとして恨み、長年紅子や銭天堂に対して嫌がらせを続けている。
たたりめ堂では銭天堂より楽で効果の大きい駄菓子で客を釣るが、実際には悪意を回収するのが目的なため最終的に駄菓子の効果や副作用は極端で自滅するような物が多く、客が全てを失って絶望した時に現れて悪意を回収する。
ハマーン様の声のお陰もあって普段は大きな態度を取っているが、数々の悪行を行なっているにもかかわらずいざ自分が捕まると「
今までのは冗談」「
あんたと私の仲」と言って見逃して貰おうとする姑息な性格。
作者からも直々に小物認定されている。
なお紅子に固執しているが、当の本人からは本質を見抜かれていたのか、同業者以上の興味を持たれなかった。
そして一時の投獄から解放された後も懲りずに嫌がらせを再開したが、最終的に
自分が作った駄菓子の効果で銭天堂の客に関われなくなるという、皮肉な結末を迎えてしまう。
…だか、
ものすごく怪童相手に愚痴った後「自分の商品を紅子が使った」結果のため一応プライドが守られた事もありおとなしく諦める事にし、今度は天獄園に誘われ園内に新しい店を開いている。
CV:竹中直人
「天獄園」という黒いムードの遊園地を経営している男性。
よどみが常闇横丁警察に捕まり投獄されたため、自分の代わりに銭天堂と勝負させるべくたたりめ堂の駄菓子を作る型抜き7種と引き換えに雇われた。
「呪いのダーツ」を使って紅子に体調不良やミスを引き起こす裏工作を仕掛け、客が銭天堂とたたりめ堂どちらの駄菓子を選ぶか勝負を持ちかける。
番外編の『あやし、おそろし、天獄園』ではストーリーテラーを務め、天獄園を舞台に少し年齢層を上げた物語が展開される。
CV:大和田伸也
よどみの退場後に登場した新たな
ライバルキャラクター。
自らの拠点である「六条研究所」を運営する医者。
子供たちに小銭を配って銭天堂を訪れる確率を上げ、入手したふしぎ駄菓子を元に模造品を作り上げた。
それらを本物と誤認させて子供たちに配り、紅子の評判を落とすような行動を取っている。
- よどみのお菓子貰ったのにハッピーエンドになる人って、友達か家族を大事にしてるから踏みとどまったり改心したり、そもそも明らかな陽属性で跳ね返すパターンだな。 -- 名無しさん (2023-04-05 09:34:20)
- 初めて読んだ時紅子さんがやたら怖かった印象がある。悪役的なよどみさんの方は悪意という名の目的があったけど紅子さんは一切不明で。 -- 名無しさん (2023-04-05 10:35:25)
- とうとうこの作品の項目も出来たか… -- 名無しさん (2023-04-05 18:33:48)
- 西武園の宣伝でよう見たがあれ原作あったのね。 -- 名無しさん (2023-04-05 20:15:23)
- アニメ版のゲストキャラの声優陣がめちゃくちゃ豪華でビビる -- 名無しさん (2023-04-05 22:13:54)
- 児童向けHOLICというか… -- 名無しさん (2023-04-05 22:28:39)
- 週刊ストーリーランドの謎の老婆を思い出した人も多いはず -- 名無しさん (2023-04-06 01:06:26)
- ここで項目見て見始めた気がするけど去年から見てるのでここではないか…勧善懲悪というか笑ゥせぇるすまんパターンの不思議道具系だから一生楽しめる -- 名無しさん (2023-04-06 01:14:13)
- このタイプの作品は人間の願望がある限り話作れるし、喪黒の後継者が多いのもわかる気がする。笑ゥ、謎の老婆、銭天堂、時代や世代問わず面白いもの -- 名無しさん (2023-04-06 01:49:58)
- ↑アウターゾーンも追加で -- 名無しさん (2023-04-06 02:41:52)
- コピー品作ってる研究所のことは今後追記されるのかな? -- 名無しさん (2023-04-06 06:16:09)
- かつての怪談レストランの二番煎じ的な感じだね。 -- 名無しさん (2023-04-06 08:34:11)
- 児童文学だけあって割と優しい方だよね。善人は特に怖い思いしないとかザラだし。 -- 名無しさん (2023-04-06 09:04:16)
- よどみに皺がないからか見ようによってはかなり若くも見えるな -- 名無しさん (2023-04-07 10:51:43)
- ↑紅子の間違いだった -- 名無しさん (2023-04-07 10:52:27)
- 祝・実写映画化決定! 今年12月13日公開! -- 名無しさん (2024-06-06 07:51:03)
- 紅子の正体は妖怪や女神や天使といった上位人外で、彼女自身は善悪を超えた概念を持っているんだと思う。だから、人間に対する善意や悪意は持っておらず、お菓子を売って、人間がどんな道を選ぶのか観察するのが目的だと思う。アンチは紅子を意地悪呼ばわりするけど、意地悪するのが目的じゃないのでそれは間違っている。よどみならともかく。 -- 名無しさん (2024-07-01 12:35:07)
- 笑ゥせぇるすまんとの大きな違いは、基本的に酷い目に遭うのは大人だけだった笑ゥせぇるすまんに対して、銭天堂は子供にもやり直す機会を与えず容赦無く破滅させることかな -- 名無しさん (2024-08-28 20:52:06)
- 前にアニメを見たけど、クッキングツリーを兄弟に渡してくれたお姉さんが実力ボンボンをもらった美容師のお姉さんだって知った時が印象に残ってる。あと実写は主題歌もいいよね。 -- 名無しさん (2024-12-21 13:20:42)
最終更新:2025年03月25日 18:43