楽園夢想遺構 柱

登録日:2024/12/31 Tue 10:21:36
更新日:2025/03/17 Mon 15:14:23
所要時間:約6分で読めます






私は長年、人類の歴史における"楽園"について研究をしてきた


どうすれば不安や苦しみを社会から無くすことができるのか……


そしてその答えとなる出土品を発見したんだ


かつて地上に存在した、"楽園"の一部だよ


画像出典:ウルトラマンアーク(2024年7月6日~) 第22話「白い仮面の男」より
©円谷プロ©ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京


私はそれを……「柱」と呼んでいる


楽園夢想遺構 柱とは、特撮TVドラマ『ウルトラマンアーク』に登場する物体である。
鬼狩りの剣士とは関係ない。もっと言えば「仮面」で「柱」だがこっちも無関係。

データ


登場話:第22話『白い仮面の男』
別名:楽園夢想遺構
身長:40m
体重:84,000t*1


概要


かつてこの地球上に存在したが、現在では跡形もなく消え去った理想郷"楽園"の一部とされる物体。

円錐を逆さまにしたような形状*2であり、見た目の質感は銅のそれに近い。
表面には渦巻き状の紋様が刻まれているほか、不気味な人面らしき意匠も見て取れるなど中々に不安を掻き立てる造形をしている。
柱と名前がついてはいるものの、これはこの物体を発見した白い仮面の男が名付けた便宜上のものであり、正式名称は不明である。
何か巨大な構造物の一部であったのか、欠損している部分はないのかも含めてあまりに謎が多いものの、楽園が消え去った今となってはそれを知る術はないであろう。

これほど巨大でありながら重力を遮断するかのように空中に浮遊し、さらには柱の存在を知っている人物以外の目には見えないという特異な性質を持っているが、この柱の真の能力は他にある。

それは人間が心に抱える不安、悲しみといった憂いを吸収する力。

これは単に人間の精神に作用するだけのものではなく、人間の記憶やあらゆる記録、物事から憂いの原因となる存在に関連するものを抹消し、最終的にはそれが存在した事実すら消し去るという強力な現実改変能力。
かつての楽園が理想郷たり得たのは、この力を利用することで人々が憂いから解き放たれていたからだとされる。

作中では白い仮面の男によって現代に生きる人々の最大の憂い──怪獣を消し去るために使用された結果、他の地域と比べて怪獣の出現率が高いとされていた星元市で一ヶ月近く怪獣が出現しなかった上、怪獣の出現を前提として成り立っていたSKIPや防衛隊が突如消滅するという事態を引き起こした。

それに加え、怪獣と同じく憂いをもたらすものとしてが人々の記憶や記録から消されかけており、やはり一ヶ月も雨が降らなかったほか、靴を飛ばす天気占いで11回連続で表=晴れの結果が出る*3、人々の記憶から雨傘の概念が消える、スマートフォンで雨やそれに関連する漢字を変換しようとしてもできない……といった現象が起きていた。

人知を超越した力を持つ柱だが、作中では柱の力が及ばないとされる人物も登場しており……


楽園夢想人 白い仮面の男


画像出典:ウルトラマンアーク(2024年7月6日~) 第22話「白い仮面の男」より
©円谷プロ©ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京


楽園を夢見る……ただの男さ

演:岡部暁
CV:津嘉山正種

SKIPが消滅し、困惑するユウマ達の前に現れた謎の人物。
黒いスーツに身を包み、その顔には名前のとおりに柱の表面に存在する人面に酷似した仮面を被っている。
背格好はそこまで年を取っているようには見えないが、その声色は老人のように低い。
柱と同じく、作中では本名は明かされていない。曰く「名前も顔も捨てた」とのこと。

本人曰く、人類の歴史における楽園について長年研究を続けた人物であり、そしてついにはその実在を証明する出土品──柱を発見した張本人。
人々の心から憂いを消し去り、もう一度地上に楽園を蘇らせようと企て、柱の能力を使い世界から怪獣や雨の存在を消し去ろうとしていた。
元々は普通の人間であったと思われるが、柱の影響で人ならざるものに変異してしまったのか自分や他者を瞬間移動させたり、ユウマに地面から水が湧き出る幻覚を見せるなどの超能力を行使している。

画像出典:ウルトラマンアーク(2024年7月6日~) 第22話「白い仮面の男」より
©円谷プロ©ウルトラマンアーク製作委員会・テレビ東京

極めつけに仮面の下の素顔はぽっかりと黒い穴が空き、その中には青リンゴが浮かんでいるという異形のものとなっている。


劇中の動向


SKIPが消滅し、星元市分所長のヒロシはまるで以前からそうであったかのように喫茶店のマスターとして振る舞い、SKIPのことを全く覚えていないという異常事態に地球外からの侵略者の存在を疑うユウマ、シュウ、リンの三人。
調査に乗り出したものの、リンやシュウが突然姿を消し、ユウマのみがひとり取り残されてしまう。

そんなユウマの前に事件の黒幕である白い仮面の男が現れ、柱の存在と自らの目的を明かす。
遙か上空に浮遊する柱の上部へとユウマを瞬間移動させた白い仮面の男は更に語りかける。
ユウマが宿す大いなる光……ウルトラマンアークもまた怪獣に繋がる存在。本来であれば柱の力によって消えなければならないもののはずだが、なぜかアークにはその力が及ばない。
そしてアークと結びついているユウマもまた、雨や怪獣の存在を未だに記憶している楽園の不穏分子となっていた。
それを可能にしているのがユウマが持つ強い想像力。白い仮面の男は自らが夢見る楽園の完成のため、ユウマにその力を捨て去るよう告げる。


仕上げの時は近い


間もなく私は柱の一部となる……


異形の素顔を露わにし、ユウマに迫る白い仮面の男。その異様な姿に気圧されたユウマは柱から転落してしまう。
アークキューブを取り出すユウマだったが、キューブは黒く塗りつぶされるようにしてその力を失ってしまい……



……場面は変わり、ある喫茶店。
グラスを磨くマスター、ヒロシ。従業員として働くリンとユウマ。コーヒー豆を卸しに来た業者のシュウ。あとヒロシの飼い犬ユピー。
怪獣の存在も、SKIPや防衛隊の存在も……全てが最初からなかったかのように、彼らは穏やかな日々を過ごしていた。
ヒロシに買い出しに行くよう指示されるユウマを店内から嬉しそうに見送る白い仮面の男。
彼は仕上げの時が来たと呟くと、おもむろに仮面に手をかける……

虚ろな様子で道を歩いていたユウマだったが、ある空き地の前でふと立ち止まる。
そこはかつて、小さな絵画教室が開かれていた建物のあった、ユウマの思い出の場所だった。
想像力の赴くまま、夢中で絵を描いた幼少時の記憶……ユウマがそれを思い出すと同時に、アークキューブが輝きを取り戻す。

復活したウルトラマンアークと相対する柱。
柱に備わった防衛機構か、柱と一体化した白い仮面の男の意思か……柱はアークをバリアで包み込み、そのエネルギーを失わせようとする。
カラータイマーが点滅しながらも、怯むことなくアークファイナライズを放つアーク。
光線が直撃すると……柱はいとも簡単に、呆気なく砕け散った。

柱の破壊とともに改変されていた世界は元の姿を取り戻し、SKIPや雨の存在も復活した。
白い仮面の男も姿を消し、事件は一件落着を迎えるのだった。

……いや、本当に全ては終わったのだろうか……?

余談

  • 柱や白い仮面の男の仮面のデザインは、22話の監督である越知靖監督が自ら手掛けている。
    柱はアシンメトリーな渦巻きを配置することで不安を掻き立てる造形に仕立てており、仮面はマヤ文明など古代文明の遺産をベースに、ウルトラマンの特徴であるアルカイックスマイル*4とは反対の不気味な無表情として造形されている。
    また、白い仮面の男の出で立ちや素顔はシュルレアリスムの巨匠ルネ・マグリットの絵画のオマージュと思われる。「夜の意味」や「人の子」で検索するとそのままのが出てくるのでお試しあれ。*5

  • テレビ本編に出てきた怪獣としてはウルトラマンガイアのビゾーム以来となる『人間が変貌し元に戻ることなく倒された怪獣』である。また戦闘時間も1分足らずと近年稀に見る短さとなった。

  • 白い仮面の男の声を演じた津嘉山正種氏は俳優として多数の映画やドラマに出演し、声優としても吹き替え、アニメを問わず活躍する大ベテランであるが、ウルトラシリーズへの出演は今作が初めて。というか特撮作品に参加するのが1966年の『マグマ大使』9話にゲスト出演して以来58年ぶりだったりする。

  • 22話の映像は柱の能力を表現するためか全編を通して彩度が落とされており、土曜朝9時の番組とは思えない、ウルトラQを彷彿とさせる異様な雰囲気を醸し出している。
    そして物語のクライマックスで柱が破壊された際には世界が少しずつ鮮やかな色彩を取り戻していくという演出がされた。

  • 白い仮面の男が語る楽園だが、実際彼の計画通りに事が進んでいたとして地球が楽園になるかというと微妙なところだったりする。
    別次元から襲来してくるヘルナラクのような怪獣が現れた場合どうなるかは不明だし、自分の銀河を守るために地球を犠牲にしようと企むゼ・ズーは怪獣ではなく異星人である。
    そして何より、柱によって人々の憂いが消し去られる理想郷であったはずの楽園はとっくの昔に滅び去ってしまっているのだ。
    結局のところ、楽園は白い仮面の男の夢想に過ぎないのかもしれない……


楽園を夢見る方は追記・修正お願いします。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ウルトラマン
  • ウルトラシリーズ
  • ウルトラマンアーク
  • 円谷プロ
  • ウルトラ怪獣
  • 津嘉山正種
  • 越知靖
  • ルネ・マグリット
  • 現実改変
  • 楽園
  • 白い仮面の男
  • ※土曜朝9時です。
  • 人間怪獣
  • 円盤生物
最終更新:2025年03月17日 15:14

*1 怪獣ではないので身長や体重という表記は不適切に思われるが、公式HPの紹介文に準拠する。

*2 公式HPの紹介文では深鉢型と記載されている。主に土器の形状の分類として使われる言葉である。

*3 確率にして2048分の1。

*4 古代ギリシャの彫刻や仏像に見られる、口元にわずかな微笑をたたえた表情

*5 なお同話ではこの他にもマグリット作品(「大家族」など)をオマージュした演出が見られる。