はじめてのおつかい

登録日:2024/07/15 Mon 01:05:22
更新日:2024/10/07 Mon 11:18:37
所要時間:約 10 分で読めます









とは、日本テレビのバラエティ番組である。




【概要】

子供がたった一人で「はじめてのおつかい」を達成する様子を見守る、バラエティ・ドキュメンタリー・リアリティ番組。
元々は筒井頼子作、林明子絵の絵本『はじめてのおつかい』をモチーフとしたもので、当時平日19時の帯に設定されていた情報番組『追跡』の一コーナーとして1991年から開始し、好評につき『追跡』終了後単独番組に昇格した、所謂本家より有名なスピンオフ作品のひとつといえる。

日本の風習・子供のおつかいに焦点を当て、ほのぼのとした雰囲気で視聴者も感情移入できる内容から30年以上続く長寿番組として愛され、概ね正月と夏の年2回、特番枠で放送されている。

司会は所ジョージと森口博子
ナレーションは開始当初から2022年まで近石真介が担当していたが、2010年以降は入絵加奈子、林家たい平野沢雅子、立川志の太郎が主に担当。これ以外にも俳優や花江夏樹などの人気声優がゲストナレーションを担当する回もある。
近石は2022年に亡くなったが、過去作の収録分などで今後もナレーションの使用を継続することとしている。

リアリティ番組特有の予想だにしないハプニングやアクシデントを括り抜けておつかいを完遂する様子は風物詩で、子供の成長や底力をまるで視聴者も親になったような気分で見届ける。
近石真介の心温まるナレーションや、B.B.クィーンズによる主題歌の「ドレミファだいじょーぶ」、挿入歌の「しょげないでよBaby」は聞き馴染みのある人も多いと思われる。

国内外問わず印象的なカラーリングを意識したロゴやパロディの制作も盛んに行われ、日テレでは『世界の果てまでイッテQ!』の企画である「出川哲朗のはじめてのおつかい」が有名。また、『笑点』の大喜利では本番組をモチーフにしたお題が時折出題される。

2022年からNetflixで世界配信が開始され、当の日テレも驚くほどの世界的なムーブメントを巻き起こした。
尤も、番組のフォーマット輸出は2000年代後半から実施されており、イギリス・中国などで現地版が制作・放送されている。


【制作過程】

司会者とゲストは、スタジオで事前に録画したおつかいの映像を視聴する。なおスタジオ収録には珍しく所謂ワイプは採用せず、合間やCMの前後に各々の反応や感想が挟まる形式。
おつかい映像の冒頭では地方の紹介を兼ねて名産品や土地の特徴もある程度簡潔に説明。
ちなみに、出演した横澤夏子はディレクターから「子供たちのことをかわいいと言わないでください」と注意されたと語り、「一生懸命頑張ってる子にかわいいと言ったら頑張れなくなっちゃうかもしれない。頑張ってる時にかわいいと言われるよりすごいね、頑張ってるねと言われた方が嬉しいでしょ?」という主旨の説明を受けたという。

撮影先の家族は公募ではなく、日テレ系列のネットワークをもとに、あるいは役所から幼稚園や保育園を紹介してもらい、設置したアンケート結果を参考に選定。
撮影内容の放送に関わらずスタッフは家族と長い交流を持つよう心掛け、そうした積み重ねにより子供の数年、数十年後の成長した姿を新たに撮影した「あれから○年後…」という企画も作られた。
余談だが、日常風景パートではスーパー戦隊、仮面ライダー、プリキュアといった1年周期で代替わりする作品のグッズが映る事も多いため、大きなお友達は逆手に取ってある程度収録された年代を推察できる。
中には親に成長して自分の子供をおつかいに出すといった親子二世代によるはじめてのおつかいも放送。
スタジオゲストに纏わるおつかいも組まれ、中村獅童、荒川静香といった著名人の子供たちがおつかいに挑戦している。


【おつかいの撮影】

対象は事故や怪我、誘拐の被害に遭わないよう細心の注意を払わなくてはいけない子供という事もあり、安全対策は何重にも組まれている。街中のカメラマンや見守りスタッフだけでも十数人、後方にはトランシーバーで移動先を予測して指示を送るスタッフも配置。
また買い物先の店舗や近隣には固定カメラが設置され、撮影機材の小型化やドローンカメラの導入で番組開始時よりスタッフの肉体的負担は軽減しているが、子供の並外れた、そして大人には想像もつかない発想や行動力に翻弄されて先回りできない場面は撮影の風物詩。
スタッフは子供に勘付かれないよう各地方に合わせて現代ではそうそういない電気屋や庭師といった格好に変装しているものの、普段見慣れない人間が自宅や街中に居ることに気づいて話しかけられる事もあり、番組スタッフによると5歳3ヶ月前後から偽装しているカメラの存在を怪しまれる模様。
仮にスタッフが話しかけられても自然に「今何やってるの?」等聞き返すと雄弁におつかいの事を語ってくれるため、発達途上で並行して物事をこなすのが難しい時期で一つに意識を集中させると他は目に入らなくなる、というノウハウで乗り切っている。ドローンの導入後は撮影機材とバレないまでも、視認できる距離では高確率で見つかっている。
近年では過去作と比べてスタッフが撮影に映りやすい場所に配置され、大人が見守っている事を分かりやすく表し、クレーム対策も兼ねて視聴者を安心させる役割を担う。
『はじめてのおつかい』が30年以上続いている事自体が奇跡とも言われ、両親と子供たち、番組スタッフや街の住民の心遣いで成り立っている。

何事もなくおつかいが終了、逆に梃子でもおつかいに行かない、街の住民が意図を汲み取って一切喋らないまま帰宅するといった、成功や失敗に限らず所謂お蔵入りしてしまうケースは少なくない。
実際にVTRとして放送可能なおつかいは限られ、スタッフの体感やシミュレーション結果によると10回撮影して流せるものは1回前後という厳しい割合で、運に見放されると何十回と外れてしまい、レギュラー放送は難しく年2回の特番が限界と語られている(もちろん子供に原因のない「スタッフが正体を明かさざるをえなくなった」アクシデントも含んでいるとは思われるが。後述するようにそういった事態にならなかったら極力はオンエアする前提での見守りでなおこれである)。
撮影先は許諾が必要な各々の店舗になるため、個人経営は許可を得やすいものの、チェーン店では本部の確認や広報担当の派遣ができないといった理由で断られる事も多く、都心のおつかい先の選定や確保には難儀している模様。
撮影は入念な下準備や人員配置により子供の安全を確保した上で行なっているため、決して番組の表面だけをマネして安易に難しいおつかいに出す事を推奨している訳ではない
実際に近年では防犯上の懸念もあってか、「平屋のショッピングモールなどの駐車場を出発→施設内で買い物→両親や兄弟姉妹が待つ車におつかいを頼まれた品を持って戻ってくる」など、番組スタッフとは別で常に警備員さんやお店のスタッフさんの目があるルートのおつかいも増えている。
子供のおつかいを撮影するという至ってシンプルな内容ながら、例え類似番組の制作が試みられてもノウハウが無くなかなか継続には至っていない。


【おつかいの詳細】

  • 親が子供に適したおつかい内容を考案
  • 親と番組スタッフによる買い物ルートといった数ヶ月に及ぶ打ち合わせ
  • 番組スタッフによる撮影店舗の交渉、ロケハン等
  • 子供には音声マイク入りのお守り袋が用意
  • おつかいの内容は概ね何かを買いに行く、親や祖父母に忘れ物を届けに行く等
  • おつかい先は自宅から行き慣れている徒歩圏内
  • 年齢やおつかい内容によっては電車やバスを経由して遠出する場合も
  • 1〜3箇所を回って計3つ前後のおつかいをクリアして無事帰宅までを撮影

おつかいに行く子供の年齢層は3歳〜5歳前後が中心。
基本的におつかいは単独でするが、年が近い兄弟や友達が同行して一緒に向かうパターンも組まれる。
年齢故か放送局が日テレ故か、子供は『それいけ!アンパンマン』の関連グッズを身につけている事が多い。

親からおつかいをお願いされても自ら向かうパターンは少なく、「忘れ物をした」「〇〇が無いと困る」といった両親の姿を敢えて見せる事で使命感を刺激し、自らおつかいに行くよう仕向ける形を取っている。
おつかいに行かなければ撮影は進まないため、スタッフの待機は当たり前で中には6時間粘ったケースも。
無事に送り出した後も親の反応は度々描写され、最後に家で出迎える大役を担う。
明言はされていないものの、買い物メモは使用せず口頭の会話による記憶が頼りで、大人でも忘れる複数となれば買い忘れや店員との意思疎通に難儀するといった問題も発生し、手荷物を引き摺って破けるといったアクシデントは定番。
成長期の子供が自分なりの表現方法で伝え、近隣住民や店員が意図を汲み取ろうと試行錯誤する姿は風物詩。
おつかいを終わらせた子供の体調や気分にもよるが、買い忘れが発生した場合は理由をつけて再度送り出している。
スタッフは事前に同じルートでリハーサルを行なっているものの、本人が参加している訳ではないため常に予想外の行動には翻弄され、困り事が起きても基本的に手助けは行わず、自ら事態を打開する様子を見守っている。
あくまでおつかいの日に密着している姿勢を貫き、道中でやる気を無くしグズったりした場合は見守りを継続するが、現場判断によりスタッフが他人のフリをして創意工夫で元気づけるパターンもあり臨機応変に対応。


【Old Enough!】

海外では日本番組の一つとして各国で輸入され、2022年3月末からはサブスクリプション動画サービスのNetflixで英語圏では『Old Enough!*1のタイトルで配信。
世界同時配信の結果、アメリカ合衆国イギリスといった各国で瞬く間に話題となり、主要海外メディアでも大きく報じられた。

「子供だけでおつかいという文化自体信じられない」という声もある一方、言語や価値観の違いを越えて好意的な反響が非常に多く寄せられ、SNSやメディア以外にも国内の撮影中に外国人から番組スタッフが話しかけられるといった反応にも触れている。

そもそも海外は特に子供に対する安全配慮義務が厳しい上、誘拐が日本以上に社会問題化している。
この観点から学校ですら送迎が当たり前(スクールバスもあちらではこの面の解決方法という目的が主の学校が多い)という国も多い……要するに社会常識として子供をひとりで外出させてはいけない文化圏のような地域の人も視聴した中、自立心を尊重する教育法やおつかいという文化そのものを含めた子育て論争といった様々な議論を呼んだ(一応近年では国内からも「当時とは治安が違う」として類似の意見自体は出ているが)。
おつかいに馴染みのある日本でも好き嫌いが分かれる番組ではあるものの、30年以上に渡り撮影と放送を継続できているのはスタッフの弛まぬ努力や親族と地域の協力、世界共通で子供たちの姿が視聴者の心を掴むに他ならない。

『はじめてのおつかい』は、年端もゆかない子供を一人で自由にしても(概ね)無事に帰宅できる日本の安全神話を象徴する番組とも言え、海外メディアでは世界屈指の銃規制と銃犯罪の少なさ、子供でも行動できる社会インフラを要因に挙げている。
実際海外では上に触れた理由からそういったインフラの構築そのものが治安上困難で、やむなく子供にひとりで外出させる、どころか留守番すら児童虐待にカウントしているケースすら普通に存在する。このあたりはまさに日本ならではの企画と言える。
無論そうだとしても、子供たちに万が一の事が起こらないようスタッフが厳重に見守る上で撮影は行われているが。
余談だが、近年の日本のテレビ番組に共通する過剰なテロップ表示には否定的な見解を示している。

「2024年新春スペシャル」では番組内で反響について言及。登場した一家の海外に住んでいる祖母が『Old Enough!』にハマっておつかいの要因となった事が語られ、「ドレミファだいじょーぶ英語ver.」も制作された。



【主題歌・挿入歌】

曲名 作詞 作曲 編曲 歌唱
ドレミファだいじょーぶ 長戸大幸 織田哲郎 B.B.クィーンズ
一番先に、君が好き 篠塚大輔 花沢耕太 増崎孝司
Love…素敵な僕ら 亜蘭知子 望月衛介 寺尾広
しょげないでよBaby 高樹沙耶 織田哲郎 近藤房之助
声のジェット機〜アイのコトバ〜 前川真悟・宇徳恵子 前川真悟 山口高始・前川真悟 宇徳敬子with前川真悟
お前を見守る風になりたい ダイヤモンドユカイ ダイヤモンドユカイ ダイヤモンドユカイ
もっと、強く 堀田明子
フレーフレー応援歌! 桐谷健吾 桐谷健吾 kengo.
やるしかない 藤田麻衣子 藤田麻衣子 藤田麻衣子
素敵なことがあなたを待っている



【余談】

  • 「2024年新春スペシャル」では『劇場版 SPY×FAMILY CODE:White』とのコラボレーションが行われ、本作と同じカラーリングの「」ロゴと共にアーニャのシーンを抜粋した特別CMが制作。放送後は「アーニャおつかい篇」として公開されている。



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最終更新:2024年10月07日 11:18

*1 もう十分な年齢だよ!の意味。日本の番組で言えば『ひとりでできるもん』に近いニュアンス。