ヴェルガナ(理:velgana)とは、リパラオネ教の神族の一柱。争い・戦争を司る第十一月神族。


概要

 現代語名の"velgana"は古典語の"velgano"(<velgan-o)「駆逐、放逐」に由来する。別名は「鬨(鏑矢・喇叭)の天使」や「軍事の天使」など多数ある。
 人と人との争いに介入して神の怒りを具現化した大量破壊兵器である火の矢(メー)を人間に渡したり、神族同士の喧嘩に対して武器を供したりする神族。争いを好み、付く側によって正義と判断を司る第九月神族シェーター(xertar)と対立する。初出がファシャグノタールであることからもわかるように古い時代から存在する神族である。駆逐艦を指すfelkanaと同根であり、古くは海の神などであったともされる。統治神族以外では異例であるが古くから信仰を集めている。

言及

ファシャグノタール

 古典的なリパラオネ教典であるファシャグノタールにおいては、「戦記」における記述が豊富である。ここでのヴェルガナの描写は古いリパラオネ人の信仰を反映していると思われる。
 ヴェルガナはファシャグノタールにおいては闘いを好み、神の怒りを具現化したメーと呼ばれる火の矢を人間の祈祷に応じてその敵に落とす存在とされた。また、メーの他にテージュンと呼ばれる「最も巨大な祈りの攻撃」も司っていたとされる*1

アンポールネム

 リパラオネ教典の基本的な存在であるアンポールネムでは、ヴェルガナは正義と判断を司る第九月神族であるユナフラに創造され、第十一月神族に叙されたとされる*2

スキュリオーティエ叙事詩

 スキュリオーティエ叙事詩では、Skyl.4:26(ユフィア章「認める者」)やSkyl.4:27(ユフィア章「挑ませる者」)などで言及される。
 作者であるアリテは、ヴェルガナを「戦いによる災い」の形容として用いた。また、その犠牲としてラッテンメの獣耳(agrief)を用いていたことも記述から見て取れる。いずれにしてもヴェルガナは戦争の象徴であり、そして人がそれに魅入られるものとして描かれているのが特徴である。
 スキュリオーティエ時代では戦時のヴェルガナ祭祀の否定があるとされる。表面上は戦争の否定と平和の肯定があったが、宗教学的には多神教的価値観を消そうとする背景もあったと考えられている*3

アルダスリューレの行

 スキュリオーティエ叙事詩における描写とは反して、ヴェルガナが好意的に書かれているのが特徴である。「ヴェルガナの正道」、「ヴェルガナの風」、「ヴェルガナの欲するところ」といった表現はアルダスリューレの行において、ヴェルガナがヴェフィス人的なヴェフィサイトの武的概念として描かれているのを示している*4

ユレイシア・アレスのヴェルガナ仮説

 比較宗教学者であるユレイシア・アレスは、主にリパライン語の語源面からリパラオネ教の原始的存在を究明しようとした。よく知られるものがalefisのフレリオン語源説である。キャスカ・ファルザー・ユミリアなどによるリパラオネ宗教とラネーメ宗教の入れ替え説を否定し、リパラオネ教の源流をフレリオン人の信仰であるとして語源を*aræspʰɪjsʧʰə(人に近づき弓で暴れる者)であると説明し、原始的リパラオネ教においては神を様々な自然的、運命的に人間に対して大きな影響(特に死など)を与えるような存在であると考えた。その原始的存在を現在に残すのは最も古いリパラオネ教の聖典であるファシャグノタールにも記述が残る神族のヴェルガナであるとした*5

枝葉末節

  • "klaxvelgn"という動詞はもともとヴェルガナ(velgana)に感謝を行うために犠牲を捧げる儀式を指した。現代では祝宴を一般的に指す*6
  • 一部のリパラオネ教民話では、ヴェルガナがユナフラとユンカーの不仲を面白がってメー(火矢)を与えたのでそれを天で撃ち合っているために夕焼けや朝焼けが起こるという伝承が存在する*7
  • 名前に用いられることも多い
  • ヴェフィス人のリパラオネ教徒は特にヴェルガナ信仰が強いとされる*8

関連項目

最終更新:2022年05月05日 02:04