前話:第十九話


#20 動きだした歯車

 道中、ノルメル軍の見張りに捕まり牢獄に入れられ数日経った。
カマキリと呼ばれていたドボジエ・アレスというあまり聞きなじみのない名前の女がやってきたが、
突然、外から地響きのような雄叫びの後、牢獄に群衆が押し寄せ、やがて木製の熊手を持った農民が独房の扉を開けた。
「スローヴェ様を発見したぞ!」

 その声の後、幾人の農民がやってきて外へと導いてくれた。
俺は救助されたらしい。
 逃げ出す馬車の中で、ラティーナというシャーツニア―に出会った。
彼女は革命派教会のリーダーと名乗り、この地...いや、この大陸に革命をもたらし、世界を変えると言う。
今は、今後の予定と作戦を練り直すため、居留地へと向かっている。

 馬車に揺られながら、いくらか時が経った。
馬にそのまま乗るよりも全く違う感覚に少し快適さを覚えていると、やがて野原の向こうを少し行ったところに建物が見えた。
「そろそろ居留地に着く、あなたのことについての話は通しておこう」
「ありがとうございます、この地に革命をもたらすため努めます」
彼女はまるでうふふというように手で口をおさえながら微笑んだ。

 馬車を止めてもらい、木造の小さな建物に入り、会議室へと足を運ぶ。
少し、廊下を歩き会議室の前に着いた。
部屋の扉をノックし、開けると、そこには見慣れた人たちがいた。
レーシュネにターフ・アレシャ...ラムノイはいなかったがレーシュネが室内にいた職員に呼びかけ彼女を呼びに行かせた後、ラムノイは眠そうな顔をしながら部屋に入ってきた。

ラムノイが席に着いた後、レーシュネがゆっくりと口を開いた。
「さて、君が新たな人物を連れてやって来た。状況を説明してもらいたい。何があった?」
「俺は、領地に帰る途中ノルメル軍の奴らに捕まって、その後に牢獄に入れられた。だけど何日か経った後カマキリと自称する奴がやってきてゼスナディの家族を人質にとってると言った。その後にこのシャーツニアーの方によって市民の反乱が起きたらしく助けられたわけだ。」
俺は知っている限りの情報を相手に話した。

■  ■  ■  ■  ■  ■  ■

「なるほど...そんなことが裏で起こっていたのか...」
話を聞き終わったレーシュネは、そう呟いた。

「とりあえず、新たな味方が付いてくれたことは非常にありがたい」
「私も、このような環境で動けること、感謝しております」
レーシュネの言葉の後に続いてラティーナは言った。

「確か、ロスナも市民軍結成のため動きだしているだろう」
「その件はお任せください、私たちがやりましょう」
ラティーナは微笑みの中、そう言った。


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最終更新:2023年11月19日 03:12