ザ・ムーンよ!! おまえはなに者なのか!?
『銭ゲバ』『アシュラ』などの狂気あふれる作品群でカルト的人気を誇る漫画家・ジョージ秋山氏が1972年に発表した漫画『ザ・ムーン』に登場するロボット。
「神は死んだ」と公言する謎の大富豪・魔魔男爵が二兆五千億円(当時)もの巨費を投じて作り上げた巨大ロボットで、巨大な
三日月状の胴体が特徴。
常に「ムーン ムーン ムーン」と駆動音?が鳴っているが詳しいメカニズム等は不明。
またオーバーヒートを起こすと
目からオイルが涙のように流れ落ちる姿を頻繁に見せるのも特徴。
そんなザ・ムーンの唯一にして最大の弱点は
操作方法である。
マジンガーZのように人が乗り込んで操縦するタイプではなく、
外部から操作されるタイプのロボットなのだが、
リモコン等ではなく選ばれた人間の脳波によって操作が可能なロボットとなっている。
昨今の多様なロボットを見慣れている人にとってはそれはそれでありがちな設定だと思われるかもしれないが、
ところがどっこい
「操者9人の思考が一致する」という
かなりめんどくさい条件を満たさないと操縦はおろか
起動すらしない。
似たような設定のコン・バトラーVでも5人でしかも合体条件なのに
9人の「動かしたい」という脳波をキャッチすると頭部に9個並んだランプが順次点灯、全員の思考が一致する事で彼らの思った通りに動かせるのだが、
劇中では魔魔男爵によって9人の
少年少女が本人の意思と関係なく操縦者に選ばれてしまい、
中には
幼児まで含まれていたため肝心な時に動かない事態が多発した。
しかも
全員がムーンに脳波が届く距離にいなければならないため、9人の内1人でもその場に不在だとたちまち動けなくなる。
また、
コックピットも存在しないため、自ずと全員が無防備な状態でムーンと付かず離れずの距離にいる必要があり、
そこを敵勢力に襲われ窮地に陥ることも多かった。
また9人のうち誰か一人でも恐怖を感じるなどして動かす意思を喪失しても動作が止まってしまうため、
前述のように年端も行かぬ少年少女が選ばれた関係上、
恐怖心や怪我等で起動不能に陥る事態も多発した。
それだけに
起動した後は基本的に敵無しであり、主人公一行の勇気が最大限に発揮された時にはとても心強い味方になるのも事実。
また、9人の脳波が最高潮に達すると
「サイコキネス(精神動力)」によって空すらも飛べるようになる。
9人は精神統一のため、全員で般若心経を唱えてサイコキネスを高めていた。
劇中では拉致されたり地面に埋められたりしたものの基本的に破損する事やエネルギー切れになった描写が存在せず、
9人の呼びかけによって何度も復活するなど、活動時間はほぼ無限であると考えられる。
このように魔魔男爵の「
力こそ正義」という言葉通りの存在であるため、
作品全体を通して「如何にしてムーンを起動させるか」という部分が話の主軸になっている部分が大きいのも事実である。
また劇中で敵対する相手も、
- “正義”の名の下に日本に水爆を落とし、その後全員で自決しようとする過激派集団
- 人質を取ることでムーンを利用し、ダムに沈んだ黄金を手に入れようとする少数部族
- 孤独な老人達を催眠術で操り盾とし、自身は若い女性を拐ってユートピアを作り出そうとする老人
- 地球人を試すため、吸えば死に至るカビを地球全土へと広げる機械を発動させる犬型の宇宙人
といった氏の作品にありがちな主人公一行を精神的に追い詰めてくる連中ばかりなので、
ムーンは正しく「機械仕掛けの神」のような役割である事も多かった。
なお、魔魔男爵がこれほどまでの力を持つムーンをあえて子供達に託す事にしたのは、
「自分は心が汚れている」と強く自認し、心の純粋な子供達こそ本当の善と悪を見分ける事ができると考えているため。
……一見無茶苦茶な理屈のようだが、上記のような悪役達を見ていると満更間違いでもないと思えてくるのが本作の悩ましい所である。
「やつらにまけたら やつらが勝ったら
やつらが正義になってしまう!!
まけないためには力が必要なんだ!!」
余談だが、
良くも悪くもアニメが豊作だった2007年にアニメ化もされた鬼頭莫宏の漫画『ぼくらの』は本作に強くインスパイアされており、
劇中でも「お父さんの持ってる漫画に同じように子供が乗るロボット漫画があった」と言及されている上、
単行本発売時にはジョージ秋山氏が推薦文を書いている。
特にネーミングセンス(
主役機の名が「ジアース」など)に本作の影響が強く見られる他、
小説版では最後の敵として明らかにザ・ムーンなロボットも登場している(さらに言うと
挿絵を描いたのは原作者である鬼頭氏本人)。
MUGENにおけるザ・ムーン
怪獣キャラでお馴染みの
カーベィ氏によるものが公開中。
ハイパーアーマー持ちの巨大なキャラとなっており、劇中同様常に「ムーン」という駆動音が鳴っているのが特徴。
ちなみに駆動音は
カーベィ氏ご本人の声との事。
基本的には原作同様肉弾戦が中心となっており、
通常技に
飛び道具の類は搭載されていない。
必殺技は「フルムーンアタック」「体当たり」の他、
一定時間般若心経を鳴らして自身を強化する「般若心経」の三つが搭載されている。
7P以降は常に「般若心経」状態であるため駆動音と合わせてかなりの存在感を放つ。
AIもデフォルトで搭載済み。
神は苦しむ。神は戦う。戦う人びととともに。
また、苦しむすべての人のために。
なんとなれば、神は「生命」であり、
闇の中に落ちて、ひろがり、
闇を呑みこむ、一滴の光だからである………
(ロマン=ローラン)
出場大会
最終更新:2024年06月15日 10:57