38000系電車

38000系電車(38000けいでんしゃ)とは、ちばドリームエクスプレス(cdx)の直流特急形電車である。
2000年12月12日に営業運転を開始した。


概要

高速鉄道の実験線を転用して開業する水上線用の特急列車として登場した。cdxでは既に汎用特急型電車(32000系)が在籍していたが、水上線では160km/h運転を行うことになったため、新たに新形式が起こされた。
その後、2001年に沼印・柏本線(現:船沼本線大柏本線および成田線)系統の特急列車にも本系列が投入された。
車両デザインはcdxの多くの車両のデザインを手掛けている「ひまわりデザイン研究所」が担当。

車種構成

初期型(0番台)

汎用特急型電車である32000系をベースに足回りを高速運転に適した仕様としている。基本4両・付属2両の6両編成を組み、どちらか片方の編成でのみの運用も可能となっている。
基本編成の1号車の運転台寄り半分はグリーン車(現:プレミアムクラス)とした。
編成

後期型(500番台)

0番台を基本としているが、製造メーカ変更のため車体構造が異なる。編成も9両の固定編成となっており、先頭車両は両側共に非貫通構造となっている。
グリーン車の連結位置は1号車のままだが、全室構造に拡大された。
編成

主な仕様

ここでは主に製造時点での仕様について記述する。なお、グリーン車は現在「プレミアムクラス」に改称されているが、ここでは当時の名称で表記する。

外観・車体

車体は長さ21.3m級、幅2950mmのロング・ワイドボディで、材質は軽量ステンレス製(前頭部のみ普通鋼製)。後期形の500番台は製造メーカが変わったため、アルミ製のダブルスキン構造を採用。
前頭部は非貫通構造が基本だが、0番台の4号車と5号車は編成同士の通り抜けを考慮し、貫通構造となっている。また、車体構造の違いにより、0番台と500番台とでは前面スタイルが若干異なる。非貫通型先頭車はJR西日本683系・JR九州883系を強く意識した流線形となっており、ヘ独特なスタイルをしてる。貫通型先頭車も非貫通型先頭車に準じたデザインとしており、中央に両開き式のプラグドアを備える。
客用扉は各車両の車端寄りに片側1箇所ずつ設置。ただし1号車は半室グリーン車となっているため、車体中央に設置している。500番台は快速運用時を考慮し、1号車をのぞき片側2箇所に変更している。なお、500番台の1号車は全室グリーン車となっているが、将来半室グリーン車に容易に改造出来る様、0番台と同様に客用扉を車体中央に設置している。
側面の窓は眺望に優れた大形窓を採用。窓まわりを黒く塗装することで連続窓風に仕上げている。500番台は車体構造の関係で小さな窓に変更し、窓周りの黒塗り仕上げは省略された。
側面行先・列車種別表示器は3色LED式である。0番台と500番台とでは設置位置や形状が異なる。

走行機器

台車は新設計の軸梁式のボルスタレス空気ばね台車・CDX-DT380(制御電動車・電動車)/CDX-TR380(制御車・付随車)を採用。台車は160km/hの高速運転で実績のある西日本旅客鉄道(JR西日本)681系の構造を参考にしており、基礎ブレーキはCDX-DT380が自動車と同じキャリパ式ディスクブレーキを、CDX-TR380が踏面ブレーキのほか通常のディスクブレーキを1車軸あたり2枚搭載している。また、高速安定性を高めるため、全ての台車にヨーダンパとアンチローリング機構を搭載している。500番台は高速運転を行わないため、基礎ブレーキを踏面ブレーキのみとしたCDX-DT381(電動車)/CDX-TR381(制御車・付随車)を採用している。
雪の多い寒冷地を走ることから、床下機器は「コンテナ方式」を採用している。各種機器をコンテナに収めることで機器と機器との間に着雪することを防げるほか、外観がすっきりするというメリットがある。この構造は500番台にも踏襲され、後に一般型車両のAC-TRAINにも採用された。
モータは160km/h運転に対応したCDX-MT380を搭載。出力は230kWである(500番台は160km/h運転を行わないため、同じ機種でありながら出力を絞っている)。駆動方式は実績のあるTD継手中空軸平行カルダン駆動である。
制御方式はIGBT素子のVVVFインバータ制御である。0番台は東芝製、500番台は日立製のものを搭載。補助電源装置(SIV)はCVCFインバータ式で、VVVFインバータとワンセットとなっている。万が一SIVが故障した時はVVVFインバータの1ユニットをCVCFインバータに切り替えられる構造となっている。
コンプレッサは、cdxの車両で数多くの採用実績があるスクリュ式を搭載。除湿装置と一体化している。
集電装置(パンタグラフ)はシングルアーム式で、従来の特急車両標準品であったCDX-DT320を高速運転に改良したCDX-DT380を搭載している。

客室

グリーン車(現:プレミアムクラス)

0番台・500番台共に、暖色系統の落ち着いた雰囲気となっている。
座席は回転リクライニングシートを2+1列で配置、シートピッチは1200mmである。シート表皮は0番台が東レ社製のエクセーヌ、500番台が本革で、どちらも黒色である。テーブルは背面テーブルと折りたたみ式のインアームテーブルの両方を備えている。このほか、フットレスト、カップホルダ、読書灯を備えている。

普通車

0番台はグレーを基調とした落ち着いた内装に、500番台は難燃処理を施した木材を多用した暖かみのある内装となっている。
座席は回転リクライニングシートを2+2で列配置、シートピッチは1020mmである。座席自体のデザインは0番台と500番台とで異なり、特に500番台は木製合板とスリット入りのアルミパネルを多用した凝ったものとなっている。シート表皮はどちらもモケットである。テーブルは背面テーブルとインアームテーブルの両方を備えており、0番台は樹脂製、500番台は木製となっている。このほか、カップホルダと簡易なフットレストを備える。

その他

車内案内表示器は16ドットマトリクス方式で、各客室の仕切り扉付近と中央部に吊り下げる形で設置。文字ニュースの表示にも対応している。
トイレは奇数号車に設置。1号車と500番台の5号車は車椅子対応の大形タイプとなっている。
500番台には各車両の下り方デッキ部に「コモンスペース」と呼ばれるフリースペースを設けている。足元まで拡がる大形窓や、ちょっとした気分転換にうってつけの木製ベンチなどを設けているほか、沿線案内のポスターや絵画、書画などを展示するスペースが設けられている。
0番台・500番台共にゴルフバッグやスーツケースといった大きな荷物を持った利用客のために大形荷物置き場を設けている。

形式別概説

ここでは新製形式のみ記載する。

0番台

モハ38100形(M1p)

中間電動車。モハ38200形とペアを組む。
車内は普通座席のほか、デッキに自動販売機とフリースペースを設けている。床下は主制御器(SIV一体型VVVFインバータ)・コンプレッサ(CP)などを、屋根上にはパンタグラフを備える。

モハ38200形(M2)

中間電動車。モハ38100形とペアを組む。バリアフリー対応車である。
車内は普通座席、車椅子用区画(客室内デッキ寄りに2区画)、デッキに車椅子対応大形トイレ・洗面所を備える。床下には主制御器(VVVFインバータ)などを備える。

クモハ385100形(M3pc)

付属編成の下り方先頭車となる制御電動車。基本編成との通り抜け用に貫通扉を備える。
車内は運転台、普通座席の構成。床下は主制御器(SIV一体型VVVFインバータ)・コンプレッサ(CP)などを、屋根上にはパンタグラフを備える。

クロハ38800形(Tsc)

基本編成の下り方先頭車となる制御車。非貫通型で基本的に他の編成と併結する事は無いが、救援用に連結器を常備している。
車内は運転台、グリーン座席(現:プレミアムクラス)、普通座席、トイレ・洗面所となっている。グリーン座席と普通座席はデッキで仕切られており、この空間にトイレ・洗面所・車販準備室を設置している。

クハ38700形(Tc')

付属編成の上り方先頭車となる制御車。非貫通型で基本的に他の編成と併結する事は無いが、救援用に連結器を備える。
車内は運転台、普通座席、トイレの構成。

クハ387100形(T2c')

基本編成の上り方先頭車となる制御車。付属編成との通り抜け用に貫通扉を備える。
車内は運転台、普通座席を備える。

500番台

クモロ389500形(M1sc)

下り方先頭車となる制御電動車。モハ382500形とペアを組む。新幹線を除く特急型車両では珍しい、電動車の特別車両となっている。
車内は運転台、グリーン座席(現:プレミアムクラス)、グリーン車専用トイレの構成。床下に主制御器(SIV一体型VVVFインバータ)・コンプレッサなどを備える。

クモハ386500形(M2c)

上り方先頭車となる制御電動車。
車内は普通座席と大形荷物置き場の構成。床下に主制御器(VVVFインバータ)・保安機器などを、屋根上にパンタグラフを備える。

モハ381500形(M1)

中間電動車。モハ382500形またはクモハ386500形とペアを組む。電動車であるが片方は付随台車となっている。
車内は普通座席と大形荷物置き場、デッキ部にトイレとフリースペースの構成。床下に主制御器(SIV一体型VVVFインバータ)・コンプレッサなどを備える。

モハ382500形(M2)

中間電動車。モハ381500形とペアを組む。
車内は普通座席と大形荷物置き場の構成。床下に主制御器(VVVFインバータ)を、屋根上にパンタグラフを備える。

サハ383600形(T)

付随車。バリアフリー対応車となっている。
車内は普通座席、車椅子専用区画(2区画)、大形荷物置き場、バリアフリー対応大型トイレ、多目的室、車掌室の構成。

スペックシート

※製造時点のもの
38000系
  0番台 500番台
起動加速度 2.2 km/h/s (4+2両) 2.5 km/h/s (9両)
営業最高速度 160 km/h 120 km/h
設計最高速度 160 km/h
減速度(通常) 4.5 km/h/s
減速度(非常) 5.1 km/h/s
編成定員 xxx名(4+2両) xxx名(9両)
最大寸法(長×幅×高) 21,300 X 2,950 X 3,760 mm
編成質量 xxx t xxx t
軌間 1,067 mm
電気方式 直流 1,500V
編成出力 2,760 kW
(2M2T+1M1T)
4,560 kW
(6M3T)
歯車比 1:5.1
駆動装置 TD継手中空軸平行カルダン駆動方式
電動機 CDX-MT380形 (230kW/190kW)
制御装置 VVVFインバータ制御
(IGBT素子・東芝製)
VVVFインバータ制御
(IGBT素子・日立製)
ブレーキ方式 電気指令式空気ブレーキ・回生ブレーキ・発電ブレーキ
保安装置 Digital ATC・東京湾ATC・ATS-G
ATS-P・ATS-Sn(※)
製造メーカ 東急車輌
川崎重工
日立製作所
備考 ※0番台のATS-SnはJR東海の速度照査機能に対応

姉妹車両・派生系列

  • 派生系列として39000系がある。

改造

特急なのはな」への転用改造

千葉本線安房急行線に新たな特急列車(なのはな)を新設するのに伴い、「ひまわり」減便で余剰となっていた500番台4編成をこの列車に使用することとなった。この時、編成の組み替えと内装を中心としたリニューアル改造が行われた。

編成の組み替え

500番台は9両固定編成であるが、予想需要と各走行区間の両数制限(千葉本線は8両まで、富津線は5両まで(ただし、木更津駅君津駅上総相川駅浜金谷駅は9両まで)。安房急行線は4両まで)を理由に4両編成に短縮した。
  • 旧1号車・旧2号車・旧8号車・旧9号車 → 新1〜4号車
  • 付番方法を改め、百の位を号車番号と一致させた。番台区分は70番台とした(下記の編成表を参照)。
編成表

車内設備の変更

下記の様に、車内の構成を変更した。
カフェコーナーの新設 - カフェコーナーを1号車後位側に設置した。車椅子対応トイレ(後述)と隣り合わせになる構造となっているが、視線や動線に配慮した設計とした。これにより、形式記号が「クモロ」から「クモロハ」に変更となった。
車椅子対応 - 500番台の旧5号車にあった車椅子対応機能を1号車と2号車に移設した;
  • 2号車を車椅子対応車両とし、1号車寄りの2座席を撤去し専用区画を設けた。なお、側扉の開口幅は元々車椅子が通れる幅としているため、拡幅改造は行っていない。
  • 1号車のトイレを大型化し、車椅子対応の多機能トイレとした。

客室の改装

客室およびデッキを改装し、従来の落ち着いた暖かみのあるデザインにカジュアルな要素を加えた、明るく楽しいデザインに変更した。
  • プレミアムクラス(旧:グリーン車)の座席を交換。座席全体を包み込む様な形状の木製フレームが特徴。これにより、従来の座席で問題となっていた座席のぐらつきも解消された。
  • 普通席のシート表皮を張り替えた。
  • グループ利用を考慮し、普通席の側壁に折りたたみ式の大形テーブルを設置した。座席を向かい合わせにした時に利用可能。
  • 白を基調とした配色は従来通りだが、アクセントカラーを黒から「ナノハナ」にちなんだ黄色や緑色に変更している。
  • 照明を全てLED式のスポット照明に変更した。通常は電球色であるが、トンネルに入ると様々な色に変化するという凝ったギミックを備える。荷物棚と側壁の境界線上にも間接照明風のLED照明が仕込まれている。
  • 車内案内表示装置をLEDドットマトリクス式から液晶パネル式に変更した。27系に使用しているものと同等品で、2枚1組のものを天井に1両あたり合計4基(1号車はプレミアムクラス客室内に2基、カフェコーナーの車端部に1基)設置した。

特急はまゆう」への転用改造

三浦半島と房総半島を結ぶ「快速はまゆう」を有料特急に格上げすることとなったため、宮が瀬線水上線系統の特急列車休止で余剰となった0番台をこの列車に転用することとなった。
この時、内外装のリニューアルが行われた(「なのはな」の様に編成の組み替えは行っていない)。

編成表

編成の組み替えは行っていないが、車番を変更した。改番後の車番は下記を参照。

外装のリニューアル

カラーリングを変更したほか、客室レイアウト変更に伴い一部の窓をパネルで埋めている。

車内設備の変更

  • 1号車の後位側客室と仕切り壁を撤去した上で、カフェコーナーとフリースペースを設置した。カフェコーナーの基本構造は「なのはな」用編成に準じている。

客室内のリニューアル

グレーを基調とした落ち着いた内装から、カジュアルで明るい内装にリニューアルした。色調は海をイメージした青系を採用した。デッキの色調も変更している。
  • 「なのはな」用編成同様、プレミアムクラスの座席を交換した。ただし、外側のフレームは木製ではなくアルミ製である。
  • 普通車のシート表皮を張り替えたほか、背面テーブルをアルミ板と透明アクリルパネルを組み合わせたものに変更した。
  • 照明を全てLED式のスポット照明に変更した。通常は白色であるが、トンネルに入ると様々な色に変化するという凝ったギミックを備える。荷物棚と側壁の境界線上にも間接照明風のLED照明が仕込まれている。
  • 車内案内表示装置をLEDドットマトリクス式から液晶パネル式に変更した。27系に使用しているものと同等品で、2枚1組のものを天井に1両あたり合計4基(1号車はプレミアムクラス客室内に2基、カフェコーナーの車端部に1基)設置した。

沿革

  • 2000年12月12日 - 「特急はるな」が水上線開業と同時に運転開始。
  • 2011年12月10日 - 「特急なのはな」運転開始。
  • 2012年3月17日 - 「特急はまゆう」運転開始。

使用列車

所属・編成および運用

印西牧の原総合車両センター(印マキ)

後期型編成9両2本が在籍。このほか、木更津車両センター(後述)へ転属する際に抜き出された中間車5両×4編成分が構内に留置されている。
2012年6月現在は特急「ひまわり」に使用。予備編成が無いため、検査時は他の特急車両が代走する。

2012年6月現在の運用は以下の通り。
  • 特急ひまわり号

木更津車両センター(千キサ)

2012年6月現在、「特急なのはな」用の4両編成が4本、「特急はまゆう」用の4両編成が4本在籍。「はまゆう」用の編成は2012年8月までにあと2本投入されるほか、臨時増結用の2両編成が投入される予定である。
基本的にそれぞれの特急列車に使用しているが、運用の都合で千葉本線三浦線の快速・普通列車にも使用している。
「なのはな」は安房急行電鉄所有の80系も使用しているが、予備編成が無いため、検査や故障などで使用出来ない場合は本系列が代走する。運用によっては「なのはな」用の編成が「はまゆう」に、「はまゆう」用の編成が「なのはな」に使われることもある。

2012年6月現在の運用は以下の通り。

関連項目


ちばドリームエクスプレスの直流電車
特急形 現役 32000系 - 34000系 - 35000系 - 37000系 - 38000系 - 39000系
一般形 現役 0系 - 2系 - 6系 - 7系 - 8系 - (新)10系 - 12系 - 13系 - 14系 - 15系 - 17系 - 18系 - 27系 - 30系
AC-TRAIN 21系 - 22系 - 23系 - 24系 - 25系 - 28系 - 29系
引退 1系(・旧10系) - 3系(63系) - 4系 - 5系 - 16系
旧東湘急行電鉄:7000系 - 9000系
旧北関東鉄道:3000系 - 3500系 - 3700系
その他:旧内房鉄道旧型車
計画のみ 20系
その他


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車両 直流 特急型
最終更新:2012年06月25日 02:38