登録日:2022/05/02 Mon 22:22:00
更新日:2025/04/09 Wed 23:08:20
所要時間:約 8 分で読めます
時は世紀末。海は枯れ、地は裂けた世界。
弱きを傷つける悪に立ち向かう革ジャンの男。
敵を華麗に倒す姿に大きな叫び声が重なる。
「カーーーット!」
枯れた海も、裂けた地も大規模なドラマセット。
これはドラマ『北斗の拳』を
日夜撮影する者たちの血と涙と汗の記録。
『
北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』(原案:武論尊、原哲夫 漫画:倉尾宏)は、漫画『
北斗の拳』を元ネタにしたスピンオフコメディ。
WEB漫画サイト『ゼノン編集部』で連載。
『ニコニコ静画』の「ゼノン編集部 ニコニコ出張所」でも連載されている。
作品のテーマは「
もしも『北斗の拳』が実写特撮ドラマだったら
」。
作画の倉尾宏は
デビュー作で
『
北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』を描き切った上での2作目がこちらとなる。
なんで『ゼノン』はこんなに原タッチの作家を抱えまくってるんだ。
概要
漫画としての『北斗の拳』が存在しない世界を舞台に、実写特撮ドラマ『北斗の拳』の撮影裏話を描く。
原作の破天荒な描写やストーリー展開が生まれた理由を、役者のアドリブや監督の思い付き、事務所の口出しといったリアルな
大人の事情として描写。
危険で無茶なアクションシーンや当時としては斬新過ぎる演出の数々、劇中の子供達の心を鷲掴みにした人気ぶりから『
北斗の拳版昭和仮面ライダー』とも呼ばれてもいる。
盛りすぎだって?いえいえそんなことは。迷わず読めよ、読めば解るさ。
キャラクター達も
あくまで俳優として扱われるため、
カメラの回っていないところではケンシロウと悪役達が仲良く談笑する姿なども頻繁に描かれる。
また、作中での放送開始が原作の連載開始と同じ1983年に設定されており、当時の世相も随所に反映されている。
『東武警察』『必勝仕事人』『絶好野郎Aチーム』で伝わる説得力
単に表現媒体を漫画→TVドラマに置き換えたらどうなるの?というifストーリーにしているだけではなく
漫画『北斗の拳』として見た時に「これは変だろ!?」と思ってしまうツッコミどころ(デビルリバースのような身長20m越えの「普通の人間」が大きくなった理由も出さず登場することなど)を、
本作では「
ドラマとして撮影するために色々したらこうなってしまったんだ
」と
こじつけてネタにしている
ことが多い。
行き当たりばったりで更に生まれた矛盾も台詞等でフォローしているのもポイント。
原作『北斗』ファンにとってはもう慣れてしまったがよく考えたらおかしな描写を、こちらではこういう理由でそうなったのね、と新たな楽しみ方ができるのがこの作品の魅力の一つ。まさにドラマ撮影伝と言える。
後述するバットの場面のように「よくよく見直したら確かにそうなってる」というコアな部分を取り上げることもあり、そこも人気につながっている。
作中の撮影風景で「あれ?『北斗』ってこんな展開だったかな?」「こんな場面あったっけ?」と違和感を感じたら、
大抵は問題が発生して展開を変更したり場面自体が没になる前振りで、最終的に読者が漫画でよく知る内容に収束していく。
このような形で変則的に原作のif展開を描いているとも言える。
また、『ゼノン』編集部では本作に合わせて「金曜ドラマ 北斗の拳」名義で原作を公開している。
案の定「撮影風景」が頭にちらついてまともに見られない視聴者が多発。それと同時に原作のテンポの良さや迫力に改めて感心する者も多い。
ちなみに、『北斗の拳』は実際にハリウッドにて実写映画化された事があるほか、無認可で制作された実写ドラマも存在している。出来と評判については大体察しろなんだが
そういった事も頭に入れて本作を読むと、また違った面白さが出てくるかもしれない。
……と、このように『北斗の拳』のスピンオフとして非常に面白い作品だが、それとは全く別に行き当たりばったりに振り回し振り回されながらも、皆で面白い作品を作り上げていく「メイキング系漫画」としての質が高く、『北斗の拳』の原作は知らないけど楽しく見ているという読者も少なくないようだ。
登場人物
俳優(役名)
・橘優李(ケンシロウ)
主人公。新作ドラマ『北斗の拳』のケンシロウ役に抜擢された若手俳優。
クールで悪人に全く容赦しないケンシロウとは正反対に、穏やかな好青年。
それなりに筋肉の付いた肉体の持ち主ではあるが、拳法家という役を演じるには不十分なので肉襦袢を着込んで撮影にあたっている。
また男らしさの演出として監督の指示で太い付け眉毛を付けているため、第1話放送時には彼の女性ファンが「何この眉毛!!」と驚愕する事態になった。
それに武道の心得も当初はなかったので、北斗神拳の撮影は早回しやワイヤーアクションを駆使して行っている。
ちなみにケンシロウの胸の7つの傷は元々「北斗神拳伝承者に儀式で刻まれる証」という設定だった。第1話で長老が北斗神拳にやたら詳しかったのもこの為である。
……が、菱川と優李のアイデアにより設定が大きく変更された。
撮影時には監督の無茶ぶりに驚愕することが多いが、実は橘自身もぶっ飛んだ感性の持ち主。
- ミスミの爺さんのエピソードのラストシーンでアドリブを求められた際には「
押し付けられても困る
」という理由で種籾を墓に蒔いてしまう
- シンとの対決シーン撮影中に血糊の味が気になって舐めてみる
- アクションシーンの撮影に生かすために道場に通ったはいいが、拳法ではなく武器術を会得してしまう
……と奇行に事欠かず、彼の発案で生まれた迷シーンも多い。ケンシロウもあれで結構天然なのではまり役なのかも。
だが自覚はなく、実際に天然だと指摘された際にはかなりのショックを受けていた。
もっとも奇行ばかりというわけでもなく、当初は自殺したシンに冷酷なセリフを放って終わる予定だったのを彼を弔うよう監督に提案するなど柔軟な発想もできる。
また、話の都合とは言え「ケンシロウがアミバを一時期本物のトキと勘違いしそうになった」という展開にされた時は、
原作が存在せず世間からのイメージが「俳優≒ケンシロウ」のような節がある都合上、またケンシロウへの思い入れから「バカみたいじゃないですか!!」と流石に抗議していた。
結構ウブなタイプなのか、一般人よりはモテるだろう俳優なのに女性関係の耐性が低く、女性陣を抱っこする際やキスシーンの際には露骨にドキドキして演技にならない。
ジャミング事務所のメンバーには「モテモテのジャミングは違うんでしょうけど!」みたいな言葉を言ってもいる。
撮影自体には真面目に取り組んでいて、ツッコんだり抗議したりは多いものの、ただ言われた通りに演じるだけのスタンスを良しとせず、自発的により素晴らしい演技・作品にしようという姿勢で撮影スタッフや共演者達からの評価は高い。
主役で出ずっぱりということもあってアクションシーン等も洗練され、共演者があまりの気迫に本気でたじろいだり、「本当に殴られるかと思った」となる迫真の寸止めを会得。
特に菱川や友美とは同年代という事もあって仲がよく、オフの日に一緒に出掛ける場面も。
名前の由来はケンシロウのモチーフにあるブルース・リー(李小龍)と、松田優作からか。
・菱川康一(シン)
女性視聴者層を獲得するためにライバル役として出演することになったジャミング事務所所属の人気アイドル。
素顔は短髪のオールバックであり、撮影時には金髪のかつらをつけている。
撮影初日からいきなり監督と優李の思い付きで全裸マントにされそうになり、一度は拒否するも監督に説得されて承諾。
野望への一歩とはいえ、思い切りすぎたせいか脱いだあとしばらくの間テンションが変にハイになった。
この時に監督の発した「今ここでアイドルから役者に羽化するんだ!!」という言葉が気に入ったのか、「羽化する」「羽ばたく」という言い回しを多用するようになる。
ちなみに、劇中の描写からジャミング事務所は菱川の全裸マントをNGにしなかった模様。まぁ菱川ファンの視聴者が大喜びしたから結果オーライである。
以後は吹っ切れて大概のことには動じなくなり、自ら撮影のアイディアを発案することもあった。
ユリアを連れ去る回想シーンの撮影で尺余りが発生して急遽アドリブによる追加シーンの撮影を求められた時には、
「女の心がわりはおそろしいのぉ!!」という会心の台詞を思いつくなど優れた悪役の才能を発揮。
……発揮しすぎて女性スタッフ達にドン引きされ避けられてしまい、リアクションされるたび内心気にする憂き目に遭うも、
一時的なものであったか、あるいはその後の撮影場面の覚悟が認められたか、オールアップ時には女性スタッフから花束を受け取っている。
なお、当初はシンも爆殺する予定で爆死シーンも撮っていた。
本人も割とノリノリだったのだが、ジャミング事務所から「タレントのイメージを毀損する」という理由でNGにされてしまう。
何日も徹夜して爆死人形を作った特撮班が可哀想である…。
そこで「北斗神拳を喰らっても爆死しない」死に方として、人形に話しかける可哀想な人のイメージを気にしていた菱川自身の考案した「ユリアの後を追う形で自身も飛び降りる」という展開が採用された。
予定していなかったシーンなうえ、当然相当な勇気がいる撮影。しかし北斗の拳という作品、シンという人物への情熱を持って完遂せしめた彼は、羽ばたいたと称するに相応しい。
ちなみに没になった爆死シーンは何気に【北斗十字斬を喰らったらどのような死に方をするのか】が初めて披露された瞬間だったりする。
その後は演技が評価され役者としてブレイクし、忙しい毎日を送っている。
しかし、ジャギ編にて諸事情でスポンサーが降りそうになった際には別のドラマの撮影の合間を縫って駆けつけ、
即興の演技を求められてもすぐさま対応する(曰く「俺がシンを忘れたりしないさ」)などこのドラマへの思い入れはとても強い模様。
恐らく、今後もう一度来てくれるのであろう。
令和の時代にはハリウッドスターになっているようで、彼の行動が事務所の方向性の広がりに繋がった様子。
特に全裸マントは事務所内で伝説になったらしく、後述のリメイク版でシンを演じた俳優は「越えるつもりでやらせていただきます!」と最初からノリノリであった。
・中沢友美(ユリア)
ヒロイン役として起用された清純派アイドル。
優李が「デビュー作から応援している」と語っているので演技の経験自体はあるようだが、ドラマへの出演は『北斗の拳』が初めて。
当初は背後から迫りくる菱川の裸(股間)に驚いて泣き笑い状態になってしまうなど苦労していたものの、
結果的にそれがユリアを極力喋らせないことで心が壊れていることを表現するというアイディアに繋がった。
その後は現場の空気に染まってしまい、徐々に暴走するようになっていく。
菱川と友人達やマネージャーも交えて食事に行った際、偶然2人並んだところを写真に撮られて熱愛報道を捏造されてしまう。
本来ならばケンシロウに救出されて共に旅立つはずだったが、イメージの悪化とジャミング事務所の抗議によって降板になってしまったため、ユリアの死を自ら発案。
シンにやられてケンシロウの手の中で事切れるというシーンを撮ったものの悲劇的すぎるということでNGになり、シンが刺したのは人形だったということになる。
心が壊れて全く動かない演技が予想外の形で役立つ事になった。
最初の登場で顔がちょっと動いてたのは禁句
その後に改めて回想シーンでユリアの死を描くことになったため、バラエティ番組用の飛び降り台の上に
監督に無断で
セットを作ってもらい、
そこから飛び降りて死んだという事にして自らダイブした。後にこのセットはシンの飛び降りシーンにも流用されることになる。
なおこの際に「いつかまたここに呼んでください」と監督に告げており、ナレーションからも後に意外な形で果たされることになると説明された。
原作の展開から考えると別に生身の俳優を使う必要がほとんどないポジションであり、
どのようにしてあのような展開になってしまったのかという本作の構成力の高さをうかがわせるキャラであると言えよう。
・安西守(バット)
高い演技力を持つ子役の少年。
生意気なバットを演じているが本人は礼儀正しく素直な性格。
グロを前に泣き出してしまう子役もいる中(当然である)、その初回に立ち会いながら耐え、ある種異様な空気の中作り出していく“北斗の拳”に適応するなどそういう意味でも有望な子。
思い入れが強い分、ケンシロウにバットが人間扱いされてないと思った際には呆然としたり、バットがレイの回想にいないよう編集されているとわかった際には友人の前で半泣きになっていた。
長台詞でも一言一句間違えずに演じるなどその演技力でバット役を完璧にこなしてきた。
実際、監督たちはバットの演技に何の不満も持たず、むしろ感心していたほど。
だが、周囲の役者やスタッフがアドリブで作品の面白さを高めているのを目の当たりにしたこともあって本人は台本通りにしか演じられていないことに苦悩していた。
ジャッカル編冒頭のぶっ飛ばされるシーン撮影中についに決心し、演技をより過激に変更。遂には監督に直談判してワイヤーアクションで飛ぶに至った。
さやかを撮影現場のレギュラーかつ子役同士ということもあってか異性として意識しているふしがあるが、現在のところ脈なし。
・氷室さやか(リン)
子役の少女。
年齢の割にキャリアは長く、スタッフや役者の大半を下に見ているなど生意気な性格だが、それを認めさせるだけの演技力や芝居への熱意を持ち合わせている。
実際もうすでに4本も映画に出演しているらしい。
また女優としてのプライドもあってかメソッド演技には否定的。
最初の放送時はそれほど出番がなかったため、続編制作決定にあたってヒロインのユリアがいなくなったことをこれ幸いと自ら売り込んでメイン格に昇格させた。
このときヒロイン役として自分を売り込んだために周囲からは歳の差を指摘され、
採用を決めた脚本家の武藤にもさすがにヒロインにはしてもらえなかったが、本人はメインキャラになれるなら十分だった様子。
宣言通り主役を喰う勢いで天才子役ぶりを存分に発揮し、周囲から絶賛を受けた。
ちなみにこのドラマを「友達に見せられない」と言ったり、同じく子役の少女(眼の前で父親を殺された少女リマ役)を気遣ったりと、
同世代の女子に対しては比較的温和に対応しているようだ。
安西のことは子ども扱いしているものの俳優として認めている様子で演技を手放しでほめたり体当たりの演技を見た後は(女優としての資本である顔の傷をつけかねない)体を張る演技をするなどしている。
他にも朽木を殴ってしまった二見にも理解を示したり、当初程に傲慢な性格ではなくなっている。
現場の空気を無為に悪くしない、という意味でも“やり手”なのだろう。
と言いながらやっぱりお子ちゃまな感性はあるらしく黒王号が現場入りした時は守と一緒にはしゃいでいた。
・木村正(ジード、デビルリバース)
巨漢キャラとして起用されたプロレスラー。
粗暴な悪役を演じているが、本人は人当たりの良い好漢(このへんの事情は
プロレス項も参照するとよりわかりやすい)。
何の補助もなくさやかを片腕で持ち上げるという怪力の持ち主。優李に自分の出る試合を見に来て欲しがっているが、多忙なこともあって実現していない。
自分の演じるシーンを撮影後も見学していたところ北斗神拳による爆死シーン誕生の瞬間に立ち会うことになり、自分の爆死を見てドン引きしていた。
この時の『展開が読めた』っぷりはもはや別の意味で伝説
後にデビルリバース役(普通の人間サイズ)として再起用されるも、数々のとんでもない撮影を経てきていた監督に迫力不足だと言われてしまい……。
その後も起用予定はあったのだが、知名度が更に上がって海外のリングに出るようになってドラマ撮影が難しくなった為、
次編の大男「牙大王」の役は、ボディービルダーの西園が演じる事となった。
余談だが、TVアニメ版『北斗の拳』においても、ジードとデビルリバースは同じ声優(蟹江栄司氏)が演じていた。
・田丸恒夫(ミスミ)
脇役専門の大ベテラン俳優。殺されるシーンの演技に定評があり、普段は時代劇や戦争もので被害者役を演じている。
悪役を演じる俳優達から尊敬されており、撮影の傍らでやられ方の演技指導も行っていた。
俳優生活最後の出演作として『北斗の拳』を選択し、その演技力で世紀末の無慈悲さを存分に表現した。
その姿は見学していた優李が「本当に殺されそうに見える!」と驚愕するほど。
また岩山両斬波や北斗残悔拳は
彼の何気ない呟きがきっかけとなって誕生することになる。
性格はとても落ち着いており、優李がアドリブで墓に種を蒔いたシーンでは周囲が驚愕する中「
世紀末農法は過酷だのぉ…」と至って冷静なコメントをした。
あれは農法とはとても言えないのでは…
モチーフは「5万回斬られた男」の異名を持つ、時代劇で長年切られ役を演じ続けた名脇役、福本清三か。
・柳乃海虎雄(ハート様)
元力士の俳優。
自身より体格の良い先輩らから過度のシゴキを受けて暴力がトラウマとなり引退した経歴を持つ。
そのため暴力シーンに怯えてしまい撮影が難航していたが、守と優李のアイデアで
監督に無断で爆死用の人形を肉襦袢に改造して着ることで克服した。
このアイデアによって3メートルほどの巨大な体格と「拳法殺し」のリアリティが増すという副産物もあったが、悲劇の始まりでもあり……
ドラマ撮影を通じて恐怖を克服、「ミスターハート」を名乗ってプロレスラーに転向する。
解説に「格闘技より過酷な撮影とは一体…?」とツッコまれた
本作での「ひでぶ」は「ひでえ」と叫ぼうとして弾けたという事になっている。
また、(連載順では)ケンシロウに初めてのダメージを与えたキャラのためか、そのシーンの撮影も描写されている。
ちなみに放送後、小学生の北斗の拳ごっこで太った子供がハート様を演じたが、漫画『北斗の拳』が大ヒットした時期に日本全国で実際よく見られた光景である。
それだけハート様がファンに与えたインパクトは絶大で、何せ当時の日本中の太った子供のあだ名が『ハート』にほぼ統一された程である。
・坂本(ジャッカル)
芸能界理想の父親ランキング一位の人物。
……が、ジャッカルの扮装をしたことで子供たちから怖がられ逃げられる羽目に。明らかにミスキャストでは……?
ただ、これで吹っ切れたことで容赦しない非道な演技につながっている。
また、初登場シーンで何故か酒場で水風呂に入っていたが、これはジャッカルを力のある人物として描く為である。
尤も、本人は長時間水風呂に入れられた挙げ句、守の名演技に感心した監督たちに完全に忘れられる等散々な目に遭ったが。
最終的には北斗の現場に染まったようで、大量の火薬で自爆する最期を自ら提案した。
余談だが、部下であるフォックスについては登場せず。
跳刃地背拳をどう撮影したのか気になる読者も多かっただけに悔やまれる。
「人を殺した後は小便がしたくなる」のくだりに触れる可能性があるのがまずかったのだろうか。
一方で「
あべし」の元ボクサーは「ひでぶ」と並ぶ名断末魔を産み出した存在のためか登場。
本作ではケンシロウの「こいつから殺していいのか」に驚くシーンは優李がアドリブで発した台詞の過激さに対する素の驚きとして描かれている。
ちなみにメイクで強面になっているが素面はその評判通り穏やかそうな顔である。
元ネタの芸能人はいないと思われるが、「素顔は良きパパだけど役のイメージが強すぎて怖がられる」は実際にスーパー戦隊や仮面ライダーのOBにいるため、『撮影伝』だからこそのギャグシーンさえ離れてしまえば実はそんなにおかしい話ではない。
・嘉崎将真(レイ)
シーズン2にてジャミング事務所が大量に呼び寄せたアイドルの1人。
オーディションにおいて過去にやっていたバレエの動きを披露し、
「う…美しい…」と制作陣を魅了したことで当選した。
寡黙で無愛想ではあるが笑顔以外の演技はちゃんとできる人物。
笑顔は…うん、不敵な笑みはよくできてるよ。
当人としてはドラマよりも舞台に出たいらしく、その不満も相まって押し黙っているようだ。
まず笑顔をどうにかするべきでは……
一方で感性は常識人のそれであるため、世紀末な撮影現場に対して脳内で逐一ツッコミを入れており、
内心ではうろたえたりドン引きしてる自分とは違って、撮影開始当初から参加し役目をこなしている子役二人に対しても一目置いている。
朽木のメソッド演技にも興味を持つなど、役者としての熱意と勉強熱心な姿勢は確か。
その事もあって再登場時には北斗の拳の現場を気に入っている節もある。
寡黙な性格に反してお笑い好きらしく、「8時だよ善人集合」よりは「俺たち巨人族」が最近はお気に入り。
脳内ツッコミスキルもそれによるものだろうか。
当初は原口監督にダメ出しされたアイリとの再会シーンにおいて優李との特訓・二見からのアドバイスを受けて一皮剥け、世紀末な撮影現場にも馴染むようになった。
ジャギ役の朽木とのトラブルで一時降板していたが、トキ…アミバ編終盤で復帰を果たした。
…と同時にその頃に橘に対しても特別な思いを抱いているのか、彼が挨拶も程々に別の役者と話し込んだ時は自分でも判別のつかない感情に襲われた。
ラオウ編になると完全にメソッド演技をものにしており、多くの出演者を驚かせるも脚本上突然死ぬということがわかった際には昏倒してしまった。
その後はメソッドのデメリットも克服。
レイになりきることで映画撮影による現場の分裂や事務所による死亡シーンの誓約も見事に乗り越えレイの感動的な死を演出した。
念願の舞台に進出することも決定したが、初めはステップアップのためだったレイ役に関してはまり役として愛着が湧いており、最後は自分の中で「北斗の拳」が大きくなっていたことを実感していた。
ちなみに「お前のようなでかい村娘がいるか(180cm超)」「そういや野盗から奪ったアレ何食ってんだ?」と、よくよく考えてみると奇妙なシーンについてもきっちり拾われており読者を爆笑させた。
・二見良子(マミヤ/回想ユリア)
シーズン2のヒロインオーディションに紆余曲折を経て当選した女性。
過去に「ヤンチャ」していた経歴を持ち、その実戦経験によって大抵のアクションはこなすことが可能。
人気ドラマのヒロインという千載一遇のチャンスに全てをかけるべく、全力で撮影に挑んでおりその演技には目を見張るものがある。
実はかなり子供好きらしく、現場に来た園児たちを見て一貫してかわいいとしか考えていなかった。
また色恋には無縁だったらしく、役者陣による自主的な台本読み合わせの際にはレイの熱い告白台詞に心臓を射抜かれてしまい正気に戻るまで時間を要した。
こちらも「言うほどユリアに似てなくない?」といった疑問に、ちゃんとそうなった理由が描かれており読者をうならせた。
なお回想シーンではどうするのかという新たな疑問が生まれたが、そちらは彼女をメイクで友美に似せることでユリアも演じることになった、と補完されている。
また、マミヤといえば色んな意味でどう描くのかというシーンがあり、当然のごとく読者の間でその話題が持ち切りであったが、
実際にそのシーンが描かれた話は二見の熱意が伝わるものとして好意的な感想で占められている。
そして原作再現とはいえ「海苔か謎の光加工が必須と思われていたニコニコ静画版でも無修正」だった事には全読者が驚いた。
でも流石に一緒に入浴していたさやか(リン)の裸はオミットされた。
ちなみに
でかいババアに気付かなかった理由だが、まず最初の想定が「脅した老婆にケンシロウ達の相手をさせて、その後ろから蛮族が騙し討ちする」という内容だったが、
偶然にも刑事ドラマに似たようなシーンがあった為に悪役役の1人がでかいババアに扮する事となった。
…が、流石に不自然過ぎるのだがケンシロウ役の優李が「
偽物に弱い主人公」と見られるのを嫌がった為に騙される役がマミヤに回ってきたという因果である。
なお監督いわく「可愛いからOK」との事、それをマミヤにやらせるか。
さすがに二見も嫌がって実はそのあとのシーンでアドリブを入れていたのだが、当然のごとくNGにされた。
元々落ち目の役者だったということもあり、ラオウ編でのマミヤ死亡の予定や退場後での映画撮影に関してはかなり不満だった様子。
現場での紆余曲折を経て、死亡予定だったマミヤはラオウ編でもユダ編でも生き残る事となったが、レイの遺言に従い「生きて戦いから離れる」という形で、死亡する事なく退場する事に。
そしてレイの最期のシーンで舞台の死兆星の電球がタイミング良く切れるというミラクルなアクシデントが起こり、レイが彼女の死の運命を変えたという感動的なシーンになった。
本人としても綺麗に退場(卒業)できたことや北斗の演技が評価され新しい仕事も決まったことで納得の上でのクランクアップとなった。
恐らく、彼女も今後もう一度来てくれるだろう。
・加山(アイリ)
シーズン2で登場した俳優。レイ役の嘉崎とは全く似ていないが、美人が必要との監督の意図で起用された。
ドラマ出演の他にCMの仕事もあるなどなかなかのポジションと思われる。
作中では一貫して世紀末に染まる事無く常識人キャラであり、特に嘉崎がメソッド演技を習得してからは困惑を見せる場面も多かったが、周囲との仲は良好。嘉崎がレイの退場を知ったショックで離脱した際には原因の監督に怒りを見せていた。
嘉崎とキャラがかぶっていると現場で朽木が主張した際には「(容姿が同じだのと)どこからその自信が来るのか」とあきれたり、白髪のメイクした大石が体調の不良を述べた時にはおじいさん扱いしするなどお茶目な一面を見せている。
…とまあそんな彼女だが、初登場時は名前が間違えられていたり、嘉崎と二見の卒業時に同時に彼女も卒業のはずなのだが特にクローズアップされなかったり、各種辞典サイトでも紹介が長らくスルーされていたりと何かと不憫な人物である。アイリ自体がそこまで出番が多いキャラでは無いので仕方ないのだが…
・朽木茂(ジャギ)
北斗兄弟編にてケンシロウ相手に立ちふさがる最初の兄弟として抜擢された俳優。
主に舞台で活躍する悪役演技に定評がある役者で、東武警察劇場版での怪演ぶりが評判。
一方で素行の評判が悪く、いかにもジャギといった横柄な振る舞いや女性スタッフへのセクハラなどをカメラ外でも行う問題児。というか、
北斗の拳の悪漢そのまんまである。
東武警察劇場版の撮影でも悪ふざけで周囲に迷惑をかけていた模様。
……と思われていたのだが、実際には役に徹底してなり切ってしまう「メソッド演技」の性質の持ち主。
上記の素行の悪さもあくまで役になり切ってのものであり、コメディ作品の出演時にはそれがプラスに働いていたこともあったらしい。
完全に役との接続を切った状態の彼は一人称が「僕」の、丁寧な言葉遣いで話す真面目な人格の持ち主である。
だが、悪役になり切り過ぎて数々の迷惑行為を行った事、当初は監督らにメソッド演技の説明がちゃんとされてなかった事から、スタッフ・俳優陣両方からの評価を大きく落としてしまう。
説明後もほとんどのスタッフ・俳優は「メソッド」「メソッ」「
メソ…」とよく分かっておらず、80年代にはメソッド演技があまり知られていなかったことがうかがえる。
元スケバンの二見との相性は最悪だろうと目されていて、実際にそれが裏目に出てしまうことになり……
ジャギ編終了後にメソッド演技を学びたく事務所経由でアポを取ってきた嘉崎に演技方法を教えた。
メソッド演技の話が出るまでは、今までなんだかんだ常識人の多かった本作に明確な問題児登場という形で読者の期待と不安を煽った。
結果としては彼も常識人という方向で収まったが、その設定により「ジャギと因縁のあるレイがどうしてケンシロウに置いていかれたのか」「ジャギが顔を隠す設定ができた理由」などが説得力ある形で説明され、改めて本作の展開・構成に唸らされた読者は多い。
ちなみにこの関係で、没シーンとなった扱いで『北斗』漫画作品では初となるジャギVSレイの因縁対決が描かれている。単行本の描き下ろしでは、この没シーンは後のDVDBOXの特典として収録されたことが語られている。
また、あまりに危険すぎるためか本編ではさらりと流されたが、単行本での北斗の拳FUTUREによるとヘリポートのシーンは実際に燃やしたらしい。
力を入れたメソッド演技が結果として現場でのトラブルメーカーとして評価を下げる場面があったものの、後述のヘイプロで売れっ子の柏葉やベテランの谷口も出るのが難しい東武警察に劇場版出演していたことで遅まきながら俳優としての格を見せることになった。
なおジャギの回想という形でリュウケン並びに他二人の兄も登場しているのだが、兄二人はこの時点でキャストが定まらず仮の配役。
撮影の工夫で顔を隠すことにより、本決定の役者との容姿の差異をごまかすという手法で描かれた。
この時原作でラオウ(仮)のみ台詞があるが、アニメ版ではこのシーンのラオウは本キャストの
内海賢二ではなく若本紀昭(現・
若本規夫)が演じており、仮キャストというネタもしっかり元のリスペクトがされている。
・大石博典(トキ/アミバ)
医療ドラマ『黒い巨峰』のエリート外科医役などで知られる、ヘイプロ所属の実力派人気俳優。
ケンシロウと対峙する第2の兄ということで抜擢されるが、明確な悪役は本作が初めてとのことで、撮影前から不安な様子を見せていた。
その実態は
撮影用の人形ですら気絶するほどに残酷シーンが苦手というものであり、まさかのこの現場に一番向いていない人材に監督たちスタッフは四苦八苦。
数々の調整を経て克服させることに成功し、彼自身も体当たりの演技を見せるなど世紀末撮影現場の空気に馴染んでいくが、
北斗の撮影終了後に出演予定だったドラマが流れたことで史上一、二を争う無茶ぶりが放り込まれた結果、
トキ役の他にアミバという偽物も兼任することになり、本来ならゲストキャラで終わるはずが最終的にトキとして
レギュラー入りを果たした。
ところがその矢先、階段から転落して足を負傷。現場に来れる程度には短期間で回復するが、アクションはドクターストップがかかってしまう。ストレスで若白髪が出るほどになってしまうが、この状況からトキの代名詞とも言えるあの技が生まれた。
なお演技に対しては非常に真摯であり性格も真面目で礼儀正しく、優しすぎることを除けばかなりの人格者であり、また演技力にも優れる。
駆け出しの頃に行っていた稽古代わりの一人芝居がこれまでの経験を経て「一人二役演技を撮る際に居ない筈のもう一人の役が他者からは影の様に見える」程の精度に進化した。
…だが状況が緊迫し過ぎると笑ってしまう癖があり、逆にそれが名場面を生み出している。
またメンタルが演技に影響することも多く、監督から「ある事」を聞かされた以降は不甲斐ないシーンも増えてしまい、島田によって彼の心配事が解消するまで苦労したことも。
トキについて、かねてからファンの間では「本当はジャギ同様に悪役として倒す構想だったのがテコ入れで善人化することになり、そのためにアミバが生まれた」という噂が有名であったが(
マンガに関する都市伝説も参照)、
令和初のスピンオフで公式に取り上げられるとは、海のリハクの眼をもってしても読めなかったことだろう。
読者の中には本作の開始時から、この顛末をどう描くのかを期待していた人も多いのではなかろうか。
一方で本作と同時期にアミバを主役にしたスピンオフも連載されており、原作を知らない読者には「まだその設定が無いため普通にトキとして扱われている本作の人物」と「それと同じ姿をしたアミバというスピンオフ作品の主人公」が広告で並ぶことになって混乱する人もいるとか。
・島田雅樹(ラオウ)
オリンピックにも出たことのある元バレーボール選手で、210センチという日本人離れした身長を誇る。
その性格は
橘を上回る天然&脳筋。
経歴ゆえか芸能界の内情に疎く、ケンシロウらが肉襦袢
や爆死人形を着込んで撮影していると知らずに、オーディションが行われるまでの3ヶ月間を全力で肉体鍛錬に費やしてしまう。
しかしその圧倒的な存在感によって他の候補者が全員辞退したため、見事ラオウ役を勝ち取った。
また選手時代から験担ぎを兼ねて星占いを嗜んでおり、これが武藤が「死兆星」の設定を思いつく発端となる。
迫力ある風貌とは裏腹にたいへん気さくな人柄で、動物も大好き。この辺りはラオウの代名詞である黒王号のエピソードでも発揮されている。
初の撮影現場においては、サーカス団から借りてきた本物の虎を猫のごとく可愛がって撫で回し、虎にも自分の同類と認識されて懐かれるというものすごい度量の大きさを披露。
一方で、虎の人形を破壊するシーンにおいてはバレーのトスやアタックの動きで躊躇なく首部分を引きちぎり、監督の原口から「どんなシーンや演技でも任せられる」と太鼓判を押される。
初仕事とは思えない堂々たる立ち回りでスタッフと読者の心を掴み、北斗の撮影現場への適性の高さを遺憾無く見せつけた。その人柄をあてがきでラオウを描かれるなど令和でも伝説的存在であるようだ。
一見するとただのおバカキャラのように見えるが、体育会系らしく現場の上下関係は弁えており、礼儀もしっかりしている。
自分が原因で嘉崎が倒れた際には謝罪して復帰後も気にかけているなど、周囲への気配りもできる好漢である。
役者としても、虚勢を張りながらも勝つために手段を選ばないラオウのキャラを早期にものにしており、他の出演者や視聴者からの評価も非常に高い。
しかし演技に対する知識はまだまだ不足しているようで、嘉崎の演技を見てメソッド演技とは一人称を変えるものという斜め上すぎる解釈をし、例の一人称事故を引き起こしてしまった。
・ブラックキング号(黒王号)
元はばんえい競馬で活躍していた巨漢のばん馬。ラオウ役の島田の巨体を乗せるには普通の馬では無理ということから白羽の矢が立った。
とても頭が良く、島田とは初対面から馬が合い、「拳王は決してひざなど地につかぬ」のシーンでは自ら歩み出て傷ついたラオウに寄り添う(つまり動物側のアドリブ)というファインプレーを見せた。
普段はいたって大人しく優しい性格の馬であり、撮影現場では役者やスタッフから人気を博している。撮影の合間には子役達を背に乗せ、のんびり歩くことも。
現実においても「黒王号はその体格からばん馬以外にあり得ない」という意見はかねてから支持されており、そうした流れに沿った展開となった格好である。
また、ばん馬はその風貌に反してたいへん大人しく人間に従順なことで知られ、作中での描写を違和感のないものとしている。
ちなみに、本作での黒王号登場後に、現実のばんえい十勝において北斗の拳とのコラボイベントが行われ、本当に黒王号がシンボルキャラクターに起用されている。
・渡辺サトル(ユダ)
ジャミング事務所所属の現役アイドル。
コンサートにおいてはセンターポジションで歓声を浴びる天性の美形で、若手らしい真面目さと若干の気弱さを備えた青年。
先輩方への尊敬の念はたいへんに深く、特に嘉崎に対しては憧れ以上の感情を覗かせることも多い。曰く
「思わず追っちゃいますよ」「あんな人他にいないです」。
ここまでのジャミング関係者は方向性の違いはあれど演技に興味・関心を持っていたが、サトルはバリバリのアーティスト路線であり、当然ドラマ撮影の現場も初めて。
ゆえに現場入りの際にはジャミングのゴリ押しと陰口を叩かれる有様であったが……いろいろな状況が奇跡的に噛み合い、
彼の内に眠っていた才能が開花する。
まずは現場に出るため女性スタッフによるメイクを受けるが、何の因果か彼女はサトルの大ファンであり、持てる技術を総動員したとんでもなく濃いメイクを施してしまう。
しかしそれがむしろ「今までの北斗にいなかった人材」と高評価され、同じ美形キャラのレイと差別化できるということもあってデフォルトとなった。
そしてこのメイクに相応しい人物像を彼なりに突き詰めていった結果……
- 某歌劇団を参考に立ち居振る舞いを考え、自分なりの美しい演技を見せてスタッフの心を掴む
- 前述の女性スタッフから美しさを称賛されたことで、自分は美しいという思い込みこそが今の自分に必要だと思い立つ
- 手鏡を使って「自分は美しい」とひたすら自己暗示する
- 監督から「これではただ美しいだけだ」とダメ出しを受け、インパクトを出す為に先輩の菱川に倣って自分も脱ぐ
などなど、初現場とは思えない強烈なインパクトを残すに至る。
デビュー作でありながらも演技に対する情熱、そして役者としての才能は本物で、その本職にも劣らぬ努力と根性は原口監督からも太鼓判を押されている。
しかしユダの役作りを頑張り過ぎたことと嘉崎に対する強い想いが変に作用したことで、当初の想定である「権力に固執する野心家」というイメージから乖離し過ぎてしまう事態に。
そこで監督のアイデアと最初の演技から得たヒントを元に、「美しさへの執着と嫉妬」を全面に押し出す方針へと転換。
血を流すギミックと血化粧のアドリブも見事に嵌まり、嘉崎への憧れをレイへの嫉妬へと昇華することに成功。役者として一皮剥けた姿を見せた。そして後半の台本の全編書き直しが確定した。また武藤さんがキレる&徹夜する事態になるのだろう……
一方で嘉崎への想いはだいぶ危ない方向に進んでいってしまい、映画化決定の際には「北斗の立役者である先輩が映画に出られないなんておかしい」とブチ切れる一幕もあった。
その後も脚本や演出に対する提案を果敢に行い、物語のクオリティアップに大きく貢献。
最期は「両腕を切り落とされ、レイも跳ね飛んで離れる」という外道の末路らしい想定だったが、お馴染み岩瀬さんによる現場介入や、本人の嘉崎に対する思い入れからのアドリブにより、
レイの手刀を自ら突き刺し、憧れ続けた男の胸の中で果てるという物悲しく切ない演出になった。
オールアップの後は現場での努力と演技が評価され、嘉崎と共に舞台の仕事が決定。初出演・初演技で見事に当たり役を引いたと言えるだろう。
果たしてちゃんとアイドルに戻れるのだろうか
なお彼のめっちゃツッコまれている紋章のスペル「UD」は最初はちゃんと「JD」で資料にも英名は「Judah」と書かれていたが、指示書を複製する際印刷機の故障故に手書きしたスタッフが不器用(かつゲシュタルト崩壊)だった為になんかUDっぽくなってしまい、そのまま小道具まで作ってしまった。
作り直す時間もないので「日本人はユダのスペルなんか知らない」ということでそのまま押し切ることになったという流れである。
なお、監督の書いた元々のもスタッフがそこそこUDだったと言い訳するくらいには割とUDだった。まあ、浦野はちゃんとJと認識していたので監督の言う通り確かに言い訳ではあるが
単行本では放送を見た武藤も「なんでUDになってるんだよ!」とツッコんでいる姿も描かれている。
・柏葉隆吉(サウザー)
ヘイプロ所属の売れっ子俳優。
既にいくつものドラマで主演を張っている超実力派俳優であり、そのベビーフェイスも相まって「正義の味方」のアイコン的な存在となっている。
本人の人柄も誠実そのもので、好感度調査でもトップになるほど。
なお、読者からは「このベビーフェイスで銀河万丈みたいな声なのか……」といった感想が相次いだ。
劇場版「北斗」の撮影にも正義側のキャストとして呼ばれ、ケンシロウの仲間である
シュウ役を演じる……はずだったが、
ヘイプロが
「北斗の拳は敵の方が目立つので柏葉を敵役にして欲しい」という要望を
後から飛ばしてきたことで状況が一変。
今回の撮影にかなりの額を出資しているヘイプロの要望を無下にするわけにもいかず、否応なしにサウザーを演じる羽目になってしまった。
なにせここまで悪役を演じた経験がなく、顔つきの問題や生来の優しさもあって役作りにはたいへん苦慮していたのだが……
入れ替わりでシュウ役に嵌め込まれた悪役俳優、谷口のアドバイスが彼を救うこととなる。
なおサウザーの特徴的な額の膨らみであるが、この漫画では「演者である柏葉本人の額にイボのような膨らみがある(=特に設定上の理由がある訳では無い)」という事になっている。
そのため、作中では橘が心のなかで「あれなんだろう、触りたい」と興味を示し、後に「取るとツキが落ちる」「仏のイメージがある」ということでそのままにしていることが語られいる。けど触らせてはくれない。
なお、上記のように当初は谷口がサウザー役であったが、谷口の容姿やサウザーの設定からして、島田演じるラオウとキャラが完全に被っていた可能性が高く、柏葉に入れ替えたのは結果的に大英断だったと言えるだろう。
・谷口陣(シュウ)
ハウスダストプロモーション所属の俳優。
任侠映画等で様々なワルを演じてきた生粋の悪役であり、「これまで北斗に縁がなかったのが不思議」とまで言われる強面の男。
普段から不穏なオーラを出しまくっているようで、初対面の武藤は「裏社会の人!」と本気で恐れ戦いていた。
劇場版「北斗」においてサウザー役を務める予定だったが、ヘイプロの横槍によって柏葉がサウザー役となり、入れ替わりでシュウ役を務めることとなった。
だがあまりにも悪人面過ぎて味方と思えない、特に目つきがその筋の人にしか見えずどうしようもないと出演者もスタッフもお手上げ状態。
紆余曲折あってなんとか解決策が見出されたのだが……まあ、原作のシュウがどういう戦士かを思い出してくれれば大体わかるだろう。
なおこの配役変更で「そこまでやったシュウの事を忘れていた」という、せっかく拭えたケンシロウ天然ボケ説が再燃した。
凶悪な顔で態度もふてぶてしいが、根は優しく面倒見も良い。
「笑顔が怖い」と嘆くスタッフたちに「そこまで言われると傷つくねぇ」とこぼす一幕もあり、顔に似合わぬユーモアも備えている様子。
ヘイプロの横槍に振り回された被害者の立場でありながら、悪役の演技に悩む柏葉に「これまで演じた正義の味方達と戦った奴らをイメージすればいい」とアドバイスを送り、
見事彼が役作りを成し遂げた際には屈託なく褒め称えるなど、度量のある立ち居振る舞いを見せている。
役者としての技量も確かで、自らの経験と設定の掘り下げから短期間でシュウの役作りを完遂。
「レイの親友」発言は彼のアドリブということになり、ベテランらしい実力の高さを早くも示してみせた。
・モヒカン役・モブの皆さん
ある意味「北斗の拳」の象徴ともいえる名脇役たち。時代劇の悪役を務めるベテラン俳優や巨漢のプロレスラーたちが演じている。
役としては弱者をいたぶる極悪人だが、カメラが止まれば皆が
いたって真面目な常識人であり、監督らの暴走・無茶振りに対して困惑することもしばしば。
事実上の突っ込み役・驚き役として読者の思いを代弁してくださっている。なお一番背が高いはずの島田よりも大きな姿で描かれている俳優もいるが、
原作再現なので気にしてはいけない。
ラオウ編に入った頃には「
北斗に出たら何か目立つ事して爪痕を残そう!」との意気込みが広まっており、数々のアドリブ断末魔や
でかいババア、
「
汚物は消毒だ~!!」といった迷シーン・迷セリフが産み出されている。
現実においても、強面の俳優を揃えたグループとして「悪役商会」が存在する。
「悪役を演じる俳優が犯罪を犯すなど以ての外」との理念で知られ、罪を犯した役者は問答無用で脱退という厳しい処置を取っている。
ボランティア活動にも熱心に取り組むなど、悪役なのに真面目な好漢揃いと専らの評判である。
また、プロレスにおいても凶器での攻撃やリング外での客弄りといった悪役ムーブは塩梅が難しく、一歩間違えれば大惨事につながってしまう。
ゆえに「悪役は加減のできる善人にしか務まらない」と古くから言われており、本作での描かれ方とも一致するものとなっている。
ちなみに「北斗に出たら何か目立つ事して爪痕を残そう!」のくだりはおそらく当時モブモヒカンも演じていた
ナレーターの千葉さんが元ネタ。
実際に千葉トロンがこういった発言をしたことから以降のモヒカン班は「ケンシロウにやられるシーンだけでも自分が演じているのがわかるように」として
ウケ狙い・ボケに走った断末魔を言うようになり、最終的には北斗の拳TVシリーズの名物となった。
スタッフ
・原口勝夫
『北斗の拳』の監督。ある意味、本作の真の主人公。あらゆる意味でこの男の存在なくして本作は成り立たない。
アクション映画や特撮の撮影に長けているベテラン。常にサングラスと帽子を身につけている。
しかし『北斗の拳』の前は低予算でワニのモンスターパニックというB級映画の撮影をしていたりしたため、いつか潤沢な予算で映画を撮ることを夢見ている。
常識では考えられない発想を作品に盛り込む上に、新しいアイディアが浮かんだりするとその場で取り入れてしまう。
『北斗の拳』でもその性格はいかんなく発揮され、俳優陣を苦労させていた。そのため、マスコミに監督の力量が疑問視されるゴシップ記事を書かれたことも。
演技より素のリアクションを重視している面もあり、ジャギの素顔やフウガとライガなどあえて出演者に何も知らせず撮ることもしばしば。
話が違う、役者の演技力を信用してくれ等の苦言を呈されることもあるが、方針は大きく変えていない。これがトラブルに発展することも……
破天荒な一方で潔い性格でもあり、何かあった際の責任は取ると公言している他、
監督である自身を通さずキャストやスタッフの間で勝手に脚本を変えられたりしてもツッコミこそするものの取り入れてしまう。
シーズン2の撮影が始まった直後にアクションの修行のために休みを願い出た優李に対しても、文句の一つも言わず気持ちよく送り出している。
このように当初は撮影現場を振り回す側であったが、やがて現場に染まってきた俳優陣やスタッフ達がぶっ飛んだアイディアを提示したり、
俳優の思わぬ不調や現場トラブルで彼の方が困惑することが増えつつある。
モデルはもちろん、漫画『北斗の拳』の作画担当の原哲夫。
●北斗神拳による爆死
当初の設定ではケンシロウは発頸を武器とする拳法家であり、相手も目や鼻から血が噴き出す程度の予定だった。
しかし人形を使っての撮影中に血糊を流すパイプが絡まったことで圧力が上昇し、人形が爆発。それを見た監督はドン引きする周囲をよそに演出として取り入れることを決めた。
この変更のせいで後のシンの爆死シーン関連でジャミング事務所から発頸と聞いていたのに先に契約違反したのはそっちとツッコまれることに……
●革ジャンを破るケンシロウ
最初は優李自身に腕力で破らせようとしたが、当然ながら不可能だった。
そこで筋肉の盛り上がりで破ることを思いつき、革ジャンに四方八方からワイヤーを巻き付けてウインチで引っ張ることに決定。
優李はビビりまくっていたが逆に切羽詰まった表情と台詞が凄みとなり何とか成功する。
以後、慣れてきたのかノリノリになっていくのだった。
●
断末魔の悲鳴
ハート様戦撮影時にそれまでの対決を見返して「悲鳴が弱いのが物足りない」との結論に至ったため、「力強く響く悲鳴」をリクエスト。
ハート様役の柳乃海が爆死ギミックそのままの人形を着ぐるみとして着込んでいたために
着たままで爆破して悲鳴を上げさせる
という撮影を発案。
柳乃海の了承を得ないまま強行
して「いてえよ」と叫ばせようとしたが、爆発の瞬間に「ひでえ」と言おうとしたのが爆発によって「ひでぶ」になってしまった。
その台詞に「新しい日本語が誕生した」とスタッフ一同に衝撃が走り、以降様々な断末魔が誕生するのであった。
●南斗獄屠拳
当初は拳と手刀の応酬だったのだが、普通過ぎるからとNGに。
そのときに友美が演劇で見たというワイヤーアクションの話を聞いてワイヤーによる飛び蹴りの応酬に変更。
撮影終了後に「キックなのに『南斗獄屠
拳
』っておかしくないか?」と言い出したが、
長時間吊られて疲労困憊していた優李と菱川に撮り直しを拒否されたため、キックに見せかけて手刀で攻撃する技という設定に落ち着くことになる。
当時のドラマは本来オールアフレコなんだし、セリフだけ撮り直して差し替えればよかったんじゃないですかね
●マッド
軍曹
演技指導で呼んだ
本物の在日米軍軍曹を、日本語が上手く見た目と声も良いからとまさかの起用。
さらに訓練シーンも軍曹が教えてくれた米軍式のものをそのまま使っている。
●20m級デビルリバース
デビルリバースとケンシロウ戦闘シーン撮影時にデビルリバースの迫力が足りないとのことから、特撮班にハート様の時と同じく着せる用の人形制作を依頼するも、特撮班のスタッフからは簡単には用意出来ないと言われる。
そこでスタッフが代案として提案したのが、倉庫に置かれていた巨大なゴリラの人形であった。
制作班によると数十年前にアメリカで大ヒットした巨大ゴリラ映画に便乗して企画され、日本でも製作されることになったが、本物志向という理由で原寸大の巨大なゴリラ人形を製作したため予算を使い切ったことで結局映画は製作中止になってしまい、長年に渡って倉庫に放置されていた。
一度はその余りの大きさから、大きさの理由を示すのと世界観との擦り合わせが困難になり、視聴者が疑問を抱いてしまうとの理由から使用を躊躇っていたが、プロレスラーでもある木村からの助言で使用することを決断。2週間かけて巨大ゴリラ人形をデビルリバースに仕上げて撮影に使った。
●ケンシロウVSレイ
牙大王編で2人が戦うシーンがあるのだが、アイドルの顔を殴るわけにはいかないので撮影時ではレイは顔面へのパンチをすんでのところで避けている。
が、いざ放送(原作)になると思いっきり顔面をぶん殴られているレイが映っていた。
この件については3巻の描き下ろしで触れられており、朽木が騒動を起こした際に嘉崎を殴ったシーンが偶然カメラに収まっていたためそれを流用したとのこと。
当然こんな映像が残っていたら大スキャンダルになるため浦野はすぐに消すよう指示したのだが、原口監督は「本当に殴ってるなんて逆に思わないから滅茶苦茶リアルだと思ってもらえるんだよ!!」と強行。
実際視聴者も「本当に殴ってるわけがないし」と困惑しつつも流してくれたので事なきを得たようである。
●シェルターの女性と子供達
本来はシェルターに入ったはいいものの開閉レバーが折れていて閉じられないため、責任を感じたトキが真っ先に出て行き外からシェルターを閉じたという設定で撮っており、OKも出していた。致命的な欠陥じゃないかとかツッコんではいけない
だが撮影現場にヒーロー特撮番組『密林小隊プラトマン』の撮影を見学に来たという園児と引率の園長が間違えてやってきて騒ぎになっており、プラトマンの撮影に間に合わないことから代わりと言っては何だがと人が死なない回なので見学してもらうことにした。
本来子供に見せてはいけない番組である北斗の拳だが、園児たちも断片的に知っていることを知った原口は、せっかくなので何人かエキストラで出てもらおうかと提案。
しかし園児たちは全く言うことを聞かず、園長含め全員がシェルターのセットにぎっちり収まってしまう事態に。
とりあえず前側の園児と園長に衣装を渡して演技をしようとしたが本当にぎっちり収まっていたため、もうちょっと詰めてもらってなんとか二人分のスペースが確保できたものの抱っこなどは嫌がりどう詰めても二人までしか入れない状況に陥る。
そこで大石の助言もあって中でのやりとりはなかったことにして、園長に演技をしてもらいトキが二人をシェルターを押し込んで外から閉める、という形になった。息が合わなくて転倒したら取り返しがつかないことが起きていたのでは…?
そしてシェルターを閉じようとした大石はこの状況が面白いなどと考えていたところ、優李と対面した一瞬つい堪えられず「ニヤ…」と笑みをこぼしてしまう。あのシーンに(あ・・・笑っちゃった)の吹き出しは破壊力抜群である。
だが原口はこれを「ケンシロウと子供たちに未来を託し満足し微笑んだ」絵ヅラとして使えると判断し、先ほどのOKテイクを没にして、こちらを正式なOKテイクとした。
しょうがないと言えばしょうがないのだが、さすがにこれには絶対ツッコまれるとスタッフからさえも不満が出ていた。もちろんお茶の間から「抱っこしろよ!!」と総ツッコミが出るなど何十年も語り草になったのは言うまでもない。
なお、当初の案である「内側から扉を閉められなくなり外から閉める必要が出来た」という流れはアニメ版における同シーンが元ネタと思われる。
余談だが、単行本4巻の表紙絵はこのシェルター回の撮影シーンが描かれている。大変腹筋によろしくない絵面なので必見。
●トキの白髪
撮影中足をケガしてしまったせいでスケジュールが遅れてしまったことにストレスを感じ、頬がこけ若白髪の増えた大石を見て咄嗟に思い付いた。
そのせいで大石はこの顔をキープしなければならなくなり、老人扱いされることも。
●北斗有情破顔拳
足のケガで胡坐をかいたまま動けない大石に北斗神拳をやらせたいが、アイデアが思いつかず行き詰まってしまい休憩することにした。
その休憩中に二見と歩いていたところトラウママンごっこをしている子供を発見。
ビームを出している光景を見て「気の遠当て」という発想に至り、トキが手を挙げた瞬間に風を当て壁にヒビが入るようにした。>∩(・ω・)∩<誕生の瞬間である。
その後大石の進言もあり、「痛くなく気持ちよくなって死ねる」技として完成。ついでに「可能かどうかは俺が決める!」の名言も生まれた
●心霊台
ユダの狡猾さを出すため
ダガールを登場させたはいいがレイが後一日で死ぬ事を忘れていたため、トキになんとかしてもらうことにした。
その際の痛がる演技の際には肉襦袢に仕込みを入れてより迫真さを出させることに成功。
レイの白髪化も思い付き絶好調、朝まで撮影しようなどと口に出すほどだったが……
●サウザーの椅子
これまでの悪役は立ってばかりだったからと、サウザーの座る豪華な椅子を用意。
それを台車で転がしていくのを見て咄嗟に思い付いた。
専用の神輿バイクという名称で、そこに座るサウザーはふてぶてしく振る舞いまさに帝王の貫禄を醸し出していた。
●
聖帝十字陵
劇場版北斗の拳のランドマークであり、
監督(と特撮班)の暴走の極み。
クランクイン一ヶ月前の居酒屋で古代エジプトの特集番組を見た際に、ピラミッドからインスピレーションを得た。
その後同席していた浦野によってマットペイント、ミニチュア、原寸大のセットが準備されていたが、
なんと監督の無駄遣いで浦野(と恐らく上層部)には無断で廃工場を利用して高さ30mはあるリアル聖帝十字陵を建築してしまった。
前々から巨額の予算を投じて劇場版を撮影したがっていた監督は「ゼロから作るよりは安く済んだ」と語ったが、おかげで予算が不足して撮影が中断しかける事態に陥った。
そんな中
反省の色を見せない監督に頭を抱えた浦野はあるアイディアを思いつく…
●東部警察とのバッティング
公開日が東部警察と同日になるため上層部が延期を決めようとしていたが、監督は「熱が冷める」「東部警察から逃げたという烙印を押される」と公開日を同日にすると強行する。監督なのに!?
最終的には剃江もその熱意に押され上層部に掛け合うことを決意し、無事通ったものの業界各所に影響が出たようだ。
原口監督本人は話題になるのはいいことだと満足気にしているが……
・武藤尊徳
『北斗の拳』の脚本家。白髪のおじさん。職業上、監督と違って現場に出る事が無い。
現場判断で脚本を滅茶苦茶に改変されているものの、面白ければOKと許している寛大な人物。
とはいえ全く思うところが無いというわけではなく、恋愛要素もあるドラマのつもりで描いてたのにユリアを殺されたことに対してチクリと言ったり、
ただの大男だったはずのデビルリバースを怪物級の巨人に変えたと監督から聞いたときに凄みのある顔をしたりしている。
また、「レイが出せなくなったので、レイ関連の伏線をぶん投げてジャギとケンシロウだけが戦うよう自然な展開の脚本を
一晩で考えてくれ」
と無茶振りされた際には流石に困惑し、なんとか徹夜で兄弟同士の因縁にスポットを当てるように持っていく脚本を完成させている。
その後、「表情も穏やかで善人だったトキが極悪非道の悪人になった理由」「当初悪役として倒す予定だったトキを仲間として続投させる展開」も徹夜で検討させられる。
案の定ラオウ役オーディションの前には原口と剃江に当たってしまうほどキていたが、島田のおかげで笑顔になった。
こうして様々な改変や理不尽を押し付けられ続けたことと島田の趣味の星占いにヒントを得た結果、「馴れ合いの時間は終わって殺伐とした世紀末に戻す」と
死兆星という設定を打ち出した。
あとついでにマミヤは二見もキレるのもやむなしなレベルでクッソ雑に殺される予定だった。
こちらもモデルはもちろん、漫画『北斗の拳』の原作担当の武論尊。
ちなみに北斗の拳は当時は原氏と武論尊氏はほとんど会うことなく、編集の堀江氏が仲介者として調整する方式で連載されている。
・剃江
『北斗の拳』のプロデューサー。こちらも会談の場であろうと決してサングラスを外さない。
番組全体の大まかな方針を決めたり、現場と局上層部とのパイプ役を務める。
スプラッターやゴア描写満載の北斗の拳をゴールデンタイムに放送させたり、違約やトラブルによる事務所からのクレームも何とかまとめ上げる敏腕プロデューサー。
だが全くやらかさないかと言えばそうでもなく、ラオウの迫力はあるが一人称がブレまくったNGシーンをブレに気付かぬままに「いい作品のために僕も関わる権利がある」と独断で通すという伝説のやらかしをした。
モデルは当時のジャンプの編集者で後にコミックバンチやコミックゼノンを立ち上げる堀江信彦。
・浦野
『北斗の拳』のAD。茶髪の青年。
現場で起きる突飛な発想に振り回されている、一般人目線でのリアクション要員。
スタジオにはバイクで通勤しているのだが、ジャギ編の撮影で行き詰まっていた時にたまたまヘルメットを持っていたため撮影用にと勝手にドレスアップされてしまった。
撮影の合間もこれで通勤してたので警察に職質されてしまう羽目に。
それ以外にも色々と振り回され続けた事でかなりフラストレーションが溜まっていたが、映画撮影にあたりピラミッドに影響を受けた原口と特撮班が無断でリアル聖帝十字陵を作り上げたせいで予算が無いと言われた時には遂に大激怒。
エキストラに大人を集められなくなったため撮影が中断しかけたが、ブチ切れて完全にタガの外れた浦野はヤケクソで「小学生に校外学習という体で来てもらう」案を強行。
作業効率の悪い子供を奴隷に使う事をツッコまれた際には「大人は逆らうけど子供は従うからでいいでしょ?」という極悪非道な理屈を平然と言ってのけた。
なお元凶の監督&大道具は自分達の無茶を棚に上げて終始ドン引きしていた。
競馬が趣味なのかは不明だが、馬に詳しいという意外な一面も。
・メイク担当の女性スタッフ
その名の通り出演者のメイクを担当している女性3人が登場している。
黒髪のショートボブとパーカー姿が特徴的なスタッフは出番の割に目立たない子だったが、セクハラされたりされたりと苦労がありつつも「美男美女が多くて楽しい」と答える余裕も見せている。また、ジャギのヘルメットを褒めるなど剛毅なところも。
北斗の拳筆頭スタッフらしく、インタビューを受けた際には浦野の次に答えていた。
茶髪でセーターのスタッフは渡辺サトルの大ファンであり難色を示した撮影スタッフに食って掛かったり「ずっと彼をメイクしてたい」という事で暴走したりもした。
縁の下の力持ちらしく普段は穏やかな態度だが嘉崎が倒れた時には、加山と一緒に監督にキレている。
「全面的に監督が悪い!」
「血は何色をしているんだよ!」
・特撮班の皆さん
『北斗の拳』の特殊効果を製作する方々。回によっては「大道具」とも。本作の影の主役。
監督やキャスト陣の無茶振りに幾度も振り回されながらも、毎回きっちりと映像を作り上げてみせるプロフェッショナル。
時に彼らが暴走することもある。
・岩瀬
ジャミング事務所のマネージャー。
所属アイドル達の死に方について厳しくチェックしてくるデキる女性。
ただし彼女が守っているのは
事務所とタレントのイメージ
であるため、タレント本人の尊厳はそこまで重視されない。まあ現実でもイケメン俳優ほど過酷な役やぶっとんだ設定の役もいっぱい受けてるしね。幕末浪人の次が白血球の擬人化とか。
撮影トラブルとシナリオ変更の末に嘉崎がさっきまでセットの一部だった発泡スチロール製のレンガを齧る羽目になった際には、
止めるどころか無言でGOサインを出す等、彼女もまた順調に世紀末に染まりつつある。
嘉崎の女装を許可する際、やけに嬉しそうな表情だったのは多分気のせいだと思う。
四角眼鏡にスーツで決めたいかにも堅物な出で立ちだが、おそらく美人。
しかし容姿には自信がないらしく、急遽ドラマに出演させられそうになった際は全力で拒否していた。
事務所の元ネタが近年とんでもない問題を起こしたこともあり、彼女の言動を非難する声も聞かれるが、「アイドルのイメージを守る」というのは実際とても重要であるし、そもそも舞台になっている年代当時の元ネタ事務所はスキャンダルが発覚しておらず・また実際に厳しめのガイドラインを敷いていたことは考慮するべきだろう。
彼女の介入が結果的に演出のクオリティアップへとつながった場面も多く、読者からは「強敵と書いてともと読む関係」とも言われている。
というか原口監督がその辺り無頓着すぎるだけとも言える「あっ…んの監督!!」。
作中用語
・北斗の拳
1983年9月から金曜ドラマ枠にて放映された特撮アクションドラマ。
斬新なストーリーと過激なスプラッター描写、そしてド派手なアクションで人気を博し、平均視聴率24.8%をたたき出した伝説的な番組。
令和の時代にはリメイクが制作されている。
ちなみに、
テレビアニメ版では北斗神拳で人間が爆発するシーンはシルエットと透過光で表現されているので、
本作は
劇場版基準のグロ描写をお茶の間に流していたことになる。
しかも実写で。
当然、お茶の間が地獄絵図と化し、苦情の電話
も殺到したのは言うまでもない。
リメイク版のキャスト陣も83年版を実際に鑑賞した際、「
昭和の倫理観どうなってんだ」と戦慄していた。
劇中での描写によるとファミコンゲーム化はまだされていない様子。
なお、守の同級生が予想で語っていた北斗の拳のゲーム内容は元ネタがあるが、それらは1986年以降の発売となる。
・ジャミング事務所
大手アイドル事務所。「所属アイドルの爆死NG」など撮影において
至極当然な厳しい制約を課してくる。
北斗の拳の大ヒットと菱川の羽ばたきを受け、新キャラオーディションには有望株の男性アイドルを大勢送り込んできた。
元ネタは言わずもがな
ジャニーズ事務所。
北斗の「華」である爆死に容赦なくNGを出すため、監督らからは撮影の障害扱いされていることが多い。
しかし実際のところ、爆死以外であれば所属アイドルを裸にしようが、女装させようが、発泡スチロールを食わせようが許可ないし黙認しており、むしろ相当に寛容。
続編制作が決定した際には積極的に所属のタレントを出すよう話を持ち掛けてくる等、撮影にもかなり協力的である。
ちなみに作中には「北斗」に関わらないタレントも登場しているが、そちらもまぁ80年代中期のジャニーズタレントっぽい出で立ちである。
・ヘイプロダクション
多数の実力派俳優を抱える大手芸能事務所。
メディア関係にかなりの力を持っているらしく、折に触れて作品の根幹を揺るがすレベルの無茶振りをしてくる。
一方で「北斗」の映画に多額の出資を行ったり、無茶振りにあたっては裏できっちり根回しを済ませていたりと、決して厄介なだけの存在ではない。
「金は出すが口も出す」を地でいく事務所であり、ジャミングとはまた違った方向での苦労を監督らに背負わせている。
元ネタは「ホリプロダクション」
堀→塀→ヘイ
・隣のスタジオ
北斗の拳の撮影をしているスタジオの隣。
詳細は不明だが何らかのドラマを撮影しているらしく、しばしば北斗の拳スタッフが小道具や衣装を拝借している。
しかしそれが剣闘士のような兜(ジャギのメットのパーツに利用)や中東っぽい衣装(拳王親衛隊の衣装に利用)など変なものばかりなので、
「隣は何を撮ってんの?」とツッコミが入るのがお約束。
隣も同じ台詞を言いたいことだろう。
・東武警察
北斗の拳の仮想敵である人気アクションドラマ。無茶で危険な撮影も、ひとえに原口監督が打倒東武警察を目指しているが故である。
「爆弾処理に失敗して全員殉職」など、北斗の拳に負けず劣らずぶっ飛んだ内容のようだ。
モデルは
西部警察。
第1話では他に『必勝仕事人』『絶好野郎Aチーム』の2作品のタイトルが上げられている。
・白澤監督
世界的な人気と知名度を誇る超大物映画監督。
本人は出てこないが菱川をたきつけるダシに使われたり、マミヤの急なキャスティング変更の原因になったりと、あずかり知らぬところで北斗の拳に影響を及ぼしている。
元ネタは日本映画の巨匠「世界のクロサワ」こと黒澤明。現実だと『乱』を撮影していた頃に当たる。
余談だが、黒澤監督は代表作の一つ『蜘蛛巣城』の主人公が大量に降り注ぐ矢から逃げるシーンで本物の矢を使うなど、本作に負けず劣らずのぶっ飛んだ撮影をしていた。
結果としてあの迫力溢れる伝説のシーンが生まれたが、死にかけた主演は黒澤監督に「後でぶっ殺してやる」と激怒。後日、本当に散弾銃を持ち出して黒澤家を襲撃したという。
さらに別の俳優からも恨みを買い、乗馬撮影中に殺意も剥き出しに馬で追い回されたという。監督曰く「目に殺意があった」。
・リメイク版(北斗の拳FUTURE)
単行本のおまけとして巻末に掲載されている物。
基本的には同じ内容のようだが、残酷描写が引っ掛かってネット配信限定となっている。また、背景や演出などにCGを多用しているなど今風となっている。
本編(83年版)との違いと、過激すぎる表現へのツッコミがメイン。制作陣がやる気満々なため、シェルター回やラオウ一人称など細かい部分も再現しようとして演者にツッコミを入れられる場面も。
「カッコいい追記!!そして編集!!最高!もう最高ジャンこれ!!この記事歴史に残るわ!!」
「…まず投稿できるんすか?」
- 『カメラを止めるな!』などの上田慎一郎監督で実写ドラマ化してほしい作品。 -- 名無しさん (2024-05-31 17:20:44)
- 北斗の拳は死に際盛り上げてナンボだからおかしく見えるだけで、味方があっさり死ぬ展開自体は悪じゃないから… -- 名無しさん (2024-06-30 04:04:42)
- 聖帝編は映画ってことにするのね。実際映画にもなったからちょうどいいっちゃちょうどいい -- 名無しさん (2024-07-12 20:21:40)
- ↑シュウ役の人がキレて聖帝十字陵のセット投げちゃってサウザー役の人困惑なんてアクシデントが描かれたりするのだろうか…?w -- 名無しさん (2024-08-10 05:30:38)
- 岩瀬さんの介入で劇的になるの、ホント巧いなぁ -- 名無しさん (2024-08-26 20:48:50)
- ログ化を提案します。 -- 名無しさん (2024-09-05 18:55:02)
- 雑に殺される予定だったマミヤ(二見)が死なない形で卒業出来たのはレイ(嘉崎)と岩瀬さんのおかげというね… -- 名無しさん (2024-09-05 20:11:14)
- ログ化しました。 -- (名無しさん) 2024-09-13 09:21:09
- レイの中からハブられた事でショックを受ける守くんはイチゴ味オマージュネタかw しかし本当にいろんな所からネタ拾ってくるなぁ。 -- (名無しさん) 2024-09-29 22:18:29
- リュウケンが弟子育成に失敗してるのが視聴者にネタにされて草。サウザー編のお師さんも突っ込みの嵐だろうな…… -- (名無しさん) 2024-09-30 21:52:28
- 役者のイメージ悪化が心配だからマミヤのアレコレはやってなかったことにしたってのがそれっぽすぎて思わず膝叩いてしまった。 -- (名無しさん) 2024-10-01 18:23:08
- サウザー編はセットがでかいのもそうなんだけど、子役エキストラが多いから映画の予算でないと無理がありそうだと気づいた。噛めば噛むほど納得が染み出てくるわこの漫画w -- (名無しさん) 2024-10-01 20:52:19
- 言われてみたら初登場のシュウは悪人面って気が付いて爆笑しちゃった。オリジナル版のメタ的には敵か味方かわからなくするためなんだろうけど -- (名無しさん) 2024-10-11 13:08:45
- ↑そしてシュウ役の人をそのままサウザーにしてたらラオウとキャラ被ってた上にイメージ的にマンネリ化してたという意見もあってすごい納得。 -- (名無しさん) 2024-10-22 20:00:56
- ↑4 実際にダイハードとゴーストバスターズで迫真の憎まれ役を演じたウィリアム・アザートンは実生活で一般人から絡まれたり苦労したエピソードがあるそうな -- (名無しさん) 2024-10-22 21:50:08
- 大恩人のシュウを忘れていたケンシロウ…当時の連載のライブ感あふれるこれに言及あるんだろうか? -- (名無しさん) 2024-10-28 23:07:17
- ↑そこは「いつもの」でいこう -- (名無しさん) 2024-11-22 16:22:49
- まだ先だけどリュウガとリュウガ編が好きだから、原作のあの滅茶苦茶ぶりがどうしてああなったのか撮影伝では理由付けされて描写されるのか今から楽しみにしてる -- (名無しさん) 2024-11-23 13:01:21
- 柏葉君は、銀河万丈より関俊彦(天の覇王)か浪川大輔(DD)で脳内再生されている。もちろん、サウザーになったら銀河万丈だけど。 -- (名無しさん) 2024-11-23 14:22:44
- 脚本も監督も、サウザーに北斗神拳が効かない理由を考えなさそう感。「劇場版のボスだから北斗神拳が効かない事でピンチを演出しよう!」とかいきなり言い出しそう -- (名無しさん) 2024-12-03 17:31:56
- メイク担当の女性スタッフだけど、セクハラされていたスタッフは黒髪パーカーでユダのファンのスタッフは茶髪で縦セーターっぽい服着ているから別人じゃないかな?54話で監督に怒っているときに並んで出てきているし -- (名無しさん) 2024-12-20 14:04:43
- ↑↑「北斗神拳が効かない敵」というオーダーは映画化の際に最初からあるよ。多分武藤さん必死に考え中だろう… -- (名無しさん) 2024-12-20 15:38:06
- とうとう浦野くんが壊れてしまった… -- (名無しさん) 2024-12-30 23:24:00
- 「頭が世紀末」は「ゲージが世紀末」並みに勢いがあって好き -- (名無しさん) 2025-01-02 19:33:53
- ↑4 別人で合ってる。名前はまだ出て無いんだよねその2人 -- (名無しさん) 2025-01-10 14:43:03
- 橘チャンはクランクアップ後も原口監督とタッグで大河ドラマ「花の慶次」撮ってそうっていわれてて草 -- (名無しさん) 2025-01-16 13:30:34
- こんなアドリブだらけのドラマありえるのか?と思ったけど、この前大河ドラマ特番で「独眼竜政宗で秀吉が正宗に刀持たせて小便したのは秀吉役の勝新太郎のアドリブが入ってる(どっからどこまでがは明言されず)」ってのがあっていがいとそういうものなのかもしれない。 -- (名無しさん) 2025-02-02 14:19:13
- 面白ければ(東武警察も北斗も)どっちも観るって、さやか子供なのに滅茶苦茶的確かつ根本的な意見だしとるな… -- (名無しさん) 2025-03-15 18:47:09
- アドリブで主人公が偽物に弱い設定ができて講義してるところで笑った。 -- (名無しさん) 2025-04-09 19:00:15
- この世界、スピンオフゲームとか出すの大変そう。ゲームに声がない時代から役者含めて色んなところに版権交渉しないといけない -- (名無しさん) 2025-04-11 19:59:58
最終更新:2025年04月09日 23:08