神族(理:tonirnascher)とは、リパラオネ教の概念。日本語文献においては、カタカナによる音写でのトニーナスチェーもよく用いられる。リパラオネ教の概念を指す場合、神族の読みは「しんぞく」または「かみぞく」のどちらでも良い。北欧神話の神族とは全く関係がない。


概要

 神族はアンポールネムのレチⅡの「神族の系譜」に明確な記述が存在する。リパラオネ教の唯一神アレフィスが自分の窓口としてレナ、フューア、ユスツァプローサの三つの上位の神族(la parcaxesen-tonirnascher、統治神族)を創造したのを始めとして12の神族がそれらの下位に創造された。それぞれにはアレフィスから役目を与えられており、また司る月が存在する*1
 神族が独立の存在であるか、それとも神の化身・窓口としてのポートでしかないかに関しては神学的議論が存在する。
 リパラオネ教学においては、アレフィスがマイノスワーデン(神の国)と人間の生の国(デシャワーデン)の間に渡した橋のようなものが、アレフィスの意思という高度な存在がそれのみで人格を構成するほどのエネルギーを持ってデシャワーデンとマイノスワーデンとが繋がるという膨大な霊的エネルギーにより分離されて人格が実態として現れるという説明がなされる*2

一覧

レナ

 初出は「アンポールネム」
 統治神族であり、拘り、職人、学者を司る第一月神族。現代語名の"lena"は古典語の"larner"(<larne-er)「学ぶもの」に由来する。
 スキュリオーティエのレチ章、アンポールネムのレチ章に出てきてレチに祝福と神の力を与えた。宗教学的にはレチとリパラオネ教の布教においてよく出てくるためにレチの伝説化とともに生まれた神族とされる。

フューア

 初出は「アンポールネム」
 統治神族であり、****を司る第二月神族。現代語名の"fyra"は古典語の"furer"(<fur-er)「何かのためにする者」に由来する。

ユスツァプローサ

 初出は「アンポールネム」
 統治神族であり、****を司る第三月神族。現代語名の"yszaplorca"は古典語の"justapflorc"(<justat apfa lorcuk)「池の兄の色」に由来する。別名は「千の声」。

ケインテル

 初出は「アンポールネム」
 時間を司る第四月神族。現代語名の"keintel"は古典語の"keinter"(<keint-er)「古き者、老人」に由来する。

シュトゥーガ

 初出は「アンポールネム」
 光を司る第五月神族。現代語名の"xturga"は古典語の"xturger"(<xturge-er)「花開く者」に由来する。別名は「雷の天使」。

シュツァー

 初出は「アンポールネム」
 存在を司る第六月神族。現代語名の"xutzar"は古典語の"xuzer"(<xuzu-er)「出す者」に由来する。

ユンカー

 初出は「アンポールネム」
 日の消える時間を司る第七月神族。現代語名の"jungkar"は古典語の"jurnker"(<jurnk-er)「山の人」に由来する。別名は「月の天使」。
 Skyli'ortie2:7に見られるように古くからユナフラと不仲である。夕焼けや朝焼けはそれぞれユンカー/ユナフラの出現する時というが、これはリパラオネ教民話に基づく。古代から夕焼け・朝焼けに関してはユンカーとユナフラの不仲によるものであるとされていた。スキュリオーティエ叙事詩では、具体的な話が描かれているが、これは全てのリパラオネ教民話に共通せず、「ヴェルガナが彼らの不仲を面白がってメー(火矢)を与えたのでそれを天で撃ち合っている」や「人が労働を止めないために祈りの時を与えるためにアレフィスが元々不仲なユンカーとユナフラを日の両属性に置いたため、一日が回るようになった」などのバリエーションがある。

ユナフラ

 初出は「アンポールネム」
 日の現れる時間を司る第八月神族。現代語名の"junafla"は古典語の"junfler"(<junflas-er)「野原の人」に由来する。別名は「太陽の天使」。
 Skyli'ortie2:7に見られるように古くからユンカーと不仲である。

シェーター

 初出は「アンポールネム」
 正義と判断を司る第九月神族。

フィレナ

フィレナ*3
 初出は「アンポールネム」
 主義・主張を司る第十月神族。現代語名の"filena"は古典語の"firener"(<fire(n)-er)「火をつける者」に由来する。スキュリオーティエ叙事詩では、ユフィアの神に花(ユーフェの花)を挿したという伝承が残っており、それを元に「花の天使」と呼ばれる。

ヴェルガナ

 詳しくは「リパラオネ教/神族/ヴェルガナ」を参照。
  初出は「ファシャグノタール」
 争い・戦争を司る第十一月神族。現代語名の"velgana"は古典語の"velgano"(<velgan-o)「駆逐、放逐」に由来する。別名は「鬨(鏑矢・喇叭)の天使」や「軍事の天使」など多数ある。
 人と人との争いに介入して神の怒りを具現化した大量破壊兵器である火の矢を人間に渡したり、神族同士の喧嘩に対して武器を供したりする神族。争いを好み、付く側によってシェーターと対立する。初出がファシャグノタールであることからもわかるように古い時代から存在する神族である。駆逐艦を指すfelkanaと同根であり、古くは海の神などであったともされる。統治神族以外では異例であるが古くから信仰を集めている。

ルバー

 初出は「アンポールネム」
 自由を司る第十二月神族。現代語名の"(eu)lbar"は古典語の"lber"(<lbe-er)「探求者」に由来する。

ベルチェ

 初出は「スキュリオーティエ」
 母性を司る神族。現代語の"belche"はリパラオネ祖語の"*bæltʃʰəj"「母」に由来する*4。別名は「認める母性」。
 深い赤髪灰色目の少女として現れる。 日常、今までの守護、対象の今までを認め、抱擁する。現実を突きつけるのではなく明るい未来への直進を自覚させる。自信を象徴し、甘い幻想を見せることしかできないが、本人が現状を正しく読み取れるように導く。

ベーシャ

 初出は「スキュリオーティエ」
 父性を司る神族。現代語の"berxa"はリパラオネ祖語の"*bəjʃə"「父」に由来する*5。別名は「拒否し挑ませる父性」。
 深い蒼髪黒目の少女として現れる。 相手の今を否定し、更に高みを目指すために現実を突き付けてくる。頼らせない、自信をなくすことを発言することはないが、細かい点について気を張らせる。団結した警戒を象徴する。

イイェルスト

 初出は「スキュリオーティエ」
 他人を司る神族。現代語の"Ije'rkhst"は古語の"ijerst"に由来し、更に遡るとリパラオネ祖語の"*ɪjeʁst"「****」に由来する*6。別名は「特異としての他人」や「第三者」。
 茶髪蒼目の少女として現れる。いわゆるトリックスターである。いたずら好きで善でも悪でもない気分屋で人を食っている。助けたと思えば、気分が悪くなることを言っていき、悪意を持って行動したと思えば、あるところで人を助けている。いたずらと北極星の象徴。

スロンミーサ

スロンミーサ*7
 詳しくは「リパラオネ教/神族/スロンミーサ」を参照。
 初出は「スキュリオーティエ叙事詩」
 豊穣、降水を司る神族。現代語名の"slommirca"は古典語の"sluphmisfer"(<sluphmisfa-er)「雨の者」に由来する。
 雨はリパラオネ教的には豊穣の神族スロンミーサ(slommirca)の訪れであると考えられ、古代や中世では穀物や野菜をその間に調理してはならない、調理すると豊穣の神族は去って収穫が減ってしまうと考えられた。

枝葉末節

  • 芸術においてアレフィスを描くことは忌避されてきたが神族は神そのものではないため描いても良いとされ、古くから芸術の対象とされてきた*8
  • リパラオネ教の宗教者の権威的機関である全連邦影響圏シャーツニアー基金(AJXF)は、「神の声を聞くことは少ないが、信徒は聞くこともあるだろう」という見解を取っている*9
  • リパラオネ教の教祖であるレチはスキュリオーティエ叙事詩において雷を落とされ殺されるが、後に続くアンポールネムでは同名の人物が登場するためそのままでは矛盾が存在する。これを説明する方便として、「その時代の人類のために布教が果たせなかったとしてアレフィスに雷で殺されたが、神族の一致を得られなかったから記憶喪失で済んだ」とする説が一般的である*10
  • 統治神族は、現世ではジョルジュ・デュメジルの三機能仮説に当てはまる可能性がある*11
  • ルーリア祭においては、女児が神族の役をする伝統がある*12
  • 比較宗教学やユーリエン学説によると、一神教信仰がリパラオネ人の多神教信仰を取り込んだ結果であるとされている*13

関連項目

最終更新:2023年07月17日 02:07