本項はCoC6シナリオ「アンチドグマ・コンプレックス」のネタバレを含みます。
アンチドグマ・コンプレックス(英:Antidogma-Complex)とは、Fafs F. SashimiによるCoC第6版用シナリオ。マルチエンディング、ほぼクローズド。


概要

 現代デュインを舞台とするクトゥルフ✕悠里世界の初シナリオである。あらすじは以下の通り。

 デュイン・アレス独立戦争から二年後、あなたたちは豪華客船エスポーノ号でデュイン各地を遊覧する旅を楽しんでいた。三ヶ月を掛けたデュイン遊覧も今日で終わりとなり、終着点に付いたところで船内に政府職員たちが乗り込んでくる。それが異変の始まりであった。

 ユエスレオネ革命における悲劇を扱っており、シナリオとログは内戦期に関わる重要な資料の一つである。
 設定を継承し、後に続くシナリオが書かれたため、TRPG:ADCsのシリーズの最初の作品として位置している。

沿革

 2020年に主に遊ばれた。Skarsna haltxeafis klanによるリメイク制作が2021年に告げられている。2022年8月に第四回が行われ、同年10月1日にSkarsna haltxeafis klanによるリメイク版「アンチドグマ・コンプレックス」のセッションが行われた。同日に続編制作の発表がFafs F. Sashimiによってされている。
 2023年に作られたフリーシナリオの改変シナリオ「救済の聖女(悠里)」には共通する設定が登場する。

シナリオの背景

  一言で言えば、旧神リパコルvsニャルラトホテプの争いに巻き込まれた人間たちの大騒ぎ。「教団」の邪神崇拝者たちは啓示を受け、ニャルラトホテプを顕現させるために儀式で人間たちを生贄に捧げようとする。生贄に捧げられた人間たちは個を失い、ゾンビとして他者を食い散らかすようになっていった。
 ゾンビを生み出した「教団」は自ら感染とゾンビによって滅びた。しかし、「教団」の最後の生き残りである幹部レシルとその部下ユルティギは「教団」の目的を貫徹しようとPCたちの居る豪華客船エスポーノ号へと乗り込む。目的は寄港先からの感染拡大と船内を完全に感染させることであった。この謀略を知られるのを避けるためにレシルらは終着点であるシェルタスャーテゥンデ東港まで潜伏し続けていた。
 連邦は国家の重大事として感染症を食い止めようとするが、凶暴化するゾンビに対しては殺害する以外に取れる手段がなかった。本土で収まった感染がデュインで広まっていくうちでエスポーノ号の航路と重なることから、政府はエスポーノ号内に生物兵器を持ったテロリストが乗り込んでいるのではないかと考え、終着点のシェルタスャーテゥンデ東港に留め置かせ調べることにした。
 特別警察の捜査の結果、疾病対策研究院(KFK)の研究者が乗り込んでいることが判明し、政府はこれをバイオテロリストであると断定し保健省職員と特別警察官を投入することにした。
 疾病対策研究院(KFK)の研究者F.V.ルミヤは悠里世界線に旧来から住み続ける旧神リパコルを信奉する「リパコル喚仕機巧」の組織員の一人であり、この騒動が「教団」によるものだと察知する。何故なら、KFK職員として向かったクラスター感染が発生したとされる場所(「教団」の本拠地)で「教団」は破滅し、その跡を残していたからである。ルミヤは次の標的となるのはデュインだと考え、疾病対策研究院から送られてくる情報を元に政府よりも早く、エスポーノ号の異変に気づく。
 ルミヤは乗船し、一人で教団の生き残りを見つけ出し、この狂気の計画を止めようとする。

登場人物

ユルティギ・ジョヒェルタ・カルティユ(jurtingi dzohje'rta kaltiju)

「やあやあ、そこのお二人! ここまでの旅の話でもしないかい?」
――『アンチドグマ・コンプレックス』(202008)
 ラッビヤ系リパラオネ人(名字は氏族名yurtingiとjoçörtaが由来)。
 「教団」の組織員であり、レシルの部下で旧支配者に洗脳されている。気が軽く調子に乗りがちだが、予定と違うことが起こるとすぐに焦りを生じさせてへまをやらかす。レシルと共に生き残ったのは偶然であった。レシルからは、「やはり洗脳されている者は洗脳されている者でしかない」と見下げられている。
 「最初に政府関係者に殺される乗客。救ってやると面白いことになる」とシナリオ内部に書いてあるが、一番最初に殺害されたことはなかった。

フィシャ・ヴィール・ルミヤ(fixa virl lumija)

「こんな時に火事場泥棒とは感心しないな」
――『アンチドグマ・コンプレックス』(202008-2)
 感染症研究者、リパコル喚仕機巧組織員。ユナ系リパラオネ人。
 KFK(疾病対策研究院)の研究者の一人、今回の感染症への対応を疑問視した彼女は船内に乗り込むにしたという建前で「教団」の目論見を防ごうとする。
 実はリパコル喚仕機巧の組織員の一人であり、悠里世界線旧神リパコルを信奉している。
 フィシャ・ヴィール家は古来から、中世のフィグウィン魔術を秘密裏に継承しており、喚仕機巧の重要な立場を担ってきた。ルミヤ自身も人間の可能性と超越にありながらも人間に親愛の念を持つ旧神たちを畏れ、またエルフ熱の衝撃により、その人類を救う職業として感染症研究者となった。善なる存在の可能性を信じている。

アルティ・ヴェルガーン・レシル(Altea Velgane Leshil)

「人の素性を聞く前に自分の素性を述べたらどうだい」
――『アンチドグマ・コンプレックス』(202008-3)
 「教団」幹部、冷静沈着であるが感情も薄い。フラッドシャー系リパラオネ人。
 旧支配者が「神託」と「啓示」によって人類を洗脳するのに対して、レシルは自ら旧支配者を信奉する。それは彼女がユエスレオネ革命に巻き込まれた際に人々を支え、慈愛の心で接してきた両親がフェンテショレーであるとして市民に処刑されたからである。彼女は人類を愚かな感情動物だと断じる。それゆえ彼女は人類の滅亡と人類に与するリパコルの排除を願う。自らを救う旧支配者を真に信奉するのは自分であるという自負がある。その他の洗脳された教団員のことを操り人形と見做しがちである。
 レシル家はフラッドシャー系の貴族家であるが、ヴェルバーレ(喜捨)を行うフィアンシャに対して支援を行い、貧しいホームレスなどを使用人として雇うなどアルティの両親は貧しい層を気にかけ続けていた。
 しかし、レシル家が中世貴族であることを理由に市民は彼らをフェンテショレーと断じる。ある日、賊徒が家に押し入り、アルティの父と母、弟を撃ち殺した。彼女はそれをクローゼットに隠れながら、隙間から目撃してしまう。
 アルティは隠れ切るが一人街をさまようことになる。しかし、そこで「教団」が運営する孤児院に拾われることで九死に一生を得るとともに「教団」の目的を自分の意思のために利用することを決意する。

エド・イル(ed il)

 shkリメイク版シナリオにのみ登場する人物。
 研究所に所属する女性。白衣を普段着として着ていて、船内のバーで提供されている「緑の蛍光色の液体」を好んでいる。
 実は彼女の正体は……?

設定

悠里世界線旧神《ペヌレー》

 悠里世界線を古くから司る神聖な存在、悠里世界の人類を見つめ、彼らとともに生きてきた。故に人類に親和的であり、その優秀な知識と技能、勇敢な心を親愛の念で見つめている。
 世界線外から襲来した旧支配者は人類を弄び、悠里世界を支配しようと試みるもペヌレーとの超越的な支配権争いのなかで封印されたり、追放されることになった。この戦いはmp.4982~mp.4470のリパラオネ暗黒時代の所以にもなっている。

「教団」

正式名称は誰も知らない。公式な組織ではなく、「神託」と「啓示」の元に集まった者たちの総称である。そして、その本質的特徴は旧支配者を信奉することである。封印や追放により直接的な影響を及ぼすことができなくなった旧支配者が「神託」と「啓示」によって人類を洗脳し、自らを復活させるように仕向けるのだ。
救済の聖女(悠里)に登場する独裁反対武装連盟は、ハスターの召喚を目的としており、この「教団」が何らかの原因で組織化して融合ものであると考えられる。

リパコル

悠里世界線旧神《ペヌレー》の一柱。元々は人類に旧神の存在を恐れさせるために地上に災厄をもたらす神であったが、旧神と旧支配者の争いのなかで旧支配者を追放に追いやった主役となり、そののちも再びの復活を目指す旧支配者の動きに目をやっているため現代ではその災厄はリパコル誕生節と呼ばれる時期にのみ現れるという。現代リパライン語の影響でリパコールと間延びして呼ばれる場合があるが、正確にはリパコルが正しいとされる。

リパコル喚仕機巧

紀元前5000年から続く由緒正しき魔術師組織であり、本来はファイクレオネで暴走するリパコルを監視し、鎮めるために結成された。しかし、暗黒時代を経て喚仕機巧の目的は悪辣で人類を弄ぶ旧支配者に対し、旧神の優位を確保するという方向へと変わっていったのであった。

メタ的情報

正義の追求

 本シナリオでレシルが巻き込まれた事件は「レシル家事件」と呼ばれている。ユエスレオネ連邦においてはレアル政権で革命時の戦争犯罪の再調査が行われて発覚した。知名度の高い事件であるものの、遺族の求めが薄いなか連邦検察庁は時効に追われながら孤独に正義を追求している。

ログ

ログリンク 日時 GM PL - PC NPC 場所
『アンチドグマ・コンプレックス』(202008) 08/26 Fafs shk - 四ツ崎翔
ルニアス - ウーナ・ヴェーデイン
ユルティギ、レシル、ルミヤ 大宇宙
『アンチドグマ・コンプレックス』(202008-2) 09/07 Fafs えかとん - プライア
Guien - オーギュスタン
lefe - マーヴァ
アストロ - アルマート
ユルティギ、レシル、ルミヤ 大宇宙
『アンチドグマ・コンプレックス』(202008-3) 09/07 Fafs ぶちょー - sy^len
光 - まいさん
ポメルのおっさん - 蓬莱
retoafis - れもん
ユルティギ、レシル、ルミヤ 悠里
『アンチドグマ・コンプレックス』(202208) 08/16 Fafs nomad - サゲオン・オルエルトフォス
karaage - ロンバルス・ストランディア
ユルティギ、レシル、ルミヤ 大宇宙
(S.H.klanリメイク)アンチドグマ・コンプレックス(202210) 10/01 shk フリートン - ジゼル=パートリッジ
れるとら - アヴァーノ・ド・ルーゼン
ユルティギ、レシル、ルミヤ 共立世界

関連リンク

最終更新:2024年03月28日 00:06