ファヴニ高原はクラナ大陸でも有数の固有種の多い地域であり、独特の生態系が育まれている。
 というのも、ファヴニ高原はファイクレオネでも珍しい熱帯地域の高山帯であり、比較的寒冷で乾燥しているからである。土壌の栄養分は少なく、ファヴニ高原の台地部分では降水量も少ないため、一部では砂漠気候が見られる他、樹木も点在しており森林の形成も制限されている。
 特に植物群に関しては垂直分布の影響があるため、麓の構成種とは異なり、寒冷や乾燥に耐性を持つものが多い。


動物種

フタマタバク
 先端が二股に分かれた鼻を持ち、器用に動かすことができる。
 草食動物。身体は小さく、蹄を持つ。ファイクレオネの草食哺乳類の原始的な形質的特徴を持つとされ、近年では連邦からの外来動物に生息地を追われている。

クラナアルマジロ
 現世のアルマジロと同じく硬い皮膚に覆われており、危険を感じると丸くなる。アルマジロにしては大きく、大型犬ほどの大きさがあるが、肉食動物を追い払うことができないので丸くなることでやり過ごす。食性は雑食でとても乾燥に強い。水を飲まなくても生きていける。

クラナラクダ(摺:Zirli、ズィリ)
 ラクダというよりもむしろリャマに近い。ズィリは草食動物であり、ラクダのように大型だが気温の低い草原に適応して密度の高い毛を持つ。気性はおとなしく、調教すると芸を覚える。ズリナ人は大昔から家畜化し、ズィリから乳、肉、毛、革を取る。またズィリの仲間にはツノを生やす種もあり、気性がやや荒くなる反面それからはツノも採れる。
 乾燥させた糞は火口(燃焼が持続する着火剤)として煮炊きに使われる。

クラナダチョウ(摺:Lirlivirli、ギリヴィリ)
 やや足が短いダチョウ。足が早く、大きな家畜に比べて軽快な動きが得意。野生下でも飼育下でも植物の種や果実を好んで食べる。巨大な卵を生み、良質の肉が採れる。大昔から家畜化されており、乗用として用いられる他、卵や肉を料理に用いたり、綺麗な羽根が装飾品によく使われた。筋肉質の足で蹴られると最悪死ぬが、ギリヴィリは賢いので人を見分け、意地悪な人間やギリヴィリの扱いがわからない素人がよく蹴られているようである。群れで子育てする習性があり、人間の子供や赤ん坊には優しい。

ヴズヴァコヨーテ
 何でも食べる肉食性の強い雑食動物。小動物やヘビ、カエル、小さな鳥を襲う他、大きな草食動物の死肉を漁って食べる。時には果実を食べることもある。
 全身ががっしりとしていて足、耳、尾が短く、頭部がやや平たい。
 生息地はファヴニ高原北部の冷涼な草原や低温の疎林を好む。山岳にも姿を見せることがある。10~12頭ほどの群れで生活していて、夜に活動することが多い。
 群れで家畜を襲って度々全滅させるため、牧人には嫌われている。

センニンオオカミ
 ファヴニ高原の主に開けた場所に生息する頂点捕食者。サーベルタイガーほどではないものの立派な犬歯を持ち、顎から腹部にかけて長い毛を持つことから仙人の名がついている。単独で様々な大型動物を仕留めることや、その強そうな見た目から草原の王者に位置づけられてきた。体が大きいものの運動能力は高く、特に持久力に優れ、獲物を追いかけ回して疲弊したところを捕食する。身体は灰色の毛皮に覆われ、寒冷地ではより白っぽくなる。北に生息する個体群はより身体が大きく、耳が小さくなる。遠吠えは繁殖期を除いてしない。ヴズヴァコヨーテとは異なり、人間の家畜を襲うことは滅多にない。
スィレフ設定ではWPで空を飛ぶらしい。

ザラカルピューマ
 ファヴニ高原とタファ地方一帯に見られるヤマネコに似た捕食者。生息環境は高山か森林であり、タファ地方の熱帯雨林からファヴニ高原北部の山脈までの幅広い環境に生息する。斑や縞などの模様は見られず、白~茶色の毛並みを持つ。腹部は白っぽい。耳と尾の先端は黒っぽい毛が密生している。人と接触の多い場所では夜行性になるが、人里離れた場所では通常昼間に活動する。聴覚、視覚、瞬発的な運動能力に優れ、待ち伏せによる狩りを好む。狩りは通常単独で行い、まれに夫婦で狩る場合もある。木登りや泳ぎも上手いが、長距離を走って追いかけるのは苦手。センニンオオカミやヴズヴァコヨーテに比べて気性はあまり荒くなく、人に向かってくることは滅多にない。しかし、むやみやたらに挑発を繰り返したり脅したりすれば襲いかかってくることがあり、極めて危険である。

ダイオウアリクイ
 ファヴニ高原に生息する巨大なナマケモノの仲間。草原や乾燥地など開けた場所に生息する。全長3~4mほどもあり木に登ることはできず、地上を徘徊して餌を探す。鋭い鉤爪を持ち、巨木の葉を引き寄せて長い下で葉をしごいて食べたり、アリクイ同様にその長い舌でアリを食べたりする。また、口の奥には頑丈な臼歯が残っており、硬い葉や果実、根茎をすりつぶして食べることもできる。身体は固く頑丈な毛で覆われており、巨体のため小型の肉食獣がダイオウアリクイの成獣を仕留めることは困難である。

センニンザル
 リス程度の大きさの小さなサルで、オスの口元に生えるカイゼル髭のような特徴的なヒゲが生える。元々はクラナ南方のタファ地方沿岸部の熱帯雨林に生息していたと考えられ、ファヴニ高原の山の斜面の雲霧林にも生息し、乾季は湧き出る温泉に浸かって暖を取る様子がよく知られている。基本的には果実食だが、より北に分布する個体は植物の葉、種子、キノコ、鳥類の卵、昆虫なども多様な食性になってゆく。

ザラカルクイナ
 ファヴニ高原の下生えが繁茂した森林に生息する飛べない鳥。実際には天敵から逃れる際にわずかに飛ぶことができる。夜間には樹上で休むため、木登りのためにも飛翔することがあり、木から降りる時にも滑空して降りる様子が観察されている。果実食であり、クラナビワ等の重要な種子散布者である可能性が示唆されている。また水場の昆虫の幼虫も好んで食べる。

クラナバイソン
体高2m前後。森林、草原、ステップ地帯に生息し、草や木の枝葉、樹皮、ドングリ、果実等を食べる。30~50頭の群れを作り、最も年老いたメスがリーダーとなる。オスは成熟するとオスだけの群れを作り、ツノを突き合わせて優劣を争う。上質な肉と毛皮を目当てに狩猟することもあるが、家畜にはしない。ズリナ人は草原の秩序を重んじてあまり狩らない。

インヴィルガモ
 中~小型の鳥類。水かきが発達しており、ファヴニ高原の河川や湖で観察される。ザラカルでは主に夏鳥であり、冬はより温暖な場所を目指して飛ぶ渡り鳥である。ズリナ人がしばしば卵や肉のために飼育する。

植物種

ロッカクジュ
 乾燥に耐性のある常緑樹。幹が六角形であり、年輪も同様の形をしていることからこの名がついた。葉も細長い六角形のように角ばっている。気根の先端に形成される塊茎(tuber)から採れるデンプンを加工して主食とする。冬芽は塩漬けにして肉料理の添え物として、樹皮は衣服や装飾品や燃料に利用される。材木は建造物や燃料として用いられる。

ハッカクジュ
 乾燥に非常に強い常緑樹。山火事にも強く、種子は焼けても発芽できる。幹や年輪が八角形であることからこの名がついた。葉はロッカクジュ同様に細長い六角形。食の用途には不向きだが葉や葉に含まれる精油が薬や虫よけとして利用される。材は丈夫で長持ちするため、調理器具や櫛などの装飾品に使われる。ザラカルでは初産の妊婦にハッカクジュの櫛を贈るのが慣習として定着している。ハッカクジュ材の採取や処分には正式な手順(習わし)に従う必要がある。

クラナビワ
 常緑広葉樹の小高木。雲霧林や下方の疎林に分布し、高さ5~10mほどで、ビワとよく似ているが、葉が対生しており、全縁。葉の表面には毛がなく光沢がある。雌雄同株で自家受粉ができる。果実はビワのように熟すと黄橙色になり、中に種子が3~4個入っている。味はどちらかというとイチジクっぽい。様々な動植物が好んで食べる果実で、種子は動物の体内を経由しないと発芽しない。ギェン人もクラナビワの果実をよく利用し、ザラカル各地の果樹園で生産されており、クラナビワのドライフルーツの入手は容易である。よく公園や庭に植樹されており、子どもたちが取って食べる。大人がやると顰蹙を買う。
 クラナビワチョッキリという農業害虫がいる。
最終更新:2025年04月02日 09:37