ドゥラエレーデ(競走馬)

登録日:2023/07/17 Mon 21:39:48
更新日:2025/02/17 Mon 07:13:29
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ドゥラエレーデ(Dura Erede)とは日本の競走馬

目次

【データ】

誕生:2020年1月29日
父:ドゥラメンテ
母:マルケッサ
母父;オルフェーヴル
調教師:池添学 (栗東)
馬主:スリーエイチレーシング
生産者:ノーザンファーム
産地:安平町
セリ取引価格:1億1,000万円
主な勝鞍:22'ホープフルS(GⅠ)
特記事項:'23、'24 チャンピンオンズカップ(GⅠ) 3着、'23 東京大賞典(GⅠ) 3着

【誕生】

2020年1月29日生まれの黒鹿毛の牡馬。
父は社台グループ*1が生んだ日本競馬の結晶体ともいえる超名血馬にして、2015年のクラシック二冠馬ドゥラメンテ
母のマルケッサはサトノダイヤモンドの半妹にして父が三冠馬オルフェーヴルと言う超良血。
その血統が評価され2021年のセレクトセールでは一億越えで落札された。

【戦歴】


2歳

管理調教師は祖父の主戦を務めた癖馬マイスター池添謙一騎手の弟である池添学調教師。
デビュー前の調教の動きが極上だった事から注目を集めるものの、デビュー戦となる6月の阪神新馬戦では一番人気に推されるも5着とまさかの敗北。ちなみにこのレース、勝ったカルロヴェローチェがファルコンステークス2着、2着のチャンスザローゼスがアイビーステークス制覇、そして6着のデルマソトガケが全日本2歳優駿とUAEダービーを制覇、BCクラシックで2着とかなりの数の出世馬、素質馬が集まっていた。
3戦目となる8月の札幌2歳未勝利戦で漸く勝ち上がり。初の重賞となる東京スポーツ杯2歳S(GⅡ)でも名手と呼ばれるライアン・ムーア騎手*2を乗せながらも4着に終わる。

ホープフルステークスまでが4戦1勝、馬場状態等から先行脚質不利、掲示板は外してないけど勝ち上がりはダートで芝未勝利と人気になる要素がなかった事から本番では単勝90倍の14番人気と人気薄。
しかしトップナイフと共に前半1000m61秒5のスローペースを演出すると、最後まで脚色が止まる事なく直線では逃げ2頭の追い比べに。
これをハナ差制して押し切ると母父オルフェーヴルに母父として初参戦したGⅠでいきなりのタイトルとなるGⅠ制覇を捧げると共に3連単246万馬券の大波乱の立役者となった。なお、鞍上のバウルジャン・ムルザバエフ騎手*3もJRAGⅠ初勝利となると共にJRA芝初勝利となった。
なお、彼の勝利で中央2歳GⅠは2/3がドゥラメンテ産駒の制覇。残る1戦である朝日杯もルーラーシップ産駒が勝利する、と完全にキングカメハメハ×エアグルーヴ(ダイナカール)一族種牡馬の独壇場となった。

3歳

年が明けて3歳となり、一躍クラシック戦線へ…ではなくなんと海外遠征してドバイのUAEダービーに出走
皐月賞への出走を蹴ってまで海外へ出て、ダートに出戻るという判断に疑問の声は少なくなかったが、1着馬のデルマソトガケに5馬身1/2を付けられるも2着入線の好走。
しかもこのレースでは1着から4着まで日本馬が独占、何れも3馬身以上差をつけるという波乱のレースとなった。
ケンタッキーダービーにも出走可能だったが、レース後に生じた球節の違和感によりこちらは辞退。
米クラシックはデルマソトガケとコンティノアール(とサンタアニタダービー2着マンダリンヒーロー)に託し、自身は日本ダービーに向けて調整を行うこととなった*4

その日本ダービーでは8枠17番の枠順に収まり、新たな鞍上として坂井瑠星騎手を迎える。何気にこれでデビュー以降鞍上が全て異なる騎手となり、また海外が前走の3歳馬のダービー出走そのものが初めてのことだった。
かくしてレース本番では8番人気に推された…のだが、スタートで思いっきり躓いた結果坂井騎手が落馬して競走中止に。ダービーでの落馬競走中止は1993年*5以来30年ぶりの出来事だった
それでもカラ馬と化しながらレースでは他馬に迷惑をあまりかけることなく走っていき、無事2400mを完走。他馬と共にゆっくりと地下馬道の入り口まで行ったところでスタッフによって確保され、地下馬道へと入っていった。
ちなみにこの一部始終を捉えていた動画があるのだが、地下馬道の入り口に自分だけ先に行こうとしたものの、そこで立ち止まってきちんと待つというような賢さも見せている。
このダービーでは2番人気に推されていた青葉賞馬スキルヴィングが大差で最下位入線後急性心不全で死亡するといった悲劇も起きたが、ドゥラエレーデ自身は落馬した坂井騎手と共に無事であることがアナウンスされた。

肝心の次走だが、陣営は「特に外傷はなく、歩様も問題ない」ということでファン投票選出を条件に何と宝塚記念に挑むことを発表したこの謎ローテに巷では「ウイポローテ」とか「ウイポで中距離・芝〇ダート〇が付いている」とか「ホープフルステークスとUAEダービーの賞金で好き放題やってる」という声が上がっている
宝塚記念本番では2012年のマウントシャスタ以来11年ぶりとなる3歳馬の宝塚記念出走となるが10着に沈んだ。
更に秋に行われるアイルランドのアイリッシュチャンピオンステークス、フランスの凱旋門賞への予備登録も済ませており、芝・ダート双方をこなすオールラウンダーな彼が今後どうなるか注目されていた。
結局秋初戦はこの陣営にしては真っ当なローテでセントライト記念を選択、5番人気に支持されるも最後は苦しくなり8着に敗れた。
この敗戦で距離不安が出たのか賞金で出走可能だった菊花賞を回避。次走はチャンピオンズCへ出走することに。好走したUAEダービー以来のダート出走。しかも、鞍上にはホープフルSで共に勝利を分かち合ったムルザバエフ騎手が戻ってきた。
チャンピオンズカップでは番手につけ直線粘るも逃げたレモンポップを捉えきれず、後方一気にかけたウィルソンテソーロに並ぶ間も無く交わされ3着に終わるも、ミトノオーとミックファイアを欠いた3歳勢としては大健闘との声が高かった。
なお先行して粘るこいつに後方一気のウィルソンテソーロはやっぱりお前ら父親逆だろ*6と突っ込まれたのは言うまでもない。
この後は地方ダート適性確認のためか東京大賞典に出走。
が、事前登録馬にウシュバテソーロとミックファイアの名前が連なっていたため、中央、地方を問わず回避馬が続出。
わずか9頭立てとなり、しかもミックファイアが出遅れてウィルソンテソーロがハナを切るまさかの展開に。
前走同様番手集団につけたもののジリジリとしか伸びずウィルソンテソーロに首差まで迫るのが精一杯。
2頭まとめてゴール前でウシュバテソーロに交わされてまたも3着に終わり3歳シーズンを終えた。
この2レース好走したことから、芝GⅠを勝った馬でありながらダートの方が適性が高そうだと陣営は感じたのか、これ以降はダートに路線に専念していくこととなる。また、コロコロ変わり続けていた鞍上に関しても、ムルザバエフが一番相性が良さそうであるということもわかってきた。

4歳

4歳の始動戦はフェブラリーS。しかし、ここでドゥラエレーデの陣営に問題が発生する。
ムルザバエフ騎手が帰国した後に別の外国人騎手が日本にやってきたため、JRAの短期免許の枠が埋まりきっていた。
そのため鞍上未定の状態になってしまったのだ。これまで乗った日本人騎手が再度手綱をとるのか、あるいは他の外国人騎手か…と、動向が注目されたが、短期免許を取得した騎手の中から早期帰国者が出たことからムルザバエフ騎手の再来日が叶い、コンビを継続することになった。
しかしフェブラリーSは13着とダートで初めて大敗。この後は、大阪杯と川崎記念のどちらかへ出走する予定となっていた。

ところが、陣営はその予定を覆してなんとドバイワールドカップに出走。サウジカップ2着のウシュバテソーロや、BCクラシック2着のデルマソトガケに話題が集中している中でのレースとなった。ホープフルSの再現を狙ったものの、結局5着。それでも、サウジカップで好走した馬たちを相手に掲示板に入り込み、デルマソトガケに先着したのだから、頑張ったほうだろう。これにより、36万ドル(おおよそ5500万円)の賞金を持って帰って来ることもできた。

帰国後の初戦は武豊騎手と新コンビでエルムS(GⅢ)。道中は先団で進め、直線で抜け出すもペイシャエスにアタマ差交わされ2着。馬体重を見るに絞りきれていなかったことや、秋に向けての賞金を加算できたことを考えれば悪くはない結果だったが、GⅠで掲示板に載り続けていた馬がGⅢで1番人気に支持されながら勝てなかったというのは、煮え切らない部分もあった。

そしてエルムSの後、陣営はあろうことか中1週で札幌記念に出走する予定を発表。セントライト記念以降ずっとダートを使ってきた中で久しぶりに芝のレースへ戻ってくることになる。なお、このレースでは藤岡佑介騎手との新コンビで、ドゥラエレーデにとって10人目の鞍上ということになる*7*8
レース前にボッケリーニが競争除外で11頭立てとなった本番では久しぶりの芝故かスタート直後にゲート内で立ち上がってしまい、大きく出遅れ。逃げ先行のドゥラエレーデにはこの状況をどうすることもできず、10着のブービー負け。
次走は11月のみやこSでダートに復帰するもポジションが取れず揉まれて11着大敗。その次は短期免許のライアン・ムーア騎手を久々に迎えて前年3着だったチャンピオンズカップ。チャンピオンズカップはこれまでとは違い内差しに徹したが、前年の先着2頭から1と1/4馬身離された3着に惜敗。何故かウィルソンテソーロと相性が悪く両者が出走したレース全て先着を許しており、重賞2着以上でないと得られない収得本賞金をウィルソンテソーロに阻まれて積めない問題に直面しているため、目の上のたんこぶ的存在になってしまっている*9

その後、年内の残りは休養に充て*10年明けのプロキオンステークスで叩いた後にサウジ・ドバイへの遠征を視野に入れていることが明かされた。ようやくまともにローテを組むようになったか…

5歳

特に問題もなかったが、いい意味で変わらずという体調での出走となった。前走でウィルソンテソーロに乗っていた川田将雅騎手に乗り替わり。すっと3番手につけそこから2番手の馬は交わしたものの逃げ馬を捕まえられず後ろの馬に交わされて3着とまた本賞金獲得に失敗。もどかしい。

次走は海外遠征…と思いきやフェブラリーSにも出走登録していたらしく、当初は獲得賞金の問題で補欠であったが、その後レーティング判定で出走可能とのこと。

【余談】

乗り替わり

ドゥラエレーデの特徴の一つがデビュー以来1年以上全レースで騎手が乗り替わり、これといった主戦騎手がいないこと。なにせ
  • デビュー戦:北村友一騎手*11
  • 未勝利戦:横山和生騎手*12
  • 未勝利戦(2回目):池添謙一騎手
  • 東京スポーツ杯2歳ステークス:ライアン・ムーア騎手
  • ホープフルステークス:バウルジャン・ムルザバエフ騎手
  • UAEダービー:クリスチャン・デムーロ騎手*13
  • 東京優駿(日本ダービー):坂井瑠星騎手
  • 宝塚記念:幸英明騎手
と、宝塚まで8戦全てで騎手が乗り替わっていたため「次は誰を鞍上にレースに出るのか」といった点からも注目されていた。
セントライト記念で落馬でレースはしてないため判断基準が微妙だが坂井騎手が騎乗したことで全レースで騎手乗り換わりは途絶えた。前述のように負けたことで坂井騎手が今後主戦になるかは微妙な所

23年チャンピオンズカップ〜24年ドバイワールドカップのG1級4戦では、ホープフルステークスでともに中央G1初勝利となった短期免許のムルザバエフ騎手が騎乗して3着2回5着1回と好走したことで、ムルザバエフ騎手がドゥラエレーデと最も手が合っているとの声もあったのだが、短期免許期間の終了のみならず、24年11月に落馬による骨折と肺挫傷で離脱を余儀なくされてしまい、コンビ再結成は絶望的なのが25年の現状である。

その前代未聞のローテから面白ホース、言葉を選ばず言えばネタ馬扱いされがちな彼だが、実はダート実績は2023年終了時点で[1-1-2-0]でひとつ上のダービー馬ノットゥルノや元中距離王者のテーオーケインズ、メイショウハリオなんかにも先着しており馬券外0。
2024年は1着こそ無かったもののドバイワールドカップで5着、チャンピオンズカップでは昨年と同じく3着とGⅠで好走。
その実力と実績は文句無しに強豪馬である賞金が多いGⅠに限って収得賞金が詰めていないのがじつに惜しいところ

半妹バロネッサ

ドゥラエレーデには、1歳年下の妹バロネッサがいる。
デビューから芝の中距離を走り続け、3レース目で初勝利し、勢いそのままにオークストライアルのフローラSに1番人気で出走するが惨敗。その後、1勝クラスに戻り2着。同じ条件で走り続ければ2勝クラスへ行けそう…という目処が立っていたのだが、陣営はここで路線変更を決断し、ダートの1勝クラスに出走。ここでは惜しくも2着となるが、次の条件戦で再びダートに挑戦し、5馬身差の圧勝を披露。その2か月後には2勝クラスでも勝利し、オープン入りまであと一歩に迫っている。

このように、まだ一介の条件馬に過ぎないが、芝でもダートでも走れてしまうという「ドゥラエレーデの妹」らしい活躍を見せている。

ちなみに、バロネッサの父は名スプリンターロードカナロアなのだが、こちらの産駒にも、芝とダートのGⅠをそれぞれ勝利した経験を持つパンサラッサがおり、彼女の馬場適性は血統によって約束されていたものだったのかもしれない。


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  • 正統後継者
  • サトノダイヤモンドの甥
  • バウルジャン・ムルザバエフ
  • 令和の変態(アグネスデジタル的な意味で)
  • 本質はダート馬
  • G1馬
  • ホープフルステークス
最終更新:2025年02月17日 07:13

*1 日本最大の競走馬生産牧場集団。ここに書ききれない程の幾多の名馬を生産し、現代の日本競馬に絶大な影響力を誇る存在である。競走馬生産牧場では「社台ファーム」「ノーザンファーム」「白老ファーム」などが、一口馬主クラブでは「社台レースホース」「サンデーレーシング」「G1サラブレッドクラブ」がこのグループに属している。

*2 冷静沈着な騎乗を持ち味とするイギリスのトップジョッキー。シャイで無口な性格の持ち主で、あまり物事を語らないことでも有名。

*3 カザフスタン出身。3年連続でドイツリーディングジョッキーに輝いた名手で、短期免許で初来日したばかりだった。

*4 なおケンタッキーダービーはコンティノアールが出走回避し日本馬2頭が出走するもデルマソトガケ6着・マンダリンヒーロー12着に敗れた。

*5 南井克己騎手騎乗のマルチマックス

*6 ウィルソンテソーロはキタサンブラック産駒

*7 過去にはフサイチパンドラが順番は逆だが札幌記念→エルムSの中1週ローテを行って札幌記念の方を勝利しているので前例が無かったわけではない。フサイチパンドラのエルムSでは鞍上が藤岡佑介騎手だったため、なんとローテ2戦目の鞍上が藤岡佑介騎手という点まで同じである。

*8 なお藤岡騎手はネットニュースでドゥラエレーデに乗ることと札幌記念に出走することを知り困惑していたとのこと。

*9 ちなみにこのレース1~3着が全て昨年の同レースと全く同じ、ドゥラエレーデに至っては前走大敗で人気を落として9番人気なところまで同じという珍記録が生まれている。

*10 東京大賞典に登録はして居たが、ウシュバテソーロとミックファイアが去年のいい頃の調子にないためか中央招待出走馬の本賞金ボーダーが高く除外対象だった

*11 主な騎乗馬は牝馬2頭目の春秋グランプリ連覇を成し遂げたことで知られるクロノジェネシス。

*12 メジロライアンセイウンスカイなどの主戦として有名な横山典弘騎手の息子の一人で、エフフォーリアなどで有名な横山武史騎手の兄。主な騎乗馬はタイトルホルダー、ウシュバテソーロなど。

*13 日本でもお馴染みなイタリア出身の名手、ミルコ・デムーロ騎手の弟。日本での主な騎乗馬はシャフリヤールやジェラルディーナなど。