概要
老朽化の進んでいた103系をあいづ線(現:廃止)に転用するため、1999年に車体更新して登場した。同線の八十里越えトンネルと急勾配区間に対応するため、制御装置をVVVF制御に変更、また、豪雪地帯を走るため、耐寒耐雪構造としている。
103系ベースの改造車として、既に
1系が改造投入されていたが、仕様が異なること、ローカル線での運用が前提であることを理由に別形式とされた。(相互に併結運転は可能)
車種構成
車種は
クモハ55形
(Mc)・
クモハ56形
(M'c)の2車種。どちらも中間車のモハ103形・モハ102形をベースとし、運転台まわりは廃車となった他の先頭車から移植している。
形式 |
種車 |
クモハ55 |
モハ103 |
クモハ56 |
モハ102 |
クモハ55(Mc) - クモハ56(M'c)
仕様
東日本旅客鉄道(以下、JR)から購入した103系をベースとしている。外観・内装は基本的に103系そのものであるが、寒冷地対策として走行機器を主体としたチューニングが行われている。
車体
103系の車体は長さ20mの普通鋼製で、車体幅は2800mm。前頭部も妻面もフラットでとても簡素な車体である。いわゆる「かまぼこ形」の車体断面であり、屋根が丸まっていのが特徴である。
尚、種車となった103系は、JR時代に車体更新を受けている。
- 雨樋は、材質をFRPに変更して腐食防止を図った。
- 客用扉は片側4カ所である。豪雪地帯を走るため、押しボタン式に切り替えられるようになった。
- 扉窓支持方式をHゴム押さえ金具に変更した。なお、一部の車両はJR時代に交換済みなので、このまま使用することにした。
- 貫通扉は各車両に設置されている。扉はJR時代に軽量ステンレス製のものに交換済みであり、このまま継続使用している。
- 戸袋窓と妻面の窓は、腐食防止のため埋め込んだ。
- 行き先表示器は幕式である。クモハ56形は先頭車化改造の際に車端部ごと切り取ってしまったため、設置されていない。
前頭部
前面は廃車となったクハ103形を乗務員室ごと移植している。先頭車は中期型のいわゆる「低窓車」である。
- 貫通扉は製造時から設置されていない。
- 前面窓の上部には、向かって右側(運転席側)に行き先表示器、左側(助士席側)に列車番号表示器、中央にヘッドランプを設置している。列車種別表示器は無い。行き先表示器・列車種別表示器ともに幕式である。
- ヘッドランプは、上部に丸形シールドビーム灯が2灯、腰部に黄色プロジェクタ灯とLEDテールランプのコンビネーションランプをそれぞれ設置。前者はJR西日本103系更新車と同じ車体に埋め込んだ構造となった。後者は本来テールランプが設置されていた場所に、新しいライトボックスを設置。車体から若干張り出しているのが特徴。
走行機器
- 制御方式をVVVFインバータ式に変更。8系とは異なり、IGBT素子のものを採用。
- ブレーキは当初電磁直通式で、103系と併結が可能。しかし、現在は電気指令式に改造されている。
- 補助電源装置はMGのままである。
- モータはVVVF化によってCDX-MT01形に変更。
- 台車はウィングゴム式の空気ばね台車となった。形式はCDX-DT01系。
設計段階では種車のDT33系を流用する予定であったが、CDX-MT01形が載せられないため、採用した。
- パンタグラフは従来のPS16形をそのまま流用。
- 先頭車の連結器に自動開放装置を設置、電気連結器もあわせて設置された。
客室
客室は103系そのものである。
- 窓は1系と同じ「円」の字形のものに交換。下段は固定、上段中折れ式である。UVカットガラスを採用している。
- 荷物棚はJR時代にステンレスパイプ式となっている。
- 車いすスペースを下り方先頭車に設置した。
- 化粧板を全面的に貼り替えている。
運転席
運転台はクハ103形から流用。
- 運転台はクハ103形のものをそのまま使用しているが、ワンマン機器を設置したため、デスクタイプ風となった。後にDigital ATCを搭載した車両は、メータパネルを1系電車に準じたものに交換している。
- ハンドルは2ハンドルで、左側がマスターコントローラ(マスコン)、右側がブレーキハンドルである。ブレーキハンドルは当初、抜き取り可能であったが、電気指令式に改造した時に固定式となった。
- ワンマン運転に対応するため、後よりの扉付近に整理券発行機を、乗務員室付近に運賃箱と案内表示機を兼ねた運賃表を設置している。
- このほか、ドア切り替えスイッチ、行き先表示器制御パネルなどの各種制御スイッチや機器類のレイアウトを変更し、不要な機器は撤去した。
カラーリング
サービス機器
- ワンマン運転機器を設置している。
- 空調は従来のAU75形である。
- グローブ式のベンチレータは腐食防止のために撤去された。扇風機もあわせて撤去している。
- ヒータは従来方式のままである。火傷防止のために耐熱布をヒータ表面に貼り付けている。
伝送装置
伝送装置は設置されていなかったが、
わくわくにしラインへ転用する際に簡易モニタが設置された。
- 制御装置・ブレーキ装置・扉開閉状態などの表示をLEDで行う。
スペックシート
5系 |
起動加速度 |
3.0 km/h/s (103系電車併結時は 2.5 km/h/s) |
営業最高速度 |
100 km/h |
設計最高速度 |
100 km/h |
減速度(通常) |
3.5 km/h/s |
減速度(非常) |
5.0 km/h/s |
車両定員 |
136名 |
最大寸法(長×幅×高) |
20,000 X 2,832 X 3,935 mm |
車両質量 |
42〜44 t |
軌間 |
1,067 mm |
電気方式 |
直流 1,500V |
歯車比 |
1:6.3 |
駆動装置 |
TD継手平行カルダン駆動方式 |
主電動機 |
CDX-MT01形 (135kW) |
制御装置 |
VVVFインバータ制御(IGBT素子)・三菱製 |
ブレーキ方式 |
電磁直通式空気ブレーキ・発電ブレーキ 後に電気指令式空気ブレーキ・回生ブレーキに改造した |
保安装置 |
Digital ATC・ATS-G・ATS-P・ATS-SN |
姉妹車両・派生系列
5系電車の別バージョンとして、
1系電車と10系電車がある。
所属・運用
2011年末までに全車が運用を離脱し、全て廃車された。
過去に所属・運用していた線区
わくわくにしライン(宮ケ瀬線)(現在の
宮が瀬線)開業用として、2003年と2005年に印西牧の原総合車両所(現:
印西牧の原総合車両センター)から転属した車が在籍していた。同区に在籍していた
1系と共通で主に宮が瀬線で使用していた。
2015年までに全編成が定期運用を離脱。すぐに廃車された。その後、一部の走行機器は
新10系電車に転用している。
- カラーリングは■白地に■裾部をグレーに。窓周りは■ダークグレーで、その下に■緑色の帯をまとっていた。扉は■黄色く塗られていた。
当センターでの運用実績は以下の通り。
あいづ線営業所(北アイ)
あいづ線用の車両として、1999年に改造投入。しかし2000年3月のあいづ線廃止に伴って定期運用を失ったため、
印西牧の原総合車両所(印マキ)に転属した。
当営業所内での運用実績は以下の通り。
2000年3月のあいづ線廃止に伴い、全車が2000年4月1日付けで転属した。在籍する6編成(12両)のうち、2編成は
中山競馬場線で使用していたが、残りの4編成は保留車となっていた。その後、保留車4編成は2003年に伊勢原車両センターへ転属。中山競馬場線の2編成も2005年に
6系に置き換えられたため伊勢原へ転属し、同所での配置は無くなった。
当営業所内での運用実績は以下の通り。
関連項目
最終更新:2022年07月11日 10:19