平成ウルトラセブン

登録日:2012/06/16 Sat 10:55:49
更新日:2024/02/12 Mon 22:29:58
所要時間:約 9 分で読めます





ダン……
疲れ果てて……ボロボロになって……
休む暇なんかなくて……

それでも、地球の事が好きだから……
宇宙の、果てから果てまで飛びまわって……
地球の平和を守り続けてくれてたんだよ……


こいつは……地球人より地球の事が好きな……
大バカ野郎だ!

byフルハシ


平成ウルトラセブンとは、TBSのTVドラマ『ウルトラセブン』の続編として作られた、
バップ・日本テレビのTVドラマ及びオリジナルビデオシリーズの俗称である。
TVSP「ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦」から、OVシリーズ「ウルトラセブン誕生35周年“EVOLUTION”5部作」までを指す。


【概要】

本シリーズは、ウルトラセブン以外のウルトラ戦士は地球を訪れておらず(初代ウルトラマンもそうだが、恐らくは光の国宇宙警備隊ともども存在すらしていない可能性が高い)、
セブンが地球を去った後の地球防衛はウルトラ警備隊がずっと担っていたというウルトラシリーズから切り離された独自の設定である。
というか、セブンが放映時はウルトラマンとは繋がっていない設定だったことやその影響でウルトラ兄弟シリーズとセブン本編の設定に矛盾があることを考えると、独自の設定と言ってもある意味平成セブンの方が正当な流れと言えなくもない。
ただし、まだ単発作品に過ぎなかった「太陽エネルギー作戦」ではウルトラ警備隊の過去のデータファイルとして、バルタン星人などが写るといった描写があり、設定が曖昧な点がみられる。

バブル崩壊後、平成不況の時期に製作された為、低予算体制での製作となった(TVSP、30周年記念3部作は特に顕著)。
しかし『ウルトラマンレオ』以来のセブン=モロボシ・ダンの復活(本作は『レオ』と繋がりがないIF展開であるので正確には復活ではないが)、
旧作レギュラー陣、星人の再登場、世代交代したウルトラ警備隊のメンバー、などといったファンサービスの多い作品である。

主題歌はOP・ED共に『ウルトラセブンの歌』であるが、最終章6部作からOPが『ウルトラセブンの歌'99』になり、EDは最終章6部作では『ウルトラセブンのバラード』、“EVOLUTION”5部作では『ULTRA SEVEN'99』になった。

【作品紹介】

◎TVSP

  • 太陽エネルギー作戦
1994年3月21日放映。
宇宙怪人 ピット星人(2代目)
宇宙怪獣 エレキング(3代目)
登場

通商産業省・資源エネルギー庁とのタイアップ作品。
約30年の時を経て再び地球でセブンとピット星人が対峙する。
冒頭のセリフはこの作品から。

  • 地球星人の大地
1994年10月10日放映。
幻覚宇宙人 メトロン星人(2代目。『ウルトラマンエース』のJr.を含めると3代目)
恐竜
登場
……恐竜というのは名称を忘れたとか間違いではない。本当に恐竜である。

資源エネルギー庁と再びタイアップ。
モロボシ・ダンの平成シリーズ登場は本作から。

上記TVSP二作品の作風は教育ビデオに近い。
ウルトラセブンがタイアップ相手となったのは胸のエネルギー吸収盤を太陽光発電に見立てたから、らしい。

◎誕生30周年記念3部作(全3巻)

1998年6月~8月に発売されたオリジナルビデオ。
正真正銘の風来坊となったダンが新たな事件に挑む。

  • 失われた記憶
植物宇宙人 ヴァリエル星人
登場

  • 地球より永遠に
分身宇宙人 ガッツ星人(2代目)
硫黄怪獣 サルファス
登場

  • 太陽の背信
太陽獣 バンデラス
登場

◎1999最終章6部作(全6巻)

1999年7~12月に発売されたオリジナルビデオ。
新たな危機が地球に迫ると共に、本シリーズにおける地球人の衝撃的な設定が明かされる。
苦悩しつつも地球人を信じ愛するウルトラセブン最後の戦いを描く…はずだった。

TV版や前作で描かれ始めた地球人の醜い一面をより強く押し出しており、幾分か増えた娯楽性以上に重い話が目立つ。

  • 栄光と伝説
寄生生命体 ヴァルキューレ星人
登場

  • 空飛ぶ大鉄塊
鉄鋼ロボット 大鉄塊(ダイテッカイ)
帰化宇宙人 キュルウ星人
宇宙昆虫 ガロ星人
登場

  • 果実が熟す日
犯罪宇宙人 レモジョ星系人
植物獣 ボラジョ
カプセル怪獣 ウインダム
登場

  • 約束の果て
時空怪獣 大龍海(ダイリュウカイ)
登場

  • 模造された男
宇宙ロボット キングジョーⅡ
登場

  • わたしは地球人
地球原人 ノンマルト
守護神獣 ザバンギ
カプセル怪獣 ウインダム
カプセル怪獣 ミクラス
登場

◎“EVOLUTION”5部作(全5巻)

2002年5~9月に発売されたオリジナルビデオ。
EPISODE:1~2にはセブンが登場しないため、ビデオのリリースはEPISODE:4相当のエピソードが最初に発売される(4⇒1⇒2⇒3⇒5という順)という変則的な形式を取っている*1。話数順にみるか、発売順に見るかはあなた次第。

防衛軍の内部にまで入り込んだ侵略者と新人類の台頭という未曽有の事態を前に、自らの意思で集結したウルトラ警備隊の戦いとセブンの復活を描く。

当初はセブンは復活しない構想であったが、要望の多さもあり再登場することとなった。
重苦しい雰囲気はさらに増しており、受けは今一つ。それでもラストは前作よりは希望が持てる。

  • EPISODE:1 ダーク・サイド
放浪宇宙人 ペガッサ星人
登場

  • EPISODE:2 パーフェクト・ワールド
反重力宇宙 ゴドラ星人
登場

  • EPISODE:3 ネバーランド
メタル宇宙人 ガルト星人
双頭合成獣 ネオパンドン
円盤龍
登場

  • EPISODE:4 イノセント
双頭合成獣 ネオパンドン
植物生命体
登場

  • EPISODE:5 アカシックレコード
メタル宇宙人 ガルト星人
妖邪剛獣 ガイモス
植物生命体
円盤龍
登場

【主な登場人物】

モロボシ・ダン
演:森次晃嗣*2

皆さんご存知、我らのヒーローウルトラセブンその人。改造パンドンを倒し地球を去ったが1994年に26年ぶり(時代設定の1987年からすれば7年ぶり)に地球に帰ってきた。
ナイスミドル。今回は本当に風来坊である。
人間態のビジュアルはスティーヴン・セガールを意識している。
一方で、演者の制限のない小説版ではTVシリーズ本編と変わらない青年の姿で描かれている。
カプセル怪獣も健在だがアギラは登場しなかった。後の『ウルトラマンメビウス』でもハブられた。
小説では本当は使用したかったが、知能が低いのでミクラスやウインダムとのタッグ戦は無理だろうと判断し使用を避けたとされている。
なお、取り出したケースの中にはカプセルが4個であり、『セブン』の「怪しい隣人」で消えたカプセルはそのまま無くなってしまったままのようである。
“EVOLUTION”5部作ではダンとしては登場しない。

カザモリ・マサキ
演:山﨑勝之

ウルトラ警備隊側の主人公。ダンがウルトラ警備隊の方が都合がいい時に彼の姿を借りていた。
6部作では1話ラストで瀕死となり、以後6話までずっとダンに入れ替わられていた。
その縁があってかEVOLUTIONでは心身ともにセブンと一体化し、同作ではほぼカザモリ=セブンとなっている。

シラガネ・サンシロウ
演:南条弘二

ウルトラ警備隊隊長。キリヤマ隊長ポジション。

シマ・ケイスケ
演:正岡邦夫

射撃の名手。

ミズノ・タクマ
演:古賀亘

旧警備隊にはいなかった発明家ポジション。

ハヤカワ・サトミ
演:鵜川薫

今作のヒロイン。カザモリとちょっぴりいい仲になる。
が、ダンがカザモリの姿を借りている時もあるので、果たしてどちらのカザモリを好きになったのか。
小説版ではその事に関するギャップが後にウルトラ警備隊を辞した切っ掛けの一つとされている。
“EVOLUTION”5部作では……。

ホシジョウ・ルミ
演:あだち理絵子

オペレーターメインで基地内にいる事が多いため、かなり空気。メイン回もなかったし……。

キサラギ・ユキ
演:勝村美香

“EVOLUTION”5部作のみ登場する新隊員。同シリーズの副主人公的存在。

カジ参謀
演:影丸茂樹

TVSPの頃は普通の隊員だったが、再登場した時には超タカ派の危険人物となっていた。
最終章で間接的にとはいえカザモリやフルハシが大変な事になった原因の一人であり、最終的にはセブンに銃を向けるまでになる。
ただ、その際セブンに吐露した心情は、彼を好く者も嫌う者も聴くべきであろう。
小説版では、婚約者の死がタカ派へ転ぶきっかけとされている。

フルハシ・シゲル
演:毒蝮三太夫

ウルトラ警備隊隊員。
TVSPではウルトラ警備隊隊長、3部作と6部作では防衛軍参謀を務める。
勿論ダンの正体を知っており、ダンとの種族を超えた友情も本作の見所である。
項目冒頭の長セリフを吐いたのも彼。「地球は我々自らの手で守り抜かなければならない」と職務に邁進していた最中、満身創痍の状態で地球に落下してきたセブンと再会した彼の心中は察するに余りある。
名言も多いが、最終章で大変な事になる。

友里アンヌ
演:ひし美ゆり子

元ウルトラ警備隊隊員。
TVSP第一作のみの登場。
ハイパー・ソーラー・システムを研究するクスハラ博士の弟と結婚しており、一人息子に「ダン」と名付けている。
一方、モロボシ・ダンと対面することはなく、ウルトラセブンを前にしてもダンではなくセブンと呼んでいた。二人の再会は『ULTRASEVEN X』までお預けとなる…

キリヤマ・カオル
元ウルトラ警備隊隊長。
最終6部作で言及されるのみの登場。
中山昭二氏がオファーを受けていたが、撮影前に逝去したことで名前のみの登場となった。
中山氏演じるキリヤマの再登場がかなっていたら、ノンマルトにまつわる展開に更なる説得力が生まれていたかもしれない…

一方、後述する最終6部作のノベライズ『ウルトラセブン EPISODE:0』では映像作品との媒体の違い故、存命のキリヤマの登場が叶っている。
映像作品の展開にもどかしさを感じてしまったファンも胸を打たれる出番が用意されているため、可能ならばその目で小説を是非読んでもらいたい。


【評価】

ウルトラシリーズの中でも名作と名高い『ウルトラセブン』の続編でありこちらも評価は高い……という訳でもなく、控え目に言って賛否両論である。
主な理由としてはTV版にあった娯楽性が欠けているなど(平成セブンは一本約一時間程度ありドラマシーンが八割を占めていた)。
さらに話の内容も重いものが多く最終章6部作や“EVOLUTION”5部作は特に顕著。人間不信になること必至である。

ファンの中でもかなりデリケートな争点だった「ノンマルト問題」に(本シリーズの枠組みだけとはいえ)明確な答えを出してしまった事も賛否を分ける一因だろう。
まだオリジナルスタッフの金城哲夫だったら許されたかもしれないが……。

また同時期に制作されていたTDG三部作よりも低予算であり、同じくOV作品だった『ウルトラマンネオス』同様全編ビデオ撮影である他、セットのクオリティやCGの少なさなど映像面で見劣りする部分もある。
通常のTVシリーズよりも一話数の尺が長い為、一部ドラマパートや戦闘シーンなどが間延びして見えるという声も。

しかし当時久々のウルトラシリーズであったため、素直に喜ぶファンも多く、その重さ故に最終話のウルトラセブンの決断が心に響く。


2012年4月にDVD-BOXが発売された。稀にレンタル店にも置いてあるので平成に蘇ったウルトラセブンの活躍を観てみては如何だろうか。
2021年から開始された円谷公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」でも全作品が配信対象となっているため、視聴が容易になった。

1999年の第6話は脚本第2稿まで旧作のキリヤマ隊長が登場することになっており、キリヤマ隊長役だった中山昭二が出演する予定であったが、中山が撮影期間中の1998年の12月に死去した為に出演は叶わなかった。キリヤマ隊長の登場は後に発売された小説版(後述)にて描写されている。

脚本担当の武上純希氏が“EVOLUTION”5部作の発売に合わせて執筆した小説版『ウルトラセブン EPISODE:0』、並びに『ウルトラセブン EVOLUTION』もソノラマ文庫より発売されていた。
前者が最終章6部作、後者は“EVOLUTION”5部作のダイジェスト&ノベライズに相当し、映像作品では描き切れなかった各登場人物の内面描写、並びに映像作品では不可能だった演出など見所が多く、その結果『EVOLUTION』は原作と比較しても極めて相違点が目立つ内容となっている。

知名度は低く対象年齢も子供向けとは言い難い本作だが、『ウルトラマン列伝』92話では本作のエピソードが放映された事がある。
列伝では単独でエピソードが紹介されずに終わった作品も少なからずあるので、割と恵まれたと言えるだろう。
選ばれた作品は1999最終章第五話「模造された男」だったが、この話は平成ウルトラシリーズ全体で見てもアクション面の評価が高い作品なので、子供に見せるにはベストなチョイスか。登場怪獣も親世代に受けのいいキングジョーだし。愛する人類の手で蘇らされた宿敵をありったけの必殺技で迎え撃つセブンの激闘は、20世紀のウルトラシリーズを締めくくるに相応しい名勝負である。
番組ではセブンと一緒に息子のゼロが感想を述べていたが、ゼロが見たセブンは隣にいる親父とは別世界の別人という奇妙な状況である。
後に キングジョー ストレイジカスタム登場を受けた応援配信としてYoutubeにてフルで配信された。
そういう訳で「平成セブンは知らないけどキングジョーⅡとセブンの激闘は見た」というファンも多いのではなかろうか。




宇宙の掟を破る覚悟で追記修正をお願いします。


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最終更新:2024年02月12日 22:29

*1 CSでの放送時も話数順ではなく発売順となっている。

*2 『地球星人の大地』を除く全作品にてナレーションも兼任。